大神紅葉は防人である   作:社畜戦士 くっ殺

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端末の交換したんで一部表記が変わっているかもしれません。

短編とか言いつつ滅茶苦茶長くなりそうなんで、一部区切って上げますm(_ _)m

続きは執筆中なんで、少々お待ちをば。


勇者達との章
閑話 勇者青春御記


 

「大神もさぁ、“勇者”なのか?」

 

「お? 土井さんだっけ、俺は神具に選ばれただけで、“勇者”とは少し違うぞ」

 

「へぇ、そうなのか」

 

「おう。まぁ、バーテックスが現れれば戦うから、似たようなもんだろうけどな」

 

 

人類において、ほぼ壊滅的といっても言い程の威力をもたらした“天災”の日。その一月後。

 

若葉達“勇者”の力を持つ少女や、その勇者付きである“巫女”のひなたと綾乃。そしてその幼馴染みであり、神具に選ばれた稀有な少年であるモミジは、これから暮らす事となる丸亀城で他の勇者達と顔合わせをしていた。

 

それぞれが初対面であり、更に同じ“勇者”の力を持つ存在……。好奇心、警戒、緊張が渦巻く最中、更に少女達が目を引く存在が居た。

 

男の勇者だと言うのだ。

 

“勇者”とは本来、無垢な少女にしかなれぬ。そう事前に聞かされていた少女達にとって、その存在は不意打ちにも近い事柄だった。

 

 

そして、冒頭の時間まで進む。

 

 

「なるほどなぁ。タマと同じくらいの女の子しか居ないって聞いていたから、随分と男っぽい奴が居るなって驚いたぞ。許せ」

 

「そりゃあ驚くだろうな。気にすんな」

 

「おぉ、話の分かる奴だな。気に入った、タマと友達になろう。タマの事はタマと呼びタマへ!」

 

「おう。これからよろしくな、タマ」

 

がっしりと交わされる握手。まだ何処かぎこちない空気感の中行われたそのやりとりに他の一同に衝撃が走る。

 

真面目な顔で思案顔をしている様に見えるが、内心モミジすげぇと感心していた若葉が慌てて切り出す。

 

「乃木、若葉です。これからバーテックス殲滅に向けて、お互いに頑張りましょう」

 

「ん? おー、さっきも自己紹介してたな。タマは土井球子。タマ、と呼んでも良いぞ?」

 

「宜しくお願いする、土井さん」

 

「……お、おぅ」

 

暗に気楽に接する様に頼んだ球子だったが、真面目な若葉には通じなかったらしい。

苦笑したモミジが助け船の為に口を開く。

 

「若葉はドが付く真面目で、固い奴でな。だが良い奴なんだ。俺からも頼むよ」

 

「ほほーぅ、なるほどな。あ、タマからも紹介したい奴が居るんだ。おーい、杏。こっち来いよー」

 

納得行った顔をした球子が、誰かを探すように周囲を見渡した後、教室の隅へと声を掛ける。

特徴的なふわふわとした白に近い髪色をした少女が、びくりとはねた。

 

おどおどと此方を見る少女へと近付くと、腕を取って連れてくる。モミジの前へと出されたが、ひぃと短く息を吐くと球子の後ろへと滑り込む様に引っ込んだ。

 

「おいおい。モミジは大丈夫な奴だぞー。……ダメだ、返事がない。ただの杏の様だ」

 

「伊予島さんだっけ。随分と仲が良いんだな」

 

「おうよ。杏とタマは姉妹の契りを交わした仲だからなっ!」

 

 

なるほど、と球子と杏のやりとりを見てモミジは気付く。つまりは少女しか居ない筈の場所にいた男。その人物が危険かどうかを確認する為に球子は率先して話し掛けに来たのだと。

 

モミジの顔を見て、モミジの考えている事に気付いたのか球子が慌てる。

 

「あー、違うんだ、モミジ。別にお前の事を疑ってたって訳じゃ……」

 

「大丈夫だよ。そりゃ急に男が居たら驚くもんな、俺だって警戒するよ」

 

