大神紅葉は防人である   作:社畜戦士 くっ殺

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うーむ、シリアス気味で会話多いかな。読みづらかったらすまぬ。

シリアス書きすぎて身体があっぱらぱーに飢えてるので、ギャグというか日常的な短編書こうと思います。

本編も同時進行で内容練りながら書くので、少々お待ちをm(_ _)m


自分を示せ

思い返すのは、あのバーテックスの侵攻があった後の頃。

 

モミジに応えてくれた神具、“天叢雲(アマノムラクモ)”を自在に使えたら。というモミジの提案で諏訪神監修の元、神の持つ“狭間の世界”で修行を行っていた。

 

だが、幾ら神力を込めても一切の応答無し。左手で右手を押さえ、“唸れ俺の秘められた力!”と千景辺りが反応しそうな台詞を叫ぶが、当然の如く反応はなかった。

 

 

『お主の身体には在る。まだ目覚めてないだけじゃろう』

 

「でも、あの時には使えたろ?」

 

『馬鹿者。あれはワシの声に応え、仕方なしにお主に従ってただけじゃ』

 

 

呆れた様に言う諏訪神に、えぇ……と悲観にくれた声がモミジから洩れる。

 

 

「マジでか。来い!とか格好つけて言ってたけど、あれ俺を認めたんじゃなくて渋々かよ……」

 

『傑作じゃったぞ、草を通り越して樹海が出来るわい』

 

「ぶっ飛ばすぞジジィ」

 

 

いつの間にか棍を精製しやる気満々なモミジにさておき、と流しながら諏訪神は言う。

 

 

『“天叢雲”は、お主の事は認めておるよ。人類にとって変革のあったあの日、あの剣をお主が手にしたのが良い証拠じゃ』

 

「……でもさぁ」

 

『それに、お主の持つ“天津神の因子”。それに繋がる神を、ワシは二柱知っておる』

 

 

諏訪神の言葉にモミジの動きが止まる。え、マジで?

 

一つはあの少女が降ろしていた“天照大神”だろうが、もう一つあるのは知らなかった。

 

 

「え、誰。どんな神様?」

 

『それは言えん。お主が自分で辿り着くしかなかろうよ』

 

 

素っ気なく顔を背ける諏訪神にケチと言うが、それでも無視された。

 

だが、そこでふと気付く。あの少女、俺の妹は“天照大神”を降ろしていた。それは自分で辿り着き、認められ力を手中にしたという事だろうか。

 

 

『それは違うぞ』

 

 

モミジの考えを読み取ったのか、諏訪神が顔を険しくしながら言う。

 

 

『お主の父親……、大神家の初代当主じゃったか。其奴が行った外法が、あれを可能にしておっただけじゃよ』

 

「……ヒトガタの儀式の事か?」

 

『左様』

 

 

諏訪神が人差し指を立てると、そこに淡い光が灯り、空を走らせるとペンの様に光の跡が残っていた。何それ超便利、俺も出来るかな。

 

 

『通常ならば、霊を降霊させ力を受け継ぐ時には、その相手の霊に自分を認めさせなければならぬ。これが、今のお主の課題じゃ』

 

「え、俺の場合武器じゃないの?」

 

『武器も同様。あの神剣は持ち主に依存しておる。元の持ち主である神格が認めねば、武器も真にお主を(あるじ)と認めはせぬよ』

 

 

だから死ぬ気で頑張れ、とサムズアップと共に諏訪神が笑う。

 

その態度に腹が立つが、確かに言うとおりであろう。これは俺の問題であり、自分で乗り越えるべき試練だ。

 

 

『次に、あの少女の場合じゃ。これがタチが悪い』

 

 

諏訪神が指を走らせる。先程のモミジの例では壁が幾重にもあったが、少女の場合にはそれを一本線を走らせて神に直結させていた。

 

 

『全ての過程をすっ飛ばして、直接相手の神霊に強引に繋げておる。本来受けるべき試練も、何もかも無しにしてな』

 

 

諏訪神の説明を聞きながらふと気付く。

 

ヒトガタの儀式に必要なのは、文字通り人形(ヒトガタ)の人間。

 

欲もなく、悪意も善意も何も知らない。そんな存在ならば、“神”は罰する事も出来ないのだろう。

 

 

その者が手にしていない、自覚していない“本当の自分”を、裁く事など出来はしないのだから。

 

 

『だからこそ人形(ヒトガタ)はタチが悪い。自我を、罪を犯さぬ故に、我等神は介入すら出来ぬ』

 

「……それは、俺もなのか?」

 

 

モミジの問いに、諏訪神は否定するように首を振る。

 

 

『生まれは確かに人形(ヒトガタ)ではあるが、在り方が違う。名を持ち、自分というのを持っておる。だからこそワシはお主を試し、力を分け与えたのじゃから』

 

「なら、あの少女が自我を、確かな“自分”を手に入れれば、“天照大神”を剝がすことも可能なのか?」

 

『うむ。もしあの女子(おなご)がそうなれば、“天照大神”も直ぐさま剝がれるじゃろうな』

 

 

諏訪神の言葉に、少女への打開策はあると確信する。

 

