書いていたのを平成が終わる前に投稿しようと
一念奮起して投下しました。
小説投稿は五年ぶりです。
第一話「魔力なき侵犯機」
アルタラス王国。三大文明圏の一つである
第三文明圏の中心地フィルアデス大陸の南に位置するアルタラス島全域を統治する王国だ。
文明圏の外れにあるために国力が低い文明圏外国に分類されるも、
温暖な気候と豊富な食資源により、人口は約1500万人と他の文明圏外国と比べ人口が多い。
魔石と呼ばれる鉱物資源も豊富に採掘出来る為、魔石の輸出により経済的にも豊かで軍隊の能力も他の文明圏外国と比べ、突出して高い。
その日もアルタラス王国の龍騎士は哨戒の為、
アルタラス西部の海域を飛行していた。
○●
中央暦1939年1月23日
アルタラス王国西部海域
龍騎士ゴタマは相棒であるワイバーンに騎乗し、哨戒活動を行っていた。所属する飛竜隊の中で
一番視力の良いゴタマは何事も見逃さないように視線を周囲に向けていた。
現在の世界情勢では世界五大列強の一つであるパーパルディア皇国が急激な拡張政策を採った事で、文明圏外国との衝突が絶えない以外は、アルタラス王国の懸念事項もない。
万が一、パーパルディア皇国がアルタラス王国に攻撃を掛けるとしても、北部海域から攻め込む方が首都にも近く皇国の海軍基地からも一番近い。
以上の事からこの海域は仮想敵であるパーパルディア皇国が通過する可能性は極めて低く、ここの哨戒活動はどちらかというと、民間船舶の遭難や海賊の対処、航路を失った船舶の案内など、警察色の強い活動だ。この海域はパーパルディアの脅威はほとんどないので配属された龍騎士は新人が多く、この地で実地活動を行ったあと、各地の飛竜隊に配属される。
「む? あれはなんだ?」
ゴタマは西の方角に飛行物体を確認した。
基地から離陸する前に聞いた情報では、今日この空域を通過する予定の龍騎士はいない。国内には第三文明圏とは別の文明圏国の列強であるムーの飛行機械と呼ばれる龍とは別の飛行物体が有り、アルタラス王国国内にその空港も存在し、定期的に乗り入れてるがこちらも予定には存在しない。
魔法通信機――魔信で本部に報告を行う。
「ゴタマより本部。西の方角に未確認の飛行物体を確認した。この空域を通過予定の物はそちらで確認されているか?」
間を置いて本部から返信が来た。
『本部よりゴタマ。その空域を飛行予定の物は存在しない。直ちに接近し詳細を知らせ』
「了解」
進路を飛行物体に向けて、接近する。接近するに連れて飛行物体の全容が見えてきた。
飛行物体は龍ではなく、飛行機械のようだ。機体の色は灰色。
翼に六つの風車――――ムーはプロペラと読んでいるものが着いている。
「ゴタマより本部。飛行物体は飛行機械の模様。色は灰色、翼に風車六つ。接近し誘導位置に着いた後、魔信で呼び掛ける」
『本部了解。現在ムーに問い合わせている。詳細がわかるまで呼び掛けと監視を続行せよ』
「了解」
ゴタマはさらに接近する。しかし接近するに連れて、輪郭や機体の細部がはっきり分かるだけで、大きさがそれほど変わってないことに気づき仰天する。
どうやら未確認機の大きさはムーのものと比べて倍以上に大きいようだ。
「何て大きさだ。一騎のワイバーンで落とせるか?」
翼に外側から緑、白、赤色で構成された円に交差するように羽と剣が描かれたマークが、
後ろで垂直に生えた翼には三本脚の楕円状の物体が炎で焼かれている絵が描かれている。
恐らく翼に描かれたマークが国籍。垂直に生えた翼のマークが部隊章なのだろう。
先頭部分に人が乗っているのも見えた。こちらを指差して魔信らしき物に報告を行っている様子が見える。
誘導位置に着こうと旋回して未確認機の右前方に着こうとするがすぐに追い抜かれた。
再び位置に着こうとするが、逆にどんどん引き離されていく。
「バカな!? あんな図体でワイバーンより速いだと!?」
ムーの大型飛行機を遥かに上回る大きさに関わらず、速度も大幅に凌駕する飛行機械の存在に驚愕しながら、懸命に追跡を行う。
しかし、追い付くことはなく振り切られてしまった。
たった今見た事を報告しても信じてもらえるか分からないが
見たままの事を本部に報告しようとしたとき、本部からの魔信が鳴った。
『こちら本部。確認が取れた。未確認機はムーににあらず。
直ちに誘導を行え。従わない場合は撃墜せよ』