気にするな、と球子に言えば、ありがとうと返された。元々本当に気にしていなかったモミジからすれば、その程度で済む事である。

 

 

「では、私も自己紹介をしてもよろしいですか? 上里ひなたと申します。よろしくお願いしますね、土井さんに、伊予島さん」

 

「……ど、何処かのお嬢様か?!」

「失礼だよ、タマっち。よ、よよよよろしくお願いします!」

 

ひなたの所作に驚く球子に、杏が頭を上げながらツッコミを入れる。改めてその場に居る人間に目を向けつつ、かなり言い淀みながらも挨拶を終えた。

 

 

「ねぇねぇ、私達も混ぜて貰っても良いかな?」

「た、高嶋さん……っ」

 

団欒に一段落ついた頃、高嶋さんとそれに手を引かれて郡さんがやって来た。積極的に来る高嶋さんとは反対に、郡さんは人と接するのが苦手な様だ。

 

改めて自己紹介を終えて、何処かぎこちない空気感だった教室内の緊張が綻ぶ。そしてここに至るまでに、郡さんとは一度も目が合わなかった。

 

というより、避けられていた。普通にショック。

 

「勇者様方。お部屋の用意と、生活圏の設備のご説明があるため、此方へとお願いします」

 

手持ち無沙汰になっていた所に、がらりと扉を開けて神官服の男が顔を出す。昼を少し過ぎた所だし、寮の説明の後でご飯でも食べれるだろうか。

 

「ご飯食べたーい」

「うむ、うどんだな」

「本番のうどんかぁ、楽しみだな!」

 

約一名のおかげでうどんになったが、皆楽しみにしているようなので良しとしよう。

 

 

頭の中で、何かのモヤモヤが溜まっていく。

 

「っ、はぁ!」

 

武器を振るう。身体の芯を支柱にするイメージで、回転の速度を落とさず、尚且つ武器に振り回される事などないように。

自身の武器、“大葉刈”が空気そのものを切り裂いて進むのを郡千景は肌で感じていた。

 

この武器は危険だ。由来を大社の神官から聞いて、更にそれを訓練で使用している今でも分かる。敵味方関係なく、何でも切り裂く。それがこの武器。

 

生半可に振るえば、持ち主である私さえも切るだろう。実際に、好奇心で刃に指を当てれば容易く皮に切れ込みが入った。

 

「集中を」

 

「はい」

 

担当の武芸に長けた神官が言う。訓練以外で話すことがほとんど無いくらいの関係性だが、千景の集中力が切れている事を言っているのは容易に理解できた。

 

 

大鎌を振るう。

 

――今日からよろしくなー!

――おぉ、同い年くらいの子と共同生活なんて初めてだよ!

――そりゃ、そうだろうなぁ

 

……騒がしい声が消えない。

 

 

大鎌を振るう。

 

――なぁなぁ、授業終わったら皆で“犬崎”にうどん食いに行かないか?

――おっ、良いな。賛成だ。

――私もさんせーっ!ぐんちゃんも行こう?

 

……うるさい。

 

 

大鎌を振るう。

 

――――お前に喰わせる物なんかねぇよ。とっとと帰りな。

――――アンタなんか居ても居なくても一緒だから。学校来ないでよ。

 

――お嬢ちゃんちゃんと飯食ってんのか?よぉし、ガッツリ食って行きなよ。ほれ、遠慮すんな。

――そうだよー。ゲームのし過ぎで夜更かしもダメだよ?ぐんちゃんが学校来ないと寂しいもん。

 

……声が消えない。

 

 

大鎌を、振るう。

 

――――ゲームばっかして、陰気な奴だよな、本当に。

――――存在価値がない奴って本当に居るんだね。

 

――へぇ、郡さんってゲーム得意なんだ、何のゲームしてんの?

――一緒に行こうぜ、一人で居てもつまんねーだろ?

