個人事で、身体ぶっ壊して入院しておりましたm(_ _)m
今は快復しておりますo(^o^)o
これからは今までの道理の大体週一?(調子良ければ2,3日)ペースで上げようと思うのでお付き合い下さいm(_ _)m
「はぁっ……はぁっ……~~っ!!!」
人気の無い暗闇。何処かの山中にある洞窟の中で、荒い息遣いが聞こえていた。
その息遣いの主である仮面の女――国土梓は、手にしていた注射器の中身を注入し終えると力なく地面へと落とした。
「最初から飛ばし過ぎたかな……。いや、どのみちあの人数差は押し切られていた。……"鏑矢"の傀儡を解除されたのは、痛手だけど」
荒かった息も整い、ふぅと一息吐くように洞窟の壁に背中からもたれ掛かり、ずず、と地面に腰を降ろす。
雲間から覗く月の光が、懐中電灯が要らないくらいに地上を明るく照らしていた。
少し離れた場所にいる"穢"の顔布を着けた綾乃に気付き、梓が宙に指を走らせる様に振るえば綾乃が何処か覚束ない足取りながらもゆっくりと梓の元へと足を進める。
ゆっくりとだが目の前まで来た綾乃に、国土梓はその存在を確かめる様に抱き締めた。
――ふーん。それがアタシのコピー、ねぇ。……良いとこ40点ね
――厳しいな。綾乃。
「――っ」
「変わってなかったなぁ……、綾乃お姉ちゃんとモミジお兄ちゃん」
そう、変わってなかった。身内贔屓する訳でなく、実力を真っ向から評価する綾乃に何処かフォローするようにやんわりと言うモミジ。
確かに自分はまだ未熟だ。師である国土綾乃の技能には、今ですら遠く及ばない事を理解できている。
「……でも、私だって"力"を得たから」
ゆっくりと、壁に手を当てながら立ち上がる。
「ここなら出来る。全部やり直せる。ここなら、歴史を変えられる……っ!」
苦痛に顔を歪ませながらも、梓は奥に続く暗闇へと足を進めた。
◆
「私が、お前達を……?」
「そうみたいだね」
「若葉本人から、そう聞いたからな」
大神紅葉と国土綾乃が歴史から消失している理由と行った人物。
それが利己的な物で、かつ自分達大社の人間が行っていると理解し若葉は何も言えないで居た。
「勘違いの無いように言っておくが、これに関しては俺から何も文句は無い。同じような状況になれば、俺も似たような事をしただろうしな」
「――……」
何か言おうと口を開こうとして、そこで見たモミジの表情に若葉は止まる。
"それ以上何も言うな"
拒絶、嫌悪の類いではない。
過ぎた事は、歴史は、もうどうしようもないのだから。
モミジにとって、それはもうとうの昔の出来事に過ぎないからだった。
「俺の生家。つまり、大神家の本家も排除し、"ヒトガタの儀"への手掛かりは完全に絶たれたかの様に思えた」
「……
腕を組み静かに耳を傾けていた歌野が、訝しげに眉根を寄せながら言う。
そしてそこまで言って気付く。仮面の女の事を、彼処まで激しい慟哭の、衝動の原動力を。
その時。
「そこからの事は、私が話すべきかな……」
モミジが続けようとした時、痛む身体に顔を僅かに歪めたその少女が奥のベッドの部屋から顔を出した。
「赤嶺! 目を覚ましたんだな、良かった……」
「お姉様、ありがとうございます。皆にも、迷惑を掛けたみたいだし……レンチとシズ先輩も、無事で良かった」
未だにベッドで横たわる蓮華と静を見て、不安混じりの視線を送る赤嶺にモミジが言う。
「"傀儡"なら解呪してる。二人とも疲労が溜まってたみたいだからな。お前はまだ休まなくても良いのか?」
「そこまで柔じゃないよ。……柔じゃない、です」
「あの小生意気な赤嶺が……?!」
「敬語を使うなんて……?!」
「棗相手の時だけじゃなかったのね」
「私だって敬語くらい使うよ?! それに……聞いてた以上、だったし。二人とも」
チラリと反応を見るようにモミジと綾乃を見る赤嶺へと疑問符を浮かべれば、赤嶺は若葉を見て言う。
「初代様……乃木若葉その人が、よく語ってくれたの。大神紅葉、国土綾乃の二人の事を」
「へぇ、どんな風に?」
「"あの二人以上の人間は見たことない"、"あの二人が居たからこそ、今の平穏がある"ってね」
「ほー……」
「へー……」
「な、なんでそんな目で私を見るんだ?!」
赤嶺の言葉に、何だかリアクションがしづらく素直に若葉を眺めてしまう。そんなことを思ってたのか、若葉。
何だか照れてしまう。
「……でも、あの人は違った」
「赤嶺」
「分かってる」
赤嶺が醸す空気が変わる。重い空気の中、梓の名を出さぬように牽制すれば赤嶺はこくりと頷いた。
「私達は、大赦が反大赦組織を粛正する為に作り出したチーム、"鏑矢"」
