大神紅葉は防人である   作:社畜戦士 くっ殺

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会社の近くの某チェーン店で皆で出前を取るんですが(夜勤時)、その時に
「あ、もしもしー」
「〇〇様ですね。何時もご注文ありがとうございます。ご注文内容どうぞ^^」

「かしこまりました。それではお弁当出来上がり次第、其方にお届けに上がりますね^^」


名前を言わずとも認知されてる&住所も認知されてる(会社のだけども)っていう状況に、何だか乾いた笑いが出た今日この頃。




流れ星

 

 

――もう後がない。

 

国土の“巫女”を確保し、計画を確実なる物にせねば、(大神)は終わる。

 

 

最奥にてそびえる神樹を忌々しく睨みながら神遣(シンシ)、初代大神はその眉間に皺を寄せる。

 

大社の“一部の巫女”を取り込み、使う計画は失敗。保険にとそのまま潜んではいたが、あのガキ(大神紅葉)の権能で居場所が完全にバレてしまった。

 

国土の“巫女”に掛けられた天照の“呪い”は発動した。そう時間は掛からず死ぬだろう。

 

問題は亡骸をどう回収するかだ。

 

 

「準備できた」

 

「そうか」

 

 

神遣の傍らへ、その娘である少女が音もなく現れる。

見開いた眼は、朱が混じる金の輝きを瞳に灯していた。

 

 

行くよ。という少女の言葉に従う様に、バーテックスの群れがわらわらと追従する。

 

その中には、融合体とは別のバーテックスも混じっていた。

 

 

「そいつが例のか」

 

「うん。まだ“魂”が入ってないから、十分な力は出せないけど……」

 

 

まぁ、と四国を眺めながら、

 

 

「神格を持った“魂”なら、一つ宛てがあるしね」

 

 

殺意が籠もった剣呑な雰囲気の眼へと変わる。少女の殺意と共に湧き上がる神威に後押しされる様に、周囲のバーテックスは津波の如く一纏めに飛翔。四国へ向けて進軍する。

 

宙をその白い身体で、無数に染め上げる様に、

 

 

それは正しく、星屑の様であった。

 

 

 

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

 

歌野の鞭が唸る。繰り出された鞭が、意志を持ったかの様に浮遊するバーテックスを次々に撃ち落としていく。

 

その隙間を埋めて攻めてくる敵を、杏が手にした“金弓箭(ボウガン)”で、更には球子が“神屋楯比売(旋刃盤)”を振るい油断なく撃破する。

 

 

第一波を抑え、次を迎える僅かな時間に球子はふぅと息を吐いた。

 

 

「多いな……。こりゃあ奴さん、相当な準備をしてきてると見た」

 

「だろうね。恐らく、モミジさんの妹さん……だっけ?あの娘が関与してると思うよ」

 

「中々にハードだわー。此方の嫌な所を突いてくる感じ、私嫌いよ!」

 

 

前線を見れば、他の“勇者”がバーテックスを次々に撃破していっているのが見える。だが、数が多すぎるのだ。

 

 

「モミジさんが簡単なバリケードを作ってくれたから助かってますが、無ければ突破されてますね……」

 

「何故か“巫女”がまーた動ける状態だからなぁ。最初に聞いてた話と違うゾ」

 

 

ちらりと視線を送った先は、堅牢な印象を持たせる分厚い木々で出来たドーム型の中。

 

その中で戦闘能力を持たない“巫女”三人が、身を潜める手筈になっている。

 

 

現在の彼女たちは、そこを起点とした二、三重の防衛ラインを引きながらの防衛戦を徹底していた。

 

 

「バーテックスも、あれがある限り入り口から入るしかないものね。そこをディーフェンスするのが、私達のお役目!」

 

 

群れからはぐれた数体が迫る。鞭を振って難無く消滅させた歌野に杏がお見事、と称賛を送るが、肝心の歌野は渋い顔をしていた。

 

 

「どーしたんだよ歌野。杏の褒美じゃ満足出来ないってか?」

 

「あぁ、そうじゃないの……。何か、今回の“奴等”は何か違和感を感じて」

 

「違和感?」

 

 

歌野の言葉に、杏が聞き返す。

 

