【独自解釈】異説ガッチャマン【全拾羽】   作:dragonfly

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【最終羽】ガッチャマン奇譚2/5【魔改造】

 

 

 

 

 

「リュウ、チョモランマ山頂だ。急げ」

 

「ラジャーやが、どないしちゅうりゅば?」

 

スロットルを全開にしつつ、リュウ兄上は疑問系。

 

さてはまた、寝てましたね?

 

でなければWEVで、あらましくらい掴んでるはずです。

 

 

「総裁Xは、月に居やがる」

 

FCSを立ち上げながら、ジョーのお兄ちゃん。

 

「チョモランマのアンテナは囮だけど、地球環境を激変させるくらいの出力はあるわ」

 

ジュン姉さまは、関係各部への連絡を始めてる。

 

 

総裁Xにまんまと騙されてた大統領をウッチャって(物理)、わたくしたちは急ぎゴッドフェニックスへ戻ってきました。

 

「チョモランマのアンテナを叩き、そのまま月へ向かうぞ」

 

ケン兄さまが立ち上げる空中投影スクリーンが、城壁のよう。

 

「ゴッドフェニックスじ単体たんと、第2宇宙速度ぐば、えすけすぞん」

 

「今、ガッチャ・スパルタンを出して貰ったわ。ヒトマルで合流予定よ」

 

だらぁ……。と反論しかかったリュウ兄上を「方策は検討中だ」ケン兄さまがとどめた。

 

「んっばぁ、ラジャーやき」

 

あらためて操縦桿を握りなおしたリュウ兄上が、パチパチパチとスイッチを入れ始める。

 

「リヒートもひーと入れんだら、歯ぁ喰い縛りゃあせ」

 

流動体中なら無限に飛べる量子反応タービンにワザワザ推進剤をブチ込んで得られるのは、マッハ5と、それに見合う急激なG。

 

 

きゅ~@

 

歯を喰い縛るヒマすらないんだもよん。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

結論を言うと、ゴッドフェニックスは間に合わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正確に言うと、間に合わないはずだった。

 

 

 

 

 『 遅いではないか。待ち疲れたぞ 』

 

先回りしてたベルク=カッツェが、チョモランマのアンテナを奪取してなければ。

 

 『 ほっほっほ。

   ごきげんよう。ガッチャマンの諸君 』

 

フオォン。という音とともにメインスクリーンに現れたのは、いつぞやのままの、黒い狐っぽい姿。

 

以外に人望があるのか、現地に居たらしい赤緑ハイエナどもがそっくり指揮下に収まってるっぽいです。

 

「久しぶり。と言うほどでもないな、ベルク=カッツェ」

 

 『 そうよな、大鷲のケン。わずか半年、ではな 』

 

半年間、何してたんだろ? 自宅警備員とか? 自堕落系Beanとか?

 

 

「息災そうじゃねぇか、ベルク=カッツェ」

 

 『 あの程度のことで折れるような我れではないわ、コンドルのジョーよ』

 

転んでも泣かない! えらいね。

 

 

「来てくれたのね」

 

 『 人類どころか、地球生命そのものを脅かす暴挙。

   見過ごしにはできぬよ、白鳥のジュン 』

 

かつての敵が、主人公のピンチに颯爽と登場。ジャン(ピー)のお約束ですね。わかります。

 

好敵手と書いてライバルと読めばいいのですね。

 

 

「そいだけんで、通信くれよんしんちゃあヌシか?」

 

 『ご明察。と言っておこう。ミミズクのリュウ』

 

「え? どう言うこと?」

 

 『 お主は誰だ 』

 

「わたくしはガッチャマン3億とんでマッハGO!轟!5号。

 フラミンゴのジン子。ヨロシクね♪」

 

キラッ☆ さっきと数字が違うのはご愛嬌。

 

スーツの色も、臙脂と桜と猩々緋に変えられちゃったし、気分はガッチャ・レッドか、ガッチャ・ピンクってフインキですのよ。

 

……とすると、ジュン姉さまはガッチャ・ホワイトかしら?

 

そもそもガッチャマンってコードネームはケン兄さまだけのモノだったらしいので、ジュン姉さまをガッチャ・ホワイトって呼んでも差し支えはない……はず。なのですが、たぶん、きっと。

でも、もしかしたらダメかも知れません。ま、ちょっと覚悟しておけ? みたいな。

 

 

 『 そうか、新たな雛鳥かえ 』

 

ゑ? 華麗にスルー?