「無理だ! 既に振り切られた。アルタラス島方面に向かってる模様。
未確認機はワイバーンの速力を大幅に凌駕。ムーのやつよりずっと巨大で速いぞ!」
ゴタマの報告に本部の管制官が驚愕する。
『何だと!? 列強の飛行機械より速くてしかも巨大なのはいくらなんでも見間違いだろ。』
実際に見たゴタマにとっても信じられない出来事だ。
管制官はもっと信じられないだろう。
一秒でも時間が惜しいゴタマは管制官の言葉に反論せずに指示をあおいだ。
「とにかく突破された! 俺は追跡した方が良いか?」
『・・・龍騎士ゴタマはその場に待機。未確認機の増援が来ないか監視を行え。
新たに飛来した場合は報告せよ』
「了解」
ゴタマは魔信を切って未確認機が飛んできた方向にワイバーンを向けた。
○●○●
ゴタマの報告を受けた管制本部は、
未確認機アルタラス島接近阻止のために管制下にある
ワイバーンをアルタラス島西部沿岸部上空に集結させた。二個飛竜隊、その数24騎。
既に本土空域への侵入を阻止するために未確認機への撃墜命令が下っている。
指揮官が部下たちに告げる。
「各騎に告ぐ。目標はワイバーンの速度を越えている。大きさもかなり大きい。全火力を集中的に叩き込み撃墜せよ」
『『『了解!』』』
未確認機の方角に向け、頭上から攻撃出来るようにワイバーンの限界高度4000mを全力で飛ぶ。
しばらく飛んでいると黒い点がポツンと見えてきた。
それに向かって進むと徐々に形がはっきりしてくる。翼に風車を六つ着いた飛行機械だ。
「目標視認。攻撃準備!」
24騎のワイバーンが口内に粘性のある燃焼物質を溜め込みそこに火炎魔法と風魔法を組み込み導力火炎弾を錬成する。
射程内に入り次第発射できるよう、未確認機に相対する。そして射程内に入る直前に未確認機は
龍騎士達の想像を上回る行為を行った。
「あ!?。未確認機上昇!」
「いかん! 撃て! 撃ちまくれ!」
指揮官がとっさに攻撃命令を下すも、発射された火炎弾は全て当たらず空中に虚しく散った。
未確認機はそのままアルタラス王国に侵入してしまった。
「本部。迎撃は失敗。・・・敵はワイバーン以上の高高度を飛行することで追跡を振り切った」
非現実的な出来事に衝撃を受けつつもなんとか報告を行う。未確認機が飛び去った先には経済都市シルシャリヴァがある。
指揮官は侵入した未確認機が飛竜隊が到達できない位置から都市に対し攻撃を行い、民が殺される様子を思い浮かべた。
●○●○
経済都市シルシャリヴァ
農耕地帯に近いことからアルタラス王国の台所とも呼ばれる経済都市シルシャリヴァ。
食物や肥料の売り子の声、値切り交渉、売り物である家畜の鳴き声等活気に満ち溢れている。
その日もいつものように活発に取引が行われていた。
商人の一人が空から奇妙な音が聞こえることに気付いた。
空を見上げると飛行機械が空を飛んでいた。
「珍しい。ムーの飛行機械が空を飛んでるぞ」
「ほんとだ。何をしてるんだろうか」
人々が釣られて空を見る。近くには龍騎士が飛んでいる。
「いや待て。俺は空港の警備をしているがムーの飛行機械はあんな形ではないぞ」
「新型じゃないのか?」
「いや、乗り入れる飛行機械変えたなんて話は聞いたことがない」
人々が議論するなか、誰かがワイバーンが飛行機械に振り切られていることに気づく。
「あれ? 龍騎士が追跡してるけど全く追い付いてない」
「ほんとだ」
自国の精鋭龍騎士が飛行機械に全然追い付いてないことに困惑する。
「なんだか気味悪いな。仕事に戻ろう」
「そうだな。仕事に戻るぞ。休憩は終わりだ!」
人々はワイバーンが振り切られた事を見なかったことにし仕事を再開した。
○●
二日後の朝
アルタラス王国
王都ル・ブリアス、アテノール城
会議室
「それでは現在までに判ったことを報告いたします」
「うむ」
アテノール城の会議室ではアルタラス国王ターラ14世と各大臣が集まり昨日の未確認機の領空侵犯の詳細の報告を受けていた。各大臣の手元には報告書がまとめてあり
机の上にはアルタラス島西部を描いた地図が置かれている。
まずは飛竜隊総司令官が未確認機の行動について報告を行っていた。
「龍騎士ゴタマが西部海域――――ちょうどこの辺りですね。
そこで哨戒中、西の方角から未確認機を確認しました」
