太陽と月   作:黒死牟

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ただ見たいだけ

最近寒くなってきましたね
特に朝が…

筆者は布団から出たくない病になりました笑
皆さんも風邪にはお気をつけください!

それでは、どうぞー!


磨けば錆も取れる

ズラリと並んだAqoursの面々と月

真治はその視線にビクリと体を震わせた

 

いや、さすがに4対1はきつい

 

そんな事を思っていると、月がバンと机を叩いた

静寂が切り裂かれ、突然の事に心臓が高鳴りまた体を震わせる

 

月「とにかく、わけを聞かせて?」

 

真「わ、わけと言うのは…」

言い終わる前に月の声が響く

月「とぼけない!」

 

また心臓が高鳴る

鼓動が早いのは恋?んなわけないか

 

月「真治は昔から、人との約束は絶対破らなかった。どんな事があっても、自分を信じてくれた人を裏切りたくないって……どうしてなの?」

 

真治は少し俯き、複雑な表情になる

 

真「体調が、悪かっただけさ」

真面目に答える

 

いや、無表情と言った方がいいだろうか

 

千「やっぱりそうだったんだ…今は大丈夫なの?」

千歌が心配そうに覗き込む

真「あ、あぁ…1日寝たらよくなったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「嘘…嘘だよね?」

 

全員の視線が曜に集まる

とても、冷静な顔をしていた

 

真「そ、そんなわけ…」

 

曜「目を見たら分かるよ!」

 

真治は下を俯き、黙り込む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「真治君…私達、友達だよね?」

 

 

曜の言葉にピクリと反応し、真治はゆっくり顔を上げた

真「そんなの…いつ認めた?」

 

とても、冷たい声だった

 

曜「えっ……」

今度は曜が黙り込む

 

真「いつ、俺と友達になったかって聞いてんだよ」

真治の目は少し吊り上がり、立った曜を上目遣いで睨む

 

真「答えられないか?知ったような口を聴くんじゃねぇ!」

 

その声は、今まで聞いた事も無いような、地に響く怒鳴り声だった

 

月「真治…」

 

真治の目をずっと見つめ、月は彼の心境を悟る

彼の目は吊り上がったままだ

 

 

 

とても悲しそうな目…

何をそんなに恐れているの?

 

 

 

真「用は済んだか?だったら早く帰ってくれないか?」

 

千「そ、そんな言い方…」

食ってかかろうとした千歌を、曜が止める

曜「千歌ちゃん…いいんだよ…」

 

曜は静かに立ち上がり、真治の目をよく見つめる

曜「体が元気だって事が分かってよかったよ、また学校でね」

 

そう言い残し、曜は部屋を後にする

梨「曜ちゃん…」

残りの面々も、その後を追うようにして部屋を出ていく

 

ガチャンと冷徹にドアが閉まる

部屋に静寂が戻ってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人取り残された部屋で、真治は静かに涙を流した

零れた涙が机に落ちる

小さな音だが、部屋が静かなせいか大きく響いて聞こえた

 

その音が真治の心を更に締め付ける

 

 

「これで、よかったんだよな…これで…」

 

自分が曜達と仲良くすれば、曜達もいじめの標的になってしまう

その事を、真治は痛いほど理解していた

 

真「俺みたいな人間を…増やしてはいけない…絶対に…!」

ガランとした部屋の中で、真治は静かに泣く

 

もう、彼を慰めるものは何も無かった

 

 

 

 

 

その時、固定電話が機械的に着信を知らせる

出ない訳にもいかず、面倒と思いながらも電話をとった

 

電話の主は、聞き覚えのある声だった

 

真「師範…何か用ですか?」

小さい頃から自分を育て、強くしてくれた…師範だった

師「真治、今取り込み中か?そうでないのなら道場に来い」

 

真「え?今日は休みの日じゃ…」

 

師「いいから、来るんだ」

静かな声だったが、凄みのある声だ

 

妙な説得力を感じ、渋々ながらも準備を始める

日は既に傾き、冷たい風が吹き抜けていた

 

沼津市街

真治の家を出た4人は、宛もなくとぼとぼと歩く

不思議と怒りは湧いてこず、心の内は真治に対する心配の念で溢れていた

 

千「やっぱり、迷惑…だったのかな…」

下を向いて俯き、元気の無い声で呟く

 

梨「あんなに怒った真治君、初めて見たね」

 

月「あんな怒り方するような人じゃないのに…」

月は腕組みをしながら、考えるように唸る

 

 

その時、曜が不意に立ち止まった

 

 

全員が突然のことに驚き、曜に視線を集中させる

曜「やっぱり、おかしいよ、真治君…絶対何か隠してる、無理をしてる……出なきゃ、あんなに悲しそうな顔するはずがないよ」

 

頭の中で、さっきの事を思い出す

怒鳴る真治の目は、言動とは裏腹に哀しみの感情で溢れていた

 

まるで、もう自分と関わらない方がいい、その方が見のためだ

そう訴えているようだった

 

曜「私、もう1回話してくる!」

そういって走り出した

 

梨「ちょっと曜ちゃん!」

 