 

 『 ほーほっほっほ!

   悪くはない趣向ではあるが、戯れている時間も惜しい。ツバクロのジンペイよ 』

 

バレテーラ。カステーラ。エリザベステーラー。

 

 『 さて、ガッチャマン。

   貴様らに、我が策に乗る度胸はあるかえ 』

 

「時間はないのだろう? 簡潔に頼む」

 

 『 なに、簡単なことよ。ソーラーセイルと言えば解ろう? 』

 

うん、解らん!

 

「なるほどな」

 

だ・か・ら! 解かんないってばジョーのお兄ちゃん(ばぁど)!

 

「あのアンテナのレーダー波で、ゴッドフェニックスを打ち上げようって言ってんのよ」

 

えぇ~! だってアレ、1.21ジゴワットもあんじゃねぇの! って思いかかったらジュン姉さまに「ギッ」って、睨まれた。

 

クワバラクワバラ、ショーヘイオハラ。……精神感応で伝わるのも、考えものだよねぇ。

 

 

……ええ~い! 男は度胸、女は愛嬌、女形は度愛興! 目醒めろ! わたくしの裡の乙女!

 

おほん。では、気を取り直して。

 

「えぇ~! だってアレ、1.21ジゴワットもあるんでしょ!」

 

「そもそも人類の耳目を逸らすためのフェイクだ。そこまでの出力はない」

 

と言うか、ケン兄さま。このカッコとか、口調とか、最初っから全スルーだよね。

 

どうしてかな? かな?

 

「まがぁ、下げしんこうで調整しん、ふんぐるい向ぐるなく」

 

リュウ兄上も、さ。さっきから目も合わせてくれないよね。

 

どうしたのかな? かな?

 

……わたくし、可愛くないですか?  じー

 

 『 そういうことだ。フラミンゴのジン子よ 』

 

はいはい、スルー乙。

 

まあ、つまりは、ほとんどレーザー砲みたいなのに打ち上げられて宇宙に出るってことか。

 

誰も言い出さないってことは、ゴッドフェニックスなりガッチャスパルタンなりの装甲はソレに耐えられるんだろう。

 

 

……そうなると、

 

「あとは勇気だけだ」

 

いつの間にかキャプテンシートを回してたケン兄さまが、こっちを見てた。

 

「これがカッツェの罠ってことは……ないですよね?」

 

 『 おお! これは良き進言よ!

   たしかに、目障りなガッチャマンを一掃できるまたとない好機。

   褒めてつかわすぞぇ』

 

「えぇ~!」

 

至極マジ顔で応えるカッツェに、びしっと空ツッコミ。

 

「おいおい、雛鳥を甚振るんじゃねぇよ」

 

ホーホッホッホ! って高笑い。

 

 『 信じるか信じないかはお主ら次第よ、ガッチャマン 』

 

「いまさらお前を疑うものか」

 

即答。

 

 『 …… 』

 

スクリーンの向こうで鼻白むカッツェを背景に、ケン兄さま。

 

か~な~り、本気っぽい。

 

なら、迷うことはないよね。

 

「往きましょう。宇宙へ、月へ。

 ヤマ猫の手も借りたい大仕事です」

 

「そうと決まれば……、」

 

ケン兄さまがシートを戻した途端、

 

『お待たせした、諸君』

 

「ゑ?」

 

立ち上がった投影スクリーンが2つ。

 

1つは、弾道飛行の減速シーケンス真っ最中らしい火の玉の映像。おそらくガッチャスパルタン。

 

もう1つは、南部のオジさま。

 

Gスーツに良く似た、黒い宇宙服姿。

 

 

えぇと……?

