皆さんも体調には気をつけてください。
「本当にこれで傷が消せるのか?」
身体中にコードを付けられた状態でレストが尋ねるとペルシカはええ、と頷く。
「貴方の身体が元に戻る際に傷が出来ないようにすれば消せるはずよ。…本当は別のボディを造ってそれにメンタルモデルを移した方がいいんだけどね」
「それは仕方ないさ。俺はまともに造られた人形じゃないからな。出来ないことを責めたりはしないさ」
レストはその出自が出自だけに違法製造された人形である。その為他の人形と違い、ダミーは造れるがメンタルモデルのバックアップが取れない為、傷のないボディを造ってそこにバックアップからメンタルモデルを移すといったことが出来ないのだ。
つまりそれはもし彼が完全に破壊されたらその瞬間からレストという人形はこの世に存在しなくなることになる。
話を戻すが、ペルシカが彼らに投与した薬は本来ならそのまま身体が幼児化するため、傷は残るはずだったのだが何故か傷が消えていた。当然このまま効果が切れれば傷も元に戻るわけなのでその際に彼の身体に小細工を施して傷が出来ないようにする算段である。(そもそもどんなメカニズムで幼児化したり元に戻ったりするかは彼女のみしか知らないが)
「うん、これで多分平気ね。なにぶん初めてのケースだから完全に消えるかはわからないけど、少なくとも手足の傷は消せるはずよ」
「それだけでも充分だ、ありがとう」
「どうもね〜。それで、貴方はこれからどうするの?」
「効果が切れるまでおとなしく部屋にいるよ。ノア、待たせてすまないな」
「いえ、大丈夫ですよ。それじゃあ行きましょうか。ペルシカさん、また今度」
はいよ〜と、ペルシカは二人を見送った後、機材を片し始める。その途中、ふと何か大事な事を忘れているような気がしたが忘れているなら忘れてるならそんなに大事なことではないだろうと考え、再び作業に戻っていった。
──
「〜♪」
「あの…ノア?いつまでこうしてればいいんだ?」
部屋に入ったあと、レストは現在進行形でノアの膝の上に乗せられて頭を撫でられていた。
「もうしばらくこのままでいさせてください。私だって、たまにはレストさんにこうしたいんです」
「…わかったよ。でも誰かが来そうなときは降ろしてくれ。流石に見られんのは恥ずかしい」
「はい♪」
しばらくの間そのままでいた二人だが、扉をノックする音が聞こえたのでレストは膝から降りる。
「誰だい?」
「MP5です。この前借りた資料を返しに来ました」
「わかった。今開けるが…驚かないでくれよ?」
「レストさん、それは無理がありますよ…」
「? 開けますよ…ってえぇぇ⁉︎どうしたんですかそれ⁉︎」
驚くMP5にレストは事情を説明する。説明を聞いたMP5はレストの周りをうろついてじっと見つめる。そのあとレストに近づき背を比べて自分の方が少し背が高いことを確認すると、ふふん♪と嬉しそうな顔を浮かべた。
レストが扱うMP5KはMP5の派生系であるため、銃種上MP5はレストの姉である。しかし知っての通り彼女は背が低く、レストとの身長差があるので知らない者から見ればレストの方が兄に見えてしまうわけである。
だが現在はレストが幼児化しMP5より背が低くなった事で視覚的にも姉になったわけなので彼女本人としては嬉しい心境なのである。
「え〜と、MP5?他に用がないなら…」
「も〜!せめて『姉さん』を付けてっていつも…あ、そうだ!」
ポンッと手を叩きMP5はレストにある提案を出した。
「この際ですから『MP5お姉ちゃん』って呼んでもらっていいですか?」
「は?いや、確かに声も高いし見た目こんなんだけど、中身はそのままだがら普通に恥ずかしいんだが…」
「お願いです!一回だけでいいんです!」
必死に懇願するMP5にレストは困った顔をし、ノアに視線を向けるが
「まぁ、いいんじゃないんですか?滅多にないことですし」
「えぇ…。ハァ、一回だけだからな?」
「ハイ!」
