人形達を守るモノ   作:NTK

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今回はリバイバー視点の話です。

また、大陸版の情報がありますのでご了承を。


Code-42 彼から見たニンゲン

ある時、リバイバーは自室でパソコンを操作して情報収集をしていた。

 

(ふむ…噂レベルでもあのエリザのダミーらしき目撃情報はないか…やはりどこかで身を潜めてるのか。そいつからメインの情報を得られると思ったが、無いなら無いで仕方ないか…)

 

リバイバーは軽く伸びをし、気晴らしに飲食店の記事を読み漁る。その中にD08のカフェがあるのを見たリバイバーは感慨深い顔をしていた。

 

(…にしても、まさか人形が母親になるとはな…本当に人間の発想と技術の進歩は面白い…!)

 

リバイバーはグリフィンに寝返ってからは基本的に他のハイエンドがそうするように人間を軽蔑したりせず、むしろ好意的である。というのも人間は時折自分たち(AI)が考えもしないような事を実践し、成長することに高い興味を持っているからだ。

人類の好奇心と探究心は人類を繁栄させる事もでき破滅させる事もできる、というのがリバイバーの持論である。

 

事実、人類の歴史の中でもそれらが技術の発展に貢献したのは言うまでもない。これをこうしたらどうなるのか、材質を変えてみたら?この状態でこの物質を入れたらどうなるのか、もっと頑丈なものが作れないか─そういった好奇心や探究心は生活品や兵器の質をあげ、生活を豊かにしていった。

 

そして『遺跡』が見つかればそれらが何なのか、また自分たちの役に立つのかといった好奇心や探究心が湧き、それらを調べ上げた。だが、結果は役に立つどころか危険であり、自分たちの手に負えない代物と判ればすぐさま遺跡を封鎖し、一般に触れないようにした。それまでは良かった。

 

─だがここにきて好奇心や探究心が起こした最も最悪たる事件が起きた。北蘭島事件である。七人の中学生が『好奇心』で遺跡に侵入、E.L.I.Dに襲われ、彼らを助けようと軍事行動をとった結果、遺跡は破壊され、世界中に崩壊液がばら撒かれ多くの人類が死に、さらには残った土地を巡って第三次世界大戦が起き、さらに多くの人類が死亡した。たった七人の好奇心が結果的に何十億の人間を死なせたのだから好奇心や探究心の持つ魔力は侮れないだろう。

 

そして不足した労働力を補う為、人形が造られるのだが、ここでも人間の好奇心と探究心があらわれる。

 

初めは無骨な見た目だった人形が徐々に人間に近い見た目へと変貌していった。単純な命令しか実行できなかったAIもより複雑な命令をこなせるよう発展していった。そしてその過程でリバイバーの出身である鉄血工造はある考えをだした─より高度なAIを作ろうと。

そしてリコリスを招き入れ、多額の出資と膨大な研究期間を経てエリザを開発、その間にもハイエンドモデルも幾つか開発した。

その結果は知っての通り、蝶は羽ばたき彼らの夢は花と散った。

 

I.O.Pはというと、鉄血より豊富なバリエーションの人形が存在し、その一つ一つに個性がある。また、同じ個体でも環境によって大きく性格が変わるのも特徴の一つだ。そして豊かな感情があることで人間と強い絆が生まれてくる。場合によってはそれは愛情へと変わり、誓約という形で結婚できるようになっていき、そしてついには人間との間に子をその身に宿し、出産するまでに至った。しかもヒトより遥かに短い妊娠期間にも関わらず母子共に健康ときていた。

 

これが世に第二世代人形が現れて僅か10年足らずで起きたのだから人間の技術の進歩は面白いとリバイバーは考えている。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ともリバイバーは思っていた。

 

(ま、そもそもあのクソガキの目的と手段が一致してないんだがな…それに、奴は人形を妊娠させようなんて毛ほども思い付かないだろうしな。その点でもやはり人間は面白い)

 

(奴に限らず、殆どのハイエンドは人間が自分らに敵いっこないと見下してるが、人間は俺らでも考えない事をする。だからこそ勝てるはずの作戦で負けるし、人類にとって敵であるはずの俺らを撃破せず鹵獲して味方に引き込んでいった。だいたい、正規軍がその気になりゃ一週間と持たずに全滅するのに、なんで余裕ぶってるのだか…)

 

そこまで考えリバイバーは再びパソコンを操作する。

すると、ある記事が目に止まる。

 

(戦場でキレイな歌声が聞こえたら空から天使がきて悪を討つ?これは目撃例が多いな…ふむ…ふむ…なるほど、目撃例の外見的特徴から察するに例の彼女か…ククッ…にしても、人間ってのは本当に面白い事を考えるな…!)

 

わざわざ歌って自分の位置を知らせるなど、彼には理解ができないが、遠い昔のニホンではサムライが戦場で名乗りを上げていたり、ニンジャに至ってはアイサツをしていたという。恐らくその類なのだろうとリバイバーは結論付けた。

 

(しかし、こうも噂が広まれば歌を聞いただけで士気を下げる奴もいるだろうからあながち無駄でもなさそうだな…俺もやってみようかな?)

 

だか真似して歌うのは芸がないなと考え、何かないかとリバイバーは画策すること10分、ようやく良いものを考え出した。

 

(よし、次の出撃で試してみるか…さて、何か食うか)

 

そう思うリバイバーは食堂へ向かう途中、スミスに声を掛けられた。

 

「お、リバイバーも食堂に行くのか?」

 

「あぁ。……他の連中は?」

 

「それぞれの連れとどっか食べに行った」

 

「つまり今ボッチか」

 

「うるせぇよ!独り身で悪いか!」

 

「まぁそのうちお前さんも彼女出来るんじゃねぇの?」

 

だと良いけどなぁ、とスミスは嘆くようにつぶやいた。




要はリバイバーはグリフィンにいるうちに某リンゴ好きの死神や吸血鬼の旦那みたいに人間にある種の尊敬や興味を待ってる感じです。

さて、リバイバーが聖唱代わりに取り入れたものとは?
ヒント・斬首(一部英語)

では次回をお楽しみに。

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