大神紅葉は防人である   作:社畜戦士 くっ殺

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その際には手直しが終わり次第直ぐにアップしますので、ご迷惑をおかけしたら申し訳ないm(_ _)m


閑話 勇者青春御記 3

 

 

朝。鍛練に行くまでの僅かながらの時間の合間。

 

ちょっと良いかな、と話を出したのは友奈だった。

 

 

「球子の様子がおかしい?」

 

「うん……」

 

 

気落ちした返事をしたのは、暗い顔で俯く友奈。側では千景が、どうしようかとあたふたとしながら焦っている。

 

 

「おかしいってのは、どんな風に?」

 

「最近、授業が終わるとすぐに外に出て行くでしょ? 何時もの買い物かなって思ってたんだけど……」

 

 

話を纏めるとこうだ。

 

 

一人だけで外出する球子。

 

その帰宅時間は日が沈んでからと遅く、帰って来ても沈んだ顔をしている。

 

訳を聞いてもはぐらかすだけで話してもらえない。

 

悲しい。

 

 

話を聞いてから口を開いたのはひなただった。

 

「何かのトラブルに巻き込まれてるんでしょうか……?」

 

「うーむ……」

 

ひなたの言葉に、若葉が同意する様に悩む。

 

確かにその線もあるが、個人的に球子の話を聞くなら重要な人物が居るだろう。

 

「よし、なら話を聞きに行くかぁ」

 

「む? 誰にだ。球子は口を割らないんだろ?」

 

 

若葉の言葉に、訓練場の一つを指さして言う。

 

正確には、射撃場を。

 

「タマに詳しい人が居るだろ、本当の姉妹みたいに仲良い奴が」

 

 

~~

 

「タマっち先輩が……?」

 

「あぁ。何かなかったか、タマが悩むような事」

 

「うーん……」

 

 

友奈達と別れてから、巫女の修行まで時間のある綾乃と共に杏の居る射撃場へと移動していた。

 

友奈が一緒に行動したいと名残惜しそうにしていたが、四国を守る勇者としての義務だと神官に言われ、渋々連れて行かれた。

 

 

うーん、と悩ましげな表情を浮かべ、鍛練で流れた汗をタオルで拭きながら杏は言う。

 

「特に、ないですかね……。様子がおかしいっていうのは気付いてましたけど、聞いても答えてくれなかったんで」

 

「杏ちゃんが聞いてもダメだなんて、珍しい」

 

「そうなんですよね……」

 

 

杏なら何か知っているかも、と思い来たが無駄足だったようだ。

 

なら何が原因だろうか、と考えればそういえば、と杏が言う。

 

 

「最近、タマっち先輩が書庫から出てくるのをよく見ましたね」

 

「あぁ、それ知ってる。何か、恋愛小説を探してるって聞いたよ。杏ちゃんが読んでたシリーズの」

 

「「えぇっ?!」」

 

杏の言葉の後に出た綾乃からの情報に、モミジと杏が揃って驚く。

 

 

あの土井球子が、恋愛小説に手を出した……?

 

 

少し前に男勝りな性格と言動の球子を、少しでも乙女らしくしようと杏が恋愛小説を勧めていた時期がある。

 

球子も全く読まないという訳ではないのだが、(杏曰く)性に合わないらしく直ぐに読むのを止めるらしい。

 

「こんないかがわしい物を読むなー!って、タマっち先輩、私の部屋から恋愛小説を没収してた時もあったんですから!」

 

「あったわねー」

 

「そうなのか」

 

綾乃に聞き返せば肯定の頷きが帰って来た。

 

杏の所有する恋愛小説のシリーズの一つに、少しアウト寄りの官能表現をする物があったらしく、それを読んだ球子が羞恥で顔を赤らめながら激怒。杏にはまだ早いと没収していた時期があったようだ。

 

因みに小話として、その恋愛小説をひなたが若葉に勧め羞恥の顔を激写するという事があったらしいが、割愛する。

 

 

「まだ全部返してくれてないんですよ?先生の新作が出たから、読み返したいのに……」

 

「伊予島さんは本が好きだなぁ」

 

「勿論!本は私の宝物ですから!」

 

 

――“天災”が起こってから今日まで、人類は生きることに全てを費やしてきた。

 

その為、書物や娯楽品等の類は生産もなく、また四国で取り扱っていない物であれば作ることすらままならない。

 

杏が愛読書の恋愛小説や、千景が好むゲーム等は故障や破損すれば替えの効かない娯楽品の一つとなっていたのだ。

 

書店やゲームショップ等もまだ営業をしているが、売れた書物やゲーム等の補充や生産の目処は全くといっていいほどに立って無いらしい。

 

 

「なら、何でタマちゃん元気無いんだろうね」

 

綾乃がうーむと腕を組みながら悩む。

 

球子本人に聞いても話さない

杏に聞いても分からない。

 

となると手段は一つだけだ。

 

 

「よし、尾行するぞ」

 

 

モミジの言葉に、綾乃と杏が目を輝かせて頷いた。

 

 

 

 

次の日。

 

授業の終了を知らせる鐘が鳴り響いた。鍛練も今日の分は終わっている。

 

後は皆思い思いに過ごすだけなのだが……。

 

 

「悪い。タマは先に失礼するぞ」

 

 

言うが早いか、球子は鞄を手に取るとそそくさと教室から出て行った。

 

その背にお疲れ様、と声を掛けようとしたひなたがあらあらと驚く。

 

 

「行っちゃいましたね」

 