期待の眼差しを向けるMP5を前にレストは心の中で今は幼児だと何度か言い聞かせ、羞恥心を押し殺して声を出した。
「え、MP5…お姉ちゃん…」
「〜〜〜ッ!」
「わっちょっ!急に抱きつくな、頭を撫でるな〜ッ!」
(微笑ましいですね)
嬉しさのあまり抱きついて頭を撫で繰り回すMP5とそれに抵抗するレストをノアは温かい目で見守っているのであった。
──
満足げに出て行ったMP5と入れ替わりで入ってきたスミスは髪と服を整えてるレストを見つけてだいたいの事情を知った。
「随分揉みくちゃにされてたみたいだな」
「あぁ、えらい目に遭ったよ」
(まぁバレットに比べりゃまだ可愛いほうだな)
「隊長さんは一緒じゃないんですか?」
「バレットは色々あって今はDSRの部屋で保護されてるって連絡があった」
「保護…?何があった?」
「姉がショタコンで逃げたんだが、一旦匿ってもらったSASSは男の娘趣味でもう少しで文字通り着せ替え人形にされるとこだったらしい」
「「うわぁ…」」
二人がバレットに同情しているなか、スミスはある事に気づき、部屋をキョロキョロ見渡す。そしてレストに向かってこう尋ねた。
「おいレスト、ウェイターはどこだ?」
「……あッ!やばい置いてきたの忘れてた!」
すぐにレストはペルシカに連絡を取る。が、
「は?居なくなった⁉︎」
「ええ、私もさっき思い出して探したんだけど、いつのまにか出て行ったみたいなの」
わかった、と通信を終えてレストは現状をスミスに伝えるとスミスは顔を青くした。
「…ヤベェぞ、今のウェイターは記憶こそあるが見た目も中身も純真無垢な子供だぞ?もしM82A1やSASSに会ったらとんでもないことに…!」
「それだけじゃない、ペルシカに聞いたんだが…あぁなった時の記憶はバッチリ覚えてるらしい…」
それを聞いたスミスはしばし沈黙した。もし、ウェイターが彼女達の毒牙にかかった上で元に戻り、そのことを思い出したら…少なくともトラウマどころの騒ぎじゃない事になるのは容易に想像できた。下手すればウェイターがDG小隊初の離脱者になりかねなかない。
「……探せェェ‼︎手遅れになる前に、あの二人がウェイターを見つける前に俺らだけであいつを探し出せぇ‼︎」
二人の元々の目的がバレットな以上、一応連絡を入れるが捜索には参加させず、スミスら3人でウェイターを捜索することになった。
さて、当のウェイターはというと、レストのデータを取っている間おとなしく待っていたのだが途中で飽きてしまい、バレットとスミスのとこへ一人で行ってしまったのだ。一応出て行くときにペルシカに一言言っていたのだが、ペルシカはデータを取るのに夢中だったので適当に返事をしてしまったのだった。
訓練所に居るだろうなと思い訓練所に向かったのだが、なにぶん大人と子供では視点も違い、記憶はあるといっても人格は子供のそれなので場所があやふやになり、絶賛迷子中であった。
「たいちょう〜スミス〜?ど〜こ〜?」
しかも運の無いことにここに来るまで誰にも会っていないので場所も聞けないし心細いし歩き疲れたしでもう泣きそうになっていた。幸いなのはあの二人にも会っていない事だけだろうか。
そんな時、ウェイターは一人の人形を見つけた。しかもその人形はウェイターがよく知る人形だったのでウェイターは大喜びで駆け寄り、抱きついた。
彼女はウェイターの姿に戸惑い、混乱していた。果たして自分に抱きついてるこの子供は本当にウェイターなのかと。でもその疑問は次の一言でほぼ解決した。
「FALお姉ちゃん‼︎」
「え…?あなた…ウェイター、なの?」
うん‼︎と元気よく頷くウェイターに彼女─FALはあの生真面目な
なんだかんだ言って、レストは身内には結構甘かったりします。
でもMP5が前回の二人みたいな感じだったら全力で拒否しますし、場合によっては拳で抵抗するのも辞さなかったりします。(過去を彷彿とさせるので)
さ〜て、次回どうやってウェイターを料理しよっかな〜♪