色々と泣きそう。ヽ(´ー`)ノ
――貴女に、お願いしたい事があるのです。
“呪い”によって蝕まれた身体。嫌悪感、苦痛……、およそ普段の日常では感じる事がないであろう苦しみが身体を覆っている時、その声は聞こえた。
嫌悪感が、苦痛が拭う様に消え去る。だが、肝心な“呪い”が消えた訳ではないことを綾乃は未だ身体に這うように刻まれた呪印を見て理解する。
周りを見れば、見渡す限りの草原。夜の帳が降りる上空には、まん丸な満月がその存在をアピールするように昇っている。
ざあぁ、と吹く風につられてゆったりと揺れる一面の草原を見ながら、綾乃は問う。
「アンタ誰?」
――……そうですね。望月梓ちゃん、ですか?貴女と彼の近くで寄り添い祈る彼女に心を打たれたお人好し。という事にしておいて下さい。
「ふぅん。……あの子に何もしてないでしょうね?」
お人好し。と答えていたが、おそらくは“禁忌精霊”、または“神”程の力を持つ者だろうと綾乃は直感で感じた。
諏訪神以来のこんな空間に呼ばれたのもそうだし、感じる存在感が桁違いだ。
梓の名前を出され、此方の警戒心を強く感じ取られたのか相手の声が慌てて言う。
――いえいえ、何もしてな――、……貴女と彼の身体に接触するために、ほんのちょっと、いや本っ当にちょっとだけ力を流したくらいかなー、と。
変な悪影響は無いはずです、多分。という声に取りあえず納得しておく。変に後遺症が出れば潰す、と思いながらではあるが。
「それで、何をしろって?」
綾乃のその問いに、待ってましたとばかりに声が張り切る。
――
「眠る?」
――えぇ。貴女と同じく“穢れ”に犯されて。このままでは、
「そう、分かったわ。さっさと連れてって」
声を途中で遮って、がりがりと頭を搔きながら綾乃が言う。
明らかに面倒臭がっているその様子に少し声の主が戸惑っていると、綾乃が言う。
「要するにアイツ引っ叩いて起こせば良いんでしょ?任せなさい」
――わぉ、“わいるど”というやつですね……。
何だって良いわ。と言い捨てる綾乃の身体が、徐々にモミジの中へと入るために転送の光を纏う。
では、と送り込む段階でそういえばと綾乃が口を開いた。
「アンタ、何であの子の名前知ってたの?」
――あぁ、それは梓ちゃんが四国に来た際に土地神から経由して知りまして。
言葉の端から感じる、何処か過保護な様子の綾乃にくすくすと笑いながら言う。
なるほど、彼の周りには同じような人間が集まるらしい。
――だって、“望月”だなんて。あんな可愛らしい子に“
その言葉の後に、綾乃の身体は一際強い光に包まれて姿を消した。
~~
――さて。私が手を貸すのはここまで。今回は色々と“
仕事は片付いた。それでは帰るかと“神樹”の結界内から月が消える。
――“人”が滅ぶか。それとも存続するか。……さてさて、どうなることやら。“中立”の私は眺める事に致しましょう。
◆
「おおおおおぁ!!」
球子が吼える。大岩で押し潰したレオ・バーテックス目掛けて広げた“扇子”を構え走る。
怒りに染まるその顔とは反対に、勇者服は大和撫子とでも言うのか、平安時代の女性をイメージさせる十二単の様な物に変わっていた。
その後ろ。腰からユラリと伸びるそれは、狐の尾を思わせる様な物だった。それがゆらゆらと意思を持つように球子から伸びているのに加え、頭部にも狐を思わせる耳が生えている。
広げた“扇子”の端から、黒々とした炎が灯る。それをレオ・バーテックス目掛けて投合すれば、回転に合わせ炎が廻りさながら彼女の武器である“旋刃盤”の如く空を切り裂き飛来する。
