大神紅葉は防人である   作:社畜戦士 くっ殺

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遅くなりました……。

積まれた仕事。

何か違うなこれ、と推敲する本文。

息抜きの筈がハマるソシャゲ←


前話の続き、という訳ではなく、主人公の覚醒?場面からです。神に認められるのか、否か、暇つぶしにどうぞ。


荒野より君へ告ぐ 1

 

振り返る事はしなかった。

 

“皆を守る”。彼女と交わしたその約束を守る為に、僅かに感じる肉体への道しるべを辿り駆ける。

 

 

――力も無くした今、どうやって守り抜くつもりだ?

 

 

己の内からの問いかけが入る。そんな現実を思わせる問いに、苦笑いをして“さぁな”と答えた。

 

 

「勝算は……無い。取り敢えず、俺に残ってるみそっかすの神力をぶっ放す位かな」

 

 

頼むぞ。と期待を込めて神刀、“天叢雲”を見る。こぉぉ、と輝きが増すのを見ると、“任せろ”と言われた気がした。

 

 

――勝算無き戦いか、自滅前提の戦いか。そうやって、また誰かを悲しませるか。

 

 

「そりゃあ痛い質問だなぁ。……そうだ。これは俺の自己満足の戦いなんだ」

 

 

ひなた、若葉、友奈、千景、球子、杏、歌野、水都、梓……。

 

そして、綾乃。

 

 

「始めは一人ぼっちだった。そこから綾乃と出会って、“大神紅葉”が生まれた」

 

 

「次は若葉、ひなたと出会った。若葉の爺さんを通じて、“家族”ってこんな感じなんだって、すげぇ暖かい物なんだって理解した」

 

 

じわり、じわりと血液が巡る様に暖かい物が身体を巡る。肉体への距離が、近くなっている証拠だろうか。

 

 

「次に友奈、千景、球子、杏と出会って、“仲間”って奴の大切さが分かった。掛け値無し、頼れる相手ってのは、本当に大事な物だ」

 

 

取り戻していく四肢の感覚。吐く息に、熱が籠もるのを感じる。

 

先程までの氷の様な、死人の様な感覚はもう無い。

 

踏み込む足に力が入る。息はとうに切れて苦しいが、それでも足は止まらない。

 

 

走れ。走れ。走れ。限界を超えて更に、この昂ぶる思いを曝け出すように。

 

 

「歌野、水都に出会って、こんなにすげぇ奴等が居るんだってびっくりした。コイツらこそ、まさに“勇者”だって」

 

「梓には、“次”を託すってのが分かった気がした。綾乃との修行を見て、若葉の爺さんや和人おじさんが厳しく叱る理由が」

 

 

――お前は弱い。助けに行った所で無意味だ。また誰かを守れず、失い、絶望に崩れ堕ちるだけだ

 

 

「そんなもん、やってみなきゃ分かんねぇだろ!」

 

 

少年が吼える。その時、走っていた道が砕け、真っ逆さまに身体が何処かへと落ちていく。

 

周りは真っ白。今から色を塗るキャンパスの様な、何処か懐かしささえ感じるその空間を少年は落ちていく。

 

 

 

気付けば、目の前に自分が居た。

 

 

 

『ヒトガタの子よ。お前の真価を示せ』

 

「真価……?」

 

 

もう一人の自分が口を開く。その内容に聞き返せば、そうだと返した。

 

その雰囲気に、以前諏訪であった諏訪神との“神様問答”を思い出した。

 

まさか、コイツが俺の中の神の一柱とでも言うのだろうか。

 

 

『お前は何者だ』

 

「俺は“大神紅葉”だ」

 

『違う。それは、人から与えられた物だ。お前の名ではない』

 

 

全否定された。酷くないだろうか。

 

気付けば、手に握っていた筈の“天叢雲”が相手の手に収まっている。なるほど、以前とはいえ相手の事をまだ主人だと思っているらしい。……なんだか悔しい。

 

 

『お前は、何故戦う』

 

「俺の為に。俺の守りたい者を守る為に」

 

『偽善か。結局はお前の欲を満たすものだ。自己顕示欲が強いのだな』

 

 

落胆。そんな言葉を思わせる様な表情を浮かべて相手、俺の中の“神”がため息を吐いた。

 

