あと、後半ちょっと生々しい話が出てきます。
U02地区の降下地点へ降り立ったDG小隊はそのまま目的地である娼館まで行軍する。とはいえ、占領された地域でもない為、遭遇戦など起こらずに娼館近くにまで辿り着いた。
廃ビルの中で、バレットは作戦を伝える。
「情報によれば娼館は3階建て、出入り口は正面と裏口の二箇所。非常階段は裏にあり、内部はエレベーターもある。俺はダミーを使って正面と裏口を張るから突入はお前達だ」
「いや当たり前だろ、逆にお前が突入したらヤベェからな?屋内で対物ライフルぶっ放したら人形達ごと木っ端微塵だぞ?」
「んなことはわかってる。で、ウェイターは突入前にグレネードで非常階段を吹っ飛ばせ。それで2階3階の奴らの退路を内部のみに限定させる」
今回の任務ではウェイターはEGLMを装着させたSCAR-Hを携行していた。
「わかりました。それはダミーに指示しましょう」
(絶対中に人形いなかったら突入してたろ…前にもやってたし)
そんなスミスの考えを他所にバレットはそのまま話を進める。
突入には正面と裏口に加え、ワイヤーを使った三階への突入の三組に分かれ、正面からはウェイター本体とダミー二体にスミスとレストのダミーが二体ずつの7人、裏口にはノア本体とダミー三体にウェイターのダミー二体の6人、三階の突入はスミスとレスト本体とそれぞれのダミー二体ずつの6人となった。
「じゃあ俺は狙撃ポイントに移る。各自突入準備にかかれ」
バレットがそう命じると、レストがある提案を出した。
「隊長、それに他の皆もわかってるが、もし客の中に
「わかっているよ。だいたい、いつもそうしてるだろ?なぁバレット?」
「あぁ、寧ろそうしなかった時なんか無かったはずだ」
「ただし、やむを得ない場合は殺しますがいいですね?」
「もちろんだ。ノアも俺の為に無茶はするな。自分を大切にしてくれ、いいな?」
「はい。レストさんも無茶しないでくださいね」
────
「…こちらバレットメイン。狙撃ポイントについた。ダミー、応答」
「こちらバレットダミー
「バレットダミー
「バレットダミー
各ダミーの報告を聞き、バレットはレストら突入組に通信を行う。
「狙撃班、ポイントについた。突入組はどうだ?」
「正面組、準備完了です」
「裏口組も完了しています」
「3階組もあとはワイヤーを射出すれば完了だ」
「了解。3階組は正面組の突入後にワイヤーを射出しろ。では、作戦開始だ」
それを合図に正面組、正確にはスミスのダミーが一体、扉近くに立つガードマンらしき男に近づいた。
「すまない、中に入りたいのだが?」
「悪いがここは一見さんはお断りだ。紹介されたんなら通せるが、どちら様の紹介で?」
何いってんだこのクソッタレ、とダミー越しに聞いていたスミス本体は毒づいた。
「ダミー、上手い返しを言ってやれ!」
「はいはい。で、紹介だって?どちら様からって、そりゃあ…
死神様からだよ、クソ野郎」
言うは早いか、スミスのダミーは銃を抜きガードマンの頭を撃ち抜く。
そして扉を蹴破り中に入りウェイター達もそれに続く。
「な、何だお前──がッ⁉︎」
受付と思われる男の肩を撃ち、ウェイターはその男の胸倉を掴みあげる。
「ここにいる人形達の待機場と支配人の場所を教えてください。そうすれば少なくとも楽になりますよ?」
「ヒッ…!」
口調の割にややドスの効いた声と凍てつくような眼差しで睨むウェイターに男は観念してそれぞれの場所を話した。
一方、裏口ではウェイターのダミー二体がそれぞれ二階と三階の非常階段に向けてグレネードを発射する。ただの鉄製である階段は派手に吹き飛び、そこからの脱出をほぼ不可能にさせた。その後EGLMに散弾をセットして中に突入する。先行していたノアはすでに通路にいた何人かの客を撃ち倒しており、部屋に侵入しては中の客を撃ち殺していった。
そして3階ではスミスとレストがワイヤーを窓の近くに射出し突入準備に入る。
「ハッハッハッ‼︎上手いなダミー!あとでビール奢ってやる!」