地図上に龍騎士を示す赤い円形の駒と未確認機を示す青い円形の駒を置く。
「龍騎士ゴタマは誘導を行おうとするも未確認機はそれを振りきりアルタラス島へ接近。ゴタマの通報を受けた管制本部は二個飛竜隊を派遣します」
地図上の青い駒を移動させ、青い駒の近くに飛竜隊を示す凸型の赤い駒を二つ置く。
「飛竜隊は未確認機に対し攻撃を行いました。しかし、未確認機は攻撃を回避。高高度に移り飛竜隊を振りきり内陸部へ侵入。農耕地帯と隣接する経済都市シルシャリヴァ上空を通過。
最終的に西部海域へ撤退しました」
飛竜隊の駒をその場に残し、青い駒を農耕地帯、シルシャリヴァ、西部海域の順番に移動させる。
「以上が未確認機の行動になります。次のページをご覧ください」
総司令官の声に資料の紙をめくる。そこには未確認機の詳細な絵が描かれていた。
「龍騎士や市民の目撃情報を元に描いた未確認機の詳細図です。ご覧の通りムーの飛行機械に近い形状ですが、この風車。ムーはこれをプロペラと読んでいますが、ムーが現在我が国との間で運用している飛行機械はこれが四つ着いているもので六つ着いているものは運用していないそうです。また、ムーの戦艦が装備している砲塔のようなものが胴体の上下に二つずつ確認できます。これはムーの飛行機械には確認されておらず軍としてはムーの飛行機械ではないと判断しています。
また、未確認機の行動と航路から偵察の可能性が高いと判断しています。
以上で我々の報告を終わります」
総司令官の報告終了を見計らい、今度は内務大臣が被害報告を行う。
「市民への被害は軽傷者こそ出ていますが、大規模な損壊や重傷者、死者は確認されていません。詳細はお手元の資料に記載されている通り、上空を見ていたことによる転倒や衝突。それによる家畜の暴走等が主な原因となっておりパニックは発生しておりません」
「ふむ。被害がその程度で済んだのは幸いだが・・・。やはり国民は不安に思っているだろうな」
ターラ14世は厳しい顔をしながらそう言う。
「はい。市民はワイバーンの迎撃を簡単に振り切った未知の存在に不安を覚えています」
内務大臣の言葉にターラ14世は眉間にシワを寄せる。
自国の軍隊を遥かに上回る性能を発揮する未知の飛行機械に怯える国民に心を痛めるとともに脳内に王国が蹂躙されるのではないかという不安を覚えた。
「外務省の方で資料を漁ってみましたが、該当する国家は存在しませんでした。ムーの大使にも確認しましたがあちらも混乱しているようです」
「完全に八方塞がりだな」
外務大臣の言葉に内務大臣が呻くように返す。
「ただ、最近の報告で第二文明圏西に第八帝国という新興国家が現れ、第二文明圏全体に宣戦布告。彼らの武器の詳細は分かっておりません。
また、ロデニウス大陸の近辺で未確認飛行物体が確認されたそうですが、
こちらも詳細不明です」
外務大臣の報告に執務室にあきれ声がわずかに響く。
文明圏外の国が文明圏の国に対して宣戦布告することですら大変なことなのに文明圏全体に対して宣戦布告する事は最早無謀を通り越して蛮勇と言わざるを得ない。
「第八帝国とやらは愚かだが・・・こちらに来ようとしても航続距離が足りんだろう。ロデニウスの未確認飛行物体も方角が合わんだろう」
「はい。そういうわけで両方とも白になります」
外務大臣がそう締め括った後軍務大臣が発言する。
「現在西部海域に一個飛竜隊とフリゲート、コルベットを中心とした
艦隊を派遣し常時警戒に当たらせています。
未確認機の目的が情報収集なら向こうの海軍が向かってくるはずです」
「よし。軍は引き続き西部海域に厳重な警戒を行え」
ターラ14世の言葉に軍務大臣が了解の返事をしようとしたとき、会議室のドアが開いた。
「会議中失礼します!」
「どうした?。」
伝令が突然入室し、軍務大臣の近くに寄る。
軍務大臣は顔をしかめながら何があったかを問う。
「軍務大臣。少しお耳を」
「――なに!? それはほんとか!」
軍務大臣の反応に何か衝撃的な事が報告されたらしい。
ターラ14世は軍務大臣に対し聞いた。
「何があった? 申してみよ」
「哨戒中のフリゲート、リガからの緊急連絡です。西部海域に国籍不明船が出現。
国籍不明船が掲げている旗は
昨日の未確認機に記されていたものと酷似しているとのことです!」
一年書いてたわりにストックはあんまりないです。