「そういやバレット、この娘達の基地って今鉄血の襲撃を受けてんだろ?このまま送って大丈夫なのか?」
帰りのヘリの中で、スミスはおもむろにバレットに尋ねた。
ちなみに生け捕りにした盗賊達だが、正直ミノムシよろしくヘリから吊り下げてもいいのだが、万一落としたら情報が得られないので仕方なくヘリの隅で拘束して置いている。尤も、彼らを縛っているのはロープではなく、バレットがその辺で拾った有刺鉄線であるが。
自分達の基地が襲撃されてると聞き、当然ながらガーランド達は動揺を隠せなかった。
「襲撃!?指揮官や他の皆は無事なんですか!?」
「待て待て急に立つな危ないから!…で?どうなんだバレット?」
「それなら心配ない。先程確認したがこれといった被害もなく撃退に成功したそうだ。それとスミス。不用意にそう言う発言はよせ。彼女達が不安になるだろ」
「あぁ、悪かった…君達もすまない。あんな目に遭ったってのに…」
「いえ、無事ならいいんです。それと皆さん、助けてくださって、ありがとうございます。あなた方が来なければ、どうなってたことか…」
「礼には及びません。あのような輩からあなた方を守るのが我々の役目ですから」
そうこうしているうちに一行は基地へとたどり着いた。
「「「指揮官!」」」
「みんな!無事だったか!」
三人を見つけるやいなやこの基地の指揮官は彼女達に駆け寄り、無事を確認する。そしてバレット達に向かって頭を下げた。
「彼女達を助けてくれて、本当に感謝する。報酬の件だが、襲撃でゴタゴタしている。すまないが後で必ず送っておこう」
「構いません。流石にこの状況で報酬を今すぐに出せと言うほど、我々は横暴ではないので。では、我々は失礼します」
指揮官や人形達に見送られながら、バレット達はヘリに乗って去っていった。
────
グリフィン本部
盗賊達を引き渡した後、バレット達はメンテナンスルームへと向かう。
扉を開けると、一人の戦術人形が彼ら──正確にはレストの元へと駆け寄る。
赤い帽子に白い髪、青い服という格好から、知ってる者が見れば彼女のことを9A-91というだろう。だが、ここでの彼女の呼び名は──
「ただいま、『ノア』。メンテナンスは問題なかったか?」
「はい。何も問題なかったそうです」
「そうか…良かったな」
レストは彼女──ノアの頭を撫で優しい眼差しで微笑みを浮かべる。
彼女はかつてはある地区に所属してた戦術人形だったが基地が壊滅し、はぐれ人形となり放浪していたが色々あってDG小隊に入隊する事になったのであった。
(詳しくは前回の解説欄を参照)
「俺とスミスはヘリアンさんに報告しに行くから、お前達は部屋に行っててくれ」
「あぁ。わかった」
レスト、ノア、ウェイターの三人は部屋へと向かっていき、バレットとスミスは任務の報告に向かっていった。
「……以上が今回の任務の結果です。輸送中に奴らから売り渡し先の娼館の場所について吐かせたので早急に確認をお願いします」
バレット達はヘリアンに今回の任務について報告する。ヘリアンは渡された資料を一瞥し、バレット達に顔を向ける。
「…報告ご苦労。娼館についてだが、これだけの情報ならすぐに確認は取れそうだ。恐らく早ければ明日にでも命令が来るだろうからそのつもりでいろ」
「「はッ!」」
「それと…なんとなく答えはわかるのだが、『盗賊達に感染症の恐れがある』というのはどういう事だ?」
ヘリアンの質問に対してバレットはやや嗜虐的な笑みを浮かべて、
「そりゃそうでしょう。奴らを縛ってた有刺鉄線は半分くらい土に埋まってたものですし、地面から出てる部分にも何かの血が付いてましたしねぇ?あれで感染してない方が可笑しいでしょう?破傷風にでもかかれば上出来ですが」
「……相変わらず悪人には容赦ないな貴様は」
やや引いた顔で言うヘリアンだが、バレットは全く気にしていなかった。
「当然です。それに、クズが鉄クズから病気をもらって死ぬのもなかなかの皮肉だと思いませんか?」
「お前本当趣味悪いな。まぁ奴らには同情しないけど」
「こちらからは以上だ。二人とも戻っていい」
「わかりました。あ、それとヘリアンさん。今夜の合コン、上手くいくといいですね」
「なっ…!?スミス、何故それを!?」
「情報収集は得意なんで♪では失礼しま〜す」
狼狽えるヘリアンをよそに二人は部屋から出て行く。そしてしばらく歩いた後、バレットはスミスにこう言った。
「スミス、お前も人の事言えないぞ?」
「俺は励ましの言葉を言っただけだ。ま、どうせまた失敗するだろうけど」
「ヘリアンさん、自分でチャンス潰したりしてるからな…」
「やっぱあの人合コンとか向いてねぇよ…軍事用語やCQCについて一般参加の合コンで語ってなんで成功するって思ってんだろ?」
この二人は以前、ヘリアンにフォローするように頼み込まれ仕方なく合コンに参加したのだが、結果はこの有様でありフォローのしようが無かったのである。
ちなみに、今夜の合コンだが例の如く大敗し、彼女の連敗数がまた一つ更新されたのであった。
────
DG小隊に次の指令が出されたのは翌日の事であった。ブリーフィングルームに全員が集まったのを確認すると、今回の依頼者であるペルシカが口を開く。
「先日の盗賊達の情報の裏が取れたわ。今回の任務はU02地区にある娼館の制圧とそこにいる人形達の救出よ。娼館内の人間は全員
「それは支配人は当然として、客も殺っていいんだな?」
「当たり前よレスト。利用してる時点で同罪よ、存分に殺りなさい」
「了解した」
「つまり、人形は救出。それ以外は
「ええ、誰一人として生きて返さないこと。他に質問は?」
「周辺に一般市民は?」
「ないわ。廃墟ばかりだから巻き添えは気にしなくていいわ」
「わかった」
「他には…ないわね。なら、準備が出来次第開始して頂戴」
「「「「「Yes,Ma'am‼︎」」」」」
一行は各自装備の準備と点検を始める。また、今回の任務では確実性を要するため、ダミーを総動員することにしている。
彼らのダミーリンクの数は、ノアが三体で他は全員最大数の四体となっており、ダミーを含めたDG小隊の数は24人となる。
「全員準備は出来たか?」
「スミス、準備完了だ」
「ウェイター、準備完了です」
「レスト、準備完了」
「ノア、準備完了しました」
「よし、では行くぞ」
彼らはヘリに乗り込み、移動する。
目指すはU02地区にある娼館。課せられたのは盗賊達に拉致され、そこで強制的に身体を提供されている人形達の救出。そして彼女達を欲望のままに貪り、虐げる
娼館に現在いる人間達はまだ知らない。彼らを断罪する
彼女達はまだ知らない。自分達をこの地獄から解放してくれる
作戦名『
さ〜て次回は皆様お楽しみ、ゲス共の大掃除でございます。