歌野は直感的な発言をすることが多いが、それはどれも的外れな事ばかりではない。

 

発言の正否はどうであれ、策を練る事が仕事である杏からすれば少しでも情報が欲しいところであった。

 

 

「言葉に表し辛いんだけど……、そうね。今までの“奴等”とは思わない方が良いと思うわ」

 

 

スマホを操作し、簡単なメッセージとして音声データを前線の皆へと送信する。

 

間違いかも、と焦る歌野に杏は大丈夫と頷いて返した。

 

 

「この中で戦闘の経験が長いのは歌野さんですから。少しでも不意を突かれる可能性を下げるため、気になった事は直ぐにでもお願いします!」

 

 

前線から此方へと洩れたバーテックスを目視で確認し、ボウガンの矢をリロードする。

 

 

狙いを定め、引き金を引いた。

 

 

 

 

“生大刀”でバーテックスを切り裂いた。これで何匹目だろうか。

 

 

「杏から伝言だ!バーテックスの能力未知数、侮る無かれ!」

 

「「「了解!」」」

 

 

若葉の号令に、他の各々から声が上がる。

 

モミジが作った誘導用のバリケードに沿うように侵入してきたバーテックスを、次々に撃破していく。

 

 

「能力未知数……。なるほどな、確かに少々違和感を感じると思ったが、これだったか」

 

 

言葉の後で、地響きの轟音と共に土煙が高く上がる。見ればモミジが手にした棍で融合体を叩き潰した所だった。凄まじい威力だ。

 

 

「確かに堅ぇな。融合体も更に段違いになってる」

 

「モミジ! あまり無茶は――」

 

 

言ってる途中で、横合いからバーテックスが体当たり狙いか勢いよく突っ込んで来る。

 

まずい、と思った瞬間、空を切ってバーテックスにぶち当たったのはモミジが手にしていた棍だった。

 

壁に押しピンで縫い止めるが如く、串刺しにしたまま樹海の一部へとバーテックス諸共突き刺さる。

 

 

「無茶はしてねぇよ。お前達“勇者”の力も、“精霊”の力も知ってる」

 

「なら……っ!」

 

「だからこそ、限界までは使わないでほしい」

 

 

モミジの言葉が、一点を差したまま止まる。同時にその視線を追った各々が、息を飲んだ。

 

 

あの少女が居た。

 

モミジと血の繋がりがある、あの少女が。

 

 

――顔の半分程が爛れ、ケロイド状になったその表情と、爛々と輝く吊り上がった朱金の瞳はまるで般若の様で、

 

 

「……俺も、今回は最初から全力で行かなきゃならないからな」

 

 

モミジは、そんな少女を冷静に見つめていた。

 

 

 

 

「よぉ、元気そうだな。あのクソ野郎も一緒か?」

 

「元気に見える?私、お兄ちゃんのせいで死にかけたんだけど」

 

「こっちもダメージ負ったし、四国に甚大な災害も出てんだから、それでノーカンにしようぜ」

 

 

会話を続けながら、神力を練り上げる。“神花”はとうに解放。衣はまだ纏わない。狙うは――

 

 

「そんなの、私に関係ない」

 

「まずい。皆、直ぐに逃げ――」

 

 

突き出された手から、バチバチと赤雷が迸る。

その技を見た、一度受けた経験のある若葉が、急いで退避の号令を掛ける。

 

 

――速攻だ。

 

 

「えっ」

 

 

そんな言葉が誰から出たのか、少女はその一瞬の事に驚きから目を見開く。

少年、大神紅葉が瞬きの内に少女へと距離を詰めていたからだ。

 

 

武道にある歩方の一つ。縮地。

 

直立したまま倒れる様に体勢を崩さず、相手に自身と並行にあると錯覚させ距離を詰める歩方。

 

動作の起こりの後、練り上げた神力を使い少女の懐まで滑り込むかの様に瞬時に近付いたのだ。

 

 

慌てて少女が照準を此方へと定める。

赤雷が此方へと向くが、踏み込んだその勢いのまま、神力を拳に送り込みながらクロスカウンター気味に少女の顔面へと叩き込む。

 