 

「イチオウお尋ねしますけど、南部のオジさま、今イズコ?」

 

『もちろん、ガッチャ・スパルタンだとも』

 

スクリーン越しに見えたのがコクピットぽかったから、そうじゃないかとは思ってましたけど……、南部のオジさまはあっさり肯って下さいました。

 

『猫の手も借りたいのであろう?』

 

黒いグラスシールドの奥で、銀縁メガネがキラ~ンって光ってる。

 

『ケンカはからっきしの三級品だが、この【カレドニアガラスのコーザブロー】も力を貸すぞ』

 

ぽん。と手のひらを打つ。

 

そうかぁ、カラスなんだ。だからスーツが黒いんだね。

 

 

 

でも。んーと、ひの ふの み……、

 

 

 

さん、はい♪

 

♪ カーラースー♪ なぜ凄いー♪

 

♪ カラスは 島ーにー♪

 

♪ 可~愛ーい♪ 7~つの♪ 仔があるか~ら~よ~♪

 

 

 

「……」

 

……って、

 

「南部のオジさま、ガッチャマンだったんですか!?」

 

「WEVが使えるんだから当然だろう」ってケン兄さまはしれっと言いますが、でも、今ガッチャマンは「7人」で、永久欠番とか栄誉番号なんかも無いフルメンバーでしたよね?

 

 『 ……クックック。

   荒事には向かぬ、か弱きカレドニアガラスのガッチャマン。

   裏腹に科学者としては名高いG-Zeroが前線に現れるとはな、さほどの緊急事態かえ 』

 

『ベルク=カッツェ、お互い様ではないかね?』

 

然り。と黒ギツネが応えてるところを見ると、知らぬはわたくしばかりなり。ですか。

 

「道具を使う生き物は数あれど、道具を作る生き物は少ねぇ」

 

ジョーのお兄ちゃんが、腕を枕にちょっとリクライニング。

 

「知られてるところでは、類人猿とカレドニアガラスくらいかしらね。次点でダーウィンフィンチとか、キツツキとか」

 

ジュン姐は、底面の第2ドッキングセンサーを立ち上げてる。

 

「両方とり備ろうた南部博士ぇば、すごーみん発明者っちゅうかない、っぱねぇ まな」

 

リュウ兄上が、エルロンとラダーとベクタードノズルを準備。

 

「今だ、スクランブルターン!」

 

ケン兄さまの合図とともに、ゴッドフェニックスは半回転。進行方向にケツ(ここで、ギラって視線が飛んできた)

……もとい、墳進口を向ける。

 

大空に腹をさらすような、背面逆飛行。

 

そこへ、

 

『コンビネーションクロス』

 

盛大にプラズマ曳いたままのガッチャスパルタンが合体した。

 

 

「行くぞ、推力最大」

 

「ラジャーやき」

 

機首を起こして、ゴッドスパルタンが垂直上昇を開始。

 

「熱転換装甲全開!」

 

「ラジャー」

 

つまりは、宇宙に向けて火の鳥をカマそう(ここで、ベギラマって視線が飛んできた)

……敢行しようというのでしょう。

 

 

そうして変換したエネルギーは、

 

「フェンサー、照射」

 

露払いよろしくドップラーレーザーが、大気を灼いて裂く。

 

たちまち天空に、プラズマの花が咲く。

 

 

さらに、

 

 『 覚悟は良いな、ガッチャマン 』

 

せめて疑問系で言って欲しいよ、カッツェ……兄ぃ?

 

 『 グランドキャノン、リフトパワー照射 』

 

ぐぐっ! と、押されてさらに加速する感じ。

 

 

「……」

 

 『 意外や高出力ではないか。くっくっく、凌ぎきれるかえガッチャマン 』

 

わぁい ノ>_<)ノ  噴射炎と相殺されてるって解かってても、生きた心地がしないよ。

 

 

 

「高度、6万フィート突破よ」

 

「迎えばぁ、来っつばい」

 

迎え? こんな宇宙のソコみたいなトコで?

 

「背面第1ドッキングセンサー、セット」

 

「ラジャー。準備は万端よ!」

 

??????って、ハテナを盛大に頭上に浮かべてたのに気づいたんだろう。ジョーのお兄ちゃんがちらりとこちらを向いた。

 

「リュウの相棒とその愛機。フライデーとストラトオウルだ」

 

バジャっと、巻き上がるように立ち上がった投影モニターの画像の中に、パトカーみたいな配色の機体。ゴッドフェニックスに引けをとらないってことは……(スワロゥテイルなんかと較べると)……その、凄く……大きいです。

 

くるくるとRCSの噴射煙で氷のスパイラルを描いて、ピタっとゴッドスパルタンの背面に張り付いた。

 

まるで、新体操のリボンをなびかせたフィギュアスケーターみたいな優雅さ。あるいはバレリーナが、ストレッチで見せるようなしなやかさ。

 

