大神紅葉は防人である   作:社畜戦士 くっ殺

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本編の方がシリアス書きすぎ&考えすぎて脳が拒否反応起こしてるんで、短編に逃げちゃいましたヽ(´ー`)ノ←

今回は個人的にはギャグ路線。普段よりまったりと読んで下さい。

本編はもう少しで書き上がります、少々お待ちをm(_ _)m


短編 4

 

「――はい、少しきゅーけー!」

 

 

少し長い笛の音の後で、無精髭を蓄えたジャージ姿の男が声を張る。

 

張った声は覇気に満ちた物ではなく、何処か呆れたような雰囲気を感じさせた。

 

それもその筈。今年丸亀城の警備隊に入隊した隊員の指導に当たっていたのだが、準備運動程度の()()()で死屍累々になっているのだから。

 

そして、その中で満足そうな笑みを浮かべる一人の少年。

 

 

「ふぃー、良い汗かいたなー」

 

「お疲れさん。やっぱり生半可に鍛えてはないな」

 

「一応、“防人”ですからね」

 

 

“防人”。白い化け物が現れ、それを打倒出来る力を得た少女達を“勇者”。そして、それと同等の力を得たこの少年、大神紅葉を“防人”と呼ぶ。

 

ここの警備隊は、この“勇者”と“防人”、そしてそのお付きの“巫女”を護る為の組織である……のだが。

 

 

「ったく、その警護対象より弱くてどーすんだお前ら」

 

「いや、隊長……。恥ずかしい話ですけど無理っす。さっきのフル装備マラソン(デスマーチ)涼しい顔してクリアする奴と一緒にしないで……」

 

「あぁん? なら同じ位頑張りゃ良いだろうが!! 甘えてんじゃねぇ!」

 

 

うぷ、と青い顔をしてそう言う若い隊員へ檄を飛ばす。そう言うと、何処か気を失った様にバタリと倒れ伏した。ダメだコイツは。

 

 

「それにしても……、坊主はどれくらい鍛え込んでるんだ?」

 

「ん、俺? えーっと……。普段は日の出前に丸亀城をグルグルとランニング。日が昇ったら筋トレする位かな。後はぼちぼち、色々やってるよ」

 

「色々って例えば?」

 

「おっちゃんと組み手とか」

 

「……凄いなぁ。坊主は」

 

 

ニコリと笑ってモミジが此方に指を差す。

 

朝早起きをするとよく走ってる姿を見るが、なるほど普段からあれ程走っているならこの体力にも頷ける。

 

“対人戦を鍛えたい”という要望で、喜んで今まで培った技術を叩き込んで来たが、それをこなした後で来ていたのかと驚く。

 

 

「そりゃ勿論。アイツらを護りたいしさ」

 

「ふむ、そうか……」

 

 

モミジの言う“アイツら”とは、恐らくだが他の“勇者”や“巫女”の面々だろうと予想がついた。

 

まぁ、役割云々を抜いても、彼女達の容姿は整っていると思う。このまま年を取れば、それぞれが高嶺の花として咲くだろうなぁとは容易に想像が出来た。

 

 

「坊主はあの娘達の王子様って訳だな、かっかっか」

 

「王子様って……、表現がメルヘンだなぁ。顔に似合わず」

 

「ほっとけ」

 

 

実際、警備隊に来る特に若い年代には、あろう事か警護対象である“勇者”や“巫女”へ()()()()()を向ける輩が居る。

 

男として同情出来るのだが、もしそれで何かあれば流石に擁護は出来ない。

 

 

“防人”、大神紅葉が四国外調査へとスムーズに赴ける様にという理由もあり出来たこの警備隊だが、警護対象に手を出すなんて以ての外だ。

 

 

そんな時。

 

 

「お~い、モミジく~ん!」

「おーおー、やってんなぁ」

「皆さん、こんにちは。毎日お疲れ様です」

 

 

件の彼女達が、自分達の用を終えたのかぞろぞろとやって来た。

 

“巫女”の上里ひなたが持つ書類から察するに、大社からの通達を持ってきたついでだろうか。

 

 

「警備部長さん、此方大社本部からの書類です」

 

「態々すみませんね。……確かに、受け取りました」

 

「いえいえ、此方も彼の鍛錬風景を見たかったものですから」

 

 

見たかった。というが、その取り出したバズーカみたいなカメラは撮る気満々なのでは?と思う。

 

本来なら鍛錬風景などは部外秘、撮影なんぞ以ての外だが、ニコニコと笑みを浮かべる彼女からは口を挟める余裕が一切見えない。

 

 

……うん、面倒だし、放置だな。

 

 

いちゃもんを付けると後が怖いし、と見なかった事にする。後は知らん、好きにしてくれ。

 

