人形達を守るモノ   作:NTK

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この作品が他の作者様に見てもらっていると知ってテンションとモチベが天元突破しております。本当にありがとうございます!
あと今回大陸版の子が出ます。


Code-7 広報活動と隊長の受難

とある地区のPMCの拠点の司令室にて、6人の男が拘束されていた。

 

「ぐぅぅっ…!」

 

睨みつける男たちにスミスは近づいた。

 

「いや〜ね、おたくら足がつかないように人形教団を使ったのはいいんだけど、頼んだ相手が悪かったね。奴らの拠点にはそっちの通信記録やらメモやらがバッチリ残してあったよ。バッチリ残り過ぎてて罠かと思ったくらいだ。あんなんでよく今までテロを起こせたよなあいつら」

 

「運が良かったんでしょう。しかし私達に目を付けられたのが運の尽きでしたが」

 

人形教団を殲滅後、彼らに武器を提供した存在がいる可能性を考慮し、彼らの拠点に侵入、その後このPMCとの繋がりが明らかになり制圧作戦を開始、今に至っていた。

 

「チッ!DG小隊め…!」

 

「へぇ、俺らのこと知ってるんだ」

 

「あぁ知ってるさ、野郎の人形ばかりの部隊で鉄血じゃなくて盗賊とか反人形派ばかり狩ってる人殺し集団だってな」

 

「ハハッ、言えてるな。俺ら鉄血人形より人間の方が殺した数多いし」

 

軽口で返すスミスだが、よく見ると目が笑っておらず若干腹を立てている事が伺える。というのもこのPMCは以前より治安維持の名目で殺人や窃盗、強姦などをしているという噂があったのである。ただあくまでも噂なのでグレーゾーンだった訳だが、今回の制圧作戦でその辺の証拠が基地内で発見されたのである。そんな連中から『人殺し集団』などと呼ばれるのは極めて不快であった。さらに男はレストの方を向き、ニヤついた顔でこう言い放った。

 

「それに、そこの赤目野郎の事も知ってるぞ?お前、元男娼人形なんだってなぁ?今はこいつらのオモチャか?毎晩男同士でヤりやって─」

 

刹那、レストの蹴りが男の顔に炸裂し男は派手に吹っ飛んだ。

 

「がっ…!ほ、ほれのあぎょ(お、おれのあご)が…‼︎」

 

「次言ってみろ…二度とその口きけないようにしてやる…!」

 

自分の禁忌に触れた男への殺意を剥き出しにするレストだが、ウェイターに止められる。

 

「やめなさいレスト。彼らは余罪があるから殺すなとヘリアンさんから言われてるでしょう?」

 

「……すまんウェイター、ついカッとなってその事を忘れてた」

 

「まぁ私も頭にきてたので人の事は言えませんが」

 

「よし、連れてくか。あーあ、綺麗に顎外れてら。よーいせっと」

 

「あガッ!」

 

スミスは先ほどの仕返しとばかりに男の顎を無理矢理ハメ直すとヘリへと連行していった。

 

「にしても、あちらこちらで俺らの噂が広まりつつあるな」

 

「おおかた救出した人形達の口から広まってるんだろう。404小隊みたいな記憶処置は任務の特性上出来ないし、第一、隠すほどでもないからな」

 

DG小隊の存在の秘匿性はそこまで高くはない。内外問わず探りを入れられてもわからない程度には秘匿されているが救出対象や視察先の基地などと接触した場合はその限りではない。

 

「記憶処置をしますと、そもそもなんで救出されたのか本人がわからなくなりますしね。しかし、レストの事まで知れてるとは…」

 

「俺がいたあの場所は客同士の繋がりがそこそこあった。多分連中の生き残りがお仲間がどんどん死んでんのが俺の仕業だって勘付いたんだろ」

 

そこで話を終えると、スミスはバレットを見ながらニヤニヤしていた。

 

「それでバレット、彼女とはどうなんだ?」

 

「は?な、何の話だ…?」

 

「トボけんなよ。この前人形教団から助け出したあの娘だよ。ちょくちょく会いに行ってんの知ってんだぜ〜。つか、惚れてんだろ?」

 

「なっ⁉︎」

 

狼狽え始めるバレットに他の3人も興味を持ち始めた。

ちなみに件の彼女だが本社での取り調べの結果、教団から発言を強要された被害者という事で無罪となっている。

 

