例えばこんなレジェンド回   作:初手降参

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時系列
ディケイド編とシノビ編の間のつもり


アマゾンズ編
ツヨくてヤバくてコワいパパ2018


──普通の高校生常磐ソウゴ、彼には魔王にして時の王者、オーマジオウとなる運命が待っていた。

彼はこれまでに、ビルド、エグゼイド、フォーゼ、ファイズ、ウィザード、オーズ、鎧武、そしてディケイドの力をその手に収め、その覇道を歩んでいる。

そんな彼の元に現れるのは……ん? 何故、このライダーが……?──

 

 

 

───

 

 

仮面ライダージオウ、常磐ソウゴと仮面ライダーゲイツ、明光院ゲイツ。

二人の仮面ライダー、二人の青年は、ちょうど太陽燦々と降り注ぐ、白昼の公園に足を踏み入れたところだった。

 

 

「こーして、民の平和な様子を見守るのも、王さまの役目だよねー」

 

「ジオウ、何時まで散歩しているつもりだ?」

 

「んー……特に決めてないや」

 

 

そんな風に言いながら。

ソウゴは風の中大きく伸びをして、そうしながら辺りを見回してみる。公園の開けたところ、原っぱの中を子供達が声を上げて走り回って、その中で二、三人の保母らしき人々が揉まれていた。

 

 

「かわいいなぁ」

 

「お前は随分呑気だなジオウ」

 

「ゲイツだって、ちっちゃい子可愛いとか思うでしょ?」

 

「……オーマジオウは、か弱い子供も容赦なく消していった。可愛いとか考える以前に、俺はそれを守らねばならない、としか思っていなかった」

 

「あー」

 

 

二人の間に、一つ気まずい風が吹く。

ソウゴは空気を変えようと別の話題を探して、またキョロキョロと辺りを見回し。

 

吹いていた風に煽られて、ゆっくりと動き出したベビーカーに目を止めた。

さっきの、走り回る子供の中の大人の一人がベビーカーに気づいてすっとんきょうな声を上げる。中に子供がいるらしい。

 

 

「まずい!!」

 

 

瞬間ソウゴは駆け出して、坂を転がり始めるベビーカーを追いかける。追いかけて、追いかけて、しかしどうにも追い付けず。

坂の先にはベンチが一つ、そして池。

 

駄目だ。追い付けない。

 

そう思ったところでふと思い出して、彼は自分の懐に手をやった。引き抜き、手にしたそれを起動する。

 

 

「これなら!!」

 

『スイカアームズ!! ──コダマ!!』

 

 

そして、投げつけた。

投げ出されたそれ、コダマスイカアームズは坂道を転がり、ベビーカーのタイヤに追い付いたところで変形、タイヤをつかんで踏ん張って、ベビーカーを引き留める。

砂煙を上げ、ベビーカーは勢いのまま坂を転がり、ベンチへと進んで……それでも、コダマスイカアームズの力で、ギリギリ池には落ちなかった。

 

後からソウゴが追い付く。

 

 

「ふぅ……ふぅ……ナイスだよ」

 

 

息を切らしてそう言いながらコダマスイカアームズを拾い上げて、ベビーカーの中を見た。

 

赤ちゃんがいた。当然だった。

よかった、と彼は安堵して、坂の上の方で立っている保母に手を振ってみる。向こうも笑顔で振り替えして──その笑顔が、唐突に凍り付いた。

 

 

「え?」

 

 

ソウゴがその視線の先を、追いかけてみる。いや追いかける程の距離は無かった。保母の視線はソウゴのすぐ横、ベンチに縫い付けられていたのだから。

さっきまでは空だったそのベンチに、一人男が座っていた。

ボロ切れを纏った、傷だらけの男だった。

 

 

 

「ありがとうございます!! 本当、貴方がいなければどうなっていたことか!!」

 

「いいのいいの、俺は気にしないで。それより、赤ちゃんは無事?」

 