 

 

声が消えない。

 

 

がらんと金属音を立てて転がったそれにびくりと肩が跳ねた。見れば、すっぽ抜けた大鎌が武道場の床に突き刺さる形で転がっている。

突然の出来事に声も出せないで居ると、ふぅ、と担当官が息を吐くのが聞こえた。

 

「集中出来ていませんね。今日はここまで、基礎トレーニングを無理ない程度に」

 

「……はい」

 

言葉少なく去って行く担当官の背中を目線で追って、姿が見えなくなったところで耳を押さえてうずくまる。

 

消えない。

 

声が消えない。

 

冷たい声と、暖かい声が混ざって胸の奥が気持ち悪い。

 

 

「……うるさい」

 

 

千景の絞り出す様な呟きが、静かな武道場に溶けるように消えた。

 

 

 

窓から差し込む朝日を受けながら、モミジは大きな欠伸をした。

それを見たひなたがクスクスと笑い、隣に居る綾乃が呆れて言う。

 

「アンタ、また遅くまでゲームしてたでしょ。日付変更までは確認してるわよ」

 

「うげ。部屋が近いってのも考え物だな。いやぁ、郡さんから教えて貰った攻略法でゲームが進む進む」

 

「お上手ですものね、郡さん。私も一つ始めてみたいのですが……」

 

他愛ない話をしながら、三人が廊下を進む。丸亀城は“勇者”専用の建物になってはいたが、肝心の教室は遠いところにあった。

 

聞けば、防犯の為だという。

 

始業まではまだ時間がある。という事でゆっくりと進んでいた三人の前に、突如白いモコモコが現れた。

意味不明な悲鳴の様なものを上げながら突っ込んできたそれは、モミジにタックルさながらにぶつかり、逆に転がるという形で幕を閉じる。

 

「……白」

「綾乃ちゃん」

「あいよっ」

 

ほとんど反射に近い形で放たれた裏拳がモミジの顔面にヒットする。

痛みにうずくまるモミジを尻目に、ひなたは白いモコモコ、伊予島杏に手を差し伸べた。

 

 

「伊予島さん、どうしたんですか?」

 

「ああっ、ひなたさん!それに綾乃さんに大神くん!大変なんですよ~!」

 

「なにが――」

 

 

何があったんだ。とひなたが聞く前に、普段授業を行う教室から派手な音がした。

複数の怒鳴り声に、その場に居た涙目の杏以外が血相を変えて教室へと駆け付ける。

 

 

そこには。

 

 

「うるさいのよ、構わないでって言ってるでしょ!!」

「ぐんちゃん、落ち着いて……っ」

 

「そんな物の言い方があるかッ! 文句があるなら外に出ろ!!」

「バカ乃木、煽ってどうするんだよぉ……!」

 

一触即発。友奈と球子にそれぞれ羽交い締めにされた千景と若葉の姿があった。

 

 

~~

 

「何やってんだお前……」

 

「……私は悪くない」

 

ぷいと子供の様に拗ねる若葉、普段の若葉を知る者なら珍しいと思うが、今は別だ。

事実、本来なら写真を撮りまくっているだろうひなたでさえ、連写モードで10枚撮るだけに抑えている。

 

「取っ組み合いするなんて珍しいですねぇ、カッと若葉ちゃんですか?」

 

「……ひなた、今はお前の冗談に付き合っている余裕はない」

 

「はい。私も本気で怒りますから大丈夫ですよ」

 

「えっ」

 

笑顔の裏に阿修羅が見えるひなたを見て、心の中で若葉に合掌をする。頑張れ若葉、夕飯までには終われよ。

 

拗ね顔から汗を流しながら焦り顔へと変わる若葉を置き去りにして、当の本人である千景の元へと綾乃と共に急ぐことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「私は悪くないわ」

 

「お前もかい」

 

開口一番の言葉に思わずツッコミが入る。此方も拗ねている。話にならねぇ。

 

「どっちが悪いとかは置いといてさ、喧嘩の原因って何だ?」

 

「……どうしてそこまでするの?」

 

原因追求の事だろうか、それは勿論。

 

「これから先長い付き合いだろ?出来れば仲良くなりたいしな。解決出来ることなら、協力したいんだ」

 

モミジの言葉に、じっとモミジを見つめる千景。疑い深い、真偽を確かめる様な視線に苦笑いをしながらモミジは傍らで気落ちした顔の友奈に問う。

 