確かにその通りだが、いきなり出てきて言い過ぎではないだろうか。それともこんな物なのか? 諏訪神は余程イージーだった様だ。

 

 

『お前の様な者に“力”は託せん。諦めろ、せめてもの情けだ。私があの場を鎮めてやろう』

 

 

身体へと手を伸ばされると同時に、ナニカが俺の中へと流れ込む。

 

熱い。熱い熱い!! 熱湯を流し込まれた様に、激痛が身体中を駆けめぐる。

 

段々とだが、腹が立って来た。

 

 

「ふざけんな、テメェ!」

 

 

相手の胸倉を掴み上げる。僅かにだが驚いた様な相手に、口早に怒鳴る。

 

 

「いきなり訳分かんねぇ問いかけしやがって、邪魔すんじゃねぇ! “力”? 情け? 何様だお前!」

 

『……お前の真価を』

 

「ぐだぐだうるせぇんだよ、このくそ野郎! いいか、よく聞けよ“神”とやら!」

 

 

身体中に巡る痛みを堪え、怒りでもうどうにでもなれという気構えで胸倉を掴んだまま怒鳴る。

 

視界の端に映った“天叢雲”を見て、不意に思い返すのは始めてそれを握った“天災”のあの日。

 

 

――空から降り注ぎ、人々を蹂躙するバーテックス。

 

逃げ惑うモミジと綾乃。山道で足を取られ転んだ拍子に、自身へと迫るバーテックスを見て、それでも彼女は恐怖から来る震えを抑えて言った。

 

 

――逃げなさい!

 

 

怖いだろうに、それを抑えつけて此方の安否を気遣う彼女に、モミジ()は彼女の方へと踵を返しながら心から願った――

 

 

 

「俺の名前は大神紅葉! ニックネームはモミジだ、覚えとけ! 俺が戦う理由は――」

 

 

 

――綾乃を守るだけの力を!!

 

 

 

それが、“大神紅葉”をくれた彼女への恩返し。

 

彼女自身も、彼女を取り巻く環境も何もかも、全てを守る為に。

 

 

「それ以外は何も要らねぇ。偽善だろうが何だろうが、俺の我が儘だろうが知ったことじゃない!」

 

『それは自己満足にしかすぎない』

 

「だろうよ。だが俺は後悔しない」

 

 

きっぱりと言い放つ。動きを止めた相手の手を払い。身体の自由を取り戻すと道しるべを探した。まだ残っている、急がないと。

 

押し黙って此方を見る“神”を尻目に、足に力を込めて駆け上がる。

 

時間をロスした。いや、この空間に現実の時間が関係あるのか分からないが、兎に角急ぐとしよう。

 

 

 

 

『――どうじゃ、モミジは。変わった奴じゃろう?』

 

『……建御名方(タケミナカタ)か。何の用だ』

 

『ふん。ワシも貴様なんぞに会いたくはなかったが、あやつの行き先が気になっての。最後まで見届けたい』

 

『…………人は傲慢だ。尽きることのない欲。他者を犠牲にすることを何も思わない、愚かな生き物だ。その姿を、あの方を含め我等はずっと見てきた』

 

 

モミジが駆け上がる後ろ姿を、その“神”は見つめる。自身の知る人間とは違う、その少年の純粋無垢な在り方を。

 

 

『我が神刀が選んだと知り、品定めをしたが……、正直期待外れだ。天界の守護者であり、使者である我の名を与える事は出来ん』

 

『…………』

 

『……だが、』

 

 

ダメだったか、と目を閉じ押し黙る諏訪神(タケミナカタ)。全て終わる。この戦争は終わりだと思う所で、“神”が口を開く。

 

 

『あのヒトガタの子が。この瞬きの間に我が見たあの少年が。全てを出し切り、守り、そこで何を見るのか。それが気になった』

 

 

“天叢雲”が輝く。輝きは増し、その刀身に炎の様に神浄の力が灯る。

 

ゆっくりと柄を握る手を離すと、神刀は弾かれた様にモミジの後を追って飛んでいく。

 

まるで、“次”へと託すバトンの様に。

 

 

