シュトロハイム少佐がグリフィンの制服を着ている夢を見たのですが、これって書けって事ですかねぇ?
レストのタトゥーを消すため、DG小隊は16Labへと足を運んだ。
「念のため聞くが、本当に消せるのか?」
「ええ、人と違ってあなたのは消せるわよ。んじゃ始めるからあなた達は一回出て行ってくれる?」
「わかった。レスト、また後でな」
「ああ」
別室にて待機している間、ノアはレストの施術が終わるのを心待ちにしていた。
「ノア、嬉しそうだな」
「ええ。やっとレストさんの元の顔が見れるようになるのと、レストさんが復讐から解放されるのが嬉しいんです」
「そうだな…だいぶかかったしな。それに、あいつは随分変わったよ」
「最初に会った時より随分と丸くなったよな」
バレットとスミスがそう言うと、ノアはある興味が湧いてきた。ここに来たばかりのレストはどんな感じだったろだろうか?
そう思い、ノアは思い切ってバレットに尋ねてみた。
「隊長さん、ここに来たばかりのレストさんってどんな感じだったんですか?」
「レストがここに来た時か?うーん、まぁ話してもいいか。そもそもあいつを娼館から助けたのって俺とスミスなんだよな。あと他に何人か戦術人形を連れてな。救出後にあいつが戦術人形になったって聞いて、俺が引き入れた。その頃のあいつはかなりの人間、もとい男性不信だったな」
「当時はDG小隊は二人しかいなかったしな。他の手を借りる必要があったしな。それに、そん時はまだ俺は今の名前じゃなくてただのS&WM500で、バレットはM107だった」
「へー、それで今の名前になったのはいつなんですか?」
「レストが入隊してからだ。というか、あいつの名前は俺が付けたんだ。その後すぐに俺とスミスだけには心を開いた感じだったな。その後は社長や職員と、だんだん男性不信を治していったよ」
────
回想
※一時的に彼らの名前を銃名で表記します。
グリフィン本社の一室で彼─MP5Kはこれから自分が入隊する隊の隊長と副隊長が来るのを待っていた。
(DG小隊…現状、男性型戦術人形のみで構成された対人部隊…。彼らに付いていけばいずれ俺を弄んだ奴らに辿り着くはず…!だが、何故あの二人は俺みたいなやつを隊に入れようとした?助けてくれたのは感謝するが、もし二人が奴らと同じ趣味を持ってるのであれば…!)
そう考えを巡らせながら待っていると、ペルシカを含めた三人が部屋に入ってきた。
「よっ。あんたがMP5K?俺はDG小隊の副隊長、S&WM500だ。よろしくな」
「DG小隊隊長のM107だ」
「あぁ…よろしく。…お前、随分長い名前だな」
MP5KがS&WM500を見ながらそう言うと彼は困ったような顔で
「そ〜なんだよな〜。俺もM107みてーにM500って略したいんだけどさ、それだとショットガンの方と名前被るから却下されたんだよ。な〜んであとに開発する方に名前譲んなきゃなんねーんだよ?」
「あなたと違ってあっちは量産予定があるからよ。それでMP5K、今日からあなたはDG小隊の三人目の隊員として動いてもらうけど、何か質問は?」
「一つだけある。…なんで俺みたいなやつを隊に入れようとした?知らないならともかく、あんたら二人は俺を助け出したんなら知ってるだろ?俺が男娼人形だった事。なのに何故俺を引き入れた?」
その質問に二人は少し黙りこみ、M107が口を開いた。
「…まず前提として話すが、俺ら二人に『そういう趣味』は無い事を念頭においてくれ」
「…わかった」
「俺がお前を引き入れた理由は単純な話だ。お前が俺と同じ男性型戦術人形だからだ」
何か特別な理由があるのかと考えていたが、意外すぎる答えにMP5Kは一瞬キョトンとした顔を浮かべたあと、思わず聞き返した。
「…は?それだけか?本当にそれだけの理由なのか?」
「あとは、お前SMGだろ?俺はRF人形だから前衛がこいつだけだったから前衛でもう一人欲しかったってのがあるな」
「いやM107?そう言っているがお前結構な頻度で前出てるだろ?しかも対物ライフルの射速じゃないからなあれは?」
S&WM500が口を挟むが、無視してM107は言葉を続ける。
「別にお前がロクな目に遭ってないから復讐を手伝ってやろうとか同情的なものじゃないさ。俺らみたいにハナから戦術人形として造られたんならあれだが、民生人形で男性型戦術人形になるのはかなり珍しいんだ。だから、仲間にしたいって思った。そんな単純な理由だ。お前が過去にどんな事があったとしても関係ない」
「…俺といる事でお前らに変な噂が流れたとしてもか?」
「そんなもん言いたい奴に言わせとけばいい。第一、お前の過去は口外させない」
