大神紅葉は防人である   作:社畜戦士 くっ殺

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個人的にシリアスです!(深夜テンション)




仲間だろ

「和人さんが、死んだ」

 

 

何を言ってるのか分からなかった。

 

モミジと一緒に居るひなちゃんが、もう少し言い方を……!とモミジへ言っているが、そんなことはどうでも良い。

 

 

「何で死んだの?病気だったって訳?」

 

「大社の部署内で……。その、何者かに殺害されたようで」

 

「何で……?叔父さんは何か恨みを買うような事をしたの?!」

 

「違う、そんな事は有り得ない!落ち着いてくれ、綾乃!」

 

 

身体から力が抜ける。足元からかくりと崩れ、いつの間にか床に膝をついていた。

 

身体が辛い。ぜぇぜぇと音を立てないと呼吸が出来ない。苦しい。

 

 

「――!!」

「――?!」

 

 

モミジが肩を掴んで揺さぶりながら何かを叫んでいる。ひなちゃんも一緒に。

 

だけどきぃきぃという金切り音が鼓膜に響いていて何も分からない。

 

 

ひなちゃんの身体が不意に驚いた様に跳ねる。その視線は、私の身体。

 

その視線を辿って、身体へと目を向ける。

 

視線を向けられた胸元には、禍々しい程の威圧を放つ呪印があって。

 

 

「――あ」

 

 

一斉に、脈打つ様に全身へと呪印が広まった。

 

 

 

 

大社。神霊医療機関、その最奥地。

 

 

祝詞が書き込まれた札や型代等、人為的に神域を作り出した結界内にて、綾乃は病人の様にベッドで横たわっていた。

 

僅かに見える腕からは、たくさんの点滴によるチューブが見える。

 

その一つ一つ、その全てで綾乃の命を何とか保っている状態なのだという。

 

 

大神紅葉。お前が引き起こした事態だ。

 

 

「なぁ、教えてくれよ。モミジ」

 

 

待合室のガラスから、そんな綾乃の様子を眺めながら球子がギリ、と歯を食いしばりながら言う。

 

 

「何で黙ってた?!何かあったら相談しろって言ってたのはお前だろ?!」

 

「……悪かった」

 

「っ!お前ぇ!」

 

 

この後に及んで何かを隠している様子のモミジに、球子が胸ぐらを掴み怒鳴りつける。

 

そんな球子へ待ったを掛けたのは若葉だった。

 

 

「待ってくれ、球子!」

 

「離せよ、綾乃があんな状態になっちゃってるんだぞ?!」

 

「怒りは分かる。だが落ち着いて、私達からの話も聞いてほしい」

 

 

若葉の言葉に、冷静さを取り戻した球子が息を荒げたままだが動きが止まる。

 

無言。だが様々な葛藤が混じった視線を球子と若葉が交わしていると、他の面々が割って入る。

 

 

「ほら、タマちゃん……」

「タマっち先輩、話を聞こう?」

 

 

「……モミジ君、大丈夫?」

「ほら、座って下さい」

 

 

皆からの制止と仲裁に、球子はどかりと長椅子に尻をついた。

 

胸ぐらを掴まれ荒れた服を簡単に整えながら、ひなたはモミジの耳元で小さく囁く。

 

 

()()。和人さんの遺品とその書類から、分かっています」

 

 

その言葉にどきりとすると同時に、バレてしまったのかとモミジの中で諦めに近い納得が行った。

 

 

――もう、隠し通す事は出来ない。

 

 

 

 

「――じゃあ、何か」

 

 

説明を終えた中、球子が頭をわしわしと手で搔きながら言う。

 

 

「モミジは生まれつき敵側の人間で、神様の力を持ってるからタマ達みたいな“勇者”に近い力を持ってて――」

 

 

ちらりと綾乃の方へ視線を向けながら、

 

 

「綾乃に掛けられたって“呪い”を解くために、敵の“巫女”を殺してたって訳か」

 

 

何処か無感情な、何時も快活な彼女にはない淡泊とも冷淡とも言える雰囲気に、若葉とひなたが慌ててフォローに入る。

 

