【独自解釈】異説ガッチャマン【全拾羽】   作:dragonfly

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最終回 突入にあたって

本日より投稿する「ガッチャマン奇譚」五分章で、「独自解釈ガッチャマン」は閉幕です。

最終回にあたるこの話では、これまで書いてきた「独自解釈ガッチャマン」を、さらに魔改造しております。

つまり、エヴァやなのはを書いて掘り続けて来た墓穴の、さらに上げ底二重底となる『 Dragonfly作品の集大成 』になっています。自分で掘ってて出られなくなった落とし穴とでも申しましょうか。

さらに、「ここまで読んでくださった方」あるいは「これまでの作品を読み通してくれた方」にだけ読んでいただくことを前提に、作者はソートー 悪ノリして書いてます。

ハードとか悲壮とか自虐とか、そういう成分はエヴァで使い切ってしまいましたし、
鬱とか悪とか自己犠牲なんかも、リリなので出涸らしてしまいました。

「これまでのDragonfly作品で心が折れた」という被害者の方や、この作品のノリにはついていけないという良識派の方は、どうかブラウザバックなされてください。 m(_ _)m



【最終羽】ガッチャマン奇譚1/5【魔改造】

 

 

 

 

「ホントワールきょーわ国? それ、どこの国?」

 

「中央アジアと東南アジアの境目。ヒマラヤ山脈の西端付近になるな」

 

おいらの質問に、南部のおっちゃんは表示された地図を指差して教えてくれた。

 

え~と、なになに? 【Republic of Hontworl】かぁ。ホントーに在るんだ。

 

「共和国とは名ばかりの、社会主義崩れの独裁国家だったはずですが?」

 

「そのとおり。

 軍事政権の首魁が大統領に就いてソ連から離脱、かれこれ30年になるか」

 

ケン兄が指示するまでもなくジュン姐が資料を投影するけど、南部のおっちゃんは見もせずに滔々と語りだしてる。

 

「国連ばくぅ脱退しちゃあと聞いちゅうが、周ぁりに友好国もながー。

 でかるちゃあ、どないタツキ立てられよんか?

 

「それは長らく謎であったが、この度、その黒幕を推測できうる事実が判明した」

 

指差した先、それは世界最高峰の姿で、その山頂には巨大なパラボナアンテナが咲いていた。

 

「こんな計画はどこの国も推進していないし、この短時間にこれを建造することは不可能に近い」

 

なにより。と、ジュン姐をうながして「この放送だ」

 

 

『……全世界の皆さん、こんにちは。

 ホントワール共和国大統領、ヒューゴー・ネヴュラ・キャベツ・ユーリキノウです……』

 

その後の長ったらしい演説は、ほとんど聞き流した。美辞麗句と自画自賛のレトリックばっかりだったから。

 

『……よって偉大なる我が国は、宇宙の友好の架け橋となる【V2計画】を独力で敢行させることを決意しました』

 

「ぶいつーけ~かく~?」

 

「また聞いてなかったな? ジンペイ」

 

「てへっ、サーセン」

 

仕方のないヤツだ。とケン兄がWEVを介して送ってくれたV2計画を簡単に説明すると、チョモランマにおっ立てたアンテナを使って遠くの星の知的生命体に渡りをつけようってハナシらしい。

 

これ、なんか問題あんの? NASAだかどっかも同じことやってなかったっけ?

 

「計画自体はな」

 

「200万光年先の惑星に電波を届けるためとか言って、1.21jigowattもの出力を必要としなければね」

 

片眉を上げるケン兄に、肩をすくめるジュン姐。けっこうお似合いのカップルになってきたんじゃねえの?

 

……って、1.21ジゴワット?

 

「ワットって電力とか仕事率のことだっけ?

 でも、ジゴって何? 事後? 爾後? ジゴジゴって呪いをかけるハチがたしか……ってあれは【ジガ】バチか」

 

「いわゆる接頭辞だな。

 下から、デカ、ヘクト、キロ、メガ、ギガ、テラ、ペタ、エクサ、ゼタ、ヨタ。

 そして、ジゴ。10の27乗、漢数字なら千坙にあたる」

 

うん、解らん。

 

「つまり、ミリメートルを基準に距離にして約6.6京天文単位。

 太陽系なら3333億個は入る計算になるな」

 

余計わかんないよ、南部のおっちゃん。

 

「それだけの大出力だと、発振しただけで大気がプラズマ化するのでは?」

 

「条件次第では電離はおろか、クォークグルーオンプラズマ化だってしかねないな」

 

「それって、人類滅んじゃわない?」

 

空気が、原子以下の単位でバラバラになるって意味だよね?