一番の懸念を割とアッサリと流したM107にMP5Kは驚いていた。今まで彼を見ていた男たちは彼を欲望のはけ口として見ているか体のいいサンドバッグとしていたか、軽蔑の視線しか向けていなかった。だが目の前にいる彼は違った。自分を仲間として見ていた。
「S&WM500、お前も同じか?」
「もちろん。俺としても前衛仲間が増えるのは賛成だし、話し相手が増えるのもいいしな」
「そうか…。俺は今まであそこにいたから人間っていったら奴らくらいしか知らなかった。だから人間、もとい男は信用しないようにしていた。だが…俺を仲間として見ているあんたらは信用してもいいと思っている。まぁ、俺を雇ってくれた社長も信用しようとは思うが…」
「なるほどな…MP5K、他に質問がないならこっちから逆に質問してもいいか?」
「ああ、構わないが」
「俺ら戦術人形は特性上、銃名で呼ばれるわけだが、その殆どは英数字といった番号名だ。それに対しては抵抗はないか?」
おそらく彼が娼館でNo.37、もといミーナと呼ばれていたことに対する配慮なのだろうと考えたMP5Kはこう答えた。
「確かに、それには少しだけ抵抗はある…だが、この道を選んだ以上は覚悟の上だ。じきに慣れさせるから心配はいらない」
それを聞きM107は顎に手を当ててしばらく考え込む。その後、彼はペルシカの方を向いてある提案をする。
「ペルシカ、DG小隊内の隊員は銃名以外に個々の名前を名乗れるように出来ないか?」
「え?」
「んー出来なくはないわね。ちょっとクルーガーに掛け合ってみるわね」
そういいペルシカは端末を持って部屋から出て行く。数分後、ペルシカはOKサインを出しながら戻ってきた。
「別に構わないそうよ。それで、どんな名前にするの?」
「マジで⁉︎じゃあ俺スミスな!M107は?」
「俺はバレットにする。お前はどうだ?」
「お、俺は…」
急に名前を名乗れることにMP5Kは戸惑った。二人の名前から考えれば自分はヘッケラー、もしくはコッホにするのが無難だが、どちらもしっくりこない。どうしたものかと唸りながら考えていると、バレットが彼に話しかける。
「決められないか?」
「まぁ、急な事だしな…良かったらあんたが決めてくれないか?自分で考えるよりそっちの方がいい」
「俺が?ふむ……なら、『レスト』ってのはどうだ?」
「レスト?」
「ああ、休息、安寧を意味するレストだ。お前はお前を弄んだ連中を始末したいし、自身と同じ境遇の者を助けるためにここに来たんだろ?つまり、自身も心からの安寧を求めてるし、またそういった人形達にも休息や安寧を与えることになる。だからレストだ。どうだ?」
「レスト…」
しばらく彼はその名前を口にすると軽く笑みを浮かべて顔を上げた。
「…その名前、気に入ったよ。今日から俺はレストだ」
「そうか、ようこそレスト、DG小隊へ」
「あぁ。よろしくな、バレット隊長」
バレットが差し出した手をレストは握りしめた。
────
現在
「そんなことがあったんですね。というより、スミスさん名前にコンプレックスあったんですね」
「名前だけじゃねぇよ、
(…それにしても、あれから随分経って、ようやくあいつは休息と安寧を手に入れたわけか)
バレットは過去に思いを馳せていると、ペルシカが部屋に入ってきた。
「終わったわよ。ノア、行ってあげなさい」
「…!わかりました」
ノアはレストのいる部屋へと入っていく。部屋に入るとレストがこちらをみて笑みを浮かべていた。その顔はタトゥーが無いことも相まっていつもより柔らかく感じていた。
しばらくまじまじと顔を眺めた後、ノアはレストに近づき、タトゥーのあった場所を指で撫でた。
「…そんなに変わって見えるか?」
「はい…。今までよりずっと優しく見えます」
「そうか。俺も、やっとお前に元の顔見せられて良かったよ」
そのすぐあとにバレット達も部屋に入ってきた。
「……ようやく終わったな、レスト」
「あぁ。…隊長、あの時、俺を助けた上隊に引き入れた事、今でも感謝してるよ」
「どうした?急に?」
「別に、ただそう言いたかっただけだ」
────
数日後、レストはホーテン達に報告するため、ノアと一緒に外出する事にした。
「じゃあ隊長、行ってくる」
「おう、ちゃんと言ってやれよな」
バレットに見送られ、二人は出掛けて行った。
「レストさん、ホーテンさんには連絡してあるんですか?」
「もちろんだ。今日は店を閉めて、バータイムの連中も呼んでるらしい」
会話をしながら、二人はホーテンのいるカフェと歩いていく。
……その様子を黒服の男が遠くから見ていた。男は通信機を取り出して誰かに連絡を入れていた。
「…ターゲットを確認。どうしますか?」
『そのまま観察を続けろ。指示があるまで手を出すな』
了解、と男は通信機をしまい二人の後をバレないように尾行していった。
復讐を終えた事を伝えにいくレスト。しかし、それを狙う影が──
ではまた次回まで