大きな体と、それに見合わぬ軽やかさ、さすがはミミズク。かっこいいですわ。耳たぶを甘噛みされたい(はぁと)

 

 

 

『第1から第3までの全拘束具、すべて正常位置。

 ベンチマークルーチン、スクリーニング3トライ終了。

 発生エラー、レベル:20、クラス:3、カテゴリー:2。マルハチでパッチ修正対応。

 機体データリンクに異常、検出されず。

 

 以上、各部問題なし。

 スーパーゴッドスパルタン、合体完了』

 

……なんていうか、ガッチャスパルタンとストラトオウルで、「完成! ゴッドフェニックスバーガー♪」って感じ。

 

「ぶっつけ本番にしちゃあ、上出来じゃねぇか」

 

『東ドイツほどではないが、私の科学力も凄いだろう?』

 

「まあまあだな」

 

『つけあがるなよ、ジャーマン』

 

はいはい、わろすわろす。

 

勃発した南部のオジさまとジョーのお兄ちゃんの科学力自慢は放っといて、各部テレメトリを確認する。機体の把握は、わたくしのおしごとですわ。

 

 

『……ホゥホゥ』

 

「久しはまちぃ、息災よめ?」

 

『……ホゥホゥ』

 

「少こっちば、寂しいまてば?」

 

こっちはこっちでどう会話が成立してるんだか、よく解からないし。

 

 

「サムも、少し寂しがってたようだ。

 よければ、イーグルストライクの方へ行ってやってくれないか」

 

『ホゥホゥ』

 

「そうか、本人は認めないだろうが、きっと歓ぶぞ」

 

ケン兄さまはミミズク語をお介しになる。……らしい。WEVかな?

 

『ホゥホゥ、ホゥホゥ』

 

「あら、論語?」

 

『論語も素晴らしいが、ここはひとつ本歌取りで、

 【命二つの 中に生きたる 桜かな】なぞ、如何かな』

 

『ほうほぅ』

 

え~! フライデーの言ってること解かんないの、わたくしだけ?

 

「付き合いの長さが違うんだろう。

 心配するな、オレも解からん」

 

ジョーのお兄ちゃん(はぁと)が、肩を竦めてる。……と、ピーッピーッピーッて警告音が。

 

「レーダーに感! ……反応多数」

 

「ジュン。報告は正確に頼む」

 

 

 

「……」

 

あら? どうしたのかしら? ジュン姉さまが言いよどんでる。

 

沈黙を破るように、ひゅう♪ と口笛吹いたのは、ジョーのお兄ちゃん。手元に、レーダー画面を呼び出してた。

 

「敵が七分で黒が三分、宇宙が黒く見えねぇぜ」

 

「……レーダーの捕捉限界を超えました。

 IFF反応なし。

 機影照合完了。99.999999999%の蓋然性で、ギャラクター全領域無人戦闘機と断定。

 敵機総数、6万5535機以上」

 

「ろくまんごせん~っ!」

 

「嫌ぁでびる迎えばまでぇ来っつなぅしか」

 

操縦桿をちょんちょんと、進路をほんの1度だけずらすリュウ兄上。おそらく、そこが一番手薄なんでしょう。

 

 

「衆寡敵せず。だな」

「蟻も集まれば象を倒す。じゃねぇか?」

『いやいや、「群羊を駆って猛虎を攻む」だろう』

 

 『 せいぜい「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」と言ったところであろ 』

 

ことわざ合戦はいいよ! 南部のオジさまどころか、カッツェ兄ぃまで!

 

「反応増大!」

 

オカワリなんか頼んでないよ!! あちらのお客様からです? ナンパなら他をあたってくださいまし、わたくしこう見えて身持ちはカダインですのよ! ヒャダインよりは遥かに「あったか~い」常夏ココナッツなクノイチなのです。

 

「IFFに応答あり!

 国連所属、ホワイトリンゴ隊。

 味方です! 味方の援軍が来たわ!」

 

――主な衛星軌道が集中する赤道面を中心にした環状宙域を守護するのが、ホワイトリンゴ隊。正式名称 White_knight of Ring Obital team だ――

 

 

 『 Sir.スワロー。ここは自分らWhiteRingOに任せて、早く……つ……き…………  へっ? 』

 

新兵教育の関係で、ホワイトリンゴ隊の隊長とも面識はあります。でも、なんで最後に疑問系になったの?

