『ようやく来たか』
気付けば、また諏訪神の空間へと飛ばされていた。おかしい、俺は確か今回の騒動での宴でご馳走を食べていた筈。
『あぁ、それはお主の隣に居た老人が間違えて酒の入ったコップをお主に渡したからじゃよ』
「なんと」
衝撃の事実に言葉を無くした。かなり腹ペコだったのに。甘辛い醤油ダレを塗ったとうもろこしが焼けるのスゲー楽しみだったのに。
『また明日作って貰うと良い。……では本題じゃが、お主武器を何処にやった?』
「無くした」
『なんと』
次は諏訪神が言葉を無くした。
四国との通信の後、戦闘を行った場所へと向かったのだが、クレーターの場所には無くなっていたのだ。
白鳥さんも手伝って貰い、周辺も細かく探したのだが一切見つからない。
「幸い、帰りは強化された“道”を通るしな。四国へ戻ったら、代わりの武器を探すよ」
『ちょ、お主……、あれが何の武器か分かっておるのか?』
「……ただのデカい武器じゃないのか?」
モミジの言葉に、諏訪神は大きなため息を吐いた。態とらしく聞こえるそれに少し苛立つが、堪えて返答を待つ。
初めて使用した後、高熱やら体調不良やらでダウンし、それを見た四国の大社の人があの大刀に調整用の札を貼ってくれたくらいだが、何か曰く付きの武器だったのか。
『あれはの、■■■■じゃよ』
「……なんて?」
聞こえてはいるが、何の事か理解が出来ない。昔綾乃が持ってきたアラビア語の吹き替えドラマを見たことがあるが、それに近い感覚だ。
因みにそのドラマは直ぐに見るのを止め、押し入れに封印された後行方不明になっている。
『ふむ、だが気配はまだある。ということは紛失ではなく隠れただけ……。いや、ならば何故理解出来ていないのか』
此方を見ながらぶつぶつと呟く諏訪神を、もうこんな感じになったら戻ってこないなと半ば諦めて放っておく。
それにしても、と思う。今朝見た夢、悪夢とも言うが、起きたときには具体的な物を忘れていたのに此処に来て全てを思い出した。
忘れていたのはこの諏訪神が何かしていたのだろうか。
『ん? そうじゃよ、ワシがこう、お主の頭をいじっての』
心を読むな。てかいじったって
「マジかよ。何か変なことしてねーだろうな」
『するか馬鹿者。お主じゃなくて可愛いおなごが良いわ!』
「おう。戻ったら伝えといてやるよ」
『絶対止めろ』
まぁ、また弄れば良いしの。という諏訪神の言葉に思わず頭を押さえる。真偽は不明だが、記憶か何かを操作する力があるようだ。
冗談やじゃれあいはここまでにして、本題へ行くとしよう。
『……そうじゃの、お主にもそろそろ伝えておかなければならない事じゃ。お主自身の修行の事もあるし、さっさと終わらせるとしよう』
そこまで言うと何と言うか、伝え方を、言葉を選ぶように諏訪神は言い淀む。モミジを気遣うように見る諏訪神に、苦笑いしてモミジは言う。
「気にしないでくれよ、単刀直入に、分かりやすいように言ってくれ」
『分かった。……では、四国の土地神“神樹”に代わり、この諏訪を守護する諏訪大社が祭神、
声質が変わる。目に神性を宿す色へと変化し、身体全体が粟立つのを感じた。
――諏訪神、建御名方神は告げた。少年の本質を、その結末を。
◆
四国への帰還の目処が立った。
怪我の療養や、諏訪でのお役目もあるため直ぐ様という訳ではないが、それでもあまり期間は残されていない。
食料事情、諏訪大社周辺の避難民の捜索、破壊された住居の修理、その材料の調達、etc……。
箇条書きにして予定を立てていた綾乃は、ギシリと音を立てた方へと首を向けた。
「思ったより元気そうで良かったわ、モミジ」
「お互いにな。諏訪の結界の方は?」
