人形達を守るモノ   作:NTK

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今回はいろいろ様作『喫茶 鉄血』とのコラボ回です。
こちらの視点なので大体はあちらと同じですが。




Code-30 不思議な喫茶店

リバイバーをグリフィン本部へ送った翌日、DG小隊はある基地の定例監査を行なっていた。

 

「ふむ…報告書と実際のデータに差異は無し…消費資材も同じく問題無し…。そっちはどうだ?」

 

「聞き取りの方も何か隠してるような素振りも見当たりませんでした」

 

「監視カメラの映像も偽装した形跡は無かったぜ〜」

 

ウェイターとスミスの報告を聞き、バレットは指揮官に向き直る。

 

「…以上で監査は終了です。結果は後で正式に発表されますが、ほぼ問題無しと見ていいでしょう」

 

「わかりました…何もしてなくとも、やはり緊張するものだね」

 

「ではこれで失礼します。次の監査、もしくは合同任務以外でそちらに向かわない事を祈ります」

 

いつもならヘリを利用して帰還するのだが、今回の基地は本部に割と近いため、陸路で帰還していた。

 

「…たぶん本部は今頃リバイバーをどうするか決めている頃か」

 

「その前に尋問する予定だが、尋問しなくても勝手にベラベラ喋るって言ってたしな。あいつが死んだら爆発するって言う武装のロックは解除したらしいし、どうなるかはあいつの持ってきたデータやあいつの交渉次第か」

 

そんな事を話しながら帰還していくと、突然目の前に砂嵐が発生し彼らに向かってきた。突然発生した砂嵐に驚きつつも、彼らは伏せて砂嵐をやり過ごそうとする。やがて砂嵐が彼らを包み込み、その後砂嵐は過ぎ去っていった。

 

すると、ノアはある違和感に気づいた。砂嵐が来る前はレストの側に伏せていたが、砂嵐が過ぎるとレストが側にあらず、それどころか彼女以外の全員この場から居なくなっていたのだ。さらに、砂嵐に包まれたのにも関わらず彼女の体には砂つぶ一つ付いていなかった。

 

「レストさん?隊長さん?みんなどこへ行ったんですか…?」

 

────

 

顔を上げたバレット達がまず始めに気がついたのは、先ほどで小屋一つ無かった道に居たはずだが目の前には見知らぬ街が見えていた事であった。

 

「なっ…!これは一体…?」

 

「隊長、ノアが居ないし、さっきから連絡をしようとしてるが全く繋がらない!」

 

レストの報告を聞き、彼らはどういう事だと首を傾げるがもしかしたら先に街に行ったのかもしれないと思い、街に入って行くことにした。

 

だが街に入ると彼らはますます混乱した。建物が綺麗過ぎるのだ。普通弾痕なり崩壊しかけてたりと戦闘の跡があるはずなのだが、そんなものは全くなく、建て替えたという話も聞いていない。

 

街行く人々も暗い表情をしている者がほとんどおらず、裏通りにも浮浪者や麻薬中毒者といった者も見受けられず、まるで夢を見ているかのようであった。─尤も、一部を除いて人形は夢を見ないが。

一通り周った後、彼らは小さな公園でとりあえず今の状況を確認し始めた。

 

「さて、状況を確認しよう。陸路で帰還中に砂嵐が発生、それが去ると見知らぬ街の目の前ときた。 …だれか説明できそうなのはいるか?」

 

「悪いなバレット、俺も何が何だかさっぱりだ」

 

「右に同じく」

 

「だな」

 

この不可思議な現象に加え、未だにノアが見つからない状況に途方に暮れていると、グ〜と、腹のなる音が聞こえた。

 

「…腹、減ったな」

 

「どんな状況でも腹は減るか…仕方ない、情報を集めるついでにどこか店を探そう」

 

「わかった。ノアが心配だが、街の様子を見るに治安は良さそうだし、何かあっても対処できると信じるとしよう」

 

「とにかく移動しましょう。さすがに公園で男四人が固まってるのは怪しまれます」

 

ひとまず四人は店を探し、程なくして一件の喫茶店を見つける。そしてロクに店の名前を確認せずに中に入る。すると…

 

「いらっしゃいませ、四名様でしょうか?」

 

鉄血のハイエンドモデル、それも最上級クラスである代理人が目の前にいたのだ。彼らは想定外のことに固まっていると当の代理人が困惑した顔で、

 

「お客様?」

 

「!あ、ああ。そうだ」

 

「ではこちらへ」

 

代理人に案内されるままに彼らは二階へと上がる。途中イェーガーとすれ違う時に代理人が何か指示を出したのを見てバレットは罠かと思ったが、それにしてはあまりに雑過ぎる。一応スミス達にハンドサインでいつでも攻撃できるよう指示を出した。

個室に案内され、扉が閉まると代理人が話し始めた。

 

「…そんなに警戒なさらくても大丈夫ですよ。()()()()の皆さん」

 

「っ⁉︎」

 

「よせスミス。その気だったらここに入った時にとっくにやられてる」

 

銃を抜こうとしたスミスをバレットが止めるとスミスは納得したのか銃から手を離した。

 

「……その反応、()()()我々鉄血の人形は敵、少なくとも友好関係ではなさそうですね」

 

()()()?…どういう意味ですか?」

 

ウェイターの質問に代理人は信じられない事を口にした。

 

「では単刀直入に申し上げます。……ここはあなた方の住む世界とは異なる、いわゆる並行世界というものです」

 

「「「「……はい?」」」」

 

────

 

初めこそ何を言っているかわからなかった彼らだが、代理人がもってきた新聞記事やその他諸々の証拠を見て現実を受け止めた。恐らくノアはこの世界には来ていないと仮定し、帰れることもわかると彼らはコーヒーや料理を食べながらゆっくりすることにした。

