気がつくと知らない部屋のベッドで寝ていた。
「・・・・・・ここはどこだ? 俺は確かリザードマン達と戦って・・・・・・」
身体を起こしながら何があったか思い出した。ボロボロになりながらログと戦って戦い終わった後、気絶して、その後誰かが運んできてくれたのだろうか。
さて、これからどうしようか。ベッドから降りて、部屋の中を見渡す。
「あっ、勇者様お目覚めになりましたか? おはようございます」
すると、部屋のドアが開いて村長さんのお孫さんがトレーを持って部屋の中に入ってきた。
勇者って俺の事か?
「ええと、おはようございます。勇者って俺の事ですか?」
「はい! 伝説に出てくる勇者のようでしたので・・・・・・ご迷惑でしたか?」
理由を聞くと困った風に応える女の子。いや、迷惑じゃないけどね。俺には不釣り合いというか。
「いえ、そんな迷惑ではないです・・・・・・」
ちょっと恥ずかしい感じがする・・・・・・
頬を掻いていると、グーッと腹が鳴った。そういえば、家を出てから何も食べてなかったな・・・・・・
「勇者様、簡単な物ですが、食事を作りました。どうか、食べてください」
村長さんのお孫さんは微笑みながら手に持っていたトレーをテーブルの上に置く。
「ありがとうございます。いただきます・・・・・・その前にあなたの名前を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
ご飯を食べる前に名前を聞いておくことにした。名前を知ってたほうが話しやすいからね。
「申し遅れました。私の名前はレナ・ドーチ。よろしくお願いします。勇者様」
「よろしくおねがいします。俺の名前は御劔龍馬といいます。御劔が姓で龍馬が名前です」
お互い自己紹介をする。レナさんっていうのか・・・・・・良い名前だな。
「御劔龍馬様ですか・・・・・・姓が先と言うことは龍馬様は最薙の国のご出身ですか?」
俺の名前を聞いて気になったのか、出身地を聞いてくる。最薙の国って国があるのか。
恐らく、日本に当たる国なんだろうか。
「いえ、たぶん違う国ですね」
「そうですか・・・・・・あ、すいません。ご飯が冷めてしまいますね。どうか、お食べください」
「こっちらこそすいません、話しかけたのは俺なのに気を遣わせてしまって。いただきます」
俺は椅子に座り、ご飯をいただく。
レナさんが用意してくれたご飯のメニューは柔らかそうなパンに、野菜をじっくり煮込んだスープにこんがり焼いた魚の塩焼き。どれも美味しそうだ。
まずは柔らかそうなパンから・・・・・・おおっふかふかでうまい! じゃあ、今度はスープを飲もう。
スープをスプーンで掬って一口飲む。うん、あっさりしていて飲みやすい。
次は魚の塩焼きをいただこう。うん、塩加減が良い感じでしかも、食べる人のことを考えて骨を取り除いていてくれて食べやすい。
異世界のご飯はまずいってよく言うけど、そんなこと無かったな。
俺は無我夢中でご飯を食べる。そして十分後、全て完食した。
「ごちそうさまでした! とても美味しかったです。ありがとうございます」
俺は手を合わせてレナさんにお礼を言う。
「ありがとうございます。では、食器をお下げしますね。あと、村長と騎士団長様をお呼びしてもよろしいでしょうか? 龍馬様と話しがしたいと起きるのを待っていたので」
騎士団長? 今、騎士団が来ているんだこの村に。いや、普通来るか。リザードマンに襲われたんだし。調査に来るだろう。
「そうなんですか。分かりました。お願いします。俺も色々と話したいことがあったので」
村長さんと騎士団長さん二人もまたせてたのか悪いことしたかな・・・・・・何か申し訳ない。
「では少し、お待ちください」
レナさんは食器を下げて部屋を出て行く。
しかし、騎士団長か・・・・・・どんな人だろうかやはり歴戦の戦士みたいな感じなのかな。怖い人じゃないと良いな・・・・・・
考え事をしているとドアをノックする音が聞こえた。あっ、きたのかな?
「龍馬様、村長と騎士団長様をお連れしました」
「ありがとうございます」
そういうと、レナさんが部屋に入ってその後、村長さんがはいってきた。その後に騎士団長さんと思わしき人が入って来た。
その人はすらりと背が高く、さらさらな金色の髪に青い瞳に綺麗な顔。きっちりとした鎧を身に纏った綺麗な女性だった。
俺は思わず彼女に見ほれていた。
「うん? どうしたんだい? 私の顔に何かついているのか?」
「あ、いえ・・・・・・とてもお綺麗だなと思ったので」
「ふふっ、ありがとう。だが意外だっただろう。女性が団長で。父や兄にも女なのだからお淑やかにしなさいとかよく言われる」
「いえ、そんなことないと思います。女性が騎士団長になるのは大変で、かなり努力をしたんだろうなと思います」
俺がいた世界では女性が管理職になったりするのは珍しくないけど、この世界ではそうではないのかな?