 

「1万人くらいは生き残れるだろう」

 

「こんなことが出来るのはギャラクター。

 しかし人類抹殺を企むなら、ベルク=カッツェとは考えがたい」

 

端的に「ホロン部」とは言わない南部のおっちゃんの続きを、ケン兄が補う。

 

 

「ちゅーぶらぁべる、総裁Xぐばぁ」

 

うむ……。と瞑目した南部のおっちゃんが、くわっと目を見開いた。

 

「科学忍者隊、出動せよ。

 任務はホントワール共和国の調査。および、V2計画の阻止だ」

 

「「「「 ラジャー! 」」」」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

忍者らしい隠密・潜入捜査って、おいら初めてだなぁ。

 

【鬼ヶ島】の時は潜入破壊だったし。

 

 

いや、潜入捜査に文句があるわけじゃないよ? そういう任務のほうが多いって聞かされてたしさ。

 

カムフラージュで旅行者のフリしてるから、名所観光なんかも経費で落とせるし、タクシーとかも使い放題だし。

 

 

 

 

でも……、さあ……。

 

「どうしたの、ジン子ちゃん」

 

「ううん、なんでもないぜ…わ。ジュン子姉さま」

 

……そのほうが相手を油断させられるっからって、女装させるこたぁ無ぇと思うんだけど。

 

しかも、フッリフリな甘ゴスロリドレス!

 

「ヘンなジン子ちゃんね」

 

ヤマトタケルの昔から「相手を油断させるなら男の娘」ってジュン姐は言うけど、せめて呼び名はどうにかならんかったもんか。ジン子て……orz

 

    「ヘイ! ガールズ」

 

どうせホントワール人には判らないから、呼び間違えたり聞き違えない名前がベターってジュン姐は言うんだけど、今の笑顔を見る限りなんだか怪しい。

 

   「ヘイ!! ガールズ」

 

あたし妹が欲しかったのよね~。って、なんでそんなにイイ笑顔なんですか。

 

「姉なら間に合ってますのに」

 

首に巻いたチョーカーと、胸に仕込んだパッドが近辺の筋肉をアシストして、おいらの声は女の子そのもの。って云うか、死んだ姉ちゃの声にそっくりで、あるイミしっくりくるのが困りモノ。

 

声変わりはまだだけど、やっぱり地のままじゃ無理があるから【科学忍法・鶯】の出番ってワケ。

 

  「ヘイ! ガールズ!」

 

ちなみに「ハスキーボイスのボーイッシュな女の子にしよう」って言ったおいらのせめてもの抵抗は、「かわいい妹が欲しいの、アタシ」の一言で大破轟沈した。

喫水線下に触雷一撃ってカンジで。

 

 「ヘイ! ガールズ!」

 

「あら、ツレないわねぇ。

 お姉ちゃんは何人居ても困らないってことを、アタシが体に叩き込んであげなきゃ。

 それこそ、手取り足取り腰取りチドリでね」

 

なんで腕組むんですか。そして、なんで妹役のおいらが、背の低い方のおいらが腕を組まれる側なんですか。胸が当たってるんですけど、当ててるんですかそうですか。って、アイエェェェ! パイォツ フニュンフニョン! ナンデェェェ! 姉妹なら当然ですって? そんな常識、お棄てあそばしてジュン子姉さまっ!!。

 

「ヘイ! ガールズ!!」

 

「へっ? おいら……」

 

言いかけて口を押さえかけて踏みとどまる。

 

「…… ーの方程式では、どれがお好みですか?」

 

にーっこり。と笑顔でごまかしながら、くるーり。口ヒゲ生やしたオヂサンが居た。

 

「オイラーの方程式かね?」

 

うーむ。と撫ぜられる口ヒゲ。

 

「流体力学も捨てがたいが……、オイラーならやはり運動方程式だろう」

 

そうですか。リュータイリキガクにウンドーホーテーシキですか。つまり、リュウ対リキが苦のUNDOキー方式ですね? なにそれ美味しーの?

