人形達を守るモノ   作:NTK

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今回でショタ回はおしまいです。


Code-12 小さな守護者-④

「……」

 

「……」

 

(もぐもぐ)

 

Five-seveNが部屋に入って見たのはルームメイトのFALが執事服を着た幼児にケーキを食べさせている光景だった。

彼女は眉間を抑えて目の前の光景が現実と受け止めると心底心配な顔をしてFALに言い聞かせる。

 

「…FAL、その子どこから攫ってきたの?悩みがあるなら聞くからとりあえず自首しましょう」

 

「まって話を聞いて」

 

「FNCには私から言っておくから、その子の親に通報されないうちに早く…」

 

「聞けって言ってるでしょ⁉︎」

 

「どうしたのお姉ちゃん?」

 

「『お姉ちゃん』って…FAL…あなた…」

 

「あーもうッ‼︎」

 

FALはドン引きしているFive-seveNを連れ出し、先ほどウェイターから聞いた話を話す。

 

「…という話なのよ。で、今保護してるってわけ」

 

「普通に考えればあなたがイカれたんだと思うけど、ペルシカか絡んでるなら一概にないとは言い切れないわね…」

 

「あなたねぇ…!」

 

「ま、とりあえずスミスに連絡すればわかる話ね」

 

そう言い彼女はスミスに連絡する。

 

「あ、スミス?ウェイターの事で聞きたい事があるんだけど…えぇ、今それっぽい子供をFALが部屋に連れて来てるんだけど…あなた声高くない?え?あなたも子供に?…わかったわ。じゃあFALの部屋にいるから…ハァ?食べないわよッ‼︎

 

「それで?スミスはなんて?」

 

「どうやら本当にその子はウェイターみたいね。でも薬の作用でメンタルモデルまで子供になってる状態だって。迎えに来るからそれまで預かっててくれとのことよ」

 

だから言ったじゃない、とFALが抗議したあと二人は部屋に戻る。

迎えに来るまでそんなにかからないだろうと思っていたが、当のスミス達は少し困った状況となっていた。

 

「…やべ、SASSじゃん」

 

「たぶん探してんのは隊長だけど、俺らも見つかったらヤバそうだから迂回するか」

 

廊下の先でSASSを目撃したため、遠回りすることとなった。

 

「FALさんの部屋にいるなら問題なさそうですね」

 

「そういやスミス、なんで食べるなよなんて言ったんだ?あいつってそういう趣味あんのか?」

 

「いや、保険だな。57は食べないって言ったが、いつ心変わりするかわからんから早く迎えにいくぞ」

 

さて、FALの部屋ではというとFive-seveNはじっくりとウェイターを見ていた。初めはてっきりFALがどっかから攫った子供に執事のコスプレをさせてるかと思っていたが、説明を受けた後で見るとところどころに面影があり、改めてウェイターが幼児化していると認識した。

 

(にしても、あの生真面目なウェイターがこんなに純真無垢な子供になるなんてね…)

 

「ご馳走さま〜!」

 

「…ウェイター、口にクリームが付いてるわよ。取ってあげるから動かないでね」

 

Five-seveNがティッシュをもってウェイターの口を拭くと、ウェイターはニパッと笑って

 

「ありがと、ごーななお姉ちゃん!」

 

(あヤバい、思ったより超可愛いんだけど)

 

一応言っておくが彼女にそういう性癖はない。しかし普通に子供は好きなので先ほどのウェイターの笑顔に参っていた。

ふとFALの方を見てみると、彼女は口元を抑えて後ろを向いていた。よくみると耳を赤くして肩をプルプル震わせていることから彼女も参っているのだろう。

 

(まぁ、普段の彼とのギャップがすごいから気持ちはわかるわ…)

 

ふと、彼女にちょっとした悪戯心が生まれ、ウェイターにひそひそ声で話しかける。

 

「ウェイター、ちょっといい?」

 

「なに?」

 

彼女はウェイターにある事を耳打ちするとウェイターはFALのところにトコトコと歩いて近づき、袖をつまむ。

 

「な、何ウェイター…?」

 

するとウェイターはとびっきりの笑顔でこう言った。

 

「FALお姉ちゃん、大好きっ!

 

「ブッ⁉︎」

 

予想外かつ破壊力のある一撃にFALは堪らず鼻血を噴き出しそのまま気を失った。(しかも幸せそうな顔をしているため側から見れば色々と残念な事になっている)

 

「あれ?FALお姉ちゃん倒れちゃったよ?」

 

「き、きっと疲れちゃったのよ…(ヤバイ…直視してたら同じ目に遭ってたかも…)」

 

けしかけたFive-seveN本人も予想外の威力に少し鼻血を出していたが何とか正気を保っていた。

しかし、ウェイターがティッシュをもって倒れてるFALに近寄って一生懸命に鼻血を拭き取っているのを見て昇天したのであった。

 

「あれ?」

 

──

 

「あ?またSASSかよ⁉︎さっきと場所離れてるはずだぞ⁉︎」

 

「いや、あれ多分ダミーだ。本気で隊長を捕まえるつもりか…」

 

「なんでその意欲を戦闘で発揮しないんでしょうね?」

 

さっきとは違う場所でSASSのダミーを見つけ、スミス達は再び動けずにいた。ダミーまで使ってるとなると彼女はあと一体ダミーを持っているのでこのままでは拉致があかないのは目に見えていた。どうしたものかと考えていたらスミスがおもむろに通信機を取り出したのを見たレストはある考えが頭をよぎった。

 

「…スミス、まさか隊長を生贄にする気じゃ?」

 