「はい!!」

 

 

ベビーカーを保母の元に返す。中の赤ん坊は楽しげに笑い、ソウゴは彼に視線を合わせて、指でその頬をつついていた。ぷにぷにとすると気持ちがいい。

 

 

「可愛いね、お子さんのお名前はなんて言うの?」

 

「えーと……千翼です。千翼。……それから、この子は私の子供じゃ、ないんですよね」

 

「え?」

 

 

その声に顔を上げる。

 

 

「この子達、皆、親がいないんです。私達はこの子達を引き取って、新しい家族に会えるまで育てているだけ」

 

「そうだったんだ……じゃあ、千翼くんも?」

 

「はい……理由はよく分かっていませんが、なんでも、望まぬ妊娠だったとか……」

 

「……あー」

 

 

サッと保母の顔が雲って、赤ん坊……千翼も、何となく泣きそうな感じになっていた。

ゲイツがソウゴの後ろまでやってきて、彼の背を叩く。

 

 

「ジオウ、何をしている。黙って聞いていればずけずけと!! 遠慮を弁えろ!! 遠慮を!!」

 

「ああゲイツごめん」

 

「いえ、こちらこそ、変な話をしてすいませんでした」

 

 

それから、お互いに頭を下げた。気まずい雰囲気は直らない。

保母の肩越しに、子供達が無邪気に笑って遊んでいるのが見えた。あれも全部、孤児ということか。親がいないのか。

そこまで思って、何となく気になったことを思い出す。

 

 

「……ところでさ」

 

 

坂の下に振り向けば、ベンチに一人男が座っていた。

 

 

「あの人、誰なの?」

 

 

さっき、目の前の女性はあのボロボロの男に、妙な視線を向けていた。男の方も、そういえばベビーカーを見ていたような気がする。

保母を怖がらせるに足る何かが、あるのだろうか。彼女に聞いてみれば、苦い顔が返ってきた。

 

 

「さぁ……名前は知りません。でも、いつも気づいた時には、私達を見つめているんです」

 

「……ストーカーってこと?」

 

「はい。何もしてきませんし、気づいたらいなくなってるので、私達も手の打ちようがなく……」

 

 

その言葉の消え入るのを聞き届けて、ソウゴは不意に切り出した。

 

 

「じゃあ、俺が話してこよっか」

 

 

と。

 

 

「へ?」

 

「おいジオウ!! こういう揉め事に首を突っ込むのはよせ!! デリケートなんだぞ!!」

 

 

坂の方に向き直るソウゴの肩をゲイツがむんずとひっ掴む。止めろ、それは止めろと彼を引き留める。しかしソウゴは飄々とした感じにそれを振り払い、一歩坂へと踏み出した。

 

 

「まあまあ、いい王様はトラブル解決もしなくちゃいけないし? なんか、行ける気がする!!」

 

「ジオウ!! こら、ジオウ!!」

 

 

また一歩、ソウゴは坂を降りていく。ゲイツはどうにか彼を止めようとソウゴを追いかけて。

 

刹那。

 

公園に、子供達の甲高い悲鳴がこだました。

 

 

「──!!」

 

 

二人は振り向く。悲鳴の元は、さっきまで戯れていた孤児達の向こう。

真っ青で、全身を拘束具で縛られたような、筋骨粒々とした怪物がそこにいた。それは近くの木々、時計、自販機を凪ぎ払い、公園を破壊しながら子供達へと近づいていく。

ソウゴとゲイツは視線を交わして、同時にジクウドライバーを取り出した。

 

 

「あれは、アナザーライダー!?」

 

「取り合えず、皆を守らないと!!」

 

『ジオウ!!』

 

『ゲイツ!!』

 

「「変身!!」」

 

 

走り出す。もちろん、アナザーライダーらしき怪物に向かって。二人の回りに光が現れ、各々のアーマーを形成する。

 

