大神紅葉は防人である   作:社畜戦士 くっ殺

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シリアスが終わらない……。書きたい事が多すぎぃ!

まだリハビリ中です。語彙力や表現におかしな点があると思いますが、ご了承くださいm(_ _)m

後書きでモミジや他のキャラクターのスペックを書いておきます。暇なら読んで下さいませ(*´ー`*)

それでは、暇潰しにどうぞ。


結ぶ歴史 9

――神樹の中で"試練"が行われる、少し前の事。

 

 

『……のぅ、モミジよ』

 

 

かつて諏訪の地で奉られていた"建御名方(タケミナカタ)"は、何時もと変わらず一つの場所に居座る若き神格へと声を掛けた。

 

 

――"大神紅葉"と呼ばれていた、元人間の神格に。

 

 

『……すまん、寝てた。何か用か、じーさん』

 

『うむ。此度の人の"試練"、どうする気かと思っての』

 

 

寝ぼけ眼の様な、とろんとした眼で建御名方を見上げるモミジに老人はにこりと笑みを浮かべる。

 

その胡散臭い笑みに、胡乱気な眼を隠さず建御名方へとモミジは言う。

 

 

『"試練"自体は協力するさ。その後は俺の好きにさせてもらう』

 

『……それは、復讐か?』

 

 

言葉と同時に、モミジの気配が変わった。

 

神樹の結界内に生じた、かつて感じた(いびつ)で嫌な気配。

 

敵方とはいえ、同じ神格を悪鬼に堕としたその男を、今でも腹立たしく思う。

 

……そしてそれは、この少年にとっても。

 

 

『復讐かと言われれば、そうかもしれない』

 

 

無意識で固く握りしめていた手を緩め、懐で庇う様に隠しているそれを見た。

 

懐で何百年にも渡り"穢れ"を浄化している小さな魂(綾乃)を見つめ、モミジは呟く様に言う。

 

 

『でも、違う。俺は――』

 

 

 

 

 

樹海。

 

先ほどまでの仮面の女(国土梓)と出会った樹海を"夜の樹海"とするならば、今の此処は"昼の樹海"とでも呼ぶのだろうか。

 

異質な風景が広がるそこで、無数に浮かぶ異物を見て何処からか声が上がる。

 

 

「あれって……前まで相手にしてた星屑バーテックス……?」

 

「デカイ奴も居るぞ! どーなってんだ、これも造反神の仕業か?!」

 

 

球子の怒号に目を向ければ、勇者が束になって封印していた大型のバーテックスが数体、そこに佇んで居た。

 

放たれる重い威圧感に、その場にいた"勇者"、そして――

 

 

「やはり、私達も呼ばれるのですね……!」

 

「梓ちゃん、此方においで!」

 

「うん!」

 

 

水都に呼ばれ、複数の"勇者"で固まり陣を作る中に梓は飛び込んだ。

 

此方の方が数は居るとはいえ、"巫女"は所詮ただの人間。油断は禁物だ。

 

 

「……デカイのが5。小さいのは無数、か。あの時みたいだな」

 

「加勢するぞ、モミジ」

 

 

"巫女"の安全を横目に確認しつつ、眼下に広がる敵を確認する。

 

()()()、というのが終末戦争の事だろうというのは若葉には容易に想像がついた。

 

 

その地獄を知っている人間だからこそ、加勢を申し出る。

 

だが。

 

 

「最初に言ったろ、加勢は要らないよ」

『じょーじぃ……』

 

 

むんずと頭部を掴んだそれを、モミジが乱雑に振り上げる。表情に変化はない筈なのに、ぬいぐるみから漏れる声には何処か悲壮感が漂っていた。

 

 

「持つのが俺に変わって、露骨に嫌がるんじゃねぇ。このエロ猫」

『すぃ、むーちょ』

 

「後でまた抱いてもらえ。今は仕事だ」

Vamos de fiesta(パーティーをしよう)!』

 

 

「っ、来るぞ!」

 

 

ぬいぐるみと会話する少年という奇妙な光景を一同がぽかんと眺めていると、空を覆い尽くすかの様な星屑バーテックスが波打って此方へと迫る所だった。

 

津波の様な、だがしかし圧倒的な物量が迫る中でモミジがとった行動は、

 

 

「ほいっ」

 

