「はいコイツ、知った顔だな。つまりパラデウスのスパイだ。コイツもスパイ、コイツも、コイツもォ‼︎あと…はぁー⁉︎ここの列の奴全員スパイじゃん‼︎オイオイ、連中の潜入スキルが高いにしてもいくらなんでもザル過ぎやしないかぁ?」
『ぐっ…』
リヴァイルの呆れた口調に画面の向こうの正規軍の士官達は苦い顔をした。
先日、本格的に万能者よりPownへの対抗策が出来始めたのだが、それに伴い他所にその技術が流れてはマズイとのことでスパイ狩りを行っているのだが、それにあたり元々パラデウスにいたリヴァイルが正規軍のメンバーのリストを見てスパイがいないか確認しているのだが、ご覧の通りそれなりの数が潜入している事が判明したのであった。中には結構な地位についている者もいる為、大概の情報はパラデウスに流れていると見ていいだろう。
「証拠がいるならそいつらマークすりゃ何かしら出てくるだろ。セキュリティが厳しいならオレに送れ。すぐに開いてやる。もちろんそれなりの物は頂くがな」
『それについては構わない。それで今後の憂いが消えるなら安い物だ。して、スパイがそちらに会った場合、向こうに気づかれる可能性はあるのか?』
「問題ない。このボディや声は生前の姿とかけ離れてるし、口調だって変えてたんだ。名前名乗らなければまず気付かないさ。向こうはオレの事は死んだと思ってるから、うっかりオレの名を出すなよ。いずれ気付かれると思うがまだその時じゃないしな」
その後幾つかのやりとりをしたあと通信を終え、リヴァイルは一息ついて椅子に深く座り込んだ。
「ふぅ…。にしても、これだけ大規模なスパイ狩りがこれで二度目、しかも今回はオレが関わった事でより正確に暴かれているとなれば向こうも大きく動くだろうな」
「そうね。年末の作戦時には戦場から離れたところにあった彼らの隠し基地が軒並みやられているし、それなりに追い詰められているかもしれないわね。……まぁそのおかげであの子たちは助かったわけだけど」
以前にこちらに輸送され、保護することになった子供ネイト達、彼女たちは今現在も元気に過ごしているのだが、リヴァイルの証言によるとあの場所は改造手術に不適格、もしくは余剰に『生産』してしまったネイト達の【処分場】も兼ねており、あのまま基地が襲撃されてなければ彼女達は処分されるか改造手術に成功した姉妹達の実戦練習の相手として殺されていた可能性があると言うのだから、どれだけパラデウスが人道から離れた行為をしているかが判明したのであった。
「連中が動けばこちらと接触する可能性もある。ならばそこから足取りを掴んで本拠地を暴くことも可能になる。そうなれば奴ら、ひいてはウィリアムの野郎をブチ殺してパラデウスを壊滅させることもできるってわけだ」
「随分とそのウィリアムって人を殺したがってるけど、何か理由があるの?」
「当たり前だ。パラデウスにいた頃は当然何人ものネイトと過ごしてたんだ。あの子ら見ればわかるが、どの子も人懐っこいし、オレの事も慕ってたんだ。そんなんと過ごせば情も湧くさ。だが、成長すれば改造されて自我を失い、よしんば上位種になれて自我を与えられても人格が変わって、そのまま使い潰しにされるのを自分の目的のために黙殺してるとはいえ、何度も見るのは案外キツいし、そんな仕打ちをするウィリアムに殺意や嫌悪感を隠して接するのはもっとキツかったさ。…なんだその顔は。オレだって人の心はあるぞ」
珍しく真剣な顔で語るリヴァイルに唖然とするペルシカだったが、彼の言い分には納得できるものがあった。
「なるほどねぇ。言い方は悪いけど、見殺しにしてしまった子たちへの贖罪ってわけね」
「そんなとこだ。それに奴の目的はかなりこっちにとってヤバいものだ。だがな…奴はその目的のために遺跡の技術を調べるんだが、どうも過程が目的になり始めてるんだよな…。早いとこなんとかしなきゃそのうちとんでもないことになるぞ」