 

『『ライダータイム!!』』

 

『仮面ライダージオウ!!』

 

『仮面ライダーゲイツ!!』

 

 

そして、同時に拳をアナザーライダーに叩き込んだ。

 

 

「「はあああっ!!」」

 

   グシャッ

 

「███ █████!!」

 

 

アナザーライダーはその鳩尾に拳を受けて、呻きながらよろめき、しかしすぐに立ち直ってジオウとゲイツを殴り返す。

たった一撃、アナザーライダーの拳一発で、二人のライダーは遠くまで吹き飛ばされた。

 

 

「いったぁ!!」

 

 

砂煙の中、ジオウは裾を払いながら立ち上がる。ゲイツは肩を払いながらアナザーライダーを見据え、その手に武器を呼び出した。

 

 

「なんてパワーだ……近距離戦は分が悪いか。ここは遠距離から行くぞ」

 

『ジカンザックス!! ゆみ!!』

 

「分かった!!」

 

『ジカンギレード!! ジュウ!!』

 

 

ゲイツが弓、ジオウが銃を構える。そして二人は二手に別れながらアナザーライダーを攻撃し、ジオウが敵の前方、ゲイツが後方に回り込んだ。

ゲイツが目を凝らせば、アナザーライダーの背中に文字が刻んである。

 

 

「ゲイツ!! 文字!! 文字読める!?」

 

 

その文字は。

 

 

「っ──NEO、2017だ!!」

 

「ネオ!?」

 

 

ネオ。

これまでの法則に従えば、それが仮面ライダーの名前のはずだ。だがゲイツは考える。仮面ライダーネオ──そんなもののライドウォッチ、オーマジオウは持っていなかったはずなのに。

 

再び視線を戻せば、アナザーライダーはジオウに撃たれながら、それでも怯まずに徐々に近づいているようにも見えた。

 

 

『エグゼイド!! スレスレシューティング!!』

 

「これでどうだ!!」

 

 

ジオウが構えた銃の先端に、真っ赤な拳型のエネルギーが収束され、眼前の敵へと打ち出される。しかしアナザーライダーは全く構わずにジオウへと駆け込んで、そのエネルギーの塊を凪ぎ払い、ジオウの胸元を殴りつけた。

 

 

「██ ████ ████!!」

 

   グシャッ

 

「っああっ!!」

 

 

クリーンヒット。もろにダメージを受けたジオウはさっきよりも大きく吹き飛ばされ、坂道をゴロゴロと転がり落ちる。

どうにか地面にしがみついて止まった時には、もう彼の変身は解けていた。

 

 

「ああもう凄い力だなこいつ!!」

 

 

坂の上を仰ぐ。ゲイツが斧にしたジカンザックスでアナザーライダーに立ち向かっていたが、しかし力負けしているのが見えた。

これはまずい。逃げるべきか。ソウゴはよろよろと立ち上がりながらそう考えを巡らせ。

そして、坂の下から上がってくる足音に気がついた。

 

 

「──おい」

 

 

その方向から、声がした。

ソウゴが振り返ってみれば。

 

さっきのボロボロのストーカーが、立っていた。

 

 

「あの!! こっちは危ないよ!! 逃げて!?」

 

「退いてな」

 

 

男はそう言いながらソウゴの横を抜けて坂道を上がっていく。何故か彼は右手に卵を持っていて、無造作にそれを、左手のベルトのようなものに叩きつけていた。

 

 

「……何してんの?」

 

 

ソウゴの声に返事はなく。代わりに男は坂を登りながら、卵から溢れ落ちる生の卵黄を飲み下す。

 

 

「ああもう何やってんの!! 早く!! 逃げて!!」

 

 

もう一度ソウゴが呼び止めてもやはり反応はない。代わりに、変身の解けたゲイツがソウゴと同じところまで転がり落ちてきた。

 

 