「あぁっ?!」

「サンチョさんが~!!」

 

 

ぬいぐるみをバーテックスの群れへと投げ込む。ただそれだけだった。

 

園子二人の悲痛な叫びを聞きつつ、それで何をと若葉が戸惑うと同時にモミジを見て動きを止める。

 

 

「行くぞ――」

 

 

それを見たとき、若葉の頭に浮かんだのは何故という疑問と驚愕。

 

それもその筈。モミジの瞳、その片方が。

 

 

「"()()()()()()()()穿()()"」

 

 

――あの、天津神の一柱を宿していた少女と同じ朱金の輝きを灯していた。

 

 

 

 

数の利とは、"戦い"、特に戦争において古来より勝利を占める要素として一番に上る重要な物である。

 

敵の何倍もの陣営で包囲し、袋叩きにするように蹂躙する……。智略に乏しい者でも執れる指揮の一つだ。

 

 

白い化け物。星屑バーテックスと呼ばれるそれらも、今の現状でどちらが優位かは理解していた。

 

 

敵は精々20そこら、此方は数万。

 

どちらが優位かなんて、考えるのも馬鹿馬鹿しい。

 

 

"勇者"の能力は非常に強力であれど、此方の人海戦術の前では体力が直ぐに尽きるだろう。

 

そうなれば此方の勝ち。後はどう逃げ惑うか、楽しんで追い込み、噛み砕くだけだ。

 

 

その集団の中の唯一の男が出てきた。

 

大きさは普通。"無謀"、という言葉がぴったりだろう。

 

 

周囲の別個体と共に、数万、数十万という数えきれない程の星屑バーテックスが、男目掛けて雪崩れ込む。

 

 

「――――」

 

 

ぶつかる直前、男が何やら呟いて何かを放り投げた。

 

何だそれは、と思ったのもつかの間。

 

 

――バチりと、"死"が弾けた。

 

 

 

 

眼前まで雪崩れ込んでいた星屑バーテックスの群れが、一瞬で蒸発した。

 

投げ込まれたサンチョぬいぐるみから生じた赤雷が、"百舌鳥の早贄"の如くバーテックスの身体を穿つと即座に絶命させた。

 

更に穿った赤雷の先から、残る別のバーテックスを貪る様に穿ち、更に別の個体へとその赤雷は伸びていく。

 

 

次へ、更なる次の敵へ。

 

 

貪る様に、大気を侵略するかの様に赤雷が(とどろき)吼える。

 

 

それは、正しく神が振るう"厄災"そのものであった。

 

 

 

「…………」

「すご……」

 

「……満開した園子以上ね、今のは」

 

 

――枝分かれしたそれが、空を覆い尽くす程に居た星屑バーテックスを残らず全て蒸発させたのは、時間にしてほんの一瞬の事だった。

 

 

あまりの圧倒的な光景に、"勇者"の面々は言葉を失う。それでも夏凛は、冷静に自分達の最大戦力である園子よりも上と判断を下した。

 

 

何かを見つけたモミジが空へと手を翳せば、ふらりとその手へと納まる様に長い何かが降ってきた。

 

身の丈程の大剣。大太刀と違うのはその刀身の幅。

 

持ち手であるモミジの身体を丁度隠す程のそれは、呼吸をするように淡く明滅している。

 

 

その輝きは、見る者を圧倒する神浄の輝きであった。

 

 

その神剣の銘は、"天叢雲(アマノムラクモ)の剣"。

 

 

 

「ふーむ、流石に"御霊"入りは頑丈だな」

 

 

感心するような視線の先には、星座の名を冠した大型のバーテックスが5体。

 

それぞれが警戒する様に此方を静視している。

 

 

「モミジ。大丈夫なの?」

 

「おう、大丈夫だ。試運転がてらと思ったが、問題はなさそうだな」

 

 

がしゃりと天叢雲を肩掛けに置き一息吐けば、ひょっこりと薙刀の巫女と共に現れた綾乃が声を掛けてきた。見えないと思えば、"道"を作って隠れていたのか。

 

大丈夫?というのは、戦闘による怪我の安否ではない。綾乃の真意を理解しているモミジは、それでも大丈夫だと笑みを浮かべて頷いた。

 

 

「も、モミジ。今の"雷"は……、それにその眼は……!」

 

「あの時の、モミジさんのシスターの"力"よね……?」

 

