今回は作戦会議です。
案内をしながらバレットは後ろの二小隊について考えていた。
(S09P基地…確かペルシカが後見人をしている娘が指揮をしているところだったか…そういや前に彼女が暗殺されかけた時にS06の人間が何人か急に死亡扱いになったりこっちに来たりしたから恐らく暗殺に一枚噛んでて無関係な人間はこっちに、それ以外は報復された感じか…ならそっちは人間に対するセーフティは問題ないか。なら気にするのは…)
「一応お伺いしますが、今回は対人戦となります。人間に対するセーフティは問題ないですか?」
「わしらのところは問題ない。これでも色々くぐり抜けておるからな」
「こちらも問題ない」
「わかりました(ふむ…だとすれば…)」
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全員がブリーフィングルームへ集まったところで、バレットが今回の作戦について説明する。
「すでに連絡は受けていると思いますが今回の作戦は、某地区にあるアリーナ内で二日後に開催される闇オークションの参加者とその警護の殲滅及び奴らに拉致された人形達の救出です」
バレットがそういうとスクリーンにアリーナとその周りの地形が映し出される。
「ん?さっきと口調が違くないか?」
「それはなバルカン、あいつは指揮官がいる時はああいう口調になるんだ」
「へー」
「む、それならいつもの口調でも私は構わないが」
「そうですか、ならそうさせてもらう。それと今回の作戦ではアレクサンドラ指揮官、あなたに最高責任者の立場をとってもらいたい」
この場にいるメンバー内で指揮官は彼女しかいない。原則として人形は指揮官の指示に従う事を考えれば妥当といえよう。
「わかった、承諾しよう。だがいいのか?この場所を特定したのはそちらの成果では?」
「それに関しては構わない。人形の救出が俺達の本懐であり、誰の手柄かはそこまで拘りはない。それとこれが俺達のデータとペルシカから渡されたEA小隊のデータです」
アレクサンドラ指揮官はデータを受け取り、それを元に作戦を考える。
しばらくした後顔を上げた。
「…よし、これから作戦内容を説明する」
今回の作戦において行動する部隊は大きく分けて二つ。アリーナ周辺の敵を排除する部隊とその後、アリーナ内に入って制圧及び救出する部隊である。
周辺の敵の相手をする部隊は、EA小隊全員、バレット、WA2000、MG3で編成し、残りは全員侵入部隊となり、アレキサンドラ指揮官も侵入し、戦闘しつつ指揮をするとのことである。
まず始めにペイロードの特殊外骨格による爆撃で奇襲し、敵戦力をある程度削りその後残りのEA小隊がアリーナ正面口から攻撃、敵を引きつけ、バレットとWA2000、MG3はそのサポートをする。
周辺の警備がEA小隊に集中したところで侵入部隊が大型装甲車にて裏口から強引に突入し、制圧を開始するといったものである。
EA小隊の脅威度は相手もその身をもって知っているため、彼女達を潰そうと総力を挙げるのは明らかである、もちろん幾らかはその場に残る可能性もあるため、突入後は装甲車を爆破し外部からの追撃を困難にさせる。
アリーナ内の構造はというと、正面と裏口以外にもいくつか出入り口はあるがなにぶん廃墟化しているため、出入り口が殆ど崩れて通れなくなっており大きな出入り口が正面と裏口のみとなっている。
そのため装甲車を爆破することで裏口を潰して襲撃すればオークションの参加者は正面口に逃げるしかないが、正面ではEA小隊と警備部隊が戦闘をしているため巻き込まれるか侵入部隊に追撃されるかの二択を強いられることになる。
「以上が作戦内容だ。何か質問はあるか?」
するとバルカンが手を挙げた。
「あー、内容というより、そもそも何でオークション当日に襲撃するんだ?今からじゃダメなのか?」
バルカンの言うこともわからなくはない。人形達が大量に拉致されているとなれば当日といかず今すぐ彼女達を救出しようと考えるのも無理はない。
が、そうしない理由は二つある。それについてバレットは説明する。
「理由は二つ。一つは拉致された人形達は全員が全員アリーナにいるわけではないとこちらで捕らえた奴から聞いている。そのため今襲撃すればアリーナにいる分は救出できるがそれ以外は救出できなくなる。しかもその場合オークションは当然中止になるため、『
「これを機に奴らの資金源を潰すため、じゃな?」
ナガンの言葉にバレットは頷く。
「その通りです」
「ん?どういう事だ?」