「ああゲイツ!!」

 

「ジオウ──おい、あいつはなんだ?」

 

「わかんない!!」

 

 

二人で坂の上を仰ぐ。ずっと上の、アナザーライダーを。そしてその手前の、謎の男を。

男は生卵の殻を近くに投げ捨てて、そうしながら、卵を割るのに使っていたベルトを、腰に巻き付けた。

そして、そのベルトに触れる。

 

 

『ALPHA』

 

「──アマゾン」

 

 

ソウゴとゲイツは、同時に、その声が男から漏れるのを聞いた。

 

瞬間辺りを、熱と衝撃波が掻き乱す。アナザーライダーも、ソウゴとゲイツも吹き飛ばされ、辺りの草に火がついた。

 

 

『Blood&Wild!! W-W-W-Wild!!』

 

 

そして、その爆心地。ボロを纏っていた男の姿は。

 

真っ赤な、傷だらけの異形に変身していた。

 

 

「……仮面ライダー!?」

 

 

赤い異形と青い異形。一瞬だけ視線を交錯させた二体の怪物は直ぐ様互いに殺意を向けあい、拳を交えていた。

荒々しい青い怪物の攻撃を理性的に往なす赤い怪物は、そうしながらアナザーライダーに攻撃を重ねていく。

 

ソウゴとゲイツはそれを見上げるばかり。

そこにウォズとツクヨミが駆けつけてくる。

 

 

「我が魔王!!」

 

「ああウォズ!! ツクヨミ!! これ何がどうなってんの!?」

 

「あれも、仮面ライダーなのか?」

 

 

四人の視線は坂の上。青いアナザーライダーの首を腕の刃で斬り裂いている赤いライダーに注がれていた。コンクリートの地面に赤い染みがいくつも出来ていた。生臭い臭いがツンとしてきて、彼らは顔をしかめていた。あれは誰だ。……ウォズには心当たりがあった。

 

 

「あれは……まさか、アマゾンアルファ……?」

 

「知っているのかウォズ!!」

 

「仮面ライダーアマゾンアルファ──人喰いの怪物アマゾンと戦った仮面ライダー。そして……本来、我が魔王の覇道には現れる筈ではなかった存在だ」

 

 

仮面ライダーアマゾンアルファ。そう言う名前らしい。

 

 

「我が魔王、あのアナザーライダーが何のライダーなのか、手懸かりは?」

 

「えーと、ネオ、2017!!」

 

「2017年……ネオ……なるほど、そういうことか。あれは仮面ライダーアマゾンネオのアナザーライダー……アナザーアマゾンネオ、ということらしい」

 

 

見上げてみれば、アマゾンアルファがその右腕を大きく振り上げて、アナザーアマゾンネオに降り下ろす最中だった。大振りな一撃はいかにも勢いが強く、きっと食らえば致命傷だろう。

 

 

『VIOLENT SLASH』

 

「█████ █!!」

 

 

しかしその刹那、アナザーアマゾンネオはその体の全身から針を伸ばし、空中のアマゾンアルファを捉えた。

刺し貫かれたアマゾンアルファは空中に縫い付けられ、針が消滅するのに合わせて墜落する。

 

 

「っ──」ドサッ

 

「████!!」

 

 

そしてアナザーアマゾンネオは、動けずにいるアマゾンアルファから逃げ出した。アマゾンアルファの体から煙が立ち上って、気づけばその姿は元の人形に戻っていた。

 

 

「……俺の腕も、鈍ったか」

 

 

───

 

 

「いやーソウゴ君今日はまたワイルドなお客さん、連れてきたねぇ!!」

 

 

それからしばらくして。

クジゴジ堂の一室にソウゴらは戻ってきていた。

 

 

「おじさん丁度いい鶏肉が入ったから、今日は手作りのローストチキンなんだよー、はい、どうぞお客さん、ごゆっくり♪」

 

 