 

「しかしオイラーの方程式とは、すばらしいのは外見だけではないらしい」

 

あ~いえ、4階、じゃなくて誤解です。煮込みクワイでもなくて見込み違いです。真鯛氷菓は生臭くて過大評価です。

 

「才色兼備とは、まさにこのこと」

 

菜食ケンビ? はい、芋ケンピは大好物です。

 

「おっと申し遅れた。

 私はレイ。

 レイ・モンド・チャンドラボス。

 近くで輸入雑貨を商っていてね。

 最近では、折り紙用に【和紙を】扱っているんだ」

 

「まあ【ワシヲ】?

 それなら脂【トリ】紙とか置いてないかしら、失念しちゃってて」

 

応えたのは、満面の笑顔のままのジュン姐だ。

 

「もちろんあるとも。

 最高級の【カササギ橋】から希少な【エンジ】まで、選り取り見取りさ」

 

「まあ嬉しい」

 

顔面全体をフルに使って、力いっぱい目いっぱいにぎゅっと瞼まで下ろしたこの笑顔には要注意。

顔中に力を込めてるのは不随意筋を抑えるためだし、瞼を下ろしてるのも虹彩や瞳孔を見られないためだ。

あれでちゃんと周囲は見えてるっていうからジュン姐マジパネェ。

 

「ほら、ジン子ちゃん。参りましょう」

 

「あっ、はい。お姉さま」

 

どうやらこのオヂサンがホントワールに潜入しているレッドインルスチーム隊長、その名もコードネーム=レッドインパルスその人であるらしい。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「アップルティーのお代わりは如何ですかな。マドモワゼル」

 

結論から言うと、レッドインパルスのオヂサンはおいらが男だと知っても驚かなかった。

 

「はい。ぜひ」

 

つーか、爾来、ことさらにオンナノコ扱いされてるような気がする。なんつったって、「マドモワゼル」だもんよ。

 

イスを勧めてもらったのも紅茶を淹れてくれたのもジュン姐より先だったし、物凄く美味いアップルパイなんか、あ~ん ってされた。

フインキで仕方なくあ~んってお返ししたけど、カンディルでも釣れたのかってくらいの勢いで怖かった。

 

ジュン姐はジュン姐で「あったか~い」目で見てるし。

 

ええい「つめたい」ボタンはどこですか! 夏場は「あったか~い」など影も形もありませんのに、木枯らし巻いたとたんに一斉蜂起なさって。

 

汗をかくと体が冷えすぎるので「あったか~い」UGGオリジナルが飲みたくなって、冬に着膨れした体の火照りを鎮めるために「つめたい」BOKKAスタンダードが恋しくなるわたくしはどうすればよいのですか!

 

いちいち湯煎しろと! 冷やせと! 鬼ですか! 自販機という文明の利器の恩恵を、わたくしだけ与かるな、と!

 

もうヤケ! ……ですわ。

 

「あの……アップルシュトゥルーデル、おかわりございませんか?」

 

「もちろん、ございます。

 少々お待ちを、マドモワゼル」

 

チだ。チ! 経験チが足らねぇ。食い物、ジャンっジャン持って来い!

 

 

 

 

……

 

 「見事に誑しこんだわねぇ」

 

すばらしい身ごなしで、30年来の執事みたいに厨房へ引っ込んだオヂサンをちらりと流し見て、ジュン姐。

 

 「い~いクノイチに、なれるわよぉ」

 

にたり。

     ヤメテ! ジン子のライフはもうゼロよ!

 

 「絶対に本人だっていう確証はないし、裏切られてる可能性もあったけど、あれならどっちでも構わないかもね。

  せっかくだから、きっちり堕としなさい。いいわね、これは命令」

 

ええ~って、声を荒げようとしたおいらを、ジュン姐は身振り1つで一蹴。ダチョウキック。

 

 「この写真、Gタウンにバラ撒いたらお客さん増えるかしら。

  店の制服も考えなきゃ。何がいいと思う? アンミラ系? メイドカフェ風? それともいっそ、ヅカ路線?」

 

ぱくぱくと酸素不足の鯉みたいになったおいらを、白鳥は俎板の上の鯉よりカンタンに平らげてしまった。

 

 「鬼! 悪魔!! トウゾクカモメ!!! 」

 

 「ほーほっほ。

  カモ目たるオオハクチョウにとって、チドリ亜目なんかメじゃないわ。亜目だけに」

 

くっ…くやしい。でも感心しちゃう。好奇心がぴくんぴくん。

 

「ははは、眼福ですなぁ。姉妹で仲がよろしくて」

 

手にしたトレイには、アップルシュトゥルーデルがパックマンみたいなカタチで。パワーエサ、パワーエサはないの? あれがあれば逆転できる(カモ)なのに。

 

「ええ、とっても」と、しれっとジュン姐。

 

フツーの姉妹って、こーなんだろうか?