梨子が止めようとした時、曜が誰かとぶつかる

体格負けをして、曜は尻もちをつく

 

曜「す、すみません!」

 

顔を上げ、相手の顔を見る

すると今度は聞き覚えのある声が降ってきた

 

的「よぅ、渡辺さんじゃないか、何してんだ?こんな所で」

 

曜「的場…君」

 

的「いきなりぶつかって来てびっくりしたぜ、そうだ、罪滅ぼしに俺達と遊びに行こうぜ?」

色気のある目で曜を見る

 

月「な、なにいって…!」

反論しようとした月は、背後に人の気配を感じて振り向く

 

そこには、いつも的場と一緒にいるクラスメイト3人が立っていた

全員、真治をいじめている連中だ

 

的「なにか意見はあるかな?」

勝ち誇ったような目で月を見下ろす

 

千「月ちゃん…どうするの?」

 

月「この状況じゃ、着いて行くしか…」

 

梨「そ、そんな…」

 

太陽が傾きかけ、風も冷たくなる

曜は嫌な寒気を感じた

 

 

元令館 空手道場

自転車をとばし、内浦の方にある道場に着く

 

道中「渡辺」達がクラスの連中と歩いて行くのが見えた

きっと、無理やり連れていかれているのだろう

 

罪悪感を感じたが、今はそんな所では無い

真「直々に電話してくるなんて、道場で何かあったのか?」

 

心配しながら扉を開ける

年季の入った日本建築の扉なので少し動きが悪い

 

中に入ると、そこには2人の人物が立っている

その2人は、真治のよく知っている人物だった

 

 

真「師範……悠介…」

親友の悠介だった

師「よく来たな、今日はお前に話がある」

 

真「どうしたんですか?悠介も…」

 

悠介は黙り込み、真治の目を真っ直ぐと見つめる

 

 

師「真治、悠介と試合をしてくれんか?…理由は聞くな」

 

自分を見つめる親友と師範の言葉に押され、真治は静かに頷く

 

 

師範が審判となり、2人が対になる

 

1度は捨てた道着を見に纏い、黒帯を締めた

なんだか…不思議な感情になる

 

師「真治、手加減は要らんぞ」

 

真「本当にいいのか?お前、俺に勝ったことないのに…」

 

真治と悠介は、共にライバルの様な存在だが、一騎打ちではいつも真治が勝利していた

 

才能の差、とでもいうのか

 

悠「馬鹿にするな、俺だって毎日練習してんだ」

悠介の目は、いつも以上に気迫が漲っている

 

師「よし……構えて…始め!」

 

掛け声と共に試合が始まる

しかし、戦局は直ぐに防戦一方になった

 

悠介はパンチの連打で押し、隙をついて蹴りを入れる

真治は何とか反撃しようとするが、手が出ない

 

いや、手を出せない

 

何故が寸前で力を緩めてしまう

 

真「ぐっ…くそっ!」

 

 

次の瞬間、悠介の鋭いパンチが真治の腹部にめり込んだ

真治は顔を歪めその場に倒れ込む

 

悠「そんなものか?立て!」

 

真治は倒れたまま腹を抑えている

口から荒い息が漏れ、呼吸も早い

 

真「な…なん…で…」

 

師「真治…何故お前が勝てないのか、わかるか?」

師範は片腕を上げ、試合を一時中断させる

 

腹を抑えたまま真治はゆっくりと立ち上がった

荒い呼吸が続く

 

師「お前は…戦うことを躊躇している」

 

師範の言葉が頭の中に響く

真「戦うことを…避けている?」

 

師範は続ける

師「そうだ、お前は心の底で暴力を振りたくないと思い、その気持ちが…まるで錆のようにこびり着いていた……その結果、お前は心を閉ざし、自分の力を抑えた」

 

真「錆…か…」

これまでの自分の行動を振り返る

 

人の迷惑にならない様にと、これまで人との関わりを避けてきた

例え、それが幼馴染であっても…

 

 

でも、それは間違いだったのかもしれない

俺のせいで…皆を傷つけていたのかも、しれない…

 

 

師「いいか真治、自分の大切なものを守るために振るう力は…暴力では無い。人を守るために使う力は…正義だ、それが、我々空手家の義務であり……使命だ」

 

悠「真治…思い出せよ!弱い者を守り、自分の身を守るのが俺達の役目だろ?

 

2人の言葉は、真治の心にしみじみと響いた

ゆっくり目を瞑り、心を落ち着かせる

 

 

そうだ…俺の力は、自分のためだけにあるんじゃない

見て見ぬ振りをしている場合じゃない

 

みんなの未来を、守らなければ

 

次の瞬間、目をカッと開きゆっくりと立ち上がった

 

師「そう…その目だ真治」

 

真「師範、ありがとうございました、悠介も…俺、目が覚めたよ」

 

悠「いいんだよ、じゃあ…もう1戦いくか?」

悠介は笑顔で構えた

 

真「悪い、謝らないといけない人が居るんだ…蹴りをつけてくるよ」

 

悠「そうか、分かった」

悠介は真治の肩をポンと叩く

 

真治は大きく頷き、道場を後にした




今回はここまでです!
次回もお楽しみに!
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