太陽と月   作:黒死牟

2 / 19
新しい元号に変わりましたね!
welcome to 令和!
これからも頑張って書きます!


拳と傷跡

元気に挨拶をした3人組は、担任の指示でそれぞれの席に戻る

まっ、3人くらいならクラスの雰囲気にさほど変わりはないだろう

俺が災難を被ることもない

 

そう思い、特に気にも止めなかったが自分の隣の席が空いている事にも気づいていなかった

 

クラスメイト達が3人に対する反応をしている

「やっぱり可愛い〜」

 

「このクラスで良かったぜ」

 

「俺、Aqoursのファンだったんだよ〜」

 

前言撤回、騒がしくなる事間違いなしだな

真治は軽くため息をつくと、顔をうつ伏せる

 

その時、隣の席から誰かが座る音がした

誰だと思いながら少し顔を傾け、その人物を黙認する

その生徒は女子で、ショートボブで毛先にパーマをかけているとても可愛いらしい人…

 

あれ、この人って…?

 

その女子生徒は真治の方を向き、弾けるような笑顔を見せた

曜「はじめまして!私、渡辺曜っていいます、よろしくね!」

そう言いながら敬礼をして見せた

 

この人、昔会った事があるような…

 

曜「えーと、須藤君だね?覚えた!下の名前はなんていうの?」

曜は真治の胸についた名札を見ながら質問する

真治は我に返り、曜から目を逸らす

真「(俺の気のせいか…確かにどこかで会ったような気がしたが…)」

曜は可愛らしく顔を膨らませ、少し怒った顔をした

曜「も〜なんで無視するの?あ、もしかして恥ずかしがってる?」

 

真「……」

真治は何も答えない、いや、答えられないと言った方がいいだろうか

俺は、何を考えてるんだ…全く

そう思い、もう一度顔を伏せる

 

曜は困った顔をして、うつ伏せてしまった真治を見つめる

曜「(やっぱり、話してくれないか……)」

私の頭の中で、1週間前のことが蘇ってくる

 

 

1週間前 曜の部屋

太陽が真っ赤に輝く夕暮れ

辺り1面は赤く染まり、独特の雰囲気を醸し出している

私は自分の部屋のベッドに寝転びながら電話をしていた

曜「この間のライブはありがとうね…月ちゃん!」

 

月「お安い御用だよ!僕も楽しかったし!」

電話の相手は、従姉妹の渡辺月ちゃん

小さい頃からよく遊んでいた仲だ

曜「ところで、相談ってなに?月ちゃんが悩み事なんて珍しいね」

 

月「うん、実はね…」

月は少し間を置き、ゆっくりと話し始めた

月「実は、僕のクラスに、ずっと寂しそうな顔をしてる子がいるんだ、男の子なんだけど、その子を元気づけて欲しいんだ」

 

曜「別にいいけど、なんで私?確か千歌ちゃんも同じクラスだったよね?元気づけるだけなら千歌ちゃんの方が…」

月は曜の声を遮って答える

月「曜ちゃんがいいと思う、いや、曜ちゃんじゃないといけないんだ」

彼女の言葉には、言い知れぬ説得力があった

月ちゃんがこんなに頼み込んで来るなんて…よっぽどなんだな

曜「まぁ月ちゃんがそう言うなら…わかったよ!私に任せといて!スクールアイドルの腕の見せどころだよ!」

 

月「ありがとう、頼んだよっ!じゃあ1週間後の始業式でね!」

 

曜「うん、またねー!」

そこで電話は終わった

 

月は電話を切ると、少し悲しげな表情を浮かべる

月「真治…僕は必ず、昔の元気だった頃の真治に戻してみせるから」

机の上にある写真立てを手に取り、片方の手で優しく撫でる

その姿はどこか愛おしそうで、懐かしんでいるようだった

しかし、直ぐに悲しげな表情に戻り、肩を深く落とす

月「あの時、僕がもっと強かったら…ごめん、真治……」

悲しみと寂しさに暮れている彼女の瞳からは、うっすらと一筋の涙がこぼれ落ちていた

 

 

始業式を終え、教室で諸注意を受けると今日は下校になった

周りの生徒達は、午後からの空き時間を友達と過ごそうと遊びの話に花を咲かせている

真「今日もとっとと帰って漫画でも読むか」

自分の部屋にこもって1人本の世界に入る、それこそが真治の唯一の楽しみだった

 

今日配られたプリント類を適当に折りたたみ、そのまま適当に鞄に放り込む

肩に鞄を掛け、携帯をいじくって帰りのバスの時間を検索した

画面上に示された時間は20分後に発車との事だった

真「少し待つか…まぁいいや」

真治は乱暴に鞄をからって教室を出る

 

曜「あ、待って須藤君!」

曜は急いで荷物をしまい、真治を追いかける

曜「真治君って家どっちの方面なの?」

歩きながら質問する

真「…沼津」

小さい声だが、答えてくれた

曜「ほんと!私も沼津なんだ!よかったら一緒に帰らない?