「無駄口叩いてないでさっさと行くぞ」
滑車がワイヤーに掛かっているのを確認し、彼らは突入する。
窓を蹴破り、中に入ると青みがかった銀髪の人形と
「あなたは…?」
「安心しな、テロリストじゃない。俺たちはグリフィンの救出部隊だ」
「グリフィン…助けに来てくれたの…?」
「もちろん。危険だから、事が終わるまでここにいてくれ」
彼女に優しく声をかけるレストだが、よく見ると彼女はグリフィンの人形ではない事に気付いた。そして彼女の全身にある傷跡や火傷の跡から、レストはある結論にたどり着く。
(…ッ⁉︎この娘は……
「大丈夫だ…。もう
彼女が頷くのを確認するとレストは部屋から出ていく。
「さて……狩るか」
彼らへの怒りを露わにし、レストは次の部屋へと向かった。
────
すでに娼館内は一方的な蹂躙劇と化していた。当然だろう、相手は武器を持たないただの人間である。時折護身用の拳銃で抵抗するものがいるがそんなものはただ自分の居場所を知らせるに過ぎず、撃った数秒後には撃ち返され物言わぬ肉塊へと変わっていった。
運良く彼らの目を掻い潜り娼館から出て行く者もいたが、出たその瞬間にバレットの狙撃の的となり、壁一面を血に染める。
さて、三階だが男達は我先にとエレベーターへ駆けていくが、それをスミスが背後から追撃する。一人、また一人と撃ち倒されるなか、ようやく彼らはエレベーターにたどり着く。開のボタンを連打しようやく扉が開くと急いで中に入り扉を閉じようとする。
「早く、早くしろよ‼︎」
「わかってる‼︎」
リロードしながら迫るスミスを視界に捉え、彼らは扉が閉まるのを今か今かと待っていた。
ようやく扉が閉まり始め、後10センチほどで閉まりきろうするのを見て彼らは安堵する。しかし──
ガッ
スミスの両腕が捻じ込まれ、そのままギギギ、と音を立てながら扉をこじ開ける。
「オープン……セ・サ・ミ♪」
「ヒィィッ⁉︎」
イイ笑顔でエレベーターに侵入してきたスミスに男たちは震え上がる。そしてスミスはそんな彼らに銃を突きつける。
「屑ども諸君、ムダな逃走ご苦労。そして──さようなら」
エレベーターの扉が閉まり、銃声と悲鳴が中で響き渡った。
────
「こちらウェイターメイン、人形達の待機場を発見。ダミーを置いてこのまま支配人の場所に向かいます」
部隊全員に報告するとウェイターは支配人の場所へと向かう。なお、情報元の受付だが、約束通り眉間に一発銃弾を放って楽にあの世に送らせた。
支配人の部屋の前まで着くとEGLMにセットした散弾で蝶番を破壊し、中に入ると金庫を抱えて逃げようとする支配人と鉢合わせとなった。
すぐさま撃とうとするウェイターだが、支配人の顔を見て中断する。
(この顔は…例の…)
「たっ頼む!この金は半分やる!だから─ッ⁉︎がァァァァ‼︎」
右足を撃たれて崩れる支配人の後頭部にウェイターは銃のストックを叩き込み、気絶させる。
「悪いですが、あなたを殺すのは私ではないのでそれは聞き入れられません」
やがて一階と三階は制圧され、二階も程なくして制圧された。
────
救出された人形47人を見た後、バレットはウェイターに尋ねた。
「これで全員か?」
「ええ、ですがロクな扱いを受けていなかったようで三名ほどが
「そうか…君達はこのあと一旦I.O.P本社でメンテナンスを受けてもらう。その後どうするかは君達次第だ。元いた基地に復帰するのもいいし、民生用にしてもらって新しい道を探すのもいい。だが、どうしても助けが必要なら連絡してくれ。任務中じゃなければ助けになろう」
「民生用になったけど仕事が無い場合も連絡しな。俺らがまともな仕事を紹介する」
「こういったアフターケアも私達の仕事のうちですから」
バレット、スミス、ウェイターの言葉を聞き彼女達は解放された喜びや感謝で泣き崩れる。そんな中、レストが助けた人形がバレットに近づいた。
「あの…私を助けてくれた人形は?」
「レストの事か?あいつは今──自分の過去を清算してるところだ」