バキャァ、と竹を割ったかの様な音をさせて、少女がきりもみ回転をしながら吹き飛んだ。

 

 

「ここを頼むぞ、お前ら」

 

「あ、あぁ……」

 

 

突然の事に言葉が出ないままで若葉が頷く。

 

まだ僅かに呆けたままの千景、友奈、若葉の三人にモミジが苦笑いしながら言う。

 

 

「おいおい、頼むぜ?アイツら倒しても四国が無くなってたら帰れねーからな」

 

「……ふふっ。任せろ、モミジ。帰ったら皆からの説教が待ってるからな」

 

「…………」

 

「おい。逃げようとか考えるなよ」

 

 

あ、やべ。と真顔になったモミジへ、若葉はジト目気味にツッコミを入れる。

 

分かってる。と言いつつ神衣を展開したモミジが口を開いた。

 

 

「そんじゃ、兄妹喧嘩に行ってくる」

 

 

そう言い残したモミジに、アイツらしいなと若葉は笑った。

 

 

 

 

「おい、この程度で寝るようなタマじゃないだろ。さっさと起きろ」

 

 

若葉達から離れて、少女が吹き飛んだ場所まで到着する。吹き飛び倒れた姿勢のまま、少女はピクリともしなかった。

 

モミジの声を受けて、指先に反応を示す。クスクス、という笑い声と共にゆっくりと上体を起こすと、ニタリと笑みを浮かべて言う。

 

 

「プレゼントは受け取って貰えた?」

 

「……何が?」

 

「何がって……もぅ」

 

 

態とらしくため息を吐いて、

 

 

「あのつるつる頭の人のこと。きれーに殺してたでしょう?」

 

「…………」

 

 

言葉に詰まったのを図星と思ったのか、少女が嗤う。

 

 

「残念だったよねぇ。こっちの神様に“呪詛返し”を仕掛けようとしてたんだって?発想は良かったけど、それじゃあちょっと弱いよぉ」

 

「おいおい。キャラ変わってんぞ、良い感じに“穢れ”をキメてるなぁ、うん?」

 

「お互い様でしょ? こっちもギリギリなの、さっさとアンタの魂回収しなきゃ――」

 

 

そこまで言って、おっと、と口に手を当てる。

 

 

「いや、バレてるぞ。言いたいこと」

 

「あ、やっぱり?」

 

 

てへ、と笑う少女。……何だろうか、何だか嫌な胸騒ぎを感じた。

 

兎に角早く決着を付けるべきだ。棍を手元に精製し、軽く振って構える。

 

少女はゆらりと立ち上がると、着用している羽衣から溶け出す様に現れた長剣を一振りして構える。

 

 

十拳剣(とつかのつるぎ)。残念ながら神具の類ではないけど、切れ味は抜群だよ?」

 

「上等。さっさと終わらせる!」

 

 

少女へと踏み込み、棍を振り上げる。それを長剣でいなし、流し、受け止められる。

 

そこで、僅かな違和感を感じた。

 

 

「……どうした、前とは違って大人しいじゃないか。お淑やかに目覚めたか?」

 

「前とは違うんだよー。お淑やかって……()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

防御に徹底的に専念されては、此方の攻撃も中々通らない。

 

 

少女は、ニヤニヤと嗤っていた。

 

 

 

 

外で、戦ってる音が聞こえる。

 

 

「――――」

 

 

目の前で、何か神秘的な力を感じる繭の様な物に包まれた綾乃を、梓はただ眺めていた。

 

 

――今日からよろしくね。同じ変わった“異能”持ち同士、頑張ろう!

 

――困った事があったら言えよ、何でも力になってやるから。

 

 

――君が、望月梓くんだね。綾乃から話は聞いている。これから、よろしく頼むよ

 

――和人おじさん、女の子に“くん”はないよ“くん”はー

 

 

私は、()ていた。

 

 

鮮血に染まる夕暮れの部屋。

 

その中で倒れ伏す、和人とモミジ。

 

 

ちゃんと、予知し()ていたのだ。

 

 

――和人さんが、死んだ。

 

――何で……?叔父さんは何か恨みを買うような事をしたの?!

