大神紅葉は防人である   作:社畜戦士 くっ殺

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期間空きすぎた申し訳ナス(+_+)



ヒトガタ(モミジ)(ヒトガタ) 3

 

「こっちだ、救助隊を回せー!」

 

「怪我人が居るぞ、担架持ってこい!」

 

「小さい子供とお年寄りを優先して通して、動ける人は手伝って下さい!」

 

上がる業火の手。四国の一部は大災害といっても過言ではないほどの被害が起きていた。

逃げ惑う市民、そしてこの困難に打ち勝つ為、今人類の団結が問われていた。

 

「勇者様方の容態はどうだ?!」

 

「皆様病院へと搬送されています。怪我の深い方も居られます故、治療は長引くかと……」

 

大社の一角で、そんな会話がされていた。勇者の状態を気にする男の名は及川、以前は大社排斥の一派ではあったが丸亀城襲撃時、それを察知したモミジにこれでもかと叩きのめされて以来その野望は潰えている。

 

今ではかつての横暴さは鳴りを潜め、人類存続を願う一員として日々を過ごしていた。

そんな中入った“勇者チームの壊滅的打撃”、その情報の正否を調べる為、こうして大社本部まで来ていたのだ。

 

 

「……だろうな。四国がこんな有り様だ。樹海の中で何が起きたのか、分からないのか?」

 

「はい。現場で指揮を取られていた伊予島様のご報告では――」

 

本来は決して語られる事はなく、閲覧削除対象にされるであろう情報が及川へと語られる。

 

 

 

時は遡る――

 

 

 

 

やりづらい……ッ!!

 

“天照大御神”を降ろした少女との応戦、モミジは戦況の悪さに悪態を吐いた。

背後には気を失ったまま倒れる若葉と歌野、そして何より神樹に繋がる樹海の根っこが伸びている。

 

向こうの攻撃を馬鹿正直に避けると、背後の誰かが死ぬか、神樹がダメージを受ける。といった状況だった。

 

故に。

 

「はぁぁあ!!」

「ぐぅっ?!」

 

上段からの切り落としを受け、へしゃげる棍と共にモミジが樹海へと土煙を上げて叩き落とされる。ダメージを歯を喰い縛り耐え、空を見上げれば赤く迸る稲妻の様な物を大刀に纏わせた少女がそれを振りかざしていた。

 

「“赤雷よ、咎人を灰に還せ”!」

 

言葉と同時に振るわれた大刀から、不規則な軌道を描いて赤雷がモミジ、そして若葉と歌野へと迫る。それに対しモミジは樹海へと手を置くと、気を練り上げ言霊を紡ぐ。

 

「“覆え”」

 

瞬間。樹海に根を張る新樹の根から更なる樹木がその顔を出す。互いに組合、頑強なドーム状へと成したそれに赤雷がぶち当たると、貫く様に穴を穿ち大爆発を引き起こした。

 

その光景に少女がニヤリと笑う。だが、煙が晴れ見えるそれに顔を歪める。

メキメキと音を立て、樹木は絶えず成長を続けていたのだ。赤雷はやがて突破力を失い、バチリと音を立ててかき消える。

 

ドーム状の、巨大な要塞を成したそれを足場にモミジが空へと舞う。新しく取り出した棍を軽く振って構えた。

 

 

「お兄ちゃんって精霊を操るだけなんじゃないの……? 聞いてた話と違うなぁ」

 

「多分、この姿になるときに“力”(神力)をくれた神様のおかげだろうよ」

 

 

この棍を含めて、豊穣や戦を司る諏訪神はこの樹海という神力と植物に満ちたフィールドでは本当に使い勝手の良い力だと思う。これがなければ、とうの昔に四国はぶっ飛んでいる筈だ。

 

そして、少女の話が本当であれば、俺は精霊を行使するに長けた能力であるらしい。

なるほど、穢れの影響が多少の違いはあれど、若葉達正規の勇者と違い何種類もの精霊を降ろし、使役出来るのはそういう理由があったのだ。

 