 

「――にしても……、はぁー」

 

 

やはり、というかまさに予想通り。彼女達“勇者”、“巫女”の登場で色めき立つ若い衆を見て思わずため息を吐いた。

 

先ほどまでの死屍累々は何だったのか、立ち上がり笑顔を振り撒き余裕とアピールする始末。

 

……それがガクガクと震える足で、青い顔で昇天しそうな顔を浮かべていなければ、少しは格好がついたのかもしれないが。

 

 

ひえっ、と“勇者”と“巫女”の数名から悲鳴が上がった。

 

 

しかし、そこである妙案が浮かぶ。

 

 

――これならば、警備隊と“防人”の坊主を満足に動かせられるのでは?

 

 

集合!と声を上げればわらわらとぎこちない動きで皆が集まる。

 

死にそうな者、昇天しそうな者、良いところを見せたいと息巻いている者をそれぞれ見つつ、ニヤリと笑って口を開いた。

 

 

 

 

「集団組み手、か」

 

 

ぐいぐいと四肢を伸ばす様にほぐしながら、円陣を組んで作戦会議をする警備隊の面々を見やる。

 

教官である警備部長が何やら話すと、次第にメラメラとしたやる気を感じた。何だ、何があった。

 

 

「モミジ君、身体ほぐすの手伝おっか?」

 

「おー友奈。悪い、柔軟したいんだが背中押して貰えるか?」

 

「任せて、行くよー!」

 

 

声の後に、程良くぐいぐいと背中を押される。格闘技をするだけあって、こうした柔軟には理解があるのだろう。無理しない程度に押してくれる力加減が嬉しかった。

 

ありがとう。と礼を言えば友奈はどう致しまして、と笑顔を返してくれた。

 

そんなやり取りの最中感じる視線に目を向ければ、警備隊の一部の連中と目が合い、直ぐに逸らされた。

 

 

――悪意、殺意の類ではない。今のは……何だ?

 

 

「何だよモミジ、怖い顔しちゃってさ」

 

「ん……。ちょっと気になってな」

 

 

飲み物を手渡しつつ、球子が小首を傾げて疑問符を上げる。飲み物に礼を言いながら受け取ると、またもや感じる視線。

 

対象(ターゲット)は俺だ。少なくともさっきの友奈や目の前の球子に当てた物ではない。

 

 

そこまで考えた所で、指導教官のおっちゃんから声が掛かる。

 

 

――用があるのならば、そこで聞こう。

 

 

飲み干した容器を足元の芝生へと突き刺し、モミジは立ち上がった。

 

 

 

 

「坊主は打撃無しで投げ技。全員急所は全般無し。組み技は首以外ならオーケーだ」

 

 

目。 目。 目。

 

怒りを宿した目。

 

嫉妬を宿した目。

 

此方を見下す目。

 

 

審判であるおっちゃんの話を聞く最中でも突き刺さる目に、モミジは確信する。

 

コイツらの狙いは俺だ、と。

 

顔を見渡すが、特に恨みを買うような事をした連中でもない。

 

 

「――――しやがって……」

「絶対――――す」

「――――――は俺が……」

 

 

ぶつぶつと何かが呟かれる中、ふぅとため息を一つ吐く。

 

熱くなるな。心は冷静に、フルスロットルに入れるのは身体だけだ。

 

 

開始の合図を待つ。多対一。救助に行った先で飢えた要救助者に襲撃されたり、未だ居るチンピラに絡まれた時と考えろ。

 

 

「――始めッ!!」

 

 

火蓋が切って落とされる。視線を左右に動かし、やはり此方を囲もうとするのを確認した所で。

 

 

「いつもいつも、イチャついてんじゃねーぞオラァ!!」

 

「……へ?」

 

 

――そんな、嫉妬心にまみれた怒号が聞こえた。

 

予想外の突飛な事に反応が遅れるが、間一髪繰り出された拳を躱しカウンターを叩き込む。

 

あ、殴ったらダメだった。

 

 

「ぐあああああ?!」

 

「沢田ーッ! 畜生、これでも喰らえぎゃふん」

 

「今田ーッ?!」

 

 

襲いかかる警備隊(暴徒)を、合気道や柔術の要領でいなし、投げ飛ばして行く。

 

何というか、肩透かしを受けた気分だ。皆、己の欲望に忠実らしい。

 

 

「絶対にぶちのめす……!!」

「リア充に制裁を……!」

 

「何言ってんだコイツら」

 

 

武器を模した木剣をいなし、武器を払い落としつつもう一人へと投げ飛ばす。

 

ぐぇ、とカエルを潰した様な悲鳴を上げて男達は沈黙した。

 