「まさか。バレットにちょっと頼みごとをするだけだ…あ、バレット?頼みたい事があるんだが…」

 

スミスはバレットにある頼みごとをしたあと、通信を切る。

 

「…よし、これで平気だ」

 

「確かに()()なら解決するが…いいのか?それだとSASSが気の毒な気がするんだが」

 

「じゃあ今すぐお前があいつのとこ行くか?」

 

「…遠慮しよう」

 

「どっちにしろ流石にアレはヤバイからいい薬になるっしょ」

 

彼がバレットに何を頼んだかというと、端的に言えばダネルにSASSの事をチクったのである。

SASSはダネルの事を慕っているので効果的だが、さらにダネルは以前配属していた基地で不当な扱いを受けていたのをそこの指揮官を拘束する形で助けたので彼らには恩義がある。

その彼らの頼みなら聞くだろうし、彼らに恩義がある事はSASSに話してあると聞いている。つまり、『恩人が困ってるのにその恩人に自分の欲をぶつけようとした』SASSを許せるはずもなく、どう考えてもSASSはダネルに鬼説教+訓練コースは確定だった。

五分ほどでダネルはSASSを見つけ、捕まえた。

 

「ひっ⁉︎な、なんですかダネルさん⁉︎」

 

「バレットから全部聞いたぞ…!お前、あの人に女装させようとしたんだって?」

 

「あ、いや、えっと…その…」

 

「私は前にあの人達に助けられたからあの人達が困ってたら助けてやってくれと言ったよな?なのにお前という奴は…!その性根を叩き直す必要があるな」

 

「えっと、具体的には?」

 

「ペルシカ考案の対物ライフル用のハードな訓練を受けてもらう。そのあとは説教だ」

 

「あの、私は対物ライフルじゃ…」

 

言い訳無用。今頃私のダミーがお前のダミーを捕まえてるだろうから、早く行くぞ」

 

「ひいィィ⁉︎」

 

SASSはダネルに引きずられるように連れてかれていった。やがてダミーもいなくなった事を確認するとスミス達はFALの部屋まで向かっていった。

余談だが、バレットはついでにM99にもチクったので私服を漁られた事で彼女からも説教を受けるのだがそれは別の話である。

 

────

 

「すまないFAL、待たせt…」

 

「ん〜〜♡」

 

スミス達が見たのはめっちゃデレッデレな顔でウェイターを抱きしめて頬擦りをしているFALの姿であった。ちなみにFive-seveNは希望の花でも咲きそうなポーズで床に倒れていた。

何があったか説明すると、

 

FALとFive-seveN起きる

心配そうなウェイターと目を合わせる

ウェイター、二人が無事なのを見て安心し笑顔を見せる

2度目の笑顔でFive-seveNダウン&FAL、サヨナラ理性

良し、愛でよう←今ココ

 

(あーあ、ちょっと遅かったかぁ…)

 

スミス達に気がついたFALはすぐさまウェイターを離して何事もなかったようにしようとしたが、少し遅かった。

 

「ず、随分遅かったわね…」

 

「まぁ色々あってな。で、その間ちっこくなった弟とたっぷりスキンシップをとってたと」

 

「いや、あまりにも純粋だったからついね…でも、この事って元に戻ったら覚えてないんでしょう?」

 

そう尋ねるFALにスミスは非情な現実を突きつける。

 

「ところがどっこい、覚えてるんだよなぁ…だからあいつに食べるなって言ったんだ」

 

そこまで聞くとFALはしばし固まったあと、ボフッ!という擬音が出そうな感じで顔を赤くした。

 

(え?嘘⁉︎今までの全部覚えて…⁉︎)

 

「まぁ…食べなかっただけでいいんじゃねぇの?しばらく気まずいだろうけど、頑張れよ?行くぞウェイター」

 

「じゃ〜ね〜FALお姉ちゃん〜!」

 

(こいつ、元に戻ったらしばらく部屋から出て来なそうだな)

 

明日のウェイターの心配をしながら、スミス達は立ち去っていった。

 

────

 

さて翌日、元に戻ったバレット達だが、バレットはSASSから謝罪を受け、自分の趣味に他人を巻き込むなと注意だけして許す事にし、レストは元に戻った際にペルシカの言っていた通りに傷がほとんど消え、ペルシカにこれを応用して自分と同じような人形にも同じように出来ないか頼む事にした。さて、ウェイターはというと

 

「あー、ウェイター?生きてるか?」

 

「隊長、すみませんが今は一人にさせてください…自殺はしないので安心してください…」

 

「わかった…気を強く持てよ?」

 

昨日の事を思い出したウェイターは真っ赤になって部屋に篭ったきり出てこなかった。ウェイターの気持ちを察したバレット達はそのまま放って置くことにした。

 

「ペルシカ、あれ上手いこと記憶処理出来ないのか?」

 

「無理ね。あれは一種のバグみたいなもので、しかも結構複雑だから下手すると記憶全部飛ぶわよ?」

 

「そうか…」

 

嘘 で あ る

この女、この程度の問題など2時間もあればコーヒー片手に余裕で解決できるのだが、正直面倒なのと普段ポーカーフェイスをしているウェイターが赤面しているのが面白いのでもっともらしい嘘をついて放置する事にしたのである。

 

しばらくの間、ウェイターとFALが顔を合わせるとお互いに気まずそうな顔をしてすれ違う光景が目撃されたのであった。




いやね、隊長だけ姉不遇されるのはあれだし、襲われずにどうすっかなって考えたらこうなったんですよね。
そういや今回スミス何もされてねぇな…あとで何かさせるか。

「え?」

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