一人の来客と共に。

当然その来客とは、さっきまでアナザーライダーと交戦していた仮面ライダーアマゾンアルファ……らしい男だった。

 

 

「……」ガブッ

 

「おお、ワイルドな食べっぷり」

 

 

ソウゴやツクヨミの目を気にすることもなく鶏モモ肉にかじりつき、タンパク質を補充するその男はまさしく飢えた獣のようで、さっきのアナザーライダーとの血みどろの戦いを思い出させた。

ツクヨミとゲイツは何度か話しかけようとしてみたが、肉にかじりつく様子を見るとどうにも気圧されて話しかけられず。結局、話を切り出したのはソウゴだった。

 

 

「ねぇ、話聞かせてよ……仮面ライダー、アマゾンアルファさん?」

 

「……生憎だが手がかりにはならんかもな、俺も俺で、今の状況がよく分かってない」

 

 

三本目のチキンに手をかけながら、男はそう言った。一口かじりついて、肉を引き裂き、飲み込んで、彼はぽつりと話し始める。

 

 

「俺は鷹山仁。アマゾンだ」

 

「アマゾン……」

 

 

ツクヨミは手元のタブレット端末に、二年前の週刊誌の記事を写し出す。『野座間製薬』『アマゾン』の文字が躍る、凄惨な事件について書かれていた。彼女はその画面を仁に差し出す。仁はまたチキンをかじりながら、その文面を流し読みした。

 

 

「……二年前に大量殺人事件を起こした、あの?」

 

「そうだなー。あいつらは俺が作って、俺が殺した」

 

「作って、殺した?」

 

「ああ。俺は元々、アマゾンの細胞を作る研究をしてた。すげー大変だったけどな、成功した時はもう、嬉しかったんだ」

 

 

そして彼は、骨だけになったチキンの残骸をゴミ箱に棄てた。

 

 

「でもそれは危険なバケモンだった。人を襲う、な。だから、俺が責任を持って殺したんだ。アマゾンになって」

 

「じゃあ、アマゾンを殺すために、アマゾンになったということか」

 

 

ゲイツが聞けば、仁はただ頷いた。ソウゴは四本目のチキンに手を伸ばす彼に、あのアナザーライダー……アナザーアマゾンネオについて聞いてみる。同じアマゾンの名を持つなら、何か知っているんじゃないか、と。

 

 

「じゃあ、あのアマゾンネオって何だかわかる? 関係は?」

 

 

その問いに、仁は目を細めた。

 

 

「……俺の息子なんだなぁ、これが」

 

「息子!? 子供いたの!?」

 

「ああ。名前は……千翼だ」

 

 

千翼。

その名前に引っ掛かるものがあって、ソウゴは首を傾げる。どこかで聞いたような……その違和感は、すぐに解決した。

 

 

「──それってもしかして」

 

「ああ。あの、さっきの赤ん坊だ」

 

 

あの、ベビーカーに乗っていた孤児。あれが、本来の歴史のアマゾンネオだったらしい。

 

 

「うそ、あんな赤ちゃんが……」

 

「アマゾン細胞が成長を早めたのさ。あいつが俺の息子で、アマゾンだった。俺と七羽さんの子供で、新種のアマゾンのオリジナルで……俺が殺したはずだった」

 

「……だった、か」

 

「歴史が消えたから、殺された歴史もなくなった……」

 

 

もう、テーブルのチキンはなくなっていた。仁はもの足りなさげにテーブルの上を見渡して、ゲイツの皿の上のウインナーをつまんで口に投げ入れた。

 

 

「それにしてもさぁ、一つおかしなことがあってな」

 

「おかしなこと?」

 

「俺も、死んだはずなんだよ」

 

 

それからそう言った。

 

 

「……どういうことだ」

 

「千翼を殺してから、別のアマゾンと戦って、俺も死んだ。……と思っていたんだよ。なのに、なーぜか俺、二年も辺りをフラついてたことになってんだな」

 