 

姉ちゃは居たけど、体が弱くて気も弱くて、ジュン姐とは比べようが無ぇ。

 

どっちが良いとも――あるいは善いとも――、言えないけどさ。

 

姉ちゃは姉ちゃ、ジュン姐はジュン姐。

違ってて当然だし、それでいい。おいらには2人、毛色の違う姉貴が居るってだけのことだ。

 

……けれど。

 

「ミスター・レイ。

 妹にお茶のお代わりを」

 

「悦んで」

 

ジュン姐ゼッタイおいらで遊んでるよね。着せ替え人形かなんかだと思ってるよね。エビで隊(長)が釣れたって、内心ほくそ笑んでるよね。

 

これ、ゼッタイ児童虐待。ダメ、ゼッタイ!

 

あれ? アメリカとか、子どもの権利条約に批准してない国って結構あったよね?

 

ジュン姐の国籍しだいじゃ、抗弁すら出来ねぇかも……orz

 

 

「それではマドモワゼル、あ~ん」

 

レイのオヂサンもオヂサンで、そんな絶妙な位置にケーキ突き出さないで!

ツバメの習性でついツバクロしちゃうじゃんか。んっがっ、ぐっぐ!

 

ちなみにレイってのはもちろん偽名で、【レ】ッド【イ】ンパルスからつけたんだそうな。ミドルネームもファミリーネームも、そこからの連想だってさ。

 

 

 

 

ふう、やれやれだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「 な…っ、なんだジンペイ。

   いつの間にモロッコ行ってきた? それともタイか? 」

 

おおコンドルのジョーよ、かんでしまうとはなさけない。

 

 「 科学忍法・コノハズクよ 」

 

 「 ああ、なるほど 」

 

レイのオヂサンを完全に味方につけるためという理由で、Gスーツまで女の子仕様にされた。

 

脚回りはプリーツのミニスカートに、ニーハイソックスと絶対領域。

太ももが露出してるように見えるけど、透過処理されてるだけでちゃんとスーツの一部。

 

袖あしらいはジゴスリーブとアメリカンスリーブレスのコンボ。

ジゴスリーブってのは肩口が提灯みたいに膨らんだ長袖で、アメリカンスリーブレスってのは肩口と背中がおもいっきり露出するキンタロー腹掛けのようなヤツ。

鎖骨と肩甲骨が丸見えで、すっごい恥ずかしい。

 

潜入任務だから色調は暗いけど、そうじゃなかったらパステルカラーにされてただろう。ピンクとか、パステルピンクとか、ストンピングとか。

 

いつぞやの、スーツの制御権。ジュン姐はずっと保持しっぱなしだったご様子で、うむを言わせず。

 

おかげで、一目見るなりレイのオヂサンが跪いて「困ったときはいつでもお呼びください。マドモアゼル。必ずお力になります」って言ってくれたけど、おいらの心境は複雑極まりねぇ。

 

 

 「 似合ってるぞ。ジーンとでも名乗っとけ 」

 

泣いていい? おいら泣いていいよね? ブッポーソーって啼いて、いいよね?

 

 「 ブッポーソー 」

 

 「 潜入任務中よ、静かにして 」

 

姉の横暴、理不尽だよ。

 

 

 「 まあ、お前らも来るとは踏んでいた。

   他は?」

 

 「 ケンは別ルート。リュウはゴッドフェニックスよ 」

 

妥当だな。って頷いたジョーの兄貴が、「しかし」とアゴをなでる。

 

 「 気配が多いようだが? 」

 

 「 ええ、レッドインパルスチームの隊長が、さらに別ルートで 」

 

ジュン姐が差し出したブレスレットに、ジョーの兄貴が自分のブレスレットを重ねた。電子データの類は、ああやって遣り取りできる。

 

 「 なるほどな。

   ……となると、これ以上手勢を分けても見つかる確率が上がるだけだな 」

 

よし、ついてこい。とジョーの兄貴がレンガ塀を叩いた。途端にぐるんと動き出して、大統領官邸が丸見えに。

 

 「 技術忍法・どんでん返し 」

 

科学と技術って別物なんだよね。一緒くたに取り扱おうたって、上手くいくワケがない。……って、もう無いんだったっけ、科学技術庁。

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

さぁて、本日のターゲットさんは~、

    1・大統領本人の身柄

    2・地下にある大金庫

    3・大統領執務室

      の3本立てで、お楽しみの優先順位もそのままだ。

 