「動けねぇだろ。それは“力”を抑える物だからなぁ。因みにその炎は“呪い”の鬼火だ!」
レオ・バーテックスを抑える大岩。その名は“殺生石”。彼女に降りる“禁忌精霊”が封じられている近付く者に死を呼ぶ呪われた大岩。
かつて傾国の美女と呼ばれ、遠くの大国の皇帝さえも魅了し、最後にはここ日本国で討伐された
「“
「球子さん、助かったわ!」
“禁忌精霊”を降ろした球子の参戦に頼もしさを感じつつ、歌野が礼を言いつつチラリと後ろのシェルターへと目を向ける。
見れば、何となくだがシェルターがぐずぐずと脆くなっているような。そんな雰囲気を放っていた。
あれはモミジがその神力で作り上げた物だ。
そして、彼はこう言っていた。
――俺が死ぬか、よっぽど強い力じゃねーと破られないよ
……まさか。いや、悪い方に考えるな。
「……球子さん。二人は無事なの?」
歌野の誤魔化しのない直接な問いに、球子が少しの間を置いてギリリと歯を食いしばる。
少しだけ俯いたその頬に涙が流れていたのを、歌野は見逃さなかった。
――そうか、そうなのか。
「なら、出し惜しみはなしね。手伝いをお願いするわ、球子さん」
「……あぁ、任せタマえよ」
如意棒を振るって歌野がするどく相手を睨みながら言う。
ぐい、と雑に目元を袖で拭って、球子はレオ・バーテックスを見据えた。
文字通り命懸けで四国、そしてそこに住む人達を護ってきた彼のその偉業を無駄にしまいと、今一度心に刻んで。
◆
綾乃が居た。
天津神からの“呪い”に犯されていない、いつかの元気な姿の綾乃が。
「綾乃、なのか……?」
「そうよ、それ以外に何に見えるっての?」
問いかければ、ぶっきらぼうに返ってくる。あぁ、本物だ。と確かめる為に手を伸ばせばそれに気付いた綾乃がニコリと笑って、
「ふんっ!!」
「ごふっ?!」
――カウンターの拳が、モミジの頬へと叩き込まれた。
確かな重みのある一撃に、コイツそういえば友奈から武道教わってたなぁと思い出しつつ地面を転がる。
小柄な割に本気で痛い。
「何しやがる!」
「アンタが馬鹿やってるから、アタシが直々に根性入れ直しに来たんでしょ」
「何を――」
何を言ってんだ。と言いかけるがそれを遮る様に綾乃が肩を掴む。
「何勝手に諦めてんのよ、アンタ」
「……!」
「みっともなく敵に負けて、アンタの事を知った風な奴に言い負かされて終わり? ふざけてんの?」
綾乃の言葉にモミジが止まる。かなり辛辣な物言いだったが、確かにそうだと思う内容だったからだ。
だが、もう無理だ。
負けて心が折れたという訳ではない。
俺は、死んだんだ。
『無理だよ綾乃、
「うるさいお前。ちょっと黙ってろ」
少年へと鋭く返しつつ睨む。その目に圧されたのか、はたまた何か別の要因か少年は口を閉ざした。
綾乃が此方へと向き直る。
「アンタは確かに死んだ。いや、言い換えれば
綾乃に言われて、ゆっくりと確かめる様に身体に手を当てる。
僅かに、暖かさが在るように感じた。
「身体と魂はまだギリギリ繋がってるの。アンタに必要なのは、戻りたいという覚悟よ」
「……覚悟」
「アンタに後悔はないの?守りたいものがあったんでしょ」
守りたいもの。
確かに沢山ある。家族の様に大事な若葉、ひなた、綾乃……。
そこから段々と増えて、今では抱えきれないくらいになった。
――だからこそ。そうだからこそ。
「――俺は、綾乃を守りたかったんだ」
◆
「はぁぁぁ!!」
「そらぁっ!!」
二人の咆哮が重なる。如意棒、扇子が振るわれレオ・バーテックスへと攻撃が加えられる。
「っぁ、くそ。まだまだぁ!!」
