データが吹っ飛んだのを見たときは本当に時が止まった。
終わりまでの大体の流れ(プロット?)は頭に残ってるので、いそいそと書いています。
ここ数年マジで厄年なんだがお願い誰か助けて(泣)
倒れた。のだと思う。
穢れが回り消滅するのだと聞かされて直ぐに、それは現実味を帯びた。
身体が動かない。冬の時期によくある手足が芯から冷えた時の様に感覚が酷く鈍り、手足の制御が効かない。
視界も段々と薄れてきた。倒れたかも、とはっきりしないのは、倒れたという感覚さえも鈍りきっているから。
『お前はあの日、あの家から出るべきではなかった』
あの日、というのはあの嵐の日のことか。
ヒトガタという、何も無かった俺が変わった大きなターニングポイント。
『お前や妹、そして“大神家”そのものが罪だ。それが無ければ、人類は今こうして絶滅の危機に立ってはいない』
“罪”
人の身でありながら神を降ろすという大罪を犯し、神の怒りを買った“大神家”という人間が背負う十字架。
『“天災”の起きたあの日、お前は死んでおくべきだった』
『半端な想いから“神具”を手に入れ、人を護るなどという思い上がりを得る切欠になったものの……お前はそこから、何かを得たか?』
ニタニタと、
『
……何があっただろうか。
生まれた事そのものが悪、罪であるという俺にとって、胸を張って言える“自分”という物。
人々を救ったというのは違う。それは“神具”の力が在ってのことだ、俺自身の力ではない。
得た物等何も無い。代わりにあるとすれば奪われ、失っていくものだけ。
最初が和人おじさん。
そして、次が綾乃。
『
視覚から得られる情報が断たれる。世界が真っ暗闇に染まる。
『やっと理解したか。お前は無力だ。自分一人では何も出来はしない、ただの置物でしかない』
意識が薄れる。自分の身体を構築している何かが砂のように崩れていくのを、ゆっくりと理解した。
――あぁ、俺は死ぬらしい
『お前は、生まれてくるべきではなかった』
モミジの意識が、眠るように落ちた。
◆
「モミジお兄ちゃん……?」
最初にその異変に気付いたのは梓だった。
千景と共に歌野から放り投げられたモミジを介抱していた梓だったが、突如起きたそれに疑問符を上げる。
“神花”によって纏っていたモミジの神官服が煙の様に消失したのだ。
残ったのは、ぐったりとしてまるで死人の様に動かないモミジ。
流れていた血は止まっていた。乾いて赤黒くなった血液が、モミジの服を染め上げている。
嫌な感じの嫌悪感が、いつの間にか梓の身体を粟立たせていた。
「モミジお兄ちゃん……、嘘でしょ、嘘だよね……」
梓の声に振り向き、その様子を目撃した水都が千景の身体を拭いていたタオルをぽとりと力無く落とした。
その異常に気付いたのか、他の面々もモミジへと目を向ける。起きた現実に、されどそれが事実だと気付いた時、それぞれが反応を示す。
梓は泣き叫んだ。モミジの名を呼び、縋るようにして身体を揺らす。こうしていれば、きっと起きると。今はただ寝ているだけなのだと。
水都は言葉が出なかった。四国に来て長らく見ていなかった“人の死”に、ただモミジを見て恐怖か悲しみからか目元に涙が溜まっていくだけだった。
ひなたはモミジへと近寄り、容態を確認すると膝から崩れ落ち放心する。あんなに元気で
杏は見ない。起きてしまった事態を自覚しつつ、歯を食いしばり戦況を見定める。崩れるな、ここで私も崩れたらそれこそ終わる。と。強く噛んだ口の端からは、血が一筋垂れていた。
――球子は、土井球子は喉が張り裂けんばかりの勢いで咆哮した。
~~
