今回はようやく作戦開始です!
ある日の記憶─
『ウェイター…メンテナンスが終わったら、早く帰ってきてね?』
『わかりました、お嬢様。では、行って参ります』
一人の少女に見送られながら、在りし日のウェイターはメンテナンスを受けにI.O.Pへと向かって行った。
だが場面は変わり、ウェイターは医師からの報告を受け、膝から崩れ落ちていた。
『嘘だ、嘘だ…嘘だァァァァッ‼︎』
────
(…ッ⁉︎また、
オークション殲滅作戦が始まり会場へ向かう途中、ウェイターは過去を思い出していた。
マーダーに過去の事を触れられたあの日以降、ウェイターは何度か過去の事を思い出しており、少しばかり精神をすり減らしていた。
しかし、作戦に支障をきたす訳にはいかないと彼は思い、気丈に振る舞っていた。そんな彼の様子を見てか、バルカンが彼に声を掛けた。
「なぁウェイター。マーダーの事で気にしているならすまない。私がアイツを止めてれば…」
「いえ、確かに気にはしてますが、それほどではありませんよ」
「本当か?でも、なんかあったら教えてくれよな?」
「わかりました、お気遣いありがとうございます」
ウェイターはその後深呼吸をし、銃を握りしめる。
(お嬢様の為にも、なんとしても彼女を助け出さなくては…!)
────
「WA2000、配置完了よ」
「MG3、配置完了だ!」
「XM109、配置完了です」
「バレット、メイン及びダミー共に配置完了」
「了解。五分後に作戦を行う。各自気を引き締めておいてくれ」
アリーナ周辺でそれぞれあらかじめ決めておいたポイントで屋外サポート部隊は報告をする。
EA小隊はコスト面で、S09P基地とアレクサンドラ指揮官の部隊は遠方からの救援故にダミーが持ち込めず、現状ダミーが使えるのはDG小隊のみであったが、それでも充分すぎる戦力である。
そんななか、作戦の口火を切る役目を任されているペイロードはいつも以上に緊張していた。
(うぅ…お兄ちゃんと一緒にシミュレーションして9割近い命中にしたけど、もし失敗したら…)
そんな様子を見てか、バレットはペイロードに通信を行う。
「ペイロード、そんな肩肘張るな。シミュレーション通りにやれば平気だ」
「で、でも…」
「大丈夫だ。もしもの時は俺が撃ち落とすからお前は命中させる事だけ考えてな」
「お兄ちゃん…わかった!私、頑張っていきます!」
「あー、MG3?さっき彼、撃ち落とすって言ってたのは私の気のせいかしら?」
「あたいもそう聞こえたから気のせいじゃないと思う…」
────
「3…2…1…作戦開始‼︎」
「XM109、いきます‼︎」
ペイロードは背中の
放たれたロケット弾とグレネード弾は演算した通りの場所に向かっていき─
一発もアリーナに着弾させる事なく命中し、そこにいた敵を吹き飛ばしていった。
「XM109から指揮官へ!全弾命中!」
「よし!EA小隊、全隊突撃!」
「よっしゃぁ‼︎撃って撃って撃ちまくるぞ!」
「地獄と絶望を味あわせてあげるわぁ♪」
「みんなの怒りの炎を喰らえぇぇ‼︎」
「これでも喰らいなさい‼︎」
アレクサンドラ指揮官の命の元にバルカンらが一斉に躍り出て各々の獲物を撃ち放ち、敵部隊を消し飛ばし、引き裂き、燃やし尽くす。
今回の作戦に当たって、フレイムとデストロイヤーはアリーナ正面の敵を、バルカンとマーダーは彼女らから見て両サイドの敵を相手するよう指示してある。理由としてはバルカンとマーダーの武器は両者共に破壊力に優れており、例え強化外骨格を装備した敵を撃ったとしても弾が貫通してアリーナに被害を与える可能性があった。そのため正面の敵はフレイムとデストロイヤー、そしてバレットらサポート部隊に任せて相手をしない事にしていた。
また、裏口付近の敵を引きつける関係上、裏口付近の敵がこちらに攻めてくるのは両サイドからとなる為かえって都合が良いのである。
また、撃ち方に関してもいつものように撃ちっぱなしではなく、本来の使い方と同じく数秒間のみ撃つようにしていた。こうする事で撃ってる時に近くを攻撃されて射線がブレてアリーナに被弾する可能性を下げるようにしていた。しかし、これに関しては本人の性格上そういつまてもそうしてるわけがなさそうだが。
さて、突然の爆撃と襲撃に敵部隊は混乱の最中にいた。
「げぇっ⁉︎バルカン⁉︎」
「他の連中もいるぞ‼︎裏口の連中も呼んでこいっ‼︎」
すぐにバルカン達に戦力が集中し始め、バルカン達を潰さんとする。しかし、バレット達がそれを阻む。
「WA2000とMG3は歩兵を頼む!ペイロード、強化外骨格の奴を殺るぞ!」