 

「“呪い”の事は、口伝するとその相手にも“呪い”が移る可能性が高い物だったんだ」

 

「神代の“呪い(まじない)”には、そんな高い効力を秘めた“呪い”は実際にあります。モミジさんは、決して自己満足で行動していた訳では――」

 

 

「でもさぁ!」

 

 

二人の弁明を断ち切る様に上げた球子の怒声に言葉が止まる。

 

時が止まった様に静まり返る空間の中で、球子の言葉はそれでも聞こえた。

 

 

「殺したんだろ、人を」

 

 

息を呑む音が聞こえる。誰もが口を挟めない様なそんな空気の中、モミジはあぁと口を開いた。

 

 

「殺したよ」

 

「――っ!!」

 

 

モミジが言い終わると同時に、球子は鋭くモミジへと踏み込んでいた。

普段の訓練でもこんなに速く動いてるのは見たことない、とは後に伊予島杏が発した言葉だ。

 

球子の少女らしい小さな握り拳が、訓練によって固く握られモミジへと叩き込まれる。

 

走ったその勢いで殴りつけた拳は、踏ん張る気の無かったモミジを長椅子から転がり落とした。

 

 

ぶっ飛んだモミジへつかつかと近寄り、マウントを取って尚も殴る。

 

殴り慣れてない彼女の拳は、直ぐにベロベロと皮が剥けていた。

 

 

「球子っ!」

「殴ったらダメだよ?!」

 

「離せよっ!」

 

 

事の当初は呆気に取られていた他の面々が、無抵抗で殴られるモミジに危機感を抱いたか正気に戻り球子を羽交い締めする。

 

だが、怒りによる火事場の馬鹿力かそれを直ぐに振りほどくと今度は胸ぐらを掴み、

 

 

「お前が隠し事をしてるとか、敵の親玉と繋がっててモヤモヤしてるとか、取り返しのつかない事をしてしまったとか、タマはどうでも良いんだ!!」

 

 

いや、悪い事だけども!とヤケクソ気味に怒鳴り散らす。

 

けどなぁ、と掴んだ胸ぐらを自身に引き寄せ、目と目を合わせるように顔を向き合わせると、

 

 

「お前のその死んじまった目は何なんだよ!!人を殺して、そこまでして綾乃を助けるって決めたんだろ!」

 

「――」

 

「なら、何時ものお前らしく振る舞えよ!自信満々で、お節介で、それでも絶対に皆で笑顔で居たいっていう、お前そのもので!!」

 

 

瞳に涙を溜めながら言う彼女の言葉に、その瞳越しに映る自分の顔を認識する。

 

 

覇気の無い、死んだ様な目。

 

 

……生きてんのか、こいつ?

 

 

いいや、きっと死んでる。この大神紅葉(いまのおれ)は、死んでいる

 

 

俺らしい振る舞い。

 

思えば、家族の様に思える若葉とひなたに嘘を吐ける様になってから、俺は俺でなかったのかもしれない。

 

あの日から、俺は何処か歪んだままなのだ。

 

 

「――確かに、“あの日”以降のモミジ君はおかしかったけど、まさかそんな事に巻き込まれていたとはね」

 

 

千景が球子の肩にそっと手を置いて、宥める様に手を離させる。

 

モミジの手を取り、両手で包み込む様に握り締める。冷たさを感じていた手が、じんわりと暖かくなった。

 

 

「それについて文句を言うなら、私はそれでも言ってほしかったわ。たとえ、“呪い”が伝播するとしても」

 

「……何で」

 

「友達だからよ。……昔、私が独りだった時に、モミジ君が手を引っ張ってくれたでしょ?」

 

 

普段の彼女が浮かべる事のない、柔らかな笑みを浮かべて、

 

 

「モミジ君は独りじゃない。ううん、独りにさせない」

 

 

 

 

――貴方の決断は間違いではないと思います。貴方も私も、互いに守りたいモノの為に戦い、そして決着がついた。ですから……

 

 

前に殺した、俺とは違い本物の覚悟を決めていた“巫女”の言葉を思い出した。

 

 

――そんなに、辛そうな顔をしないで良いんですよ?

