人形達を守るモノ   作:NTK

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ようやく鉄血の彼が動き出します。


Code-28 始動、復活者(リバイバー)

グリフィン管轄、某地区にある基地──

 

基地内はすでに火の海と化していた。突然放たれた高出力のレーザーが司令室に降り注ぎ、そこにいた指揮官と人形数名を吹き飛ばしたのであった。その後レーザーは整備室や人間用の宿舎などを攻撃し、基地内の人間の殆どを殺戮していった。

突然の奇襲に基地内は騒然となり、各自武器を持って迎撃準備に入る。そこに、一体のハイエンドモデルらしき人形が基地内に現れた。

銀髪に鉄血特有の白い肌、190cm程のやや痩せ型の高身長の体に、右手には身の丈程の大きさの粒子砲を背中のアームを介して携えており、左のアームには円盤状のユニットが八つ取り付けられた盾があった。顔の上半分は水色のバイザーを付けており顔はわからないが、その体つきは誰がどう見ても『男性』のそれであった。

 

「…ふむ、威力は申し分ないな。あとはアレを試せば…」

 

「オイ、お前は誰だ…鉄血の新型か?」

 

トンプソンが威圧を込めてそう質問すると、そのハイエンドモデルはこちらを見据えながら頷いた。

 

「いかにも。俺は鉄血の新型かつ男性型ハイエンドモデル、復活者(リバイバー)だ。じゃ、早速だが…この基地の破壊活動を開始する」

 

そう呟き、リバイバーは動き出した。それと同時に彼女達もリバイバーを撃破せんと各自手にした銃を撃ち始めた。

 

────

数十分後、戦場と化した基地に立っていたのは()()()リバイバーであり、その周りには戦闘不能となった人形達が倒れていた。

何名かは意識がまだあるが、その顔は酷く怯えており信じられないといった様子でリバイバーを見つめていた。

 

「なんで…?どうして、()()が…⁉︎」

 

「そこまでこちらの技術が発達したという事だ。お前達は生かしておくから、この事はキチンと伝えておけよ?ってなわけで、チャオ♪」

 

リバイバーはそれだけ伝えると基地から立ち去っていった。

かくして、この基地は()()()()()()()()()()()()()()()()()()殲滅されたのであった。

少し離れた森の中でリバイバーは代理人に通信を繋げる。

 

「こちらリバイバー。基地の殲滅に成功、武装は共に問題なく作動した」

 

「了解。というより、あの程度の基地を堕とせなくては()()()()()である貴方の意義が問われますが。すぐに戻ってください。戻り次第改めて貴方の任務について話します」

 

「了解」

 

リバイバーは通信を切り帰還し始めた。

 

(とりあえず準備は整った。あとは決行するのみか…)

 

────

 

二日後、グリフィン本部にてDG小隊は緊急招集をかけられ会議室に集まった。会議室には重苦しい顔をしたヘリアンとペルシカがいた。

 

「…今日来てもらったのはある事を話すためだ。事の始まりは二日前、○基地がたった一体のハイエンドモデルに陥落された」

 

「○基地が?確かあそこは…」

 

「それより、陥落させたのがたった一体のハイエンドモデルってのが気になりますね。新型ですか?」

 

スミスの話を遮りバレットが質問した。時折基地が鉄血に陥落させられることがあるが、その場合は大部隊を引き連れていた。故に一体のみで基地を堕としたというハイエンドモデルが気になったのだ。

 

「そうだ。それも…男性型だ」

 

「何⁉︎」

 

「やっぱり開発してやがったか!」

 

「とりあえずこれを見て欲しい。生き残った人形の記録だが、DG小隊を招集した理由がそこにある」

 

そういいヘリアンは映像を再生する。

映像に現れたのは一人のハイエンドモデルであり、どうみても男性型なのは明らかだった。

周りの人形達はそのハイエンドに向けて銃を一斉に撃ち始める。すると、ハイエンドの左側にあった円盤状のユニットが分離、浮遊し彼の周りに展開すると電磁フィールドらしきものを形成し、攻撃を防いでいた。MG人形の攻撃も防いでいる事からその堅牢さが伺えるだろう。

少しした後、そのハイエンドは動き出し、右手に持った大型粒子砲を構えると人形達に向けて撃ち放つが、発射されたレーザーはSMGのような高射速になったかと思えばRFのような単発で正確な一撃、SGのような散弾状へと変幻自在に変えて次々に人形を撃破していった。

 

「…!こいつ、レーザーの出力だけじゃなく、射速や収束率まで変えられるのか⁉︎」

 

「それに先ほどの電磁フィールド、かなりの防御を誇ってるようです。これはかなり厄介ですよ…それで、個体名は?」

 

「奴はリバイバーと名乗っていた」

 

「リバイバー…復活者ねぇ」

 

彼らが話し込む中、バレットはリバイバーの戦闘に対し、ある違和感を感じた。

 

(やはりそうだ。こいつ…さっきから…)

 

「この先を見てくれ。今までのハイエンドモデルとは違うところがそこにある」

 