「高嶋さんは何か知らないか?」

 

「あ、えと……」

 

何かを言おうと言い淀み、チラチラと千景をうかがい見る友奈。自身に直接的な好意を寄せてくる相手には甘いのか、千景が助け船を出す形で口を開く。

 

「手紙よ」

 

「手紙?」

 

言葉をそのまま返す形で問えば、返答代わりに封筒を手渡された。

そういえば、助けた避難者や四国の住民から感謝や激励の手紙が届いたと、神官から小耳に挟んでいる。

 

封筒を開けば、中には一部ビリビリに破かれた手紙を含め複数の手紙が入っていた。

 

モミジ達と同世代らしき子供や、千景の住んでいた地域の商店街の代表らしきお偉いさんからのありがたい手紙がある。破かれてはいたが。

 

「最近、ちょっとイライラしてて……。そんな心にも無い手紙を貰ってカッとなったの」

 

「それで、乃木さんが何してるんだー、って……」

 

 

なるほど。

 

 

千景がイライラしている理由や、感謝の手紙を心にも無いと断定した理由も分からないが、原因は理解できた。

 

千景自身悪くないと言い張っているが、周囲の空気を感じてバツが悪そうにしている。このまま放っておいて関係が悪化するよりは、早急に解決に持って行く方が良いだろう。

 

「郡さんはどうしたいんだ?」

 

「……どう、とは?」

 

「手紙破いちゃうくらいイライラする連中の事。確か、一度実家に戻らなくちゃいけないんだろ?」

 

モミジの言葉に、千景が思い出した様に目を見開く。

 

手紙の通りなら、周囲の他人や両親は自分の事を“自慢の我が子”だと思っているらしい。確証はない。

 

でも、“天空恐怖症候群”の疑いのある母の様子を見に行くという短時間の帰省とはいえ、あまり気乗りはしていないのも事実だった。

 

答えが出ない。いや、()()()()()()()()()()()()()()()のだが、気弱な自分にはそれを実行する勇気が持てないのだ。

 

千景が答えに迷っていると、よし、とモミジが手を打ち合わせて言う。

 

 

「俺も行って良いか?郡さんの地元」

 

「……え?」

 

そんな、突拍子もない提案を少年は行うのだった。

 

 

「いやー、電車乗ったの久しぶりだよー!」

 

「……」

「……そうね」

 

「は、ははは……」

 

 

がたんごとん、と音が響く。

 

昼前とはいえ、自分達三人しか乗っていない電車の中、高嶋友奈は苦笑いで冷や汗をかいていた。

 

視線を落とす先には、明らかに傷付いた様子のクラスメイト大神紅葉。そしてその向かい側、自分の隣に位置取るのは今回の主役である郡千景だ。

 

大神紅葉……モミジが、見て分かるほどに気落ちしているのはとある理由からだ。

 

 

千景の気乗りしない地元への帰省に今回の騒動の理由があるとみたモミジは、千景に地元へ同行すると申し出た。そして。

 

 

「…………嫌っ!」

 

「えっ」

 

 

振られた。以上。

 

 

……とはいかず、友奈が千景を宥め賺し説得して、今日この日を迎えることが出来た。

元々男子が苦手らしく、それが理由であまり考えず断ったのは後に判明する。

 

突破口として見出したのが友奈。自身もついて行くことを伝え、思い立ったが吉日とばかりに千景を急かした。千景のあまり強く言えない性格もあってか、こうして千景、モミジ、友奈の三人で出掛ける事に成功したのだ。

 

 

「それで、ぐんちゃんの故郷ってどんな所なの?」

 

「……高知よ」

 

「うん!」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

終了。

 

千景も冷や汗をかいている所から悪意はないのだろうが、どう伝えれば良いのか分からないらしい。

 

「(言いたくないなら仕方ないけど、ちょっと寂しいなぁ)」

 

友奈は、自身の横で気まずそうに身動ぎする千景を見ながら、そう思っていた。

 

 




ぐんちゃん書くとどうしても闇の部分が多くなる……。
キャラ崩壊、変更ありとしてますので、お付き合い下さいませm(_ _)m
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