「それあなたが言うの?」
「バカ言え。オレは現環境の再生と人類の復興及び革新の為に遺跡を利用してるのであって、あぁならない確固たる自信がある。理由に関してはまだ言えないがな」
「まぁ暴走しないなら良いわ。にしても、ここまでアレだと貴方の両親がどんな人か気になるわね…」
「お袋は普通の人だよ。親父は妻子持ちなの隠してお袋と付き合ってて、オレがデキた途端に端金置いてトンズラしたとんでもねー野郎だよ」
「そ、そう…」
思わぬ彼の家庭事情にペルシカは頬を引くつかせるのであった。
バレット達とリバイバーはこの日、要人警護の依頼を受け、人気のない街を依頼人の乗った車を二台で囲うように同じく車で移動していた。
「にしても、俺を警護に指名するとはなかなか豪胆なことで。俺元鉄血だぜ?(正確には違うが)」
「いやいや、去年の作戦でのあなたの勇姿はこちらにも聞き及んでますよ。寧ろ心強いですよ」
「そう言ってくれるとありがたい」
その後襲撃もなく道を進んでいくと、突然リバイバーの通信機が鳴り出したのであった。
「ん?なんだ…リヴァイルか。もしもし?今任務中なんだが『リバイバー‼︎今すぐその依頼人ふん縛って逃げろ‼︎』あ?なんだいきなり?」
切羽詰まった言い方をするリヴァイルに眉を顰めるが次の言葉でリバイバーはすぐにその意味を理解した。
『お前さんご指名する物好きがどんなやつか見てみたがな…
ソイツ、
「なっ…⁉︎」
『お前さんを指名ってことは奴ら十中八九お前さんがメッセルだって事わかってやがる‼︎つまり依頼自体がお前さんを捕まえる罠だ‼︎』
その直後、銃声が鳴り依頼人─とは名ばかりの敵であるが─の乗った車諸共バレット達の乗る車に襲いかかるが既に通信を彼らにも繋げていたため車から飛び降り事なきを得たが、シンパの車は本人と共に爆発し、向こうの仲間であるはずのパラデウスのシンパも攻撃したことに違和感を感じるも、銃撃の方を見ると白い人形の一団が姿を見せていた。
「オイオイマジかよ…⁉︎」
『敵はどれくらいいる!』
「ストリティ4にロデレロ2、ドッペルが2体それと……ニモジンとマーキュラスだ…‼︎」
『やはりか。今オレがヨルハで向かっているからそれまで保てよ‼︎』
何故リヴァイルがこちらに来るのかわからないが、恐らく目の前の二人に関係する事なのだろうと判断し、臨戦態勢に入るとニモジンが口を開いた。
「こちらの兵器を知ってる辺り、やはりリヴァイルはデジタルクローンに成功し、まんまと逃げおおせたみたいね。てっきりメッセルの内部に二重人格の形でいると思ったけど、違うようね」
「やはり狙いはリバイバー、正確にはリヴァイルか…!」
「ご名答、グリフィンの男性人形。こうも正確にこちらのスパイが始末されてるとなればこちらの事を知っている者が手引きしてると見るのは当たり前。となると、可能性があるのはリヴァイルのみと睨んだのですが当たりのようね。あなた方を始末したら次は彼です。お父様を騙し、裏切った罪…その身で償ってもらいましょう」
二人は長い袖の中からアームを伸ばし、配下の人形も各自の獲物を構え出した。
「一つ聞きたい。さっき吹っ飛ばしたあの男、お前さんらの金ヅルじゃなかったのか?」
「ええ。ですが彼の財源はもう殆どないのは把握済みですし、保安局も嗅ぎ回ってましたから。金の卵を産まなくなった鶏など、いても無駄でしょう?」
「なるほど。最後に一つ……俺たちが簡単に倒せると思ったら大間違いだぜ?」
今ここに、パラデウスとの戦いの火蓋が切られたのであった。
今回のパラデウスの目的としてはもはや歩くし音読するスパイリストと化したリヴァイルの始末だけど、デジタルクローンに成功してるから実質残機無限だからほぼ手遅れなんだよなぁ…
彼がこんなにも遺跡にこだわるのもキチンとした理由がありますが、それはまた後ほどです。