球子ががくりと膝を着いたのを見て、無理もないと歌野は舌打ちする。
歌野の“孫悟空”とは違い、球子は“玉藻の前”を強制的に身に降ろしている。普段使っている“精霊”とは違い、消耗も段違いの筈だ。ここまで持っているのが奇跡に近いのかもしれない。
それこそ、彼女の心の強さを表しているのだろうが。
レオ・バーテックスが此方へと肉迫した。
攻撃を避け、反撃する。これまで繰り返した動きだったが、球子の反応が遅れた。
マズい、と球子を助けるべく如意棒を振るうが……、間に合わない。
その時。
――二人の前に、漆黒の羽が舞った。
「勇者、パーンチィッ!!!」
直後に聞こえる、聞き慣れた声。
重い衝突音の後で、レオ・バーテックスが宙を舞ったのが見えた。
直ぐ近くに、歌野が見えた。向こうも何が起きているのか分からないのか、ぱちくりと驚いたように目を見開いている。
「すまなかったな。二人とも」
抱きかかえられている、と分かったのは感じる浮遊感と遠く離れた地面を見て。
声に首を回せば其処には修験者の服に漆黒の翼を生やした若葉が居た。
「……起きた事柄は理解した」
握られたスマホの画面は、若葉達“勇者”やバーテックスの位置を表示する画面。
――その中で、“大神紅葉”の文字が光を失ったように消灯していた。
地面へと降り立つと、まるで“鬼”の様な意匠の勇者服へと変わった友奈が、その暴虐性を表した様な“籠手”を打ち鳴らして言う。
「もう、させない。皆で帰るんだ。帰るんだよ、皆でッ!!」
「……そうだな。帰ろう、皆で」
吹き飛ばされたレオ・バーテックスが立ち上がる。
その姿を見て、静かに涙を流していた若葉の目が、憎しみに染まる。
「バーテックスを、掃討する」
千変万化。かつて神の国をも滅ぼす力を持った有翼の仙人。烏天狗。
鬼の首魁であり、その名を聞いた者を軒並み恐怖へと叩き落とした畏怖の象徴。酒呑童子。
少女と“精霊”の関係に心打たれ、力振るわんと戦場へと躍り出た義理人情に重きを置く石猿。孫悟空。
女らしさとは程遠い主に最初は力を貸す気はなかったが、その湧き出る怒りと憎しみに面白いと嗤う傾国の
「うん……!」
「そうね……!」
「やってやる……!」
若葉の“生大刀”が掲げられる。敵を討ち滅ぼすその刀は、ギラリとその刃に斬る敵を映していた。
「勇者達よ、私に続けぇッ!!」
「「「おうっ!!」」」
最終戦争。その終わりは、近い。
◆
「……アタシ、を?」
きょとん、と呆けた顔をした綾乃を見て、先程までの勢いは何処に行ったんだと笑いが出た。
肯定の意味を込めて頷けば、少しの時間を置いてそっかと綾乃も笑う。
えーと、それは、と少し言い淀んで、
「これって今、告白に近いことされた感じ?」
「……違うんじゃないか?」
「良かった、勘違いか」
あはは、と少しだけ頬を染めた綾乃が笑う。
そんな姿を見て、そんな彼女を守れなかったんだと自覚してしまう。
俺は、何も守れてないんだと。
「……俺は、“大神紅葉”を作ってくれた綾乃を守りたかった」
黙ってじっと此方を見つめる綾乃へと、続ける。
「その為に人も殺した。嘘だって吐いた。…………最低な事を、続けてきたんだ」
「知ってる。全部聞いてたから」
綾乃のその言葉に、そうかと肩の力が抜ける。
そんなモミジへと向けて、綾乃は口を開いた。
「和人おじさんが死んで、私がこうなったのも自分のせいだと思ってるの?」
「……あぁ。だって、そうだろ?」
何処か他人事の様な彼女の言葉に、思わずむきになってしまう。
何故責めない?
何故罵倒しない?
俺が居なければ、生まれて来なければ皆幸せだったのに――!