「それってつまり、仁の歴史も消えてるってこと?」

 

「でも、変身する力が残ってるのに歴史が消えるなんて、ありえる?」

 

 

ソウゴ、ゲイツ、ツクヨミが顔を見合わせる。三秒ほど顔を突き合わせて、『この面子じゃよく分からない』ことが分かった。

ソウゴは振り向いて、誰もいない玄関口に声をかける。

 

 

「ウォズ、聞いてたよね? どういうことだかわかる?」

 

 

そう言い終えるか終えないかのうちに、そこにはウォズが現れていた。

 

 

「まったく、簡単に呼びつけて」

 

「いいじゃんいいじゃん、取り合えずホラ、ウォズならなんか分からない?」

 

「まあ、予測はつくが」

 

 

ウォズはそう切り出して、部屋を見回しながら続ける。

 

 

「アマゾンアルファとアマゾンネオ……父親と息子、怪物と怪物、狩った者と狩られた者。二人の異なる時代に生まれた仮面ライダーの歴史は密接に絡み合っていた。その中の片方の歴史が奪われたことによって、もう片方の歴史にも異変が生じたのだろう」

 

「歴史の異変、か……」

 

「恐らく、二人ともに関わった人間の歴史には、大なり小なり異変が起こっているはずだ」

 

 

その異変が、仁の生存ということなのだろう。きっと千翼の母親にも影響があったのだろうし、他の面子の歴史も狂っている。

 

 

「難しいことはよくわかんないけど……じゃあ取り合えず、仮面ライダーアマゾンネオのウォッチを探せばいいんだよね?」

 

 

ソウゴがそう言ってみれば、ウォズは静かに首を振った。

 

 

「残念だがそれは難しいだろう、我が魔王」

 

「なんで?」

 

「仮面ライダーアマゾンネオは、アマゾン細胞の力で急激に成長した一歳児の青年が力を手にしたものだ。アマゾンネオの歴史がアマゾン細胞と共に失われた以上、現在の歴史でアマゾンネオはまだ赤ん坊だ。君が見たようにね。ウォッチを持っているとは思えない」

 

「あー……」

 

 

ライドウォッチは、本来の仮面ライダーが持てば無条件に発生するものではない。本来の仮面ライダーの、その力、精神までが持ち主に備わって、初めてライドウォッチとなるのだ。例え持ち主が同じでも、赤ん坊ではウォッチは作れない。

ソウゴは頭を抱えて考え込んで、そして唐突に閃いた。

 

 

「じゃあさ、一度アナザーライダーを倒せば、その瞬間に歴史は戻るじゃん? その、歴史が戻っている間の一瞬で元の時代の千翼くんに接触すればいいんじゃない?」

 

「そうすれば、アマゾンネオライドウォッチが手に入るということか」

 

「そ。そういうこと」

 

 

そう言いつつ、彼は部屋を見渡す。ゲイツもツクヨミも、ウォズも仁も特に異論は無さげであった。

 

 

「じゃ、取り合えずアナザーアマゾンネオを探さないとね。行くよ皆!!」

 

 

───

 

 

時を同じくして、ウールはとあるビルの屋上にいた。視線の先、ビルの縁ではスウォルツが手すりにもたれていた。

 

 

「ねぇスウォルツ、何なのあのアナザーライダー? すごい不気味なんだけど」

 

 

そう呼び掛けてみれば、スウォルツは気だるげにウールに振り返る。そして、彼を軽く鼻で笑ってから、何でもなさげに声を上げた。

 

 

「今のままだと、オーマジオウへの未来を覆せない。だから、変わり種を用意しただけだ。簡単には倒せない、変わり種をな」

 

「ふーん……」

 

 

ウールは、分かったような分からないような、そんな顔をしてスウォルツに背を向ける。風が吹いていた。

 

 

「ああそれとウール」

 