レストは新聞記事を読み、自分と同じような境遇の人形かいないことに安堵し、スミスは先ほどから行き来している鉄血人形に落ち着かない様子だった。イノセントやリバイバー、さらにはEA小隊にも味方の鉄血人形が居るとはいえ、慣れずにいた。

ウェイターは元執事長という事だけあり、この世界では安易に手に入る天然物のコーヒー豆や紅茶に興味を持ち、時折代理人と意見を交えていた。

 

「この茶葉は私達の世界でも扱ったことがあります。こうすればもう少し香りが良くなりますよ」

 

「なるほど…参考になります」

 

「あと、こちらのコーヒー豆ですが、この豆と合わせるとコクが出ますよ」

 

会話の内容を聞く限り、どうやらそちらの技術に関してはウェイターの方がやや上手らしい。

しばらくすると個室の扉がノックされ、開けてみればそこにいたのは妙にげっそりしたこちらの世界のペルシカが入ってきた。

 

「実はね……11Labのがその…彼らに会いたいって」

 

「ん? 話した覚えはないのですが……」

 

「うん。 でも本人たち曰く「ティンときた」って」

 

「えぇ…」

 

直後にペルシカの後ろからヌッと現れた3人の白衣の女性…11Labの面々が扉をこじ開けて強引に入ってきた。そして彼らの前に立ちはだかると開口一番に

 

「貴方達、男の戦術人形ね!」

 

「是非とも私たちの研究に協力して欲しいの!」

 

「報酬は何でも払うわ! なんだったらこの体でも「「抜けがけ禁止!」」グハッ!?」

 

目の前で繰り広げられたコントじみた光景に彼らは思わず固まってしまう。

特にバレットはかつて姉やSASSから受けた視線と似たようなものを感じ、軽く身震いした。

 

「あ〜悪いがそういう話はお断りだ。 事情が事情なんでな」

 

「そうそう。それに全員彼女いるしな…俺以外は

 

「ほら、やっぱり無理だって言ったでしょ」

 

「え〜〜〜…じゃあ質問一個だけでもいい?」

 

バレットとスミスがやんわりと断るとおとなしく彼女達は引き下がる。その代わりに主任格の女性が真剣な顔で尋ねた。きっと彼らの答え次第では研究が大いに進展するのだろう。関係ない世界とはいえ、何か役に立てるのならと彼らも真剣に答えようと思った。

 

「じゃあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレのサイズを」

 

「「「「は?」」」」

 

逆セクハラともとれるしょうもない質問に彼らは思わず真顔になり割と低い声で答えると彼女達はペルシカによって強制的につまみ出された。その後、代理人は深々と頭を下げた。

 

「申し訳ございませんでした」

 

「い、いや、あんたが悪いわけじゃない」

 

「ですが当店でのトラブルは私の責任でもありますので……では、今回のお食事代は不要とさせていただきます」

 

「え? いや、それは悪いって…」

 

「そういうことにしておいてください。 どのみち、こちらとは通貨が異なるはずですから」

 

「「「「…あ」」」」

 

その事実に気づき口を開く4人に対し代理人はクスリと笑い伝票を回収する。そしてちょうどその時、レストの持っている端末に連絡が入る。驚いて落としそうになるそれをキャッチし、通話モードにして耳を当てるとノアから通信が入った。

 

『レストさん⁉︎今どこにいるんですか! 誰にかけても繋がらないし…』

 

「の、ノア⁉︎いやその、今はな……」

 

今帰れるかどうかわからないレストはどうしたものかと考えるが代理人は微笑んで、「そろそろ帰る時間のようですね」と小声で伝える。四人は顔を見合わせるとどこかホッとしたような表情を浮かべ、レストはそのまま通話を続けた。

 

「…悪い、ちょっと寄り道してたんだ。すぐ戻るよ」

 

「それじゃあ俺達は失礼する。美味しかったよ」

 

「ありがとうございます」

 

そう言い彼らは荷物をまとめた。店を出る時、最後尾にいたウェイターは代理人からコーヒー豆の入った紙袋を手渡された。

 

「せっかくですので、これを。 少し多めに入れていますので、皆さんで飲んでください……この出会いに感謝を、ということで」

 

「…わかりました。 ありがとうございます」

 

「もしまた訪れることがあれば、今度は一緒に働いてみたいものです」

 

「そう言っていただけて光栄です…それでは」

 

「えぇ、皆さんもお元気で」

 

彼らは店を出てきた道を戻っていく。

 

「…にしても、並行世界とはねぇ…。そういや、AR小隊や404はいるらしいが、俺らはいないみたいだな」

 

「俺らみたいのが必要とされない世界って事だろ?その方がいい」

 

彼らが必要とされない世界、つまり人形達が虐げられない世界と知り、いつしか自分達の世界もそうなる事を願いながら進んでいくと、いつのまにか砂嵐が発生した場所に辿り着いていた。

どう考えても無理のある嘘を言っていたためノアに怒られたが、彼らは無事に本部へと帰還した。

 

その後、貰ったコーヒー豆でコーヒーを淹れて飲んでいると、ヘリアンからメッセージが届いた。それに目を通したバレットは思わず目を見開いた。

 

…なんとリバイバーがDG小隊のサポートチームとして参加する事となったとのメッセージだったのだ。




いろいろ様、コラボありがとうございました‼︎
ちなみにキャラ紹介見たときにだいたい合ってると思いましたね。
4人中2人があっちに似つかわしくない過去持ってるっていうね。

さて、リバイバーが仲間になりました。その経緯について次回明らかにします。

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