「俺のせいで、お前は“呪い”に掛かった。俺のせいで、和人おじさんは死んだ!」
「…………」
「“あの日”お前と出会わなければ、俺が“
感情が高ぶったからか、ボロボロと涙が出てきた。止まらない。
後悔が次から次へと出てくる様に、涙も絶えず流れて行く。
その涙を拭っていれば、つかつかと近付いてきた綾乃が拳を振り上げ、
「男がめそめそするんじゃない!」
ごっ、と痛そうな音を立てて拳骨を振り下ろした。
最初のパンチ程ではないが、痛い物は痛い。
何すんだ、と目線で訴えるが綾乃はやり遂げたと腰に手を当てて言う。
「――って、和人おじさんに叱られるわよ」
「っ!」
「アタシが取り乱したのも悪かったわねー。急に殺されたなんて聞かされてびっくりしたから」
「……違う、俺が」
「アンタは何一つ悪くないわ。アンタらしく生きた結果、こうなったって訳でしょ?」
綾乃がニコリと笑う。全ての不幸の元凶である俺に向けて。
「アンタが人を悪意で陥れようとして行動するような奴じゃないって、アタシは知ってるから」
ま、人殺しは確かに悪いけど。と言って、
「ただ、物事の巡り合わせが。運が悪かっただけよ」
綾乃は、それでも笑顔で言った。
でも、そうねぇ。と考える様に顎に手を当てて
「若ちゃんもひなちゃんも、他の皆もまだ戦ってる。それはどうにもしないの?」
「……俺は、」
「自分が招いた不幸ってなら、そんな不幸払ってきなさい」
とん、とモミジの胸に綾乃は拳を軽くぶつける。
……とくんと、何かが動く音がした。
「アタシの知ってる“大神紅葉”なら、ここで言う言葉は一つなのだけど?」
真っ直ぐ、俺を、“大神紅葉”を信じた彼女の目が俺を貫く。
とくん、とくん、と動き始めたそれは加速していく。
「力が足りないとか、そんな面倒な事考えて戦う戦法は忘れなさい。今思い出すべきは、
気付けば、
神浄の輝きを刀身に秘める、“天叢雲”が、いつの間にかそこにあった。
「
「えっ」
驚きから声が出ないモミジへと、綾乃は疲れた様にため息を吐きつつ言う。
「そんなド派手な剣があるのに、アンタ気付いてないんだもの。目ぇ付いてんのかって思ったわ」
「えっ」
今更気付いた衝撃の事実に、モミジが更に言葉を無くす。
その時、何かを急かすように輝く“天叢雲”を見て綾乃が言う。
「若ちゃん達が危ないみたいね。急がないと、モミジ」
「でも、どうやって? 俺は、もう」
「最初に言ったでしょ。まだ戻れる可能性はあるの」
モミジを急かすように言う綾乃。さっさと立てと言う彼女に従っていると、今まで黙っていた少年が言う。
『さっきも言ったろう? 神樹から見放された君は、戻った所で直ぐに死ぬのがオチだ。そんな事をした所で、ただの無駄足だ』
「無駄なんかじゃないわ」
毅然とした態度で綾乃が返す。未だに状況が理解出来ていないモミジへと、その手を握って言う。
「さっきも言ったわよね。アンタの根本、根源を思い出しなさい。その剣を握った時、何を思ったのか。その純粋な思いを」
綾乃の手を通して、何かが此方へと流れ込んで来る。暖かい、血管を通してじんわりとした暖かい何かが麻痺した全身へと広がった。
「アタシは……先に逝くわ」
その言葉に見れば、綾乃の身体を呪印が覆っていく所だった。一目で致死だと分かるほどに禍禍しいそれが、染め上げる様に綾乃の身体を走る。
「あ――」
「アンタが本気で悪いと思ってるなら、最後までやり尽くしてからこっちに来なさい」
言葉が続かない。死んでしまうのに、大切な彼女が死んでしまうのに――
――死の間際でも強い意志を感じさせる彼女のその目に、俺は何も言い返せなかった。
綾乃は俺を、“大神紅葉”を信じてくれている。
なら、そんな彼女の信頼に応えるのが、彼女に対しての最高のお返しなのだろうと、そう思う。
“天叢雲”へと向き直る。柄を手に取ると、喜びを表すように輝きが増した。
そうだ。“防人”。
俺は、守り人だ。
「任せろ、綾乃。全部終わったら、何処に居ても探し出して迎えに行くからよ」
「うん、待ってる」
モミジの身体が、月の光に似た淡い輝きに包まれる。
光りが最高潮に達したとき、モミジと綾乃が照らし合わせた様に笑った。
「またね」
◆
「げほっ」
「友奈!」
友奈が咳き込むと同時に血を吐き出した。がくりと膝をつくと、そのまま倒れる所を何とか倒れまいと腕で身体を支えている。
皆ギリギリだ。いや、限界などとうに超えている。
レオ・バーテックスもダメージが蓄積しているのか、最初と比べて動きも鈍く身体も傷だらけになっている。
これなら、もう少しで倒せる――!