 

驚愕を浮かべていたのはあの日、あの場所で俺の双子の妹――"天照大御神"を降ろしていた少女と直に戦った若葉と歌野だった。

 

流石に覚えているか、と思うのと同時にバーテックスに力が集まるのを感じる。

 

攻撃の波長だ。

 

 

「っ、サジタリウスが!」

 

「皆、退避準備!」

 

 

大きな半月状の顔面、と表現出来るバーテックスが、ガパリと開けた口から無数の光の矢を吐き出していた。

 

放物線を描いて空から降ってくるそれに、戦闘経験のある勇者部一同が退避の体勢に入るが、それでは間に合わないだろう。

 

 

「"護れ"」

 

 

ダン!、と足を強めに立っている巨木の根へと踏み込めば、バキバキと音を立てて根が壁の様に聳え立った。

 

サジタリウス・バーテックスから放たれた光の矢が突き刺さるも貫通するまでには行かず、光の粒子となって矢が消えた後に穿たれた穴が即座に修繕される。

 

 

「うわぁ……規格外だと思ってましたが、ここまで来ると笑えもしませんねぇ」

 

「ドン引きするのやめて。腐っても"神"の空間だしな、神力も扱いやすくて助かる。護衛は…………頼んだ」

 

「今正直要らねぇかもとか言いそうになってませんでしたか?」

 

「なってないです」

 

 

手持ち無沙汰に薙刀を地面に刺して、巫女が分かりましたよと返事する。

 

正直負ける気は微塵もないが、不穏分子が何時来るとも言えない。油断せず対処すべきだろう。

 

 

「……モミジお兄ちゃん」

 

「んー? どうした、梓?」

 

 

さて、と"天叢雲"を構え直した時裾を引かれる感覚がして振り向けば梓が居た。

 

どうした、と言って不安そうな梓の顔に即座に合点が行く。

 

 

 

そうだ、俺は。

 

 

『――またな』

 

 

あの日、帰る事が出来なかったのだ。

 

 

「……大丈夫だよ。梓」

 

 

慰めも、その場しのぎの嘘も吐かない。

 

仮初の、偽物の世界の中だとしても、今此処に俺たちは居るのだから。

 

 

()()()()()

 

「!」

 

「直ぐに戻るさ。それとも、俺は頼りないか?」

 

 

掛けられた言葉に、諏訪での事を思い出す。

 

 

『よう、助けに来たぜ』

 

 

子供達で倉庫内に避難した時、万事休すといった所で天井をぶち抜いて現れた(ヒーロー)の事を。

 

迷う時間なんて、要らなかった。

 

 

「行ってらっしゃい!」

 

「おう!」

 

 

頼りになる背中が走り出した。

 

戦うのは、相も変わらず人類の敵。

 

――でも。

 

 

「――さて、梓。モミジの勝利を祈るわよ?」

 

「うんっ!」

 

 

この人達はもう居なくなったりしないって、何処か安心したように梓は笑っていた。

 

 

 

 

「……ビンゴだな」

 

 

感じる。

 

アイツの気配を。

 

神遣(ちちおや)の力を。

 

 

明確に何処に居る。とまでは分からないが、少なくとも気配は感じていた。

 

俺が此処に居る理由。

 

俺自身の、"大神紅葉"への試練の相手。

 

 

行かせまいと、バーテックスがその身体で此方を包囲する。

 

先ほどの"赤雷"ではダメージは大して入ってないようだったが、それでも断言出来る。

 

 

「俺に敵わないと知りつつも、神遣(シンシ)を庇うか」

 

 

言葉に反応はない。返ってくるのは、明確な殺意を含んだ矢と尻尾。

 

それを"天叢雲"で弾き、いなし、ふとバーテックスが並ぶ光景に思う。

 

護るべきそれの為に身体を、命を張るそれは、

 

 

「……なるほど。お前達は"天津神"側の"勇者"みたいな物なんだろうな」

 

つまりは、

 

「俺は、お前達の仲間な訳だ」

 

 

"天津神"の因子をその身に宿したヒトガタ、大神紅葉。

 

本来であれば、俺の立ち位置は奴らの側だったのかもしれない。

 

 

「……行くぞ」

 

 

柄を固く握り締める。神浄の輝きが、徐々に光を強めていた。

 