「そうか。ありがとう。あまり、褒められたことはなくて少し恥ずかしいかな」
騎士団長さんはふふと微笑んだ。
その笑顔に俺はどきっとした。やっぱりすごく綺麗だ。
「む~」
騎士団長さんの笑顔にときめいているとレナさんが何故かむくれている。何でだろう・・・・・・もしかして俺の事が好きで嫉妬してるのかな? いや、そんな惚れることはしてないよな・・・・・・
「ああ、そうだすまない。名乗るのが遅れてしまった。私の名はエリス・クロスフォード。クロスフォード騎士団の騎士団長をしている。よろしく頼む」
「よろしくお願いします。俺の名前は御劔龍馬です。姓が先で名前が後です」
取りあえずお互い自己紹介する。
エリスさんって言うんだ。良い名前だな~
「姓が先・・・・・・ということは君は最薙の国の出身か?」
「あ、いえ、違います。違う国の出身です」
エリスさんも俺の名前を聞いて最薙の国の出身と勘違いする。最薙の国ってどんな国なんだろう。
「そうだったのかすまない」
「いえいえ、気にしないでください」
「すまない。それとお礼を言わせてくれ。領民を救ってくれてありがとう。騎士団長として、領主の娘として。君が居なければこの村は全滅していただろう」
そう言ってエリスさんは俺に向かって頭を下げた。
「ちょっ、エリスさん頭を上げてください! 俺はただ偶然通りかかっただけで・・・・・・それに領主の娘?」
「ああ、知らなかったのか。私の家、クロスフォード家は貴族の家でこの辺の村や町を領地として治めているのだ。そして、騎士として領民達を守ってきたのだ。最近、モンスターが凶暴化していてね。それでパトロールをしていたんだが、リザードマンが村を襲撃していることを知ったの。村にいる戦える者が何とか追い返したみたいなんだけど、ドーチ村には戦える若者が町で農産物を売りに行っていて危ない状態だと知って慌ててこの村にやってきたというわけ」
「そうだったんですか・・・・・・それで村に来てみたら俺が倒れていたと?」
「そうだね。村が危ないと急いで来てみたらリザードマンはすでに倒されていて、ボロボロの君が倒れていて何があったんだと思ったよ。村長さん達に事情を聞いて驚いたよ。君が突然、村に現れて鎧を纏ってリザードマン達を一人で倒したと聞かされたからね。君のおかげでこの村は救われたんだ」
エリスさんの話を聞いて何で村に戦える人がいなかったのか分かった。町に行ってるところを襲撃されたのか・・・・・・それでも何人か残しておいた方が良かったんじゃないかな。
「いえそんな、大した事はしてないですよ・・・・・・俺は救えなかったんですから。俺ががもう少し早くこの村に来ていたらもっと助けられたはずなのに・・・・・・俺、躊躇してしまったんです。今まで戦ったことが無くて、戦ったことがない素人の俺がいっても邪魔になるだけじゃないのか? どんな奴が襲ってるのか分からなかったし、行っても負けたらどうしようって怖くなって躊躇ってしまったんです。それで救えなかった人達が居たんです。俺はお礼を言われるような男じゃないです」
俺は拳を強く握りしめた。救えなかったことが悔しかった。ヒーローの力があったのに俺は救えなかったんだ・・・・・・
「そうか君は村人を全員救えなかったことを後悔しているのか・・・・・・あまり、思い上がらない方が良い」
「えっ?」
「君のことは殆ど知らないし、どれぐらい強いのかも分からない。だが、君も私も人間だ。人間は神と違って完璧ではない。救えない命だってある。我々がすることは救えなかったことを引きずるのではなく、これ以上犠牲者を出さないことじゃないのか?」
「それは・・・・・・」
エリスさんに指摘されて俺は言い返せなくなってうつむいてしまった。確かにエリスさんの言うとおりだ。ずっと後悔していても前には進めない。
すると、レナさんが俺の手を握ってきた。
「っ! レ、レナさん?」
レナさんの突然の行動に戸惑ってしまう。顔を上げるとレナさんは涙を浮かべていた。
「そんな、自分を責めないでください・・・・・・龍馬さんがいたから私達は助かったんです。それに龍馬さんがお父さん達の敵を取ってくれたんです。ありがとうございます」
「レナさん・・・・・・俺は・・・・・・くっ、ああああっ!」
涙を浮かべながらレナさんは俺の事を励ましてくれた。俺は崩れ落ちて泣いた。
家族を失って辛いはずなのに俺を慰めてくれたなんて・・・・・・もう、誰かが泣くところは見たくない。だから強くなりたい。守りたい人を守れるために強くなるんだ!