 

 『 ……失礼しました。Dame.スワロー 』

 

え~と、軍事組織じゃないガッチャマンの一員であるわたくしがSirって呼ばれているのは、各国から各種勲章を授受されてるから。

 

軍人としてではなくて、いわば騎士としてSirって付けられてたワケ。

 

でもって、Sirの女性形は軍ならma'amで、騎士ならDameになる。

 

……ということは、女に間違えられたか、男だと誤認していたと勘違いさせたか。

 

 『 ここは軌道警察たる自分らWhiteRingOに任せて、疾く月へ 』

 

そこまでは、凛々しい顔してた。

 

 『 聞けぇい! ウジムシ野郎ども!

   我らがDame.スワローがお座ましあそばす神鳥に! 傷がついて、よいだろうか? 』

 

 『『『『『『『『『 否! 否! 否! 』』』』』』』』』』

 

 『 我らがDame.スワローが、たかだか1光秒先の月程度に辿り着けないなんて! あってよいだろうか? 』

 

 『『『『『『『『『 否! 否! 否! 』』』』』』』』』』

 

 『 我らがDame.スワローのために、命を投げ出すのが惜しいものが! 居るだろうか? 』

 

 『『『『『『『『『 否! 否! 否! 』』』』』』』』』』

 

 『 ぃようし、手前らはたった今からクソ野郎に昇格だ!

   我らがかぐや姫の! 月への帰還を! 血煙のレッドカーペットとなって! 飾るぞ! 』

 

 『『『『『『『『『 応! 』』』』』』』』』』

 

怖いよっ!

バードマン軍曹とは、そこはかとなく方向性がチガクて、なおさら怖いよ!

 

「人気だな」

 

そういう問題じゃないよっ! ジョーのお兄ちゃん(ばとう)!

 

『ホワイトリンゴ隊各機との、レーダーリンクが完了した』

 

「敵機総数、13万1071機……よ」

 

「13万1071機 対 1が、13万1071機 対 10になったか」

 

11じゃなくて、10ってことは、つまりホワイトリンゴ隊を置いていっちゃうってことだよね。ケン兄さま。

 

「まもりあしぃ、手ぇぐば振ったらんちゅら」

 

……うん。せめて手を振るぐらい、お安い御用だよ。

 

わたくしは涙を流さない。ニンジャだから、クノイチだから、だらったー。

 

だけど解かるの、アツい情熱。人心くらい、いくらでも弄んだげる。

 

「ホワイトリンゴ隊の皆さん、足留めで充……」

 

「そんな湿っぽいのは却下よ」

 

だって! ホワイトリンゴ隊のリンガースパイトは単座の有人機で! 飛べる距離だって限りがあって! でも相手は無人機で! どんなにホワイトリンゴ隊が強くても! 活動限界が来たら! 身軽で! アシが長くて! 血も涙もない、シリコンオイルすら流れてないあいつらに! 数だけは多いあいつらに! 嬲り殺しにされるしかないんだよっ!

 

「……だから、でしょ?

 見なさい。誰もそんな悲壮な顔、してないじゃない」

 

わたくしの前に並べられた、10枚の投影モニター。

 

誰も彼も彼女もおネエも、ホントにイイ笑顔で、わたくしの一挙手一投足を見守ってた。

 

今から死にに行くって顔じゃ、なかった。

 

「……」

 

 

まるで、そうまるで……、だから、

 

 

 

わたくし謳うわ! 思いっきり!!

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、おネニーちゃんたち~!」

 

 

……

 

 『『『『『『『『『『 ッオ~~~~~~~~! 』』』』』』』』』』』

 

「今日は、わたくしの月行きへのお見送り!

 ホント~っ! に! アリガト~~~!」

 

 『『『『『『『『『『 オ~~~~~~~~~! 』』』』』』』』』』』

 

 

……

 

          『 ジンペー! 』

 

「ありがと」

 

 

すう。と、一呼吸。

 

「わたくし、ゼ~ッタイ月から還ってまいります!」

 

 『『『『『『『『『『 オオ~~~~~~~~!! 』』』』』』』』』』』

 

「だから、その時も迎えに来てね!」

 

キラっ☆

 

 『『『『『『『『『『 オ~~~~~~~~~!! 』』』』』』』』』』』

 

「やるな。いい扇動者になれるぜ。同士と呼ばせてもらっていいか?」

 

うるさいよ、ジョーのお兄ちゃん(はどう)。全共闘くずれは黙っててくんない? わたくしのステージは、いままさにアンコールなんだから。

 

「つぎは、平和な地球でわたくしと握手! ヤクソクだよ♪ 」

 

小指を突き出して、見せる。

 

 

 

 

「……」

 

……えと、あれ。選択間違えたかしら?