そして、

 

「聞いてたってのは誰からだい? 口ぶりからすると、さっきのゲテモノ野郎(シンシ)とは違うよな」

 

「お父さんの事をそう言わないでよ」

 

「よく言うぜ。母親の事を道具扱いしてたのに」

 

「あの女の事が大事なの? 初めて会ったのに。息子がマザコンになるってのは本当らしいね」

 

「そういうお前はファザコンだろーがよ!!」

 

言葉の後に棍を振るい、少女の構える大刀へと振り下ろす。それを難なく受け止め、振り払う少女に合わせ一度距離を取った。

 

話を流されたが、どうやらコイツら以外の何者かが居るらしい。聞く限りでは口伝での伝達だろうか、もしや。

 

四国に裏切り者がいるとでも言うのだろうか。

 

不要な思考を切り替え少女を見る。余計な詮索は後だ。今は目の前の状況を片付けるのを優先する。

 

 

その時。

 

「おーい、モミジくーんって何この状況?! そしてモミジ君の格好も変わってるぅ?!」

 

「って若葉と歌野?! 大丈夫かよお前ら?!」

 

到着と同時に慌てふためく友奈と球子を見て、この状況の打開策をモミジは見た。それに必要なのは少しの時間とこの二人が素直に聞いてくれるかだけである。

 

 

作戦は簡単だ。

 

①モミジが敵の少女を抑える。

 

②友奈と球子が若葉、歌野を抱えて逃げる。

 

それだけ。

 

 

何故それだけなのに悩む必要があるのか、それは。

 

 

「やいやい! お前がさっきの爆発と二人をこうしたのか!」

 

「見た目は完璧に人間だけど……、さっきぐんちゃんに攻撃してたよね、どうして?!」

 

――このように、人一倍友達思いな彼女達なら、いの一番に頭に血が上ると理解していたからだ。

 

 

待て、落ち着け。と二人の近くに降り立ち止めれば球子がずいと近付いて言う。

 

「落ち着いてられるか、二人がこんな大怪我してるんだぞ?!」

 

「だからこそだろ。とりあえず、俺がアイツを抑える、その間に二人は怪我人を抱えて逃げる、オーケー?」

 

「ファーック!」

 

「オゥ、シット」

 

ふんふんと鼻息の荒い球子を抑えつつ、後ろに居る友奈へと視線を送る。

友達を傷つけられ冷静では居られなかったが今自分が何をすべきか、それを理解出来た友奈が渋々頷く。

 

ありがとうと返事をして、樹木の要塞に避難させていた二人を掴み上げると少し雑だが友奈と球子のそれぞれへと放り投げる。

向こうの攻撃準備が整ったらしく、先程の赤雷が大刀へとチャージされている。

 

 

もう時間は残されていなかった。

 

 

「走れッ!!」

 

 

「っ。だーっ、タマ達の分までぶっ飛ばしとけよ、モミジィ!!」

 

「怪我には気を付けて、また直ぐに戻るから!」

 

モミジから怪我人を受け取った二人が、少女の攻撃に危機感を感じたのか脇目を振らずに勇者衣の性能をフルに使い猛スピードで走り出す。

 

モミジは少女の目線が友奈達へと向いているのを見て即座に接近、挨拶代わりに蹴りを叩き込んだ。

 

 

「お前の相手は俺だってんだろ、こっちに集中しろよ」

 

「……鬱陶しいなぁ、欠陥品のくせして」

 

 

怪我人は下がらせた。

 

これで俺が気にするものは特にない。

 

 

――さぁ、反撃開始だ。

 

 

 

此処に来る前に言われた事前情報の中に、この人(お兄ちゃん)の事も言われた。

 

『奴の権能は“御霊の使役”。所謂精霊が持つ能力そのものを自由に使役する力だ』

 