「この頃部屋に居ない事が多かったが、てっきり訓練をしてるかと思ったんだが、そういう事だったのか隊長」

 

「私は二人が時折会話しているのを見ていましたのでそうだろうなとは思っていましたね」

 

「どうなんですか、隊長さん?」

 

隊員全員に問い詰められ、バレットは観念し白状した。

 

「……あぁ、惚れてるよ、初めに見た時からな。何度か話したり出掛けたりしてるんだが、話も合うし、そばに居たいと思ってるよ」

 

「で、告白は?」

 

「近いうちに彼女、戦術人形に改造するって言ってたからその後に告白しようかと思ってる」

 

「ほぉ、成功するといいな。お前らもそう思うだろ?」

 

「「「もちろん(です)」」」

 

「…ありがとな、みんな」

 

────

 

「広報部の取材?てことは俺達の存在を各基地に知らせるってことですか?」

 

そうだ、とヘリアンがバレットの質問に答える。

 

「最近、人類人権団体の過激派やその他の反人形派の活動が活発化しそれに伴い貴様達の出番も増えている。その結果、必然的にDG小隊の噂が広まりつつある。それだけならまだいいが明らかに悪意のある噂も流れている」

 

「例えば?」

 

「殺しを楽しんでいる快楽殺人集団だとか、助けたことを口実に肉体関係を強要しているとかだな」

 

「……何でみんな俺の方見るの⁉︎

 

「いや、だってスミスいつも救出した人形に連絡先渡してるし…」

 

「それは隊全体の連絡先だ!それに、お前がそうしろって言ってたの忘れてんのかバレットぉ?」

 

「え?…あぁ、そうだったな。すまん」

 

「ひっでぇ⁉︎」

 

「続けるぞ。そのような噂が流れるのはDG小隊の本質からしてもよろしくない。否定するにも、そもそもそんな部隊がいるのか?という話になる。そこでだ、そういったものを払拭するためにもいっそAR小隊のように全面的に告知させることが決定したというわけだ」

 

そこまで聞くとレストが手を挙げ質問した。

 

「一つ良いですか?知らせるのは構わないんですが、どこまで広報に載せる気です?」

 

「公表に至るまでの経緯とDG小隊の活動内容及びメンバー全員の名前と容姿、対応している銃、それと最近行った作戦内容だ。この前のカルト教団殲滅と娼館に拉致された人形らの救出作戦を載せる予定だ。安心しろレスト、貴様の経歴は絶対載せさせない」

 

「…なら平気です」

 

「取材は明日行う予定だ、遅れるなよ」

 

一行は部屋から出て行った後、バレットの方を向く。

というのも、明日は例の彼女が戦術人形へ改造する日なのである。

 

「バレット、取材が終わったら告白しに行くのか?」

 

「あぁ、彼女には待ってるようには言ってある」

 

「しかし、彼女はどんな銃の人形になるのでしょうね?」

 

「あの感じだと、MGかRFってところだろうな」

 

「ARかもしれませんよ?」

 

────

 

翌日、広報部との待ち合わせ場所についた一行は写真撮影を開始する。

初めに撮影したのはスミスであった。

 

「うーんいいよスミス君!もっとこう…後ろに跳びのきながら撃つ感じ…そうそう!ナイス!()になるねー!」

 

「ハハ、カズオさんだっけ?だいぶ人ノせるのが上手いねぇ。あ、君は文書担当?俺のとこに書いといてくんない?撮影用じゃなくて、ガチで二丁拳銃でS&WM500(これ)撃てるって」

 

「わかりましたー」

 

スミスはノリノリでカメラマンの中年男性の要望に応えつつ、文書担当の人に指示を出していた。ちなみに今回彼らが持ってる銃はもちろん弾は全弾抜いてある。

また、今更だが彼が愛用している銃は8.375インチモデルである。4インチモデルならともかく、そんなものを二丁拳銃で構えていれば撮影用では?と疑われると考えての先ほどの指示であった。

 

続いて撮影されたのはバレットであった。

 

「よーし、伏せ撃ちはこれでいいねー!次は立って狙いをつけてくれるかな?」

 

「はい。あ、俺のとこにも書いといてくれませんか?立って正確に連射できるって」

 