「うむ。何時もなら釣りに行くかうどんを食べに行くかなのだが」

 

「ま。計画通りって訳で」

 

 

ポケットから取り出したスマホを起動させる。それは?と疑問を浮かべる周囲に机の上に置いて見せる。“丸亀城”と書かれた四角い場所から、一つの赤い点が点滅しながら離れていく所だった。

 

 

「……もしかしてGPS?」

 

「流石千景ちゃん、察しが良いね。皆のスマホの現在位置を共有してるのさ、“勇者”が赤、巫女の二人が青、俺は緑」

 

「ゲームで似たようなのを見たから……。後、呼び捨てで」

 

「おぉ、悪かった。“千景”」

 

 

球子の事を大社に相談し、“勇者”の身の安全等を理由にして説得、実現したシステムだ。

 

俺が緑なのは“勇者”でないこともあるが、有事の際に“勇者”の身柄を確保出来るよう、区別して貰っている。

 

 

若干不満そうな表情の彼女に千景。と呼べば満足そうな笑みを浮かべる。

千景ちゃん、という呼び方は、高知の嫌な思い出を思い出すらしい。

 

 

とりあえず、と前置きをして話を切り出す。

 

 

「タマがどんな理由があるにせよ、街中を誰にも報告なしに歩き回るのは不用心だ。今回の件は、心配無用な事柄であれば注意だけに留める」

 

「例えば?」

 

「一人での個人的な鍛練、他には家族に会いに行ってるとかな」

 

 

モミジの言葉に、それぞれが納得行ったように頷く。

 

ここ丸亀城で“勇者”が揃っているという事実は、大社関係者の他にはその家族しか知っている者は居ない。

 

その関係者から情報が洩れる事もあるのだが、その際の万が一を考えて、勇者の外出を極力禁止しているのだ。

 

“勇者”が大人以上の力を所有しているというのは知られているのだが、逆にそれを利用しようとしている輩が居るのも事実なのである。

 

 

だが、“勇者”である彼女達はまだ子供だ。

 

ホームシック等の精神的なストレスの関係で、定期的に家族との面談は許されているのだがそれは大社の監視付き、というオマケがある。

 

本当の意味で羽を伸ばすべく、大社に秘密でこっそりと家族に会いに行く。というのは、モミジ達丸亀城組の中での暗黙のルールだった。

 

――まぁ、それはとっくにバレており、同じく“勇者”と同等の力を持つモミジが同行する。という理由で大社からは見逃されているのだが、モミジ以外の彼女達はまだ知らない。

 

 

でも、と続ける。

 

「タマの性格上それはしない。アイツが黙っているという事は、何かしらの事があるんだと思う」

 

モミジの言葉に、一同が黙る。最悪の想定はなるべくするべき事ではないが、もしかすると、と考えておくべきかもしれないのも事実だ。

 

 

「だから、尾行には最小限で行こう。俺と――」

 

 

GPSが付けてあるとはいえ、なるべく距離を離したくはない。

 

有事の際に動ける人間で固め、球子の尾行へとモミジ達は動いた。

 

 

 

 

「此方メープル。シャドウ、ホシ(球子)は居るか?どうぞ」

 

「感度は良好。今は商店街に行くところね。オーバー」

 

「了解。フレッシュ、どうだ?」

 

「誰がフレッシュだ。というか目の前で何やってる」

 

 

電柱に身を潜めながらのやりとりに、若葉は頭に手を当ててため息をついた。呆れられた。

 

千景とやったゲームにこういう潜入スパイをするゲームがあったのだが、千景はノリ良く乗ってくれた。

 

 

さて、と視線を球子へと戻す。丸亀城からバスを乗り継いだ遠い商店街まで来た。避難者等への炊き出しや物資の補給で賑わっており、かなりの人が往き来している。

 

 

そういえばここは、と口を開いたのは千景だ。

 

「確か、前までは有名なデートスポットだったわ」

 

「デートスポット?」

「えっ」

 

 

千景の言葉に、若葉とモミジはそれぞれ違う反応をする。

 

思い返されるのは杏とのやりとり。

 

 

――タマっち先輩、私の部屋から恋愛小説を没収してた時もあったんですから!

 

 

そして、前に球子がぼやく様に言っていた言葉がある。

 

 

――タマ達も、“勇者”のお役目が無ければ恋愛とかしたりとか――

 

 

デートスポット、年頃の乙女、恋愛小説……。

 

ぐるぐると脳内で回り出したワードに、モミジは一つの答えに行き着く。

 

 

……もしかして、デートに来ただけ?

 

もしそうだとすれば、自分達はとんでもないお邪魔虫ではないのだろうか?

 

 

突如として行き着いた答えに、モミジの中で焦りが生まれる。どうしようか、でも何かあってはいけないし……、と考えを巡らせていると、若葉がおっ、と声を上げた。

 

 

「誰かと話してるぞ……?誰だ、あの男は?」

 

 

若葉の言葉に、弾かれる様に視線を上げ人垣の先にある球子を見つける。

 

 

そこには、身長差のある二人の姿があった。

 

 

何やら緊張した、されど待ち遠しい物を見つけた顔の球子。

 

そんな球子を爽やかな笑顔で対応し、親密そうな雰囲気を出す青年。

 

 

二人は少し話し合うと、はぐれないよう身を寄せ合って人垣の波を抜けていく。

 

 

そんな光景を呆然と見つめていた三人だったが、はっと気を取り戻すと急いで追跡を始める。

 

 

「…………」

 

 

――その後ろ姿を見つめる視線には、誰一人気付かずに。

 

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