バレット側の話ですが、結構事情がヤバいです。
リバイバーがアサルターを沈黙させた頃、バレット達はH&R社とその制圧を依頼した上官について調べていた。
そこでわかったのは、H&R社は兵器を開発し、それを売却しているのだが、その殆どがテロリストが悪用すれば危険な物と判明、さらには不法占拠が事実である事もわかった。
「ふむ…とりあえず作戦自体に正当性はあるが…そっちはどうだ?」
「こっちは…ん?これは…?」
「どうしましたスミス?」
「これを見てくれ。奴のパソコンのデータ内に侵入して見つけたんだが…多分リホーマーに宛てたものだが、会議なんてここ最近無かったはずだぜ?」
スミスが見せたのはワープロに残ったリホーマーに宛てた手紙の原本データなのだが、原本には会議で決めたとあるが、会議室を利用した記録はここ最近では無かった。
「それにこの内容…どう考えても向こうと事を構える前提だ。一週間で立ち退けなんてほぼ無理だろ」
「なるほどな…どうやらなんとしてもリホーマーが徹底抗戦させる為に会議で決めたって事にしたのか…だが、何の為に?」
「それに、俺らやEA小隊はわかるが、何故S07のBB小隊にまで依頼したんだ?」
BB小隊、かつてバレットとスミスが助けた基地にいた男性型人形、M16A4の所属する部隊だが、向こうには悪いが態々召集する程の実力かと言えばそうでもない。強いて言えばM16A4の鉄血に対する憎しみが尋常じゃないというくらいである。
「…ッ⁉︎隊長、これ!」
レストが見つけたのはS07基地に送られたメールであった。内容は、BB小隊が作戦に参加しなければ彼らの電脳をリセットする爆弾が炸裂するといったものであった。
「何てことを…!だが読めたな…これを突きつければあいつの性格上、大元の原因であるリホーマーに殺意を向けるのは明白だな」
「レスト、送信元は例の上官か?」
「あぁ…だがわからないな、何故こうまでしてリホーマーを潰そうとする?まるで奴本人に怨みがあるようだが…」
「それに、この上官の黒い噂なんですが、どうやらテロリストへの無益な拷問をしているとの事で、人形絡みではないんですよね。しかも、ここ最近になってからだそうで…」
ノアの報告を聞き、バレットは考える。
テロリスト、つまり人間への異常な執着を示した彼が何故リホーマーにこうも執着したのか、また何故最近になって先のような事をしたのか。
気になったバレットは彼の交友関係と彼がそうなり始めた時期に起きた事件について調べ始める。すると、ある記事が目に止まった。
「これは…⁉︎スミス、彼が最近調べていた事とかはわかるか?」
「あぁ、わかった……ッ⁉︎バレット、これって…!」
「やはりそうか…どうもこの作戦、後味が悪くなりそうだな…」
────────
バレット達は銃を構えて上官のいる部屋まで急行していった。とはいえ、バレットに関してはサイドアームのベレッタM9を携行していた。
扉の前まで行くと事前にペルシカから受け取ったマスターキーでロックを解除し、五人は一斉に中に入る。
「動くな!…そのまま手をあげてこっちを向いてもらおうか…」
バレットが上官に指示するが、当の本人はまるで来るのがわかっていたかのようにこちらに振り返った。
「…やはりメンテナンスと言うのは嘘だったか。ここに来たということは、全てわかったのだな」
「あぁ。あんたがBB小隊に爆弾を埋め込んで脅したのも、リホーマーに戦うことを暗に示したのも全て…
あんたの奥さんと娘の仇だろ?」
「……」
黙っている上官を見ながらバレットは続けた。
「きっかけは先月の初めに某地区で起きた人権団体過激派による大規模テロだ。あのテロは人形人間問わず多数の死者が出た。そしてあんたの奥さんと娘はたまたまあの場にいてテロに巻き込まれて死んだ。それであんたはそのテロについて調べたところ、不審なところが幾つか見つかった」
端的にいえば、装備が整い過ぎていたのだ。連中の中には粒子ライフルらしきものを使用していたのだが、それが鉄血の物に酷似しているが改造が加えられており、とても彼らの技術で造れるものではなかった。また、現場にはゴリアテの破片があったが、