映像に再び目を向けると、リバイバーはトンプソンに向けてレーザーを放とうとしていた。砲口の様子からしてかなりの高出力で放つのが見てわかった。対するトンプソンはフォースシールドを発動し防御態勢をとる。

フォースシールド──特殊な力場を生成しあらゆる攻撃を防ぐそれはI.O.Pが誇る最高の技術であり最強の盾…()()()()()

リバイバーが放った高出力のレーザーはトンプソンへ向かっていき──()()()()()()()()()()()、彼女を撃破した。

 

「なっ…⁉︎フォースシールドを貫いただと⁉︎」

 

「まさか、そこまでのものまで造り上げるなんて…」

 

映像の中の彼女達も彼らと同じ反応をし、動揺が広がっていった。その後はリバイバーが一方的に攻撃し、全ての人形が戦闘不能になり、リバイバーが立ち去ったところで映像が終わる。

 

「…見ての通り、このリバイバーというハイエンドモデルはかなり危険な存在だ。DG小隊にはこいつを発見、鹵獲無いし撃破を頼みたい。危険なのは承知してるが、このままこいつを野放しにするわけにもいかない。すでに周辺の基地には連絡をしてある。頼んだぞ」

 

「了解。質問ですが、こいつの武装についてこちらにいるハイエンドモデルが何か知ってたりは?」

 

それに関してはペルシカが答えた。

 

「ええ。アーキテクトにこれを見せたら心当たりがあるようでね、あの防御兵装はF.E.F.G─浮遊式電磁フィールド発生装置(Floating Electromagnetic Field Generator)って言って、ジュピターやマンティコアレベルの攻撃を複数回防げるものだけど、エネルギー消費量と製造コストが高い上にそもそもグリフィンにそんな攻撃力を持つ人形がいないって事でペーパープランで終わったものよ。それと射撃兵装の方は知らないみたい。恐らく彼女がこちらに寝返った後で開発したか、彼女抜きで開発してたかね」

 

「なるほど…それとヘリアンさん、この基地の被害のリストはありますか?」

 

「ああ。これがそうだ」

 

ヘリアンから渡されたリストを眺めると先ほどからの違和感を裏付けるものを確認できた。

 

「バレット、気になる事でもあるのか?」

 

「はい。まず襲撃された基地ですが、あそこは銃器の横流しやデータの水増しによる横領、さらには人形に対する暴行などを基地内の人間全員が行ってるとの事で近々俺たちが監査する予定の場所でしたよね?」

 

「それは俺も思った。しかもあそこは地理的に考えても潰しても鉄血にはなんの得もない筈だ。何故そんなとこを攻めたのか気になってたが、あのリバイバーって奴が武装テストのためにやったのなら納得がいくが…まだ何かあるんだろ?」

 

「ああ。このリストを見るとわかるが、人間は一人残らず殺されてるのに対し、人形に関しては初めの奇襲で巻き込まれたのとトンプソンを除けば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

バレットが指摘した通り、リバイバーはダミーのみを撃破し、メインは手足を撃つなどして無力化するだけであった。

 

「彼女達を生かした理由が単なるメッセンジャーとしてなら一人二人でいい筈だ。なのに何故奴は人間を殺しておいて人形だけは最低限の被害で済ませている?」

 

「生き残った人形にウイルスの類はなかったのですか?」

 

「いいえ。負傷してるだけで何も仕掛けられてなかったわ」

 

「いずれにしても、奴と接触する際には細心の注意が必要だ。すぐに出撃してくれ」

 

数時間後、DG小隊は出撃しリバイバーらしき人形を見つけたという場所に到着した。周辺に警戒しながら探索しているなか、スミスはバレットに話しかけた。

 

「バレット…リバイバーだが、どう思う?」

 

「正直行動が謎すぎる。一連の行動がただの挑発だと片付けるには生存者を残したのは不可解だし、もしかしたら基地の内情を知っていた可能性もある」

 

「ん?つまり奴はどんな基地かわかってて攻撃したのか?ふむ…そう考えると人間だけ殺したのも辻褄があうな…でも、何の為に?」

 

「わからん。だが、わかってるのは奴のパーツにはほぼ間違いなく俺のダミーのものが使われてる事だ」

 

「だろうな。男性型のメインAIをどこから手にいれたか知らんが、早く奴を見つけて倒さないとな。鉄血ハイエンドに使われてるのが人形守る部隊の隊長のダミーのでしたじゃシャレにならないしな」

 

その時だった。比較的近い場所で爆発音が響き渡った。DG小隊は警戒を強めながら現場に近づくと、驚くべき光景が目の前にあった。

音の正体はリバイバーが戦闘をしている音だったのだが、戦っているのはグリフィンではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかも状況から見れば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「おいおい…」

 

「どうなってやがるんだ…?」

 

目の前で起こっているハイエンド同士の戦いに、彼らは事態を飲み込めずにいた。




リバイバーの武装モデルはガンダムWのビルゴシリーズです。
やりすぎ感はありますが後悔はしてません。

さて、何故リバイバーはジャッジに追われているのか?そして彼の不可解な行動の意味とは?
それではまた次回まで。

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