「は、はい!」
そういうや早いが、バレットは強化外骨格を装備した男を撃ち倒す。さらに二射、三射と撃ち次々と敵を屠っていく。ペイロードもバレット程の速射ではないが着実に敵に命中させ、大穴を開ける。
「あんな速射が出来るなんて…あの二人、本当に対物ライフル?M2HBの間違いじゃないのか?」
「知らないわよ、私達もサポートするわよ!」
MG3に言葉を返しながらWA2000も狙撃を開始する。最前線の基地所属は伊達ではなく、一射一射正確に敵歩兵を仕留めていく。MG3も負けてはおらず、次々に敵をなぎ倒す。
敵部隊は狙撃されている事には気づいているが、探そうとすればバルカン達の餌食となり、かといってそちらを相手すれば狙撃され、後手後手の対応を強いられていた。
──
アリーナ裏口周辺
「な、何だ今の爆撃は⁉︎」
「バルカンとその一味が正面口にやってきたって連絡が入った‼︎全員で潰しに行くぞ!」
「全員⁉︎ここの警備はいいのか?他に仲間がいたら…」
「あいつらと組むような物好きはいねぇよ!さっさと行くぞ!」
裏口の警備兵は揃って正面口へと向かっていった。
それを離れた場所で止めていた大型装甲車の中で見ていたスミスは一言呟いた。
「…いるんだよなぁ、その物好きが」
「てっきり一割くらいは残るかと思ってましたが、よほどEA小隊に辛酸を舐めさせられていたんですね」
「よしスミス、すぐに突入してくれ」
「了解!全員舌を噛まないよう気をつけな‼︎」
スミスは装甲車のエンジンを入れ、アクセルを全開にする。装甲車は裏口に向けて一直線に駆けていく。そして─
「オールハイルゥゥゥ─グゥゥリフィィィンン‼︎」
スミスは雄叫びをあげながら装甲車は裏口のガラス扉を突き破って中に侵入する。その後スミス達は装甲車から降りアリーナの奥へと侵攻する。
「アレクサンドラから屋外部隊へ!アリーナ内部に侵入成功!ただし、裏口付近の敵が全てそちらに向かったので注意せよ!」
了解!と屋外部隊からの返答が来るとアレクサンドラ指揮官はHK433アサルトライフルを構え、義眼のアシストを用いて廊下の敵を撃ち倒す。
オークション会場では先ほどまで競りで盛り上がっていたが、突然の爆撃と屋内で響く銃声でざわついていた。
やがて銃声が近づいていき、扉を蹴破ってレストを先頭に侵入部隊が現れ、FALとウェイターが近くにいた司会役の男を撃ち倒す。
「ヒィィ⁉︎」
「逃げろぉ‼︎」
参加者達が叫び声を上げて逃げ出すが、一箇所に集まり過ぎてつっかえていた。殿を務めていた警備兵が銃を撃つが、G36Cのフォースシールド、一〇〇式の桜逆像により防がれ、その隙をG36とUSPコンパクトが突き、返り討ちにする。
別の警備兵が全員の死角となる位置に隠れ、射撃しているアレクサンドラ指揮官を狙おうと身を乗り出した途端に、事前に未来予知を使っていた64式7.62mm自動小銃に頭を撃たれ、倒れていった。
(…いた!)
レストは一人の男を見つけ、床を蹴って跳躍して男の前に降り立つ。その男はレストの復讐相手の一人であった。
「なっ⁉︎ミー…」
「黙れ」
そう告げるとレストは男を撃ち抜く。
「レストさん!こっちにもいます!」
G3に呼ばれてレストが振り向くと、足を撃たれた男が呻きながら横たわっていた。レストはその男を撃ち殺すとG3に質問した。
「何故わざわざ生かしておいたんだ?殺してもいいっていったはず…」
「こういうのは自分の手でケリをつけるべきと思いました。それに、あなたは私の遠縁の弟みたいなものですから」
レストが持つMP5K、そのバリエーション元のMP5のベースはG3である。それ故に彼女はレストの復讐相手を生かしておいたのである。
「…ありがとう、だがそれで死なれたら目覚めが悪い。これっきりにしてくれ」
「わかりました」
──
一方、屋外部隊はというと元々正面口付近にいた敵部隊はほぼ壊滅し、裏口周辺からきた部隊の相手に移っていた。
「バルカンさん!その先伏兵がいます!」
「わかった!ウオラァァ‼︎」
「デストロイヤーちゃんはアリーナに近過ぎです!フレイムさん、援護して退がらせてください!」
「わ、わかったわ!」
「了解!」
ペイロードは上から敵の動きをみてバルカンらに指示を飛ばしていた。仮隊長に選ばれた以上、ちゃんと指揮をしなくてはと事前にバレットとアレクサンドラ指揮官から指揮のやり方を教わっていたのであった。
そんななか、マーダーはこの状況に飽き始めていた。
(初めこそ楽しかったけど、なんか物足りないわね〜。…ん?)