「す、すいません、お見苦しいところをお見せして・・・・・・」
数分後、泣き止んだ俺は恥ずかしさで顔を赤くしながらエリスさん達に謝る。
「いや、気にしないで欲しい。誰だって泣きたいときはあるさ」
エリスさんは苦笑いしている。気にしないでって言われても恥ずかしいんだよな・・・・・・
取りあえず俺達はテーブルで向かい合い椅子に座った。
「さて、君に渡す物がある」
エリスさんは何かが入った袋を渡してきた。何だろうコレ?
「その袋には金貨が二十枚入っている。この村を救ってくれたお礼だ。受け取ってくれないか?」
「金貨二十枚!?」
俺は渡された金額がよく分からなくてリアクションできなかったけど、レナさんの反応からしてかなりの金額なのだろう。
「すいません、こんなにいただけません」
俺は渡された金貨の袋をエリスさんに返す。元々、お礼が欲しくて村の人達を助けたわけではないから貰わなくても良いし。
「どうしてかな?」
「元々、俺はお礼が欲しくてこの村の人達を助けたわけではないので・・・・・・だからいらないです」
「ふむ、なら何のためにこの村の人達を助けたんだ?」
お礼がいらないことを不思議がって理由を聞かれる。理由は・・・・・・ないな。
「可笑しいと思われるかもしれませんが、声が聞こえたんです。助けを求める声が。不思議に思って迷いましたけど、助けたいと思った。だから助けました。理由なんてそれで十分です」
突然聞こえた助けを求めた声。あの声が俺をこの村に導いたんだ。
「声が聞こえた・・・・・・か。面白いな君は、気に入った!」
うんうんと頷いてエリスさんは微笑む。気に入ってもらえたんだ。
「なおさらこのお金を受け取ってもらいたいのだが・・・・・・」
「ええと、あっ、なら、そのお金はこの村の復興のために使ってください。さっきの戦いで建物をいくつ壊してしまいましたし!」
それでもお金を渡そうとするエリスさんにどうした物かと考えると、俺は戦って建物を壊したことを思い出した。俺が壊した物を直すのにお金が必要になるだろうし、それに使って貰おう。我ながら良いアイディア。
「そのことなんだが・・・・・・君の壊した建物はすでに直っている」
「えっ?」
俺はエリスさんの言ってることが理解できなかった。すでに直っている? いくら何でも早くないか?
「嘘だろ・・・・・・」
エリスさんの言っていたことが信じられなかったから外に出て確認してみたら、俺が吹き飛ばされて崩れた家が直っていた。一体どうなっているんだ?
「村人達の話しでは君が倒れたあと壊れた建物が時間が巻き戻るように建物が直ったらしいんだ。何でそうなったのか誰も分からないみたいだ」
「そうだったんですか・・・・・・何でですかね」
「分からんが・・・・・・神様か何かの奇跡だと思いたいね。それで君はこれからどうするんだい? どこで何をするんだ?」
時間が巻き戻るように建物が直るって魔法かと思ったけど、違うのか。
これからどうするか・・・・・・何も考えてなかった。
「そうですね・・・・・・どうしましょう」
「そうか。冒険者になるのはどうだろうか。私達の本拠地がある町なら冒険者ギルドもある」
どうしようか考えていると、エリスさんが提案してくれる。冒険者か・・・・・・良いかもしれないな。この世界に来た理由や目的を探してみる時間も作れるだろうし。
「そうですね・・・・・・なら冒険者になります」
「そうか、それならなおさらこのお金が必要だろう。宿に泊まるためだったり、アイテムを買うにもお金は必要だからね」
「はい、すいません。ありがたく頂戴します」
もうこれ以上断ってもエリスさんは折れないだろうと諦めてお金を受けると事にした・・・・・・何か情けないな。
「うむ、受け取ってくれたか。それでこれから十名ほど残して我々は本拠地に戻る予定なのだが、一緒に町に行かないか?」
「そうですね・・・・・・お願いします」
「そうか。では、1時間後に出発しよう」
「分かりました。あの・・・・・・亡くなった方のお墓はありますか?」
1時間後に出発と聞いて時間があるなら、亡くなった人達のお墓に行って手を合わせたい。
「ああ、我々が作った」
「龍馬様、私が案内します」
「じゃあ、案内をお願いしますね。レナさん」
案内をレナさんが引き受けてくれたので後をついて行きお墓に向かう。
お墓は村の端にあり、この村の墓は土葬式らしく、穴を掘ってご遺体を埋めて木の棒で十字を作り墓標代わりに立ててある。墓標は後日作るらしい。
俺はお墓の前にしゃがんで手を合わせた。
・・・・・・俺が弱かったせいで、俺が迷ったせいで救えなかった命がある。
それで俺は激しく後悔した。だから、俺はもう、迷わない。迷って救えなくて後悔したくないから。そしてそのためにも強くなろう。
俺はお墓に眠る村人達にそう誓った。
第三話、如何だったでしょうか?
迷ったせいで救えなかった人がいたことを悔やんでいた龍馬、レナとエリスの言葉で前に進めると良いと思います。
次回は、町に向かう馬車の中で龍馬はエリスと色々話します
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