 

~~

 

 

『――俺は、アイツの話を聞きたいんだ』

 

『ほぅ?』

 

 

返ってきた予想外の言葉に、建御名方がふむと顎に手を当てる。

 

やはり、この男は違うと。

 

自分が感じていた違和感を、漸く理解した。

 

 

『何で、神を降ろしてまで人を支配しようと考えたのか。何百年も生き永らえてまでも、果たしたいその訳を』

 

『その理由を聞いてどうする。納得すればお主は許すのか、あ奴に手を貸すのか?』

 

 

建御名方の問いに、諏訪に居た時を思い出すな、と思わず笑みが溢れる。神様問答、そのものだ。

 

懐の綾乃の魂を撫でつつ、モミジが口を開いた。

 

 

『さぁな』

 

『む?』

 

『その時になってみないと分からねぇ。それを聞いて、漸く俺が成すべき事が分かる気がするんだ』

 

 

"神"という者は、殆どが我を持たない。

 

操り人形という訳ではなく、寿命による死や苦痛を感じない身体を持つ神々に、他人へと向ける感情等は不要な物であるから。

 

無断で自身の領土へとずかずか踏み込まれたりはしない限り、お互いに無視をするというのが殆どだ。

 

 

『……お主は何を思う。モミジよ』

 

 

だからこそ、建御名方は目の前の若き神格、元は人間だった神へと問う。

 

人としての側面を強く在るこの者こそが、今の人類に必要な者ではないかと。

 

 

建御名方の言葉に、モミジは真っ直ぐに目を逸らさずに言った。

 

 

『今も昔も、"俺の家族"の幸せだ』

 

 

それはまさに、あの日聞いた"大神紅葉"の言葉(こたえ)だった。

 

 

 

 

『……うん、彼なら問題無さそうだね』

 

 

国土綾乃の姿をした神格――"神樹"が、球体状のそれを地べたへと座り込んで覗き込む。

 

それに映されていたのは、送り込んだ若き神格が敵の尖兵を次々に屠っている所だった。

 

 

後でまた"造反神"役のスサノオから中指立てられて『我、激おこである』とグチグチ言われるんだろうなぁと思うと、何だか痛まない筈の胃がキリキリとしてきた。畜生。

 

 

その時。

 

 

『……何で、貴女が此処に?』

 

突如感じた神威(けはい)。自分、または月の神格(ツクヨミ)と同等なそれに目を向ければ一人の女が立っていた。

 

その姿と、間違え様もないその神力に"神樹"は思わず目を見開く。

 

 

『――人の子の姿を譲り受けたのじゃが、よくぞ気付いたの』

 

『……誰だって気付くよ――』

 

 

悪戯が成功し薄くだが笑うその女へと、"神樹"が呆れた様に言う。

 

それもその筈、この場に現れた、その神威を纏う神格は。

 

 

『――天照(アマテラス)

 

 

『――300年も行われているこの騒動について、話したい事があってこの場に罷り越したのじゃ』

 

 

天照大御神。

 

人類に牙を剥く第一人者が、そこに現れた。

 

 




簡単スペック表。

大神紅葉 チート。莫大な神力に加え、妹の魂を取り込んだおかげで"御霊の使役"と"厄災の使役"両方を使える。もうこいつ一人で良いんじゃない?

国土綾乃 モミジの神力のバックアップにより、"道"と"式神の使役"の即時展開と使用が可能になった。

薙刀の巫女 名前が決まらない巫女。実は誰かの祖先。戦闘時はモミジを経由して精霊を柔軟に使用する。純粋な武具の取り扱いでは作中人間部門で一位。

大嶽丸 鬼。禁忌精霊。モミジからの命により、国土梓を影ながら警護している。力のみの脳筋プレーなら誰にも負けない。

国土梓 望月梓の闇落ちした姿。"疑似精霊"、"道"、"式神"、"呪術"等オールマイティーに立ち回れる。綾乃から言わせると半端者。モミジと綾乃を歴史から抹消した事から、若葉とひなたを恨んでおり殺害を狙っている。


こんな感じです(*´ー`*)

基本俺TUEEEや俺また何かやっちゃいました?は好きではないので、モミジの戦闘はそこまで引っ張りません。

続き、そして短編も牛歩ながら書いております。気長にお待ちくださいm(_ _)m

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