 

 

あの“巫女”は、こんな俺の顔を見ていたのだろうか。穢れ、坂道を転がる様に堕ちていくであろう俺に、それでも態々声を掛けてくれたのだろうか。

 

 

「今回のモミジさんの行動は、はっきり言って論外です」

 

「杏……」

 

「行動に困ったら相談して下さい。これでも、“勇者”チームの参謀役ですから」

 

 

少しだけ緩んだ空気を察知したのか、杏が声を上げる。

 

杏の言葉に突き動かされたのか、友奈がはいはーい、と手を上げて言う。

 

 

「なら私も手を貸すよっ!」

 

「友奈がぁ?何をどうするって?」

 

「取り敢えず、悪い人ならぶっ飛ばしちゃえば良いよね!」

 

「おい、コイツさっきタマに殴るのはダメとか言ってなかったか」

 

 

友奈の主張に球子が訝しげに眉をひそめ、方法を聞いて呆れ顔に変わる。

 

先ほどまでの張り詰めた空気は何処へやら、ガラリと変わった空気の中で、ひなたが微笑んで言う。

 

 

「私も、及ばずながら手助けさせて下さい。……もう、待ってるだけじゃ嫌なんです」

 

「モミジ、私もだ。余計な事をと思うかもしれんが、首を突っ込ませてくれ」

 

 

「……でも、お前らまで綾乃みたいになっちまったら」

 

 

未だ最後まで納得出来ないモミジに、なーにと若葉が胸を叩いて言う。

 

 

「その時は直接敵の親玉まで突っ込んで行って斬るまでだ、安心しろ」

 

「……若葉だとホントにやりかねないのが恐ろしいよな。ていうか、若葉みたいなマウンテンが胸を張ると悲しいだけだゾ」

 

「なっ……、球子には言われたくないぞ?!」

 

 

顔を赤らめた若葉が、球子へと怒鳴る。

自身のと球子のを交互に見比べながら喧嘩しているのを見て、これってどんぐりの――と言いかける友奈の口を、千景が慌てて塞ぐ。

 

 

そんな皆の騒がしい様子に、なんだか可笑しくなって笑ってしまった。

 

 

そんなモミジを見て、球子がにひひと笑う。

 

 

「やーっと普段のモミジに戻ったな。手間掛けさせやがって」

 

「タマっち先輩、そんな言い方しないの。立てますか?」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

差し出された手を握り、立ち上がる。殴られたダメージからか少しふらつきを感じていると、ひなたが服に付いた埃を払いながら言う。

 

 

「では早速、綾乃さんを救うための作戦を練りましょう。大丈夫、きっと何とかなりますよ」

 

 

ひなたの言葉に、例え気休めだとしてもそれで良いと思えた。

 

綾乃の“呪い”を解くには時間はない。だが、今の俺は独りではない。

 

 

“仲間”が居るのだ。

 

 

不意に鼻から何かがつぅと垂れた。視界の端で落ちていく赤いそれは、直ぐに鼻血だと理解できる。

 

あぁ、ひなたからティッシュを貰わないとな、と床に落ちていく鼻血を見れば、

 

 

ピタリと、空中で止まっていた。

 

 

異変に最初に気付いたのは若葉か、弾かれた様にある方向へと顔を向ける。

 

 

――それは、人類の敵(バーテックス)が出入りする瀬戸大橋の方向。

 

 

「……来るぞっ!」

 

 

若葉の言葉を裏付ける様に、スマホから樹海化警報が鳴り響いた。





個人的な話、前の薙刀(なぎなた)使ってた巫女さんは弥勒蓮華として出すつもりでした。
ゆゆゆいでキャラの姿が公表され、慌てて敵役に……。勇猛果敢に薙刀振り回す、武勇が多めのお嬢様にするつもりでしたが(´・ω・`)

この先の展開でもしかしたらオリキャラ続投で出るかもしれないんで、気長にお付き合いお願いしますm(_ _)m
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