次の瞬間、真治は急に立ち止まり曜の方を向いた

真「あのさ、もうやめてくれない?」

真治は無表情のまま答える

真「もしかして俺を可哀想だとか思ってる?悪いけど、はっきりいって迷惑だから、それに、俺と一緒にいたら変なヤツらに目つけられるぞ、それは君の為にもならない」

 

曜「別にそういう事じゃ、私はただ…」

言い終わる前に、真治はこの場から立ち去ろうとした

踵を返して去っていく真治の瞳に、うっすらと涙が零れていた

曜「なんて、悲しそうな瞳…」

 

 

真「これでいいんだ…これもあの人のため…」

真治は溢れてきた涙を乱暴に拭い取り、帰路につくのだった

俺に関われば、皆が不幸になる…

俺なんか、いない方がいいんだ…

真治の瞳の涙粒が、少し大きくなった

 

 

帰りのバスに揺られながら、曜と月は今日の出来事について話し合っている

月「そう、やっぱり話を聞いてくれないか…」

月は悲しげな表情を浮かべた

曜「うん、さすがにね…」

曜も難しい顔をする

曜「ところで、どうして須藤君はあんな風になっちゃったの?」

 

月「……いじめだよ」

 

曜「えっ、いじめ…?」

 

月「うん、小学生位だったかな、その頃からずっとなんだよ…」

 

曜「そう…なんだ」

曜は顔を顰める

曜「もしかしたら私、ありがた迷惑だったのかな…」

 

月「そんな事ないよ!でも今の真治は、僕の話でさえ聞こうとしてくれないんだ」

 

曜「真治?あっ、須藤君の下の名前?」

 

月「そういや言ってなかったね、須藤真治、それが彼のフルネームだよ」

真治?どこかできいたことあるような…

必死に考えるが、思い出す事はできない

月「どうしたの?小難しい顔して」

 

曜「ううん、なんでもない、ただ…」

須藤真治君…か…

 

 

元令館空手道場

道場に着くなり真治はバッグを放り投げる

そして中から道着と「黒帯」を取り出した

服を脱ぎ、道着に着替える、そして力強く黒帯を絞めた

 

その時、真治の周りに多くの子供が集まる

「押忍!真治先輩!」

 

「押忍!よろしくお願いします!」

 

「押忍!久しぶりです!」

 

真「押忍!皆も今日も稽古頑張れよ」

真治が後輩達に発破をかけると、その中にいた少し背の高い男が近寄ってくる

「押忍、やっと来る気になったんだな」

 

真「あぁ、湊」

彼、京極湊は少し笑みを浮かべながら続ける

湊「学校はどうだ?ちゃんと行ってるか?

 

真「ちゃんと行ってるって、心配すんな」

 

湊「そうか、そういえば少し痩せたか?ちゃんと3食たべ…」

立て続けの質問にうんざりしたのか真治は湊の言葉を遮る

真「お前は俺のおふくろか?大丈夫だって」

 

湊「ならいい」

湊は少し息を吐いた

湊「たまにはこっちにも顔出せよ?ちび共が寂しがってんだから」

そう言いながらじゃれあっている子供の方に目を向ける

真「わかってるよ、ところで師範は?」

 

「ここにいる」

声のした方に目を向けると、年老いた老人が立っていた

真「お久しぶりです、上杉師範」

 

上「1年ぶりだな、調子はどうだ?」

 

真「押忍、おかげさまで」

真治は深々と頭を下げる

上「過去、全日本選手権で3連覇を成し遂げたお前が指導員として来てくれれば子供も喜ぶ、する気はあるか?」

 

真「もちろん、引受させてもらいます」

真っ直ぐな瞳で答える

上「…いい目だ、いいか真治、前にも言ったがこれだけは覚えておけ」

一段と真剣な顔になる

上「空手家の拳は狂気だ、何があってもその拳で素人を傷つけてはならん、心のない拳は、やがて身をも滅ぼす…」

真治は真治の拳を見つめ、強く握りしめた

真「心のない…拳…」




今回はここまでです!
登場人物の紹介をしておきます!
京極湊
県立玄信高校に通う高校3年生、真治とは小学生からの付き合い
真治の良きライバルで、実力も認められている

大堂悠介
真治と同じ学校に通う高校3年生、真治とは昔からの親友
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。