問題は、少女が振るうあの天災の如き権能だ。

 

 

『降ろす相手()が悪かったのじゃろう。権能も上手く扱えていないように見えた』

 

「そうなのか? 結構ギリギリだったんだが……」

 

『真に“天照大神”が顕現したのであれば、今のお主程度では相手にもされん。以前諏訪でお主の“穢れ”を辿りワシの神域で強引に顔を出した事があったが、完全なる相手の領土でありながらあぁも自由に動いて居たのじゃ』

 

「マジでか……」

 

『それも、塵程度の力でじゃ』

 

「マジでか」

 

 

諏訪神の説明に、相手のデカさが想像も付かないレベルになる。

 

バーテックスを倒し世界を取り戻す以上一戦交える事もあるだろうなぁと考えていたが、流石に化け物ではないだろうか。

 

だが、退くわけにはいかない。何処かで腹を括る必要があるだろう。

 

 

『だが、お主の中の一柱はそれに遜色ない力を持つ存在でもある』

 

 

そんなモミジへと、諏訪神が神妙な顔をしつつ口を開く。

 

 

『教える事は出来ぬ。それはお主の妹と同じ紛い物の力しか手に入らぬからな。だから、お主が辿り着き、その一柱に覚悟を見せろ』

 

 

そうすれば、武器にも認められるじゃろうと締め括った諏訪神。

 

だが、僅かながら辟易とした雰囲気を言葉の端々や顔の表情から感じる。何故だろうか。

 

 

「一つだけ質問。その神ってじーさんの知り合いか何か? はっきり答えなくても良いからさ」

 

『……何故そう思う?』

 

「さっきから滅茶苦茶嫌そうな顔してるし」

 

 

モミジの指摘にえ、マジで?、と顔を押さえ、諦めた様にはぁと溜息を吐いた。

 

そうじゃな、その通りじゃ。と観念した様に言う諏訪神が、引き攣った笑みを浮かべ言う。

 

 

『はっきり言って、ワシそいつ嫌いじゃもん』

 

 

国津神の中で最高位の神格に入る諏訪大社の祭神、建御名方(タケミナカタ)は小さい子供の様に言い放つのだった。

 

 

 

 

時間は戻り、若葉達“勇者”チーム。

 

 

無事に巫女が控えているシェルターまで辿り着いた友奈と千景。時を同じくして辿り着いた歌野と若葉に無事を祝いつつ、目の前の現実に向き合う。

 

 

「はぁ……はぁ……っ! 勇者ぁ、ぱーんちぃぃ!!」

 

 

掛け声と共に友奈の拳から撃ち出された暴風が、巻き込む者を切り刻む鎌鼬となってバーテックスを飲み込む。

 

“精霊”の連続使用による疲労か、友奈は膝を付いて嘔吐いた。

 

 

尚も降り注ぐバーテックスから守るべく、友奈の異変に気付いた球子が即座に旋刃盤を構え飛び出す。

 

 

「タマに、任せタマえ!! 行くぞぉ!!」

 

 

通常の使い方とは違い、旋刃盤を巨大化させた後斜めに立てかける様に構える。

 

それにより広範囲に渡り防御を可能とした球子が、戦闘状態の他の面子に声を掛ける。

 

 

「ここからはしばらくタマと杏で護りきる! お前らは今のうちに休んでおけ!」

 

「“精霊”のダメージは軽くありません。休めるときに休んで、休養を摂って下さい」

 

「だが、この数が相手では……っ」

 

 

ドカドカと流れ星の如く降り注ぐバーテックスが、球子の構える旋刃盤にぶち当たる。球子も踏ん張って堪えてはいるが、山の如くバーテックスが積み上がっていく。

 

このままでは、数に圧倒され押し潰されるだけだ。

 

重さに耐えきれなくなったか、ぐらりと体勢が崩れた球子を庇うべく若葉が“生大刀”を抜き放つ。

 

 

だが球子を見れば、不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

「若葉。“タマに任せタマえ”って言ったろ?」

 

 

すぅ、と息を吸い込むと足に力を入れ踏ん張り直しながら球子は叫ぶ。

 

 

「燃やし尽くせ――“輪入道(わにゅうどう)”ぉぉぉぉ!!」

 

 

球子の声に応える様に、旋刃盤が回転し轟音と共に炎が巻き上がる。積み重なったバーテックスは一瞬にして火達磨になり、あっという間に燃え尽きた。

 

炎を纏う旋刃盤を元の大きさに縮小し、まだ襲来するバーテックスの群れ目掛けて投げつける。旋刃盤の軌跡をなぞるように、輪入道の炎が大気で残り火となって燃え続ける。

 

 

――見たら最期、対象を魅了する炎は溶かすように魂を冥府へと連れ去る不吉の象徴。

 

 

輪入道の残した炎に触れたバーテックスが、此方に着弾するまでに燃え尽きるのを見ながら球子は得意気に笑う。

 

 

「どーよ。これがタマの実力でぃ!」

 

「タマっち先輩。調子に乗らない!次が来るよ!」

 

 