 

水を打ったような、しばしの静寂のあと……

 

 『『『『『『『『『『 ぅオ~~~~~~~ッ!! 』』』』』』』』』』』

 

 『 や~ってやるぜ! 』

 『 トラ! 虎! TORA! 』

 『 天気晴朗なれど波高し。泗川の荒波に比べりゃあ、13万? はっ、ちゃんちゃらおかしいね! ふひゃはははは! 腹が捩れて、そっちで死ねるぅ! 』

 『 ディンゴよ! ディンゴよ! 』

 『 ヤるぜ、オレは殺るぜ! さあさあさあ! make my day! 』

 『 ぬばたまの、夜のハヤシに萌ゆるディンゴよ 』

 『 鬼×金棒、虎×翼。WhiteRingO(全員)×かぐや姫! ……ぶはっ! ご飯3(倍)はいける 』

 『 いかなるフシアナの眼、またはガイナの 』

 『 おやつは300ジンバブエドルまで、バナナは食後のヌーベルデザートです 』

 『 よくも作りしなが、ユユ式金星を! 』

 

 『『『『『『『『『『 ヒャッホ~~~~イッ!! 』』』』』』』』』』』

 

と、たった10機のリンガースパイトが、ツーマンセルで13万機に襲い掛かります。

 

「お前、歴史に名を残す悪女になるぜ。

 ルクレチア・ボルジアとか、カトリーヌ・ド・メディチとか、西太后クラスの」

 

「女として、妹にこんなに遅れをとるなんて、ジュン悔しい」

 

キーッってハンカチ噛むフリしてるジュン姉さまは遠すぎるから、とりあえずジョーのお兄ちゃん(ばっど)のお尻を蹴った。

 

「お~イテぇ」なんて嘯いてるけど、そんなハズない。わたくしのつま先の方が大ダメージだよ。

 

イッタ~い。

 

 

 

「どのくらい惹きつけられた?」

 

「約3万。おおよそ4割ってところね」

 

ケン兄さまの問いに、ジュン姉さまは即答。

 

「早晩、追いつかれてしまうな」

 

ほらね。ジョーのお兄ちゃん(はぁど)、やっぱり平気だったんだ。……って、追いつかれるってナンデ?

 

相手はあのちみっこい無人機だから、そんなに航続距離、ないでしょ?

 

『最初から宇宙に居た連中と、地球から上がってきた我々とでは、大元の軌道速度が異なるのだ』

 

ん? え~と?

 

「高速道路の合流車線に入ったばかりのダンプカーと、前のインターから走ってきてたオートバイじゃ、どっちが早いか解かるでしょ?」

 

あ~、なんとなく。

 

宇宙には重力がないから際限なく加速できるし、空気もないから自然に減速したりもしない。カタパルトかなんかで充分初速を与えられていれば、ムダな推進剤を費やすことも無い。

 

こっちの行き先が月と判っている以上、ようやく軌道上に上がってきたばかりのスーパーゴッドスパルタンでは、それ以前から加速し続けていた無人機を振り切ることは難しいんだ。

 

『イグザクトリィ!』

 

やはり成長著しいな。って、うむうむと頷きだしちゃった。

 

「でも、それじゃ」

 

10万相手に、斬った張った? スーパーゴッドスパルタンなら、出来なくないとは思うけど。

 

「そこで、ベルク=カッツェの策を借りることにした」

 

 

            『 アイデア料は高いぞえ 』

 

ん? ああ、タイムラグが酷くなってきたせいかぁ。カッツェ兄ぃのツッコミ(ボケ?)が遅かったのは。

 

それにしてもカッツェ兄ぃの策って、さっきのゴッドスパルタン打ち上げのことだよね?

 

それを借りるってことは、砲台はスーパーゴッドスパルタンのフェンサーあたりで、……。

 

じゃあ……、さっきのゴッドスパルタンそのものの役回りはもしや……?

 

「察しがいいな。俺も期待してるぞ」

 

ぎゃあ……、

 

 

 

 

 

                                つづく

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