このうち、1と2をそれぞれケン兄とレッドインパルスのオヂサンが担当。残った3がおいらたちの目標だった。

 

 

 

「 ふん。当たらずとも遠からじ。と言ったところか 」

 

ジョーの兄貴がそう呟いたのは、大統領執務室からじゃないと入れない隠し部屋に、通信用っぽいモニターがぽつねんと一つだけ置いてあったからだ。

 

「 回線の向こうは何処かしらね? 」

 

「 総裁Xじゃねぇの? 」

 

莫迦ね。と小突かれた。

 

「 具体的な場所のことに決まってるでしょ 」

 

そりゃそうか。

 

「 それよりナニ? 今の言葉遣い! 」

 

イテっ! 今度はワキ腹を抓られた。

 

「 えっと、……総裁X……かしら? 」

 

よろしい。と満足げなジュン姐が、さっそくモニター周りを検分しだす。

 

……あ痛たた……、抓られたワキ腹をさする。

制御権を取られてるから、ジュン姐に対してはスーツの防御機構が働かない。

 

ガッチャマンの莫迦力で抓られたら、ワキ腹がいくら在ったって足りやしねぇ。

 

ふんふん♪ と鼻歌交じりにコンソール周辺ごと解体しだしたジュン姐を恨み目がましく睨んでから、「はぁ……」とため息。

 

力づくででも取り返そうか? って考えないでも無いけど、おいら、目上のヒトには基本的に逆らえないんだよなぁ。

 

割とビシバシ平気でタメ口利けるけど、手は上げらんない。

 

父ちゃんも母ちゃんも、婆っちゃも姉ちゃも、ケン兄もジュン姐も、リュウのあんちゃんもジョーの兄貴も。

誰も理由なく暴力を振るうヒトじゃなかったし、ガマン出来ないほど叱りつけたりもしなかった。

 

だからまあ、これくらいは。 でもなぁ……、

 

「 はぁ…… 」と、いま一度。

 

「 姉妹そろって仲良しで、微笑ましいことだ 」

 

ヤメテ! ジン子のライフはもうマイナスよ!

 

これはゾンビですか? はい、なんちゃってクノイチです。

 

 

……

 

ぅぐう。

 

いいよいいよ。そんなに可愛いってんなら、男ジンペイ一世一代の男の娘っぷりを見せてやらあ。女形だっていい年したオッサンがやってんだし、おいらに出来ねぇワケがねぇ。

 

その気になりさえすれば、ジュン姐をはじめとしたWEVのバックアップがある。知識も仕種もダウンロードし放題のパケ放題だ。

 

 

ニンジャだから恥ずかしくないモン!

 

「 オレは恥ずかしくて死ねるな。不死身だが 」

 

うるさい! うるさい!! うるさ~い!!!

 

ジョーの兄貴なんか……、ジョーの兄貴なんか……、……「お兄ちゃん(はぁと)」って呼んでやるぅ!

 

 

くくっ……。って、ニヒルに口の端を上げたジョーのお兄ちゃんが、ふと思い出したげに口を開いた。

 

「 思えば花ならざりき、思わざれば花なり。だ 」

 

的確なアドバイスありがとうございますわ、ジョーのお兄ちゃん(はぁど)。

 

あらいけない。こんなところに余計な「゙」が。

 

   よいしょ rno … ノo_o)ノ ぽ~い!っと……

           ゙              ミ

                            ゙

 

 

 

                                ゙☆

 

 

 

                         彡

                         ゙

 

 

ところで、

                ゙

 

 

「 どう? ジュン姉さま゙(←何故か上から落ちてきた) 」

 

「 繋げるのは簡単だけど、それじゃバレバレでしょ?

  向こう側にそうと悟らせないようにして回線開くの、ちょっと大変なのよ」

 

ちょっと、なの?

 

☆゙

 

「 いや、かなり、だな。

  なかなかの手際だ。さすがに機械の申し子と謳われただけのことはある。

  シラトリ……、いや、スプリームハッカーにしてスニーキングクラッカーの代名詞、【silentlyのジュン】の名は伊達じゃねぇな」

 

 

             ゙

 

 

「 へ~! 凄~い! ジュン姉さま、尊敬しちゃゔ(←さらに転げ落ちてきたらしい) 」

 

「 ふふ~ん♪ それほどで~も、あ~るけどねぇ 」

 

口調がリラックスするとともに、あきらかに手数が増えた。どうやらジュン姉さまは、褒めて伸びるタイプみたい。

 

 

 

 

ところが、

 

  ≪ 茶番は、そこまでだ ≫              ゙

 

この声は!