『“大神紅葉”。貴様の言う我が儘、その真価、確かに受け取った。それはその返礼である』

 

 

『お前という存在。お前が守る物のその行く末。最期まで、この建御雷神(タケミカヅチ)に示してみよ』

 

 

モミジの中の“神”。建御雷神(タケミカヅチ)は、そう言って確かに笑った。

 

 

 

 

「くぅっ、“雪女郎(ゆきじょろう)”!」

 

全てを凍らせる吹雪が走る。

 

目の前を無数に浮遊するバーテックスを一掃し、だが一息吐く間もなく更に飛来するバーテックスに杏の背筋が凍る。

 

 

ダメだ。数が多すぎる。“神具”に、“精霊”に頼ってはいるがそれもそろそろ限界だ。

 

“精霊”が、敵への対抗策が使えなくなる。

 

死ぬ――。

 

 

「――諦、めない……!」

 

 

皆、その身を賭して戦ったのだ。全員限界なんてとうに超えている。

 

でも、守りたいものの為に頑張っているのだ。

 

こんな事で折れていては、“巫女”の護衛を任せてくれた皆に、申し訳が立たないだろう――!

 

 

自身の“神具”である“金弓葥”。本来とは異なりボウガンの形をとるそれを引き絞り、矢をリロードする。

 

此方に近付くバーテックスを次から次へと撃ち落とす。形振り構わず、リロードし、撃つ。というローテーションを続ける。

 

ぎしり、とボウガンが悲鳴を上げるのを感じた。無理も無い、本来ならもう少しデリケートに扱う物だ。こんなに乱暴に使えば、壊れるのも納得だ。

 

だが、それでも良い。

 

 

「はあああああ!!!」

 

 

撃ち落とす。撃ち落とす。撃ち落とす。

 

空中で撃ち抜かれ崩れ落ちるバーテックスを見つつ、次なる標的へと引き金を引く。

 

 

――自分を変えたい?……なら、怖がらずにどーんと一歩足を進めなきゃな

 

 

私は変わった。あの人に貰ったアドバイスの様に、守られるだけの女の子じゃない。

 

私が守る。守られるだけのひ弱なお姫様な自分とは、もうさよならしたんだ!!

 

 

バーテックスの数が目に見えて減る。何体撃墜しただろうか、もう覚えていない。

 

指が切れ、ヌルリとした感覚に血が垂れているのを感じる。残るだろう傷痕に、タマっち先輩から怒られちゃうな、と杏は笑う。

 

バーテックスの一群の中から、異様な姿が飛び出してきた。尻尾を持つ、蛇の様な、サソリの様なモノ。融合体だ。

 

 

融合体の姿を確認し、即座に矢を放つ。融合体はそれだけでも強力だ。まだ周りに残りのバーテックスも居る。さっさと倒すのがセオリーだろう。

 

矢が融合体へと当たり、手応えに笑みが浮かぶが直ぐにそれは悪寒へと変わる。矢が効かない、刺さらず弾かれたのだ。

 

だからだろうか。油断したその隙を突かれ、融合体の尻尾による刺突を躱せなかった。

 

反射的に身を守る為に“神具”を盾にする。だが、

 

 

「っぁ、ああああ?!」

 

 

盾にした“神具”は容易く壊され、尻尾はそのまま杏の脇腹を串刺した。

 

ぐぃ、と尻尾が振るわれ、杏の身体が宙に舞い地面へと叩き付けられる。

 

 

「杏さん!!」

「そんな……っ」

 

 

未だ辛うじて形を残すシェルターから、ひなたと水都の叫びに似た声が上がる。

 

その声に反応してか、融合体の尻尾がシェルターへと向くがそれを吹雪が遮った。

 

 

「させない……っ、させる、もんかあああぁ!!!」

 

 

自身の身体を省みず、最大出力で“雪女郎”による吹雪を融合体へと浴びせる。鈍くなってきた傷の痛みと、ぐらぐらと煮え立つ様に揺らぐ頭を抑えつつ融合体を見る。

 

杏の時が止まった。

 

ぴしりと、身体を覆うような薄氷を砕いただけで融合体が活動を再開させたからだ。

 

もう指先一本も動けない。

 

“精霊”も応えてくれない。

 

 