如意棒がレオ・バーテックスの開いた口部分へと閉じるように叩き込まれる。
受けた者を灰へと変える火球が、精製途中で強引に解除され集まっていた熱量がレオ・バーテックスを中心に爆発を引き起こした。
「わぷ?!」
爆風と共に舞った土煙をモロに被り、歌野が顔をしかめる。
ぺっぺ、と口に入った土を吐き出しながらレオ・バーテックスを睨んだ。
「若葉、友奈さん、そっちは動けそう?」
「あぁ、大分ましになった」
「私も大丈夫だよ」
多少は息を整える程度には回復できたのか、二人が自身の“神具”を構え直しながら立ち上がる。
瞳に闘志を灯しながら立ち上がる二人を見て、歌野はナイスファイトと笑った。
さて、と改めてレオ・バーテックスと向き直る。
有効打までは行かないが、じりじりと向こうの体力を削れている確信が歌野にはあった。
相手は確かに強大だ。だがそれは、自身の畑に現れる猪等の野生動物と一緒。罠などの戦略次第で展開は変わる。
“禁忌精霊”により体力の消耗が激しくなってはいる。だがここで踏ん張らねば、今までの努力が水の泡だ。
打倒、もしくは撃退をし、ダウンしたモミジと千景を即刻病院へとぶち込む。
その後は、皆でパーティーだ。ここで勝利への立役者となれば、普段うどんうどんとうるさい若葉へ大義名分を持って蕎麦を食べさせる事が出来る。
――だからこそ。
「勝つわよ……、
「だな……!」
「うん……!」
気を練り上げ、限界を迎えた身体に鞭を打って立ち上がる。
呼吸を整え何度目かの開戦へと踏み込もうとしたとき、
「くたばりやがれぇぇぇえ!!」
――聞き覚えのある声の咆哮と共に、空から降ってきた巨大な岩が轟音と共にレオ・バーテックスを押し潰した。
◆
少年が外を眺めていた。
見覚えのある家。あぁ、大神家か。とぼんやりと思い出す。
その家の一角。〇〇が居た部屋を見れば、思った通り少年が一人窓際で外をぼぅ、と眺めていた。
「お前達は何をしているのか分かっているのか……!」
「話し合いの場を設けています。今一度あの子との面談を……!」
「――お引き取り下さい」
家の使用人と思う女が、詰め寄る男女に冷たく言い放っていた。そんな様子を炉端に転がる石を見るように興味なさげにチラリと一瞥すると、少年は再び外の風景を眺める。
春夏秋冬。季節毎に色めいていく風景をただ見ていた。
何やらジージーと騒がしいのが泣き喚く季節になると、人の服が袖の短い薄手の物に変わり、額から流れる汗を拭いつつ鬱陶しげに太陽を睨むのを見た。
小さな白い物が降ってくる季節なると、反対に袖は長くなり厚手の物に変わり、手を擦り合わせつつ吐息を吐き掛けていた。指の間から洩れる白い吐息が、酷く寒いんだろうなと思わせる。
部屋の中の温度は変わることがない。多少の誤差はあれど、それは誤差でしかなかった。
――外を眺めることしか出来ない。
『それが、お前がすべき義務だった』
――何も望まず、ただただ、自分が死ぬのを待つべきだった。
『“外”を望んだ。それが、
気付けば、
――その瞳から、目をそらす事が出来なかった。
「戻ろうよ。お家に帰ろ?」
手を差し伸べられる。
そうだ、
もう、アイツらの元には帰れないのだ。
手を差し伸べる少年へと、ゆっくりと諦めた様に手を伸ばす。
互いの手が近付き、もう少しで触れ合う、といった所で
――横合いから頬に走った強い衝撃に、視界が大きく揺れた。
突然の事に動揺しつつ、視線を動かしその衝撃の主を見る。
そこには、怒りを抑えるようにふーっ、と息を洩らした一人の少女の姿。
「――こんな所で何やってんの、モミジ!!」
国土綾乃の姿が、そこにあった。