「前々から気になってはおった、わしらも幾度となく奴らを叩いてはおるが、連中の勢いは衰えるどころか自立兵器や強化外骨格を導入しておる。その資金源はどこからきているのかと。こういった連中から資金を得ているのであればそれらを潰せば奴らの弱体化を狙える。故に資金提供者が集まる当日に襲撃を行うというわけじゃよ」
そこまで聞くとバルカンは納得した顔をした。
「ちなみに、この中に大型装甲車を運転できるのは?」
「あ、俺が出来るよ。ちょっと荒いけど」
「ならスミス、君に運転を任せよう」
了解、とスミスが返事をし、その後いくつか確認事項を行ったところでレストが口を開いた。
「全員聞いて欲しい。参加者の中にこいつらがいたら教えてくれ。作戦の都合上、殺してしまってもいいがその時は報告を頼む」
そういうとスクリーンに12人の男の顔と名前が映し出された。それを見たバレットらDG小隊は息を呑んだ。
「レスト…!いいのか?」
「レストさん…」
「大丈夫だ。俺は彼女達を信じる」
「…理由を聞いてもいいか?」
アレキサンドラ指揮官の質問にレストは他言無用で頼むと言い、口を開く。
「…俺は元々、男娼人形だ。こいつらはかつて俺を利用した客だ」
「っ⁉︎……なるほど、了解した。みんなもわかったな」
彼女達はレストの凄惨な過去に驚きつつも了承した。
「…感謝する」
「他に質問は?…ないなら一旦この場は解散し、開催までの間は訓練やシミュレーションを行うとしよう。ペルシカ主任、シミュレーターの製作を頼めるか?」
「任せておいて」
「それとペイロード、今回の作戦では君の爆撃が要だ。それでどれくらい敵に損害を与えるかで作戦の成否に大きく関わる。誤ってアリーナを爆撃しないためにもよく訓練をするように」
「は、はい‼︎」
「では解散だ」
解散した一行はそれぞれ突入部隊と外部警備排除部隊に分かれ、訓練に誘う。
「レストさんでしたっけ?訓練に付き合ってもらって良いですか?対人戦のやり方を教わりたいので」
「わかった。G36C、この後一〇〇式と訓練するだが、どうだ?」
「是非ご一緒させていただきますわ」
「ならわしらも
「り、了解です…」
「最前線の実力、見させてもらいますよ、ナガンばーちゃん」
「…あー、スミスとやら、そのばーちゃんとやらはやめてくれんかの?」
「ん、これは失礼」
(あやつ以外からそう言われるのは違和感があるの…)
レストは一〇〇式とG36Cと、スミスはナガンとUSPコンパクトと訓練をしに向かっていく。そんななか、ウェイターはマーダーに呼び止められる。
「ねぇあなた。少しだけ良いかしら?」
「…手短にお願いしますよ、私も訓練があるので」
ウェイターは先ほどのことから彼女に警戒心を抱きつつも彼女に同行する。
部屋に入ったところでウェイターは口を開く。
「用件は何ですか?もし妙な真似をするなら即刻ペルシカさんに連絡しますよ」
「大丈夫よ、ただ一つだけ気になったことがあってね。最初に見たときに気づいたわ。─あなた、澄ました顔をしてるけど、その瞳に憤怒を映し出してるわね。それと、深い絶望も」
「……」
「あのレストって人形も中々の闇を持ってるけど、あなたも同じくらいのモノを抱えてるわね?あなた見たところ古い型の人形みたいだし、過去に人権団体に大切な人でも殺されたんじゃ─」
するとウェイターはマーダーの胸ぐらを掴み上げた。その目は珍しく怒りに満ちていた。
「それ以上私の過去に踏み入れるのはやめて頂きませんか…!」
「アハ♪図星みたいねぇ?本当はあなたを滅茶苦茶にしたいけど、今はやめておくわ。でも、その怒りの理由を教えてもらえるかしら?」
「貴女に教える義理はありません」
そういいウェイターは部屋から出ようとするが、一旦立ち止まった。
「…一つだけ教えます。私が民生用から戦術人形になってDG小隊にいる理由には
「ふーん…」
では失礼します、とウェイターは部屋から出て行く。実を言えばオークションのカタログを見たときにからウェイターは気が立っていた。
そのカタログには『2058年製のメイド人形』と書いてあったのだ。
(確かに
──
オークション会場にて、捕らえられているメイド人形を見て一人の警備兵が笑っていた。
「ほー中々の上玉じゃねぇか」
「手を出すなよ。大事な
へいへいと、男が去っていく。
そのメイド人形は震えながら今までのことを考えていた。
(これは罰なんだ…
そして二日後の時が流れ、オークション殲滅作戦が始まろうとしていた─
DG小隊所属、ウェイター。その過去に何があったのか?そしてバタフライエフェクトとは?それはコラボ終了後に説明します。
次回はいよいよ作戦開始です!