「ごめん、タマっち先輩。私、やっぱりダメだった……」

 

 

首目掛けて、此方へと振るわれる尻尾。痛いだろうなぁ。と杏は目を閉じた。

 

 

切り裂かれる音。ゴトリと何かが転がる音。

 

 

――だがそれは、杏の物ではない。

 

 

 

「ダメなんかじゃねーよ。杏」

 

 

聞き慣れた声。嘘だろう?と思わず目を開く。その声の主は、先程死んだはずだ、と。

 

 

「お前が命張って頑張ってくれなきゃ、奥のひなた達まで危なかった。痛かったよな、辛かったよな」

 

「そ、んな……っ」

 

 

手にするのは蒼白く輝く、神浄の輝きを灯す刀。

 

前までの神官服とは大きく変わり、昔の武士を思わせる様な鎧姿。

 

紅葉(こうよう)するかの様に紅く染まった頭髪をした彼が、目に涙を溜めて涙ぐむ杏に背を向けたまま口を開く。

 

 

「ありがとう。後は任せろ」

 

「はい……っ!」

 

 

守り抜いた。守り抜いたんだ。

 

憧れの一人に言われた礼に確かに頷いて、杏はゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

 

「邪魔だ」

 

 

“天叢雲”を一閃する。それだけで、融合体と側に居た数体は神浄の炎に包まれて消滅した。

 

それと同時に感じる、自身へと漲る力。

 

 

「なるほど。元が一緒だから、その力を吸い取ってんのか」

 

 

“天の神”、天津神からの遣いであるバーテックスは、今の俺にある神力と同一らしい。

 

天津神側の“神具”である“天叢雲”は、バーテックスを倒した際にその力を吸い上げる効果があるようだ。

 

 

杏の身体を抱き上げ、ひなた達が居るシェルターへと飛ぶ。ボロボロだ、作り直さねば。

 

 

「モミジさん!!」

「モミジ君!」

 

 

着くと同時に、今にも泣きそうな顔でひなたと水都が駆け寄って来た。

 

力一杯抱き着かれる。ごめん、と謝ると嗚咽と共に更に力が増した。

 

 

「綾乃さんに続いて……、モミジさんまでって……っ!」

 

「……ごめんな」

 

「謝らないで下さいよ……。もう、大丈夫なんですよね?」

 

 

ひなたの言葉に、何も返せなかった。

 

“神樹”からその庇護に外された俺は、四国からすれば最早所謂“敵”の様なものだ。

 

この戦いが終われば、自然と結界から外され外に放り出されるだろう。

 

――即ち、もう四国に帰る事など出来ないのだ。

 

 

返答に遅れる俺を見るひなたの目に、次第に涙が溜まる。

 

元々の素養の高い水都も気付いたのだろう、信じられない、とでも言うように手を口に当てる。

 

 

「……嫌です」

 

「それでも、行かなきゃ」

 

「行かないで下さいよ……!」

 

「皆を守るって、約束して来たから」

 

 

言葉の後で、シェルター奥で眠る綾乃へと目を向ける。

 

もう二度と目覚める事はないだろう、彼女へと。

 

側では、梓が縋り付いて泣いていた。

 

 

「綾乃と約束したんだ。皆を守るって、幸せになって貰うために」

 

「無責任な事、言わないで下さい……!」

 

 

ひなたがモミジの手を取る。離さない、とでも言うようにぎゅっと腕ごと抱くと、叫ぶ様に言った。

 

 

「あなたの、モミジさん自身の幸せは、何処にあるんですか!!」

 

 

言葉の後で、ひなたが嗚咽を上げる。

 

分かっている。このまま引き留める事は出来ないと。

 

今も前線で戦っている強力なバーテックスを倒すには、彼の力は不可欠だと。頭では理解できている。

 

 

でも、不憫な生まれの彼が、一番幸せを知るべきであろう彼を犠牲にしなくてはいけないこの状況が嫌だった。

 

 

若葉を、他の勇者を、そして四国を思うなら送り出すしかない。

 

 

彼を、彼の幸せを尊重するなら、このまま引き留め全ては崩壊するだろう。

 

 

後者は論外だ。だが、だからといって前者を選び送りだすのは、ひなたには出来なかった。

 

 