「なんだい?」

 

「今日は、特に念入りに手洗いとうがいをしっかりとしておくことだな。病気になりたくなかったら」

 

「……はいはい」

 

 

───

 

 

「……ほんとにここにアナザーライダーが来るの?」

 

 

さて、クジゴジ堂を出た一行はと言えば。

孤児院の塀の向こう、茂みの影に隠れて、中の子供らをこっそりと監視していた。ソウゴは仁と並んで、施設の軒下、ベビーカーの中の千翼らしき乳児を見つめている。

 

 

「ああ。俺が見る限り、奴はここの施設を──千翼を狙って現れる。まあ俺に気づくと、何をするでもなく逃げるんだがな……俺は何度も奴を追っていたから間違いない」

 

「だからずっと、あの施設のストーカーをしてたんだ」

 

「……そういうことになるか」

 

 

アナザーアマゾンネオにとって、やはりオリジナルのアマゾンネオは惹かれるものがあるのだろうか。とにかくソウゴは仁の言葉を信じた。信じて、また孤児院の中を見た。

ゲイツとツクヨミ、ウォズもまたソウゴの隣にいて、孤児院の中を覗いていた。

 

ゲイツは孤児院の中、ちろちろと走り回る子供らを眺めながら、同じように孤児院に張り込む仁の横顔にも何度か目をやっていた。そしてその横顔に、恐る恐る声をかける。

 

 

「なあ、鷹山仁」

 

「ん?」

 

「……お前にとって、アマゾンとは何だ?」

 

 

そう問いを投げた。

仁はその言葉をしっかりと聞き届けていたが。

 

 

「……わざわざ言うまでもない」

 

 

ぶっきらぼうにそう返すだけだった。

そうしてから、すぐのことだ。……アナザーアマゾンネオらしき怪物が、孤児院の屋根から現れて子供達でいっぱいの庭に飛び降りたのは。

 

 

「██████!!」

 

 

蜘蛛の子を散らすように逃げ回る子供達の中、庭で一際大きく吼えるアナザーアマゾンネオ。ソウゴ達は孤児院の塀を飛び越えて、その異形の体躯に対峙する。

 

 

「来たか……アナザーアマゾンネオ」

 

「本当に読み通りだったらしいな。ツクヨミ、子供達の避難を」

 

「ウォズもお願い!!」

 

 

そう言いながらソウゴとゲイツはジクウドライバーを。そして仁は、アマゾンズドライバーを装着した。唸る獣はその姿に敵意と、ほんの少しの怯えを漏らす。

 

 

「行くよ。ここで倒して、すぐに2017年に向かう」

 

「ああ」

 

『ジオウ!!』

 

『ゲイツ!!』

 

『ALPHA』

 

「「変身!!」」

 

「──アマゾン」

 

 

空中に文字と煙が飛び交って。

そして三人の姿は、仮面ライダーへと変貌した。ジオウ。ゲイツ。アマゾンアルファ。

 

 

「████ ██████ █ █!!」

 

「……狩りの時間だ」

 

 

いの一番に飛び込んだのはアマゾンアルファ。その腕でアナザーアマゾンネオの肉を切り裂き、よろけたところに足裏を喰らわせる。しかし相手もただでやられる訳もなく、攻撃を受けながらも確かに反撃を行っていた。

そんな二人を中心にして、ジオウとゲイツはアナザーアマゾンネオの背後に回り込む。ジオウのドライバーにはディケイドウォッチ、ゲイツのドライバーにはウィザードウォッチが差し込まれていた。

 

 

『『アーマータイム!!』』

 

『ディケイディケイ!! ディケイド!!』

 

『プリーズ──ウィザード!!』

 

 

そして、二人のライダーが鎧を纏う。ジオウはライドヘイセイバーを、ゲイツはジカンザックスをその手に取り、アマゾンアルファと殴りあうアナザーアマゾンネオの両肩に狙いを絞って。