「わ、わかりました…(何この二人?規格外過ぎない?)」

 

────

 

同刻、16Labにて例の彼女が戦術人形へ改造する準備を進めていた。

 

「じゃ、これから貴女に適合する銃を調べるから少し待っててね」

 

「は、はい…」

 

ペルシカはそう言い装置の電源を入れる。

すぐに装置が動き出し、莫大な銃のデータから彼女に適合するものを選び始める。

 

(にしても、バレットがこの娘に惚れてるとはね…)

 

そう考えながら彼女を見つめていると、ちょうど終了のアラームが鳴った。

 

「終わったみたいね、えっと…貴女に適合するのは……え?」

 

画面に表示された銃を見た瞬間、ペルシカの顔は固まっていた。

 

────

 

「はい、じゃあ次は背中合わせで…よしOK!」

 

レストとノアの撮影はまずそれぞれ個人での撮影をし、その後ツーショットを撮り二人の撮影は終わる。

ウェイターの撮影を開始するなか、レストはノアに尋ねた。

 

「ノア、なんでさっき俺たちが付き合ってることを書いてくれって頼んだんだ?」

 

「だって…広報見てレストさんのこと好きになった人形がいたら、嫌ですもん…」

 

「……そっか」

 

悶えそうになる気持ちを抑えつつ、レストはノアを抱き寄せ、頭を撫でていた。

 

────

 

「はーい、ウェイター君それ、なかなか様になっているね〜!」

 

「ありがとうございます」

 

「では撮影は以上でーす!お疲れ様でした!」

 

「広報の方は数日ほどで出来上がるので良かったら見てください」

 

撮影は無事終了し、彼らは撮影現場から立ち去り、そのまま16Labへと向かう。この後バレットは戦術人形への改造を終えているであろう彼女と対面、その後告白するのだが、当のバレットはかなり緊張していた。

 

「そんな緊張するなよバレット。いつもみたいにしてればうまくいくって。仲は良い感じなんだろ?」

 

「いや、それはわかってるがどうもな…てか、何故お前らも付いて来る?」

 

「まぁ、隊長の彼女になる人形がどんな銃の人形になったか気になるし」

 

「さすがに告白するときには席を離れますよ」

 

「隊長さん、頑張ってください」

 

「…あぁ」

 

────

16Lab

 

「………」

 

「いやね、私も何かの間違いかな〜って思ったのよ。でも何回検査しても同じ結果がでたの…。えっと…その…本当にごめんなさい…」

 

ショックと混乱の入り混じった表情をしているバレットと珍しく本気で謝っているペルシカだが、こうなっているのは例の彼女が持っている《銃》にあった。

 

特徴的なマズルブレーキをもつその長大なライフルの名前は《バレットM82A1》。バレットM107の姉妹銃であり、つまり彼女はバレットの実の姉ということになってしまったのである。

 

これにはスミス達も困惑するしかなかった。

 

「なぁ、こういうことってあるのかよ?」

 

「どの銃になるかは適正次第ですが、さすがにこれは…」

 

「もしかして、隊長さんが抱いてたのは家族愛だったんじゃ…」

 

「ノア、それ隊長には言うなよ」

 

小声で話すスミスらだが16Lab製であるバレットの耳にはバッチリ聞こえていたが、それに反応する余裕は彼には無かった。

対する彼女──M82A1はバレットに声を掛ける。

 

「ええっと、話があるっていうのは…何でしょうか?」

 

「いえ…何でもないです…M82A1…姉さん…」

 

今出来る最大限の笑顔を作り、絞り出すような声でバレットは答えた。

 

こうして、DG小隊隊長、バレットの初恋は予想もつかない形で結末を迎えることとなり、その夜バレットは製造されて初めて──泣いた。

 

その後しばらくの間、彼の前で『姉』というワードを口にしてはいけないという暗黙の了解がなされたのは言うまでも無かった。




前に言ってた面白いネタってこれのことだったりします。正直隊長にはすまないと思っています。
あとカメラマンの男性は別に人喰べたり首蹴り飛ばされたりしませんよ?(知ってる人は知ってるネタ)
広報紙についてはお好きにどうぞ。

空挺妖精がやっとでた…!あとはスキルレベルを上げれば2-4はいける…!

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