「取り敢えずの応急措置は終わってる。結界の力も上手く循環してるし、前みたいな不意打ちは無いと思う」
綾乃の言葉に、そっかとモミジは返答した。そこまで話して、少しの違和感に綾乃の首を傾げる。
「何か元気無い? 変な物でも食べたの?」
「俺を何だと思ってるんだ、お前は」
「突貫馬鹿」
「よし、表に出ろ」
そこまでのやり取りをして、はははと力なく笑った後モミジが切り出した。
諏訪神からの神託があったこと、その内容は言わなかったが何か深刻な事だろうと、綾乃は当たりを付ける。
「へぇ、大変そうだね」
「他人事だなぁ、お前」
「まぁ、実際他人事だしね。でも、どうにもなくなったら助けてあげるよ、安心しな」
「おう。その時は頼んだ」
そう話をしていると、ドタドタと音を立てて歌野が部屋へと駆け込んで来た。何事かと聞けば、何でも畑にイノシシが出たらしい。今夜は猪鍋になる様だ。
「でも畑が荒らされて人手が要るの、手伝ってくれないかしら?」
「分かった。手伝うよ」
「私も。出来ることがあれば」
「サンキューベリーマッチ!! 持つべきものは友人ね!」
「あっ、ちょっ?!」
返答して直ぐに、綾乃の手を掴んで歌野は走り出した。体勢を崩しながらも、転けまいとたたらを踏んで綾乃は歌野へと追従する。
〰️〰️
『大神紅葉。お主の中にある“因果”、それは人類を滅ぼさんとする勢力、“天津神”によるもの』
『つまりお主は、“人類の敵”として、この世に生を受けた者であり』
その事実は、あまりにも唐突で。
『――いずれは、人類に牙を向ける事になるだろう』
モミジの思考を停止させるには、充分過ぎる物だった。
〰️〰️
「――おいおい、待ってくれよ。この足じゃ速く移動できないんだってば!」
胸に残る晴れない霧を感じながら、モミジは何とか笑っていた。
大神紅葉(偽名)
作中 中学二年生
身長 165cm
体重 58kg
誕生日 ――
血液型A型
趣味 散策 食べ歩き
好きなもの うどん 家族(若葉やひなた等) 美味しい手料理
嫌いなもの バーテックス 息の詰まりそうな部屋
今は存在しない家系、大神家の生き残り。戦闘時の武器は身の丈程の大刀だったが、諏訪でのバーテックスの侵攻の際、紛失する。
大社支給のスマホにダウンロードされている精霊システムを使用する事で、バーテックスとの戦闘を可能にしている。
精霊降ろしという、精霊の性質を魂ごと身体に宿すという強力な切り札を持つが、反面精霊の格が高ければ高いほど生命力の減少が早い。
国土綾乃
作中 中学二年生
身長150cm
体重■■■■
誕生日 11月11日
血液型 O型
趣味 映画鑑賞 食べ歩き
好きなもの うどん 家族(若葉やひなた等) フカフカの寝具やソファー
嫌いなもの きっちりした事柄 虫全般
国土家の巫女頭首。かなりがさつな所が多く、ソファーやベッド等では適当な薄着でだらけて居ることが多い。その度にひなたに折檻されているが、直す気は無い模様。
“神隠し”と呼ばれる、バーテックスから感知されにくい霊道を形成するのが得意とする。元々は霊道を感知する程度だったが、“天災”後能力に目覚める。“式神”の使用にも精通している。
望月梓
作中 小学四年生
身長 138cm
体重 秘密
誕生日 11月15日
血液型 A型
趣味 家庭菜園 料理
好きなもの 蕎麦 歌野の作った野菜
嫌いなもの 虫全般 辛い食べ物
“天災”の後に予知夢の能力に目覚める。能力の強化と避難の一環で四国へと歌野によって勧められる。
巫女自体の才能はあるようで、“式神”使用にも才能の芽があるらしい。
歌野曰くピュアでキュートなガール
水都曰く純粋で素直な良い子