支配人の部屋で四人の男が縛られて床に転がっていた。
一人は支配人だが、あとの三人は制圧中にスミスとノアに確保され、この部屋に入れられたのであった。
四人は何故自分達が生かされているか見当もつかずにいたがすぐに彼らはその理由に気づくことになる。
「よう。
レストが部屋に入り、彼らに声をかける。初めは誰だかわからなかった彼らだが、少しして男の一人があ!と声をあげた。
「お、お前は…
「せいかーい。俺は
男の顔を蹴り上げながらレストは恨みを込めた目で睨みつける。
男娼人形──それが彼の忌まわしき過去である。しかも彼の性癖は至って普通にプログラムされており、つまり
もちろん
いっそ死んでしまおうかと考えたがご丁寧にも自傷防止プログラムが組み込まれていた為それは叶わなかった。
しかも彼はその娼館では一番の
そしてある日娼館から救出された時は解放された喜びよりも、彼らに対する復讐心が先にあった。客を覚えるようにと記憶関係が強化されていたのが幸いし自分を
彼らを一人残らず始末し、自分のような人形を救出する。それがレストがDG小隊にいる理由である。
「いや〜まさかここに四人もいるとは思わなかったよ。でも不思議じゃないよな?『女もいいが男も中々だ』とか言ってたしな」
「お、俺らに復讐しようってのか?あんなに
「は?何寝言言ってんだお前ら?てめぇらに何度も何度も汚され、咥えさせられ殴られ蹴られ切られるのが良くしてやっただ?俺はてめぇらみてぇな趣味は持ち合わせてねぇんだ。一緒にするんじゃねぇ‼︎」
怒鳴りつけると同時にレストは銃を彼らに向けて撃ち放った。
放たれた弾丸は全て命中し、彼らを血に染め上げた。
「うっ…がっ…!」
「痛いか?当然だ。R.I.P弾を使ってるんだ、俺と彼女達が受けた痛みと苦しみに比べりゃマシだがてめぇらには充分だろ。そのまま死ぬまで苦しめ」
R.I.P弾、ホローポイント弾の一種であるこの弾は体内で八つの破片が飛び散り体内を切り裂くものであり、死ななかった場合相当の苦痛を与えることになる弾丸である。
部屋から立ち去ろうとするレストを支配人が呼び止める。
「こ…殺して…くれ…!」
「断る。あぁそういえば、R.I.Pと言えば
そう言い残してレストは立ち去って行った。
────
「…終わったか?」
娼館から出てきたレストを見てバレットはそう問いかける。
「あぁ…救出された人形達は?」
「さっき迎えのヘリで本社に行ったよ。あと、青っぽい銀髪の子がお前に『ありがとう』って言ってたよ」
「そうか…待たせてすまないな、俺らも帰還しよう」
やや放心気味となっているレストだが、復讐した後はいつもこんな感じであったため、バレット達は特に気にすることなくヘリに搭乗する。
いや、ただ一人ノアだけが心配そうな顔で側に寄り添っていた。
「レストさん、本当に大丈夫ですか?」
「ん?大丈夫だよノア。心配かけてすまない」
「レストよぉ、あまりノアに心配かけさせんなよ?」
「いや、わかってるんだが…ようやく終わりが見えてきたからな…」
「あと12人だっけか?早く見つかるといいな。そしたら
レストを
彼の目の下にある涙のタトゥーは復讐を意味し、全員始末したら消すことになっていた。
「もちろんそのつもりだ」
「消したらまず俺らよりもノアに見せてやりな。この中じゃお前の元の顔見てないのノアだけだし」
「私も、レストさんの元の顔を見てみたいです」
「はは、わかったよ。約束する。消したらまずノア、君に見せるよ」
「はい!」
そんな約束を交わし、彼らの乗るヘリはグリフィン本部へと向かって行った。
「スミス、私も彼の顔を見ていないのですが?」
「ごめんウェイター、普通に忘れてた」
今回レストが助けたのはのちのサンダーとなる人形です。
原作と違うのは廃棄処分になる前に助けたところです。
ちなみにレストのキャラ設定はサンダーがモデルだったりします。
あとDG小隊の入隊順はバレット&スミス、レスト、ウェイター、ノアです。
次回は日常回でも書こうかな〜。