モミジの仇だ。と“生大刀”を杖代わりにして立ち上がる。全身の息を整え、気合いと共に斬りかからんと構えた時、それは見えた。
「え……」
「うそ、だろ……?」
レオ・バーテックスを取り囲む様に、白いうじ虫、バーテックスがワラワラと浮遊する。
まだそんな数が居たのか。いや、
「もう、四国の外はそうなっているのか……っ!」
外では、バーテックスの卵が存在している。とモミジから聞いた事があった。
産まれるとしてもまだ時間は掛かると言っていたが、もうなのか。
「……許さん」
恨みか、それとも“精霊”による悪影響か。
どろどろと湧いてくるそれに、怒りが、憎しみが止まらない。
「お前達を許さん。例え四肢が砕けようと、この命が続く限り貴様らバーテックスは皆殺しに――!」
「若葉!」
歌野の言葉に、意識が現実に戻る。目前にまで迫っていたバーテックスの大きな口に、咄嗟に“生大刀”を振るって斬り捨てる。
ありがとう、と礼を返そうとした所で身体の力が抜けた。
「くっ、若葉もなの?!」
「ダメだ、こんな所で……!」
「クソ、クソぉっ!」
“禁忌精霊”の力が維持できず、服が普段の勇者服へと戻ってしまった。
周りを見れば、球子も友奈も、通常の勇者服へと戻ってしまっている。
唯一動けている歌野だが、衣裳の一部が崩壊しかけている。もう限界だ。
レオ・バーテックスがガパリと口を開く。
ゆったりとチャージされていく死のエネルギーに、こうなった今どうしようもない。
怒りも、憎しみも湧くがそれを実行する身体はピクピクと痙攣を繰り返すだけだ。
……いや。
「諦めてたまるか……!」
モミジは諦めていなかった。アイツが守った人達を、むざむざ殺させる訳にはいかない。
気力を振り絞れ、根性を入れろ。最後の最後まで敵から目を逸らすな……!
火球、いや、最早サイズ的には山ほどの大きさのそれにあぁ、これは死ねるなぁと理解する。
神樹に当たれば消し炭だ。ならば、少しでもそれを逸らす努力をしろ……!
火球が、太陽が放たれた。
歌野が前線で立ち上がる若葉へと叫ぶ。
友奈が歯を食いしばりつつ、それでも敵を睨む。
球子は後衛で“巫女”を守る杏へと、無事を願って目を閉じた。
若葉は“生大刀”を使い何とか立ち上がると、最後の力を振り絞り刀を振り上げた。
その瞬間。
――音を立てて、火球が真っ二つに切り裂かれた。
火球が崩壊した事による大爆発に、浮遊するバーテックスが巻き込まれた。
だが、そんな状況でも誰もが口をぽかんと開けたまま呆けていた。
若葉達“勇者”も、
レオ・バーテックス達も、
――そこに現れた一人の少年に、その少年の持つ剣の輝きに目を奪われていた。
何時もの紅葉色の鮮やかな赤の神官服とは大きく変わり、鎧甲冑の様な重々しい雰囲気を放つ装備。
その色は変わらず紅葉の色。背中にある巴の勾玉は、蒼白い神浄の輝きを灯している。
頭髪は黒から紅葉の様な鮮やかな色に染まり、瞳は神性を宿す碧金の色をしていた。
「待たせて悪かった。色々とあってな」
「も、みじ……」
その少年の声を聞いて、若葉の声音が震える。
涙が流れる。他の皆も、信じられないと目を見開いていた。
「申し開きは後でさせてくれ、アイツらは――」
モミジの心情を代弁するかの様に神剣は輝く。その威容に、その神威に怯える様にバーテックスが僅かに退いたように見えた。
「俺に任せろ」
守護者が、剣を構え足を踏み出した。
タマの精霊などの補填?説明は後ほど致しやす。
続編含めお待ちおばm(_ _)m