 

 

『ヘイ!! エグゼイド!!』

 

『5・4・3・2・1──』

 

「同時に行くぞジオウ!!」

 

「わかってるって!!」

 

『キラキラ射ち!!』

 

『エグゼイド!! デュアルタイムブレイク!!』

 

 

そして、ゲイツの手元から炎の矢が、ジオウの剣先から光の斬撃が打ち出される。アマゾンアルファはそれを見てアナザーアマゾンネオを蹴り飛ばし、直後アナザーライダーはその胸元を射ぬかれ、切り裂かれた。

 

 

「█████ █ ███!!」

 

 

膝をつくアナザーアマゾンネオ。その隙をアマゾンアルファが逃すはずもなく、彼はドライバーのグリップを捻る。

 

 

『VIOLENT SLASH』

 

「今度こそ、逃がさない」

 

 

そしてその手は、アナザーライダーの腹を貫いた。

 

 

   グシャッ

 

「███ ███──」

 

「……」

 

「うわぁ、えっぐー……」

 

 

絶句するジオウとゲイツを横目に、アマゾンアルファはその手を引き抜いた。アナザーアマゾンネオは崩れ落ち、直後爆散する。炎の影の中アマゾンアルファはその手を払って、炎の中に目を凝らし──その、炎の中の姿に絶句した。

 

 

「……七羽さん?」

 

 

炎の中にいた人は。

アナザーライダーだった人は。

 

泉七羽。──千翼の母親だった。

 

アマゾンアルファはその横たわる姿に駆け寄り、ぐったりとした体を抱き上げる。

遠巻きに見ているジオウとゲイツには何が何だかわからず、辺りを見回した。ツクヨミとウォズを探してのことだ。そうした二人は……すぐに違和感に気がついた。

 

なんだか、血の臭いがする。

 

 

「……ゲイツ!! あれ!!」

 

 

ジオウが指を指した。その先は孤児院の一画。逃げ回っていた子供達をツクヨミとウォズが守っていたはずの場所。

 

そこに。

 

黒々とした血にまみれた、怪物達が蠢いていた。

 

 

「なんだあれは!? まさか……アナザーアマゾンネオを倒しきれていなかったのか!?」

 

「いや、仁が確実に倒したよ、取り合えずは!!」

 

「じゃああれは何なんだ!!」

 

 

怪物。その姿はドロドロとして生々しく、どこかアナザーアマゾンネオを思わせた。だがアナザーアマゾンネオは、さっきアマゾンアルファが倒したはずなのに。今アマゾンアルファが、確かにアナザーライダーの変身者を抱き上げているのに。

 

蠢く怪物の中に、一人、人の姿があった。アマゾンではなく、しかしただの人のようでもなく。

それはただ、炎の中のアマゾンアルファを見据えていた。その肩は震えていた。

 

 

「あれが……あれが、『仮面ライダーアマゾンネオ』だった歴史の千翼だよ、我が魔王」

 

 

いつの間にかジオウの隣に戻っていたウォズがそう告げる。

あれが、仮面ライダーアマゾンネオだ、と。

ジオウはそれを見つめていた。ゲイツも見つめていた。アマゾンアルファも……彼の姿を確認して、立ち上がっていた。

 

その青年は。アナザーライダーが倒され、歴史を取り戻した、父親に殺されたはずの青年は。

その腰に、ドライバーを──ネオアマゾンズドライバーを装着する。

 

 

『NEO』

 

「……アマゾン!!」

 




次回、仮面ライダージオウ!!


「俺は……生きたい。生きたいんだ」

「何故奴が生きている? 鷹山仁が殺したんじゃなかったのか」

喰うか喰われるか──

「あの怪物は止まらない」

「もう、君は殺されなくていいんだ!!」

──それとも、別の道か

「俺は、お前が大好きだ」


   『ほしがふるころ2017』
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