だがお前の持つ“厄災の使役”の敵じゃあない。とお父さんからは言われた。

その言葉に疑問を持ってなかったし、実際に会ってみても勝てる気しかしなかった。

 

 

なのに。

 

 

鎌鼬(かまいたち)

 

モミジの言葉と同時に棍が振るわれる。防御の為に大刀で防ぐが、棍に纏っている嵐の様な暴風が大刀越しに少女の身体を刻む。

 

「ぐぅっ、このぉ!!」

 

(さとり)

 

力任せに大刀を振るえば、見てもいない死角からの攻撃を易々と避けられる。お返しとばかりに放たれた蹴りを大刀で防ぎ、距離を取る。

 

神力が残り少ない。殲滅するために使用した“厄災”の内の一つ、“赤雷”の力が、思っていたよりも少女の身体から力を持って行っていた。

 

そして、何時もならすぐに回復する筈の体力や神力が、まったくと言って良い程に回復しない。

 

 

どうして、と焦りを感じているとモミジがニヤリと笑う。

 

「どうした。力を使いすぎたか、最初の頃の余裕がないなぁ」

 

「うるさい!」

 

刀の柄を握る。目の前の男を斬り殺すイメージを作る。そして後は実行するだけ――

 

女郎蜘蛛(じょろうぐも)

 

モミジに大刀が当たる寸前で、見えない何かに攻撃が防がれる。

それに驚き対処が遅れ、返す回し蹴りをモロに腹部に喰らって少女は吹き飛んだ。

 

〰️〰️

 

息を整える。

 

自身に降ろした精霊が剥がれるのを感じる。ありがとう、と声はなく心で思えば、どこか返事を返された様な気がした。

 

若葉達他の勇者が居るからか、此処が神樹に近い樹海だからだろうか、精霊の数や種類が桁違いに揃っている。おかげで降ろす精霊に苦労はしなかった。

 

吹き飛んだ少女に目をやる。吹き飛んだ体勢のままピクリとも動かないが、気を失っていないことは分かっていた。

 

 

此処が樹海、つまりは神樹の領域内で本当に助かった。奴等はここで戦うだけで相当なペナルティが発生するらしい。使った神力が回復しないのがその証拠だろう。

 

だが俺は違う。ここでいくら力を使おうと即座に神力は回復する。体力までは回復しないが、精霊を降ろし放題というだけで状況は全然違う。

 

 

「本当、今日は散々な日だよ」

 

 

そこまで考えた所で、少女が俯いた姿勢のまま言う。

 

 

「お父さんは瀕死。勇者達を皆殺しにするために来たのに、神樹に力を抑えられ挙げ句は欠陥品のお兄ちゃんに好き放題ボロボロにされる始末」

 

言いたい放題だなおい、誰が欠陥品だ。

 

 

バチリ、と大刀に赤雷が走る。残り少ない神力で何をする気だ。と疑問に思うと同時に、(さとり)による先読みが脳裏に走る。

 

合わせられる武器。その先のイメージが間に合わず、思わず振るわれる大刀を棍で受け流す様に防ぐ。

 

「吹っ飛べ」

 

「なっ?!」

 

武器をつばぜり合いした状態で赤雷が発動する。

 

お互いに爆発で吹き飛び、勢いそのままに地面を何度かバウンドし、大樹の一つに当たって漸く止まった。

ぐるぐると回る視界の端で、上空へと力なく吹き飛ぶ少女。

 

 

その顔が、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

()()!!」

 

少女の叫んだ声に理解が追い付かなかった。何を呼んだ?援軍か?と視線を回すが、周囲には星屑のバーテックスしか居ない。

 

 

そう、バーテックスしか居ない。

 

 

――お父さんを回復させる為に、あのウジ虫を一杯消費しちゃうのに

 

 

「まさか……」

 

少女の元へと集うバーテックス。その光景に思い出す少女の言葉、その嫌な予感を的中させる様に、

 

 

「いただきます」

 

 

――少女が、バーテックスへと大口でかぶりついた。

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