マーダーの視線の先には、スミス達侵入部隊から逃げてきたオークション参加者達がアリーナ正面口から出てきて、呆然と立っていた。
(アハ♪獲物、見〜つけた♡)
マーダーは狂気の笑みを浮かべながら参加者達の元に走っていき、粒子ブレードを展開し、参加者達に斬りかかった。
「ウワァァ⁉︎」
「ギャァァァ‼︎」
「アッハハハハッ‼︎いいわぁ、無力な奴を一方的に屠っていくこの感覚!本当、たまらない!キャハハハハハ‼︎」
「な、何よあれ…」
「本当に味方なのかよ…?」
参加者を次々斬り殺しながら狂笑をあげるマーダーにWA2000とMG3は戦慄していた。バレットも彼女達程では無いがマーダーに危機感を抱いていた。
「ペイロード…彼女は本当に大丈夫なのか?」
「ええ…。ペルシカさんの話ですと、マーダーさんの体内には万が一の為の小型爆弾が埋め込まれているようですので大丈夫かと…」
「そうか…」
そうこうしているうちに敵の数は僅かとなっていた。
その時だった。一人の敵がバルカンに向けてRPGを発射した。
「バルカン先輩、危ない!」
「え?」
バルカンが振り向いた後、爆発が起きた。
──
アリーナ内でも敵の数が僅かとなっていくなか、一人の男を撃ち倒したナガンは椅子に隠れリロードを始める。だがそれを見つけた3人の男がナガンの背後に向かうのをスミスが見つける。
「ナガン!うしr─」
スミスが言い終えるより早く、手早くリロードを終えたナガンは振り向きざまに素早く三発撃つ。放たれた弾丸はどれも正確に男達の頭を射抜き、沈黙させた。
「すげ…!」
「案ずるな。いくら年寄りでもそれくらいわかっておったわ」
「お見それしました」
一方、FALとウェイターは拉致された人形が集められているであろう部屋の前まで移動していた。
「いきますよ、FAL姉さん」
「ええ」
ウェイターが扉を蹴破り、二人は中に入る。
中には警備兵の姿はなく、人形達が怯えながらこちらを見ていた。FALは彼女達に優しく声を掛ける。
「安心して、私達はグリフィンの部隊よ。もう大丈夫だから」
また、ウェイターは人形達の中から誰かを探していた。すると、一人のメイド人形がウェイターを見て驚いていた。
「え…?ウェイター執事長…⁉︎」
「…リリィ⁉︎やはり捕まってたのは貴女でしたか!」
「知り合いなの?」
「ええ。民生時代の同僚です。てっきり
「私…
泣きじゃくる彼女をウェイターは優しく抱きしめる。
「大丈夫です…貴女が生きてると知れば、お嬢様も喜ぶと思います」
「っ⁉︎お嬢様は生きているのですか⁉︎」
「ええ…一応は…」
そう言うウェイターの顔は、どこか哀しげであった。
──
「こちらアレキサンドラ。内部の敵は一掃した。負傷者は無し、そちらは?」
「こちらバレット。こちらも敵を殲滅したが、バルカンが攻撃を受けて脚を負傷したが命に別状はない」
「了解、こちらは人形達を連れて回収ポイントに向かう。そちらも移動を頼む」
「了解」
あの後バルカンは間一髪で直撃を避けたが、爆発の衝撃で脚を負傷したのであった。一方、マーダーは案の定死体を喰べており、それを見てしまったWA2000とMG3はグロッキー状態となっていた。バレットが平気なのはその手の映画をよく見ていたからである。
「…マーダー、そっちに侵入部隊が来るから喰うのをやめろ」
「ング…しょうがないわねぇ」
「…こやつも喰うのか…」
「…も?」
バレットがナガンの言葉に疑問を持つなか、レストは外に出て死体の顔を確認する。
(損傷は酷いが…6人いるな。中には4人いたから、あと2人で俺の復讐は終わる…!)
レストが自身の復讐の終わりが見えたことを自覚するなか、スミスはバルカンの側に駆け寄る。
「大丈夫か?」
「まぁ、とりあえずは…悪いけど、肩貸してくれないか?」
「いや、こっちの方がいいな」
「うわっ⁉︎ちょ、ちょっと!」
スミスはダミーにバルカンの銃を持ってくよう指示して、バルカンをお姫様抱っこで持ち上げて運び始めた。
少し運んだ後、バルカンは身をよじらせる。
「あ、あの…スミス?その…」
「恥ずかしがるなよ、怪我してんだから大人しくしてなって」
「そうじゃなくて…手…」
「手?…⁉︎わ、悪い!わざとじゃないんだ!」
スミスが自身の手に目をやると、左手がバルカンの胸を掴んでいたのに気づき、慌てて手の位置を変えた。バルカンは顔を少し紅くしながら、
「いや、それはわかってるんだけどさ…気をつけてくれよな…?」
「お、おう…」
そんなトラブルが起きたが、一行は回収ポイントに辿り着く。
こうして、オークション殲滅作戦は終了したのであった。
5700字越え…疲れた…。
スミスの突入時の叫びは「
どうだろう…上手く動かせたか不安ですが、どうでしょうか?
最後のシーンはoldsnake様と相談して書きましたね。
次回でコラボ回は終了します。