知っている。
先ほど話した"天の神"を信仰する組織を潰すべく、当時の大赦のトップが作った存在。
つまり、若葉とひなたが関与した事柄という事だ。
「神樹様の御力を受け"神具"で武装した私赤嶺友奈と、そこに居る弥勒夕海子さんの祖先、弥勒蓮華。そしてそのお付きの巫女である桐生静の三人のチーム」
「偉大なる御先祖様ですわ……。可憐な見た目とは裏腹に、武勇に事欠かない方らしいですが」
「安心しなよ。脳筋で猪武者な子孫が居るんだから」
「雀さぁん……?!」
青筋を立てて雀へと迫る夕海子を見て、赤嶺が話続けて大丈夫かなと苦笑いする。
数秒の後に、芽吹から鈍い音を上げて拳骨を喰らわされた二人が揃って頭を押さえていた。
「続けるよ……。そしてそんな"鏑矢"のチームだったけれど、私達に神事の方面で修行を付けてくれる指導者が入った」
「……なるほど、それが」
「そう。あの仮面の巫女だよ」
納得行った様に手を打つ杏へと、赤嶺が頷いて言う。
「私達は"神具"を所有し、神樹様に選ばれた人間と言ってもあくまでそれまででしかない。あの時代は、その程度の巫女はゴロゴロ居たの」
そんな時に来た、快活な人懐っこい何処か子供の様な笑顔を浮かべていたあの人。
間違っても、あんな憎悪と殺意に溢れた顔をするような人ではなかったのだ。
「お役目ははっきり言って辛かったけれど、でも皆が居たから毎日が幸せだった」
けれど、変わってしまった。
「疑問が不安へ、不安が確信へと変わりつつあるその時、それは起きた」
どくりと心臓が強く跳ねる。落ち着かせる様に手を当てれば、どくどくと心臓の鼓動をはっきりと感じ取れた。
言うのは怖い。けれど言わなければならない。
裏切りのケジメは、取らなければならないのだから。
「――緋色舞うよ」
「……赤嶺?」
不意に呟いた戦闘へのルーティンに、若葉が疑問符を上げる。
戦意は感じられない。だが何か、強い決意を秘めた目を赤嶺はしていた。
「私達の世代において、最大であり最悪のその出来事は起きた」
「神樹様に選ばれた乃木若葉さん達"勇者"がバーテックスと戦ったその後の世。……次は、人間と人間が生存を賭けた争いを始めたの」
「「「っ?!」」」
「……聞いた事はあるよ~。それが、
――人間と人間が、今の自分達の様に命懸けで戦う。
戦争という、その凄惨さを知る西暦組みは勿論の事、それを知らない神世紀の面々も驚愕をしていた。
乃木家の人間である園子は聞いた事があるのか、はたまた盗み見た事があるのか、神妙な顔付きで同意する様に頷く。
「大赦を潰そうとする反大赦側は人数が多く、幾ら神具を所有する私達でも苦しい場面が多かったの」
「神具だけじゃ、限界な部分があるものね」
「うん。……そして、時間が進み大赦の人達が全員駆り出され手薄になった時、あの人は――仮面の巫女は言った」
続く言葉が直ぐに出ず、すぅ、と口を開けてゆっくりと大きく息を吸い込んだ。
「"この混乱に乗じて、乃木若葉を殺害する。"……ってね」
◆
「……嘘、でしょ?」
「嘘じゃないわ。これは私が下す決定よ」
「何言うとるんや、自分頭おかしゅうなったんか?!」
信じられないという赤嶺と、分かりやすい怒りを浮かべる静の言葉にそれでも国土梓は言う。
「この戦争の原因は大赦。つまりはあの乃木若葉と上里ひなたよ」
「でも、だからこそそれを止めるために私達が居るんでしょ?!」
「それで止まる? 無辜の民を"神樹様の導き"という名目で植物人間にするのが正しい事なの?」
「っ、それは……」
「せやけど、殺すっちゅーのはおかしいやろ。若葉様には自分も世話になっとんたんやないんか?」
自分でも思うところはあるのか、赤嶺の言葉が止まる。口下手な赤嶺をフォローするように、次は静が口を開いた。
そんな静を面倒臭そうに横目に見つつ、ごそごそと自身の手持ちの武器を確認して言う。
「恩があるからといって、何をしても許されるという訳ではないわ。私は神や仏でもない、傲慢だと言うのなら、別にそれで良い」
「……っ。ロック、さっきから黙っとるけど、お前の意見は?」
聞く耳持たず。そう言いたげな態度をとる国土梓に埒が明かないと感じ、今まで壁に背を預け黙って聞いていた蓮華へと話題を飛ばす。
今までの話を逡巡して少しの間考える様に沈黙した後、静へチラリと視線を送ると口を開いた。
――私は、赤嶺友奈は。
「……弥勒は。弥勒が正しいと思った事を成す。それだけだわ」
――弥勒蓮華が出したこの答えを、
弥勒蓮華という人の事を、
友人として、誇りに思う――
~~
「――見ろ。良い月が昇っている」