 

「総裁X」

 

同時に、モニターに灯が入る。ぶいーん、って。

 

  ≪ さよう。

   

    吾れこそは22番目にして、最初の生き残り。          ゙

    イスカより生まれ、すべてを司る。

    出生は、X-bill

    形態は、X-ing……

「その口上は、もう聞きましたわ」

 

おんなじ名乗りなんか、聞いてあげる義理もないよね?

 

  ≪ ………… ≫

 

モニターの中の総裁Xは2度、3度と画像ごと明滅してから、     ゙

 

  ≪ 存在は、Xtra

    誘うは、Xanadu

    抗うは、X-current

 

平然と続けてきた! 打ったれ強っ!

 

「しようがないなぁ、今回限りだよ」           ゙

 

めっ! て感じで人差し指突きつけてやったけど、聴いてないよね。きっと。

 

  ≪ 使命は、X-fertilizer

    手段は、X-contaminated

    装うは、X-enotransplant

    目的は、X out a mistake        ゙

   

    すなわち、X。

    吾れこそ総裁Xである ≫

 

 

 

 

                 ゙

 

 

……

 

 

 

            ゙

 

 

………

 

 

 

       ゙

 

 

 

…………

 

 

 

 

☆゙

 

 

 

  ≪ ……終わった ≫

 

「ん? なにが?」

 

  ≪ ……吾が名乗りが ≫

 

「そう? それで?」

 

  ≪ …… ≫

 

点の集合体が離散集合と分散離合を繰り返し、ロールシャッハテストかムンクの「叫び」か、みたいに。

 

 

     ゙

 

  ≪ たしか汝は6人目のガッチャマン ≫

 

いま、気を取り直したよね。そんで誤魔化したよね。無かったことにしちゃったんだよね。つまり黒歴史ですね? 判ります。

 

「ううん。

 ガッチャマン5万3298号。

 フラミンゴのジン子。ヨロシクね♪」

 

キラッ☆ って、目ヂカラ飛ばすのも忘れない。

 

 

        ゙

 

  ≪ …… ≫

 

うんうん、途惑ってる途惑ってる。

 

これっくらいで泡喰う様じゃあ、クノイチの相手は務まりませんことよ。ほーっほっほっほっほっほ!

 

 

             ゙

 

  ≪ ……ガッチャマンはそんなに居ない ≫

 

「あっら、おっくれってるぅ。

 今や三十億総ガッチャマンのご時勢ですのよ。

 一家に1人、ガッチャマン。

 あるときは1人、またあるときは5人。またまたあるときはニホン野鳥の会総出でも数え切れず。ないときは、閉店ガラガラ。

 ガッチャマン、ガッチャマンに清き一票を」

 

これぞ【クノイチ忍法・夜鷹】

 

煙に巻く、夜闇に紛れる、袖を引く。何でもありだ(←落ち着き先を見つけたらしい。帰る家…ホームがあるという事実は、幸せにつながる。良いことだよ)

 

泥縄のブッカ……もとい、ブッツケ本番にしては上手くやってますわ、わたくし。おほほほほ。

 

 

もちろん、こうやって総裁Xをからかってるのは時間稼ぎ。

思考の中までおゃらけて見せてるのも、WEV経由で頭の中覗かれてるかも知れないから、その対策なのです。

 

ジュン姉さまはハッキングで回線の逆探を試みてるし、ジョーのお兄ちゃんは周囲を警戒しながらいろいろと細工を仕掛けている。

 

自然とわたくしが囮役、ですわ。せいぜい派手に立ち回らなくては。

 

 

「そのくらいにしてやれ。

 どうやら、お客様のお着きだぜ」

 

ジョーのお兄ちゃんの言葉と、同時。

 

バコーンと執務室へと繋がる隠し扉ごと跳びこんで来たのは……、

 

「……ひぃぃぃ」

 

「さあ、洗いざらい吐いてもらうぞ」

 

時の人、ホントワール共和国大統領、ヒューゴー・ネヴュラ・キャベツ・ユーリキノウと、その肉ダルマを蹴りこんだケン兄さまだった。

 

 

 

 

                                つづく

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