名もなき英傑の詩   作:惣名阿万

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Prelude

 お待ちしておりました。

 来ていただいてありがとうございます。

 

 実はあなたにお話ししたいことがあるのです。

 少し長くなりますが構いませんか?

 

 

 

 《いいですよ》

 

 

 

 ――ありがとうございます。

 

 お話したいのは私の師匠についてです。

 

 私の師匠はハイラル王家に仕えるシーカー族の宮廷詩人でした。

 

 当時、王家には美しい姫様がおられ、師匠と年齢も近かったそうです。

 気立てがよく、慎ましくも勤勉で、王国に暮らす民へ尽くそうとする姫様は、人々から慕われていました。

 宮廷詩人という立場にあった師匠は、そんな姫様と顔を合わせ、また言葉を交わす機会もあったと言います。

 そしてかなわぬ恋と知りながら、師匠は恋に落ちてしまったのです。

 

 ですが姫様はいつしかお付きの近衛騎士に想いを寄せるようになりました。

 師匠は嫉妬しました。近衛騎士とて貴族や王族ではないのに、と。

 

 そんな時、かの大厄災が起こったのです。

 

 

 

 ……師匠はこの厄災を鎮める勇者が必ず現れると信じて詩を作りました。

 

 この詩はあなたにお聴かせしないといけない詩なのです。

 

 

 

 

 

 

 古の勇者ら 封印せし厄災

 万年の時を経て ついに蘇る

 ハイラルの近衛騎士 己が身をもって

 姫巫女の盾となり 力尽き倒れる

 その騎士を想い 姫巫女の力

 ついに放たれ 厄災を城に封ず

 近衛騎士 回生の祠にて傷を癒し

 永き眠りから目覚めん

 幾多の試練を乗り越え

 力を取り戻せし その騎士

 現世(うつしよ)の勇者となりて 再び厄災に挑み

 姫巫女を 魔の手より奪還す

 勇者と姫巫女 ともに手を取り

 再びハイラルに 光を取り戻さん

 

 

 

 

 

 

 師匠は大厄災の時、真っ先に故郷のカカリコ村に向かって逃げました。

 その途中、偶然体を張って姫様を守った近衛騎士を見たのです。

 

 事の次第を知った師匠は決心しました。

 

 厄災を封印した古の勇者の詩――。

 これを調べていつか戻ってくる近衛騎士に伝えよう、と。

 そして姫様を救っていただきたい、と。

 

 それが私に遺した師匠の最後の言葉でした。

 

 

 

 ……近衛騎士殿、今は亡き師匠の詩、受けていただけますか?

 

 

 

 《わかった》

 

 

 

 ――ありがとうございます。

 

 あなたならきっとそう言っていただけると……。

 

 

 

 姫様はたいそう美しい方だったと、いつも師匠から聞かされていました。

 

 愛おしげに、けれど寂しそうに。

 姫様のことを話す師匠はいつもそんな表情を浮かべていました。

 

 師匠が最期まで気にかけていた姫様……。

 私もぜひお会いして姫様のための詩を作って差し上げたいものです。

 

 長い話に付き合っていただきありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《その人のことを知りたい》

 

 

 

 ――え、師匠についてですか?

 

 ……そうですね。

 

 実を言うと、師匠はあまり自分のことを話してはくれなかったのです。

 

 何か理由があったのだとは思います。

 大厄災から百年もの間、師匠は故郷のカカリコ村に帰ることすらなく、ひたすらに古の勇者について調べていましたから。

 

 名前すら、しばらく師事してようやく教えてもらえたくらいです。

 むやみに教えることのないよう言い聞かされもしました。

 

 ですが、近衛騎士殿にならばお伝えしても構わないでしょう。

 

 師匠が待ち望んだあなたになら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 師匠の名前は――《シーク》といいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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