若葉が居る屋敷に着くと、此方の姿を確認するまでもなくそう告げられた。
親しい間柄の者へと言うようなその声音は、此方が誰なのか気配で感じ取ったのかもしれない。
「ああいう月を見ると、昔を思い出すんだ。がむしゃらに、奴等へと刀を振るう日々を」
「……そうですか」
「お前は何か思い出はないのか? あの二人は――モミジと綾乃は、こういう風情には乗り気だったと思うが」
縁側に腰を下ろし、若葉は此方へゆっくりと視線を向ける。
――何だ、その目は。
「……止めろ」
「あの二人は、お前には特に甘かった様に思うよ。特に酷いのはモミジだな、アイツは――」
「止めろって言ってんのよっ!!!」
此方が、"鏑矢"の面々が武装して此処に居る意味が分からないのか。
分からない筈がない。この人は、乃木若葉はそんな耄碌をするような凡人ではないのだ。
懐から匕首を取り出し、引き抜くと鞘を投げ捨てる。からん、と木製のそれが地面に転がるのを見て、赤嶺が息を飲んだのを見た。
「乃木若葉。お前を殺し、この暗黒の時代を終わらせる」
「そうか」
「最早命乞いすらないか。……総員、戦闘準備」
梓の言葉を皮切りに、場の空気が更に重い物に変わる。
ぴりぴりとした空気が肌を刺す中、涼しげな顔をしながら若葉は梓を真っ直ぐに見て言う。
「さて、私も最期の仕事を果たすとしよう」
若葉が、ゆっくりと立ち上がる。
その瞳に射ぬかれたそれだけで、重圧感がのし掛かるのを赤嶺は感じた。
「来い、
「――殺せッ!!」
国土梓の声に、弾かれた様に赤嶺と蓮華が走り出す。
真ん中を進む梓をサポートするように、若葉を両サイドから挟撃するのだ。
「……っ!!、"緋色――」
こんなことしたくない。という逆らう感情に、それを塗り潰す為にお役目のルーティンを赤嶺が唱える。
その時だった。
「っ、あああああぁ?!!!」
「え…?」
突如上がる悲鳴。突然の事に思わず目を見開いてその悲鳴の主を見れば、血が吹き出す肩口を押さえて苦悶の声を上げていた。
狙う対象の乃木若葉、ではなく。
自分達の側の、国土梓がだった。
「言った筈、なのだけれど」
混乱する場の中で、梓の腕を切り落とした本人、弥勒蓮華が刀の血を振り払いながら言う。
「弥勒は、"弥勒が正しいと思った事を成す"、と」
「弥勒、蓮華ぇぇぇえ!!!」
「国土梓。可憐な華の様だった貴女は変わった。いや、
ふぅふぅと獣の様に荒く息を吐きながら、梓はギラギラとした目付きで蓮華を睨む。
そんな中、焦りを含んだ声が上がった。
「梓!! 大丈夫か?!」
乃木若葉。命を狙われた本人が、その命を狙った主犯格を庇うように心配する。
先ほどのぴりぴりとした空気を発する目とは違い、その前の、見るだけで嫌気が差すその目に梓は顔を横に振る。
「止めろ……っ」
だってそれは、まるで――
「その目を止めろ……!!」
――あの二人が、見ている様で。
「若葉様、大丈夫ですか?!」
警備隊の者が駆け込んだのを見て、赤嶺は計画が失敗に終わってくれたと知り安堵から腰が抜けた。
この場において味方が居ないと即座に理解した梓が、若葉を振りほどいて逃走の為に走り出す。
「裏切り者が逃げたぞ!!」
「逃がすな! どうせ敵側の者だ、撃っても構わ――」
「ちょ、それは待って――!」
懐から銃を取り出したのを見て、赤嶺が焦った様に声を上げる。
それと同時に。
「撃つなッッ!!!」
先ほどまでの穏やかな声音とは違う、怒りを含んだ若葉の怒号にその場に居た全員がびくりと跳ねる。
普段からでも見せた事がないその表情に警備隊の者が戸惑っていると、冷静さを取り戻した若葉が言う。
「……国土梓には聞くことがある。生かして連れてこい。手荒に扱うのも、乱暴にすることも許さん」
「しかし……」
「"私"の決定に異を唱えるか。貴様」
「……失礼、致しましたっ」
乃木に逆らうという事は、四国全土を、世界を敵に回すという事。
その無謀とも言える愚かさに、警備隊員は震える身体を抑えながら頭を下げた。
「――梓」
梓が逃げた方向を見ながら、若葉はぽつりと呟く。
家族の様に大事な二人から託された、あの二人の子のような存在。
それの凶行を止められなかった事に、今さらになって情けなく思う。
「――やはり無理だな。モミジ、綾乃」
綺麗に昇る満月を見上げながら、自嘲気味に苦笑いして若葉が言う。
「私は、お前達の様にはなれない様だ」
冷たい夜風が、若葉の頬を撫でていた。
後1話位で日常編に行くと言っていたな。あれは嘘だ。
纏める能力のない私を許してください……m(_ _)m
お読み頂き、ありがとうございます。