この事を知った上官は手当たり次第にテロリストを捕らえて過度な拷問を行い武器の出所を探った。そして彼は真実を知ったのだ。
「あのテロで使われた装備は…
そこまでバレットが言って初めて彼は口を開いた。
「…正解だ。武器の出所を知った時、私は直感でリホ・ワイルダーが鉄血だと感じた。それと同時に彼女は鉄血を抜けたのではと思った。鉄血の作戦にしては周りくどいからな。こういうご時世だ、武器商人としてやっていた彼女をテロリストが身分を偽って買ったのだろうと思って彼女を放って置こうと思った…捕まえたテロリストからラジオ放送のデータを渡されるまでは…‼︎」
彼は憤怒に満ちた表情を浮かべ始めた。
「ステルス性のゴリアテ…妻と娘の命を奪ったあの恐るべき兵器をあいつはまるで通販のような物言いで宣伝していた‼︎私は決心した…こいつは生かしては置けない、このままだとこいつはヘラヘラした態度で恐ろしい兵器を売りつけると!しかも奴はあまつさえグリフィンと協力し、自らを宣伝しようとした!私はすぐにでも攻撃を行いたかったが君の言った通り、S地区襲撃の混乱で行動出来なかった…そして混乱が落ち着いた今、その時が来た!」
「本社の会議で決めたって偽ったのは向こうにグリフィン本社に狙われたから逃げられないと思わせるためか」
「その通り!その後EA小隊と君たちDG小隊に協力を依頼した。この手の依頼なら乗る可能性があったからな…BB小隊を脅したのはM16A4の反鉄血感情を刺激して確実に奴を仕留めさせるためさ!」
狂気じみたようすで語る上官にバレット達は敵意を感じるなか、レストが彼に語りかけた。
「…復讐したい気持ちはわかる、だがな…関係ないやつを脅して利用する復讐を、俺は認めない。それに、俺たちに依頼すればあんたを疑って調べる事くらい予想できたんじゃないのか?」
レストがもっともな意見を出すと、上官はニィ、と唇を吊り上げた。
「…わざと、だとしたら?」
「何?」
「君らが私を疑う事は知っていたさ。だが、私を調べる途中でH&R社がやった事も調べるとふんだ。実際見つけられたからな。そして君らはその情報を隠蔽するような人形じゃないとわかっている」
「…何がいいたい?」
「この作戦で奴、リホーマーを仕留めようが仕留めまいが奴は『テロに加担した人形』として追われる羽目になる。しかもリバイバーの情報によれば奴は鉄血にも追われてると聞く。それがわかれば
意味深な一言にバレットが訝しんだ瞬間、彼は突然血を吹き出した。見ると彼の足元に薬品の瓶が転がっていた。
「こいつ、毒を…⁉︎」
「おい待て!BB小隊の爆弾を解除しろ!」
「すでに…したさ…正直、彼にはすまないと…思っている…。復讐のためとはいえ…彼に戦いを強いてしまった…」
「さっき…情報がきて…リホーマーと会敵したそうだ…どうやっても…あいつは…逃げられない…なら私は…家族のもとに…」
そういい彼は事切れた。バレットは軽く歯軋りをしたあと、リバイバーに連絡した。
「リバイバー、そっちはどうなってる?」
『今、番兵を倒してバルカン達を追っかけてるとこだ…左腕と右の爪先がお陀仏になってるがな』
「わかった。リバイバー、BB小隊に爆弾は解除したと言ってくれ。それと、リホーマーに過激派に兵器を売ったか聞けたら聞いてくれ」
『わかった…もしそうならどうする?』
「潰せ。違うなら販売相手をよく考えることと、一ヶ月猶予をやるから立ち退けと警告して作戦を中断しろ」
『了解』
「…いいのか?勝手に決めて?」
「元々クロなら中断する予定だ。だが、どっちもクロならこれが最適解だと思う。あとの責任は取る」
スミスの質問にバレットはそう答えるとヘリアンとペルシカに現状を報告した。
Q. テロって?
A.焔薙様の『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん‼︎』で語られたテロの事です。規模がアレだったので拾いました。
要はコ○ンとかの犯人みたいな動機ですね。
バレット達の出番はここまでなので、oldsnake様、あとは任せます。