直ぐに調子に乗り天狗となる球子に注意を促しながら、冷静にボウガンに矢をリロードし輪入道の炎を避けて襲来するバーテックスを見て杏も精霊を降ろす。

 

相手が人海戦術で此方の体力消耗を狙ってるのは分かる。だが、今は力の出し惜しみをしている場合ではない。

 

 

「っ寒?!」

「……雪が降ってる」

 

「これが、杏の“精霊”か……!」

 

 

吐く吐息が白く染まる。いきなりの冷気と寒さに友奈は思わず肩を抱いて飛び跳ね、千景はゆらりと降ってきた雪を興味深げに手で受け止める。

 

今居る環境を強引に染め上げる杏の“精霊”に、若葉は称賛と恐怖を感じた。

 

 

「殲滅を――“雪女郎(ゆきじょろう)”」

 

 

煙と見間違うような白い高密度の冷気が、杏を起点としてバーテックスの通り道に散布される。

 

凍らされようと、“勇者”の近くへ着弾すればダメージを与えられる。とでも考えたバーテックスが強引に突っ込んで来るが、そんな奴等を杏は冷静に観察していた。

 

 

冷気へと猛スピードで突っ込み、“精霊”を降ろしている杏を押し潰そうとバーテックスが突撃する。だが、その途中で急ブレーキを掛けたように突如減速し遂には杏へと辿り着くことなく止まってしまう。

 

 

「“氷”は、不純物が混じらず緻密な凝結を繰り返すと、その強度は鋼以上の硬度になると言います」

 

 

冷気の一部が晴れ、そこに現れたのは空気中で完璧に氷付けにされたバーテックスの大群であった。

 

そこへと杏が構えたボウガンを撃ち込むと、矢が刺さった場所から蜘蛛の巣状にヒビが広がり、やがて粉々に砕け散った。

 

 

――あらゆる物を凍らせる雪と冷気の具現化。また魅了した者を冥府へと誘う死の象徴。

 

 

彼女の冷気が支配する範囲ならば、恐らく私達の中で勝てる者は居ないだろうと若葉は苦笑いを浮かべる。

 

 

「前衛チームは休憩を。その間は私達で戦線を維持します!」

 

 

そう指示を飛ばした後で、杏は手をグーパーと握って取れぬ違和感を確かめる。

 

何時もの感覚とは違う、僅かな違和感。その明らかな“異常”は、精霊達のこの能力のせいだろうか。

 

 

精霊達の力が強くなっている。それも、明らかな異常な方面に。

 

結果として今は助かっているが、いつこの状態が崩れるとも言い切れない。

 

 

――だからもうそろそろ、バーテックスが品切れになってくれないかなぁ!!

 

 

最早祈りに近いお願いを、矢を撃ち出しながら杏はヤケクソ気味に考えていた。

 

 

 

 

「――へぇ。“勇者”達、案外保ってるんじゃん。やるねぇ」

 

 

場所は変わり、モミジと少女の戦線。

 

モミジの足止めという任を終えた少女は、後はバーテックスが“勇者”へ行っている上空からの爆撃奇襲を成功させた後、国土綾乃を回収するだけだった。

 

だが、“勇者”の抵抗が思いの外しつこく予定していた時間が徐々に迫っているのが現状となっている。

 

 

声音からは余裕そうに見えるが、内心は舌打ち混じりに焦っている所である。

 

 

「“勇者”の精霊……、なるほど。お兄ちゃんの権能で精霊が強化されてあるんだね」

 

「そうかよぉ!」

 

 

モミジの神力により、少女の周りの木々が形を変える。至る所から鞭の如くしなり少女へと攻撃するが、それを手にした長剣で豆腐でも斬るかの様にスパスパと軽く切り飛ばしていく。

 

続くは棍を手にしたモミジ、その振り下ろしを長剣でしっかりと受け止める。

 

最初の様に斬れず、切れ込みが僅かに入っただけの棍を見て頬を膨らませる。

 

 

「むぅ、堅すぎだよ。ずるしないで」

 

「お前の持ってるその剣こそずるなんだよなぁ」

 

 

まぁ、良いやとモミジは息を吐く。

 

話したいことがある、とモミジは続けて口を開いた。

 

 

「話したいことぉ? 今更命乞いとか、説教染みた事は要らないよ?」

 

「んなことじゃねーよ」

 

 

モミジはごそごそと神官服を漁り、一冊の古びた本を見つけ手に取ると少女へと放り投げる。

 

緩やかな放物線を描いたそれを受け止め手に取ると、それは“神造御記”と銘打たれた本だった。

 

それを見て、少女の顔が僅かに強張る。

 

 

「……これ、まさか」

 

「あぁ。初代大神……、いや」

 

 

俯きがちだった顔を上げ、真っ直ぐに少女へと向ける。

 

 

()()の親父の、全てが書かれた本だ」

 

 

――さぁ、ここからだ。

 

 

動揺を隠せず、狼狽えた様に本へ揺れた視線を向ける少女を見ながら、モミジは自身を鼓舞するかの様に拳を握った。

 

 

――此処での全てが、綾乃が助かるかどうかの決定打となるために。

 

 

 

 

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