「ひなた」

 

真っ直ぐ此方を見るモミジ。

 

その言葉だけで、全て分かった。

 

彼が何を選ぶのか、そして、その決意の固さを。

 

 

「俺は行くよ。守りたい物を、守る為に」

 

「そんな……」

 

「んな顔すんなって、水都。笑って見送ってくれ」

 

 

「待って、待ってよ!!」

 

 

奥から走ってきた梓が、モミジに縋るように抱き着く。別れが分かったのか、ぽろぽろと涙を溢しながら離さない。

 

 

「行っちゃやだよ! もう居なくならないで、お願いだから何処にも行かないでよ……!」

 

「……梓」

 

 

モミジがしゃがむ。涙を堪えようと我慢するが出来ずにいる梓に笑いながら言う。

 

 

「綾乃と約束してな。これ守んねーと、次は本気でぶっ飛ばされそうなんだ」

 

「でも、それでも……!」

 

「俺は“防人”。言うなれば守護者だ。なら、梓の居る四国を、皆の住む四国を守るのが俺の御役目だ」

 

 

頭を優しく撫でる。梓は良い子だ、道を正しく導いてやれば、きっと大成できると信じている。

 

 

「だから、泣き顔じゃなくて笑顔で見送ってくれないか?」

 

 

ニカリと歯を見せてモミジが笑う。

 

年相応のその笑顔に、梓は時間を置いて頷いた。

 

ありがとう。と礼を言えば、再び上がる嗚咽を誤魔化す様に水都へと抱き着いた。

 

 

さて、と千景、杏へとモミジは近付く。肌で感じる“穢れ”。“精霊”を降ろし続け、酷使したのが直ぐに分かった。

 

 

「二人ともありがとう。……元気でな」

 

 

手を握り、そこを通じて“穢れ”を吸い取る。“穢れ”が薄くなったからか、二人の顔色は大分良くなった様に見えた。

 

流石に全ては吸い取れない様だ。だが、致死量となる程にはなくなった。時間をかければ、体調も良くなるだろう。

 

 

不意に膨れ上がる神威を感じ見れば、太陽を思わせる炎の塊があった。

 

レオ・バーテックスだろう。急がねば、若葉達が危ない。

 

何か言いたげなひなた達に、先に口を開いて言う。

 

 

「時間が無い。湿っぽいのはもう無しで頼むぜ」

 

 

「はい。……行ってらっしゃい、若葉ちゃん達にも、ちゃんと挨拶して下さいね」

 

「うん。……またね、モミジ君」

 

「……またね。モミジお兄ちゃん」

 

 

少年の、モミジの在り方を認め送り出してくれた少女達の言葉にモミジは笑顔で応えた。

 

 

「おう、またな」

 

 

バチリ、とモミジが雷の如き早さで飛び出して行くのを、ひなた達はずっと見送っていた。

 

 

その中で、ふとひなたは思う。

 

 

「――あぁ、そういえば」

 

 

以前モミジの生家、大神家に行った際に神前の間で見た壁画。

 

大地に平伏す人々を、太陽の威光を背に鎧甲冑の武士が見下ろす。という風に見ていたが、それは違うのではないのかと。

 

あの鎧甲冑の武士は、守護する者を背に“太陽/神”へと立ち向かった者なのではと、太陽へと駆けるモミジを見て思う。

 

 

「“神樹”様、奇跡があるのならあの人に何卒、何卒どうか……!」

 

 

我慢していた筈の涙が流れる。それを袖で拭い、ひなたはモミジを最後まで見送っていた。

 

――その背中を忘れないように、ずっと。

 




モミジは神に認められた訳ではなく、大神紅葉という人柄から、神力だけ貰った形です。神格としてはクソ雑魚ナメクジ、でも内蔵する神力はバケモノ級。

綾乃を助けられるだけの力。バーテックスの脅威から、これから先降りかかる暴威から……。天叢雲が発現したのは、今と未来、一切合切を“薙ぐ”力を求めたモミジの覚悟に応えて。後の草薙の剣である。

本編としてはまだ進めてません、申し訳ない。続きは誠意執筆中です、気長にお待ち下さいませm(_ _)m

長くなりましたが、読んで下さりありがとうございます。
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