 

 

私がちゃんとしていれば。

 

 

私がちゃんと強くあれば。

 

 

思い出すだけでも腹が立つ。

 

弱い自分。

 

モミジに縋り付いて泣いていた自分を、もう何度蹴り飛ばしたか分からない。

 

 

――良いんだ。仕方ないさ。

 

 

暗い目をして無理に笑いかけてくれたモミジに、何度謝ったかも分からない。

 

 

――綾乃?! しっかりしろ!!

 

 

嫌だ。もう嫌だ。

 

 

もう、親しい人が死ぬのはもう嫌だ。

 

 

 

 

「っち……。中々に数が減らないな……!」

 

 

何時まで経っても減らない敵に、思わず舌打ちが出る。友奈、千景の二人も疲労が溜まって来たのか、息が切れているのが見えた。

 

後衛の歌野達との連絡は小まめに交わしてある。此方が疲弊した今、交代し僅かにでも身体を休めるのが得策だろうか。

 

 

とりあえずの敵の波が治まり、次の波が来るまでの僅かながら余裕が出来る。

 

下がるか?とアイコンタクトを二人に送れば、同意の返事が返ってきた為によしとスマホを操作する。

 

連絡を取ろうとした所で、杏から電話が入る。丁度良いタイミングだ。

 

電話に出ようと耳に当てると、視界の端で何かが動いているのを感じた。

 

よく見ると、遠くの方で歌野が大きく手を振りながら何かを叫んでいる。

 

 

何々、“に”、“げ”、“て”――

 

 

~~

 

 

くそっ、やる気あるのか、コイツ!

 

 

少女と交戦を始めて、もう一時間近くになるだろうか。

 

若葉達から離れた所から、更に離れた場所まで来てしまった。最初は米粒程度に見えていた姿も、今では全く見ることが出来ない。

 

 

未だに少女への決定打は一度も入らない。それどころか攻撃すらも入らない。向こうが防戦一方だからだ。

 

 

別に此方の攻めが激しく、反撃の暇を与えない。という訳ではない。

 

此方がどれだけ攻撃しても、向こうは淡々と交わし、いなし、流すだけなのだ。

 

 

「こっちの体力が尽きるの狙ってんのか? なら無意味だぞ、それは」

 

「うん?それはそうだろうね。“勇者”も数が居るから中々攻めきれないだろうし」

 

「……そこまで分かってて、じゃあ何がしたいんだ?お前……」

 

 

モミジの訝しげな目に、少女は笑って宙を示す。

 

少女へと注意を切らすことなく見れば、そこには黒い幕に白を散りばめた、ロマンチックに言えば――

 

 

――宇宙に広がる星屑の様に、“無数”の数え切れないくらいのバーテックスが居た。

 

 

どくりと、嫌な予感がする。

 

 

幾ら無数に居ても、俺は問題ない。神力は尽きない限り、四国の結界内ではほぼ無敵だ。

 

 

そう、()()

 

 

少女が、ニタリと嗤い腕を振り上げる。

 

それはまるで、楽団の指揮者のようだった。

 

 

まさか……。

 

 

「くそっ、距離が?!」

 

「させないよ!!“降り注げ”!」

 

 

ターンして、若葉達の元へと駆け付けようとするがそこで少女から攻撃が入る。

 

これまでにない重さの攻撃に、モミジはいなすことが出来ずに地面へと叩き付けられた。

 

間髪入れずに入る攻撃に、棍で受け止めてつばぜり合いになるが体勢から直ぐに不利な状況へと追いやられる。

 

 

「ぅぐ……、テメェ……っ!」

 

「大丈夫だよ。直ぐに“勇者”共の後を追わせてあげるからさぁ!!」

 

 

ギリギリと押し込まれる長剣。目の前の危機もそうであるが、向こうの無事も確かめなければならない。

 

だが、この状況では若葉達の元へ駆け付ける事も出来ない。

 

“神花”の力は互角。スピードもパワーも互角。

 

向こうの援護にも迎えず、その隙さえも作れない。

 

 

万事休す。

 

 

宙から流れ星の如く離れた一点へと星屑が降り注ぐのを見ながら、モミジはだだどうすることも出来ないでいた。

 

 

 

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