だが、まだまだ人数は居る。気を引き締めろ。……と心では思うのだが、何処か腑に落ちない事が引っ掛かる。

 

 

リア充に制裁をと言っていたが、俺は別にリア充ではない。

 

もしかして先程の友奈達とのやり取りの事を言っているのなら、それは大きな誤解だ。

 

 

「次は俺だぁ!」

 

 

大柄な一人が此方へと姿勢を低く、突っ込んで来る。

 

タックルか、倒されれば数に押されて終わりだ。と迎撃の準備をすれば、別の男が吼える。

 

 

「やっちまえ山田! ここでけちょんけちょんにやってやれば、俺らにもチャンスが有るぞ!」

 

「おうよ、あのぼいんちゃんは俺が頂――」

 

 

その言葉と同時に感じる、訓練で火照った身体すら凍り付く殺気。

 

その発信源に目を向ければ、“あ、俺死んだな。”と確信する存在が、腰だめにいつの間にか拳を構えていた。

 

 

 

――この時、“防人”大神紅葉へとタックルを仕掛けた山田隊員は、後ほどこう語る。

 

 

「――あ゛?」

 

 

――国を護る程の“防人”って役割の方は、自分達とは本当に段違いの存在でした。と。

 

 

~~

 

 

「「「山田ぁぁぁぁ!!!」」」

 

 

「おー、ぶっ飛んだ」

「死んでないですか、あれ……」

 

 

複数の叫び声の後に、錐揉み回転しつつ宙に舞う隊員を見て友奈と杏がそれぞれ反応を見せる。

 

杏の引き気味な顔に近くでカメラを構えていたひなたも苦笑いする。

 

先程までの隊員による魂の叫びの様な物を聞いていたが、正直苦笑いしか出ない。

 

まぁ、素直に言ってしまえば最低と非難するものなのだが。

 

 

「あっちー……」

 

「モミジさん、シャツで拭わずタオルで拭かないとダメですよ?」

 

「あぁ、悪い悪い」

 

 

小休止に入ったのか、シャツで雑に汗を拭うモミジへとひなたが呆れた様に言う。

 

その際に走ったパシャ、という音に振り向けば、球子が笑いながらスマホを構えていた。

 

 

「普段は中々撮れないからな、油断した横顔をパシャリ、だ」

 

「写しても得しねーだろ? 汗臭い奴が写るだけだぞ」

 

 

ひなたが渡したタオルで汗を拭いつつ、得意気に見せてくる球子のスマホの画面をモミジが覗き込む。

 

 

「確かに普段モミジ君写真写らないもんね……。私も一枚!」

 

「あ、なら私も撮っとくか」

 

 

「何だこの突如始まる撮影会。……止めろ止めろ!!」

 

「モデルが逃げたぞ、追い掛けろ!」

 

 

友奈の提案に若葉がノリ、皆がスマホを取り出したのを見てモミジが気恥ずかしそうに駆け足で逃げ出す。

 

そこへ綾乃が発破を掛け、友奈、若葉、球子が笑いながら追い掛ける事となった。

 

 

「元気ね……」

 

「本当に」

 

 

呆れながら、だが微笑ましい物を見るように笑みを浮かべる千景に同意してひなたは確かに頷いた。

 

 

 

 

その日の夜のこと。

 

 

明日の予定に向けて、荷物の準備をしていたひなたのスマホからメールの着信音が鳴った。

 

こんな時間に誰が、と見れば連絡アプリの“RAIN”にグループチャットで球子の発言が表示されている。

 

 

『今日の写真載っけるぞー! ひなた、保存よろしくぅ!』

 

 

そんなコメントの後に続く、モミジが主体とした写真の数々。

 

羞恥心で顔を赤らめた彼の写メにあらあらと微笑ましく思いながら見ていると、一枚の写真で止まる。

 

 

それは、最初に撮影されたモミジがシャツで汗を拭う場面。

 

 

普段まじまじと見ることのない真面目な彼の横顔と、服から覗く汗が滴る筋肉。

 

そんな彼の写真を見て、思わず見入っていた自分を自覚して頬を赤らめる。

 

 

「そ、そんな……っ。こんな写真持ってるなんて、変態じゃないんですから……!」

 

 

そんな自分を恥じて、ぶんぶんと煩悩を振り払う様に頭を振る。

 

そんな時、ぴこん、という着信音と共にメッセージが表示された。件のモミジからだ。

 

 

『そんな写真残すなよ……。さっさと消してくれぃ』

 

 

少し遅れて、表示されるメッセージ。

 

 

『分かった。もうちょい待ってくれ、やり方分からんから杏から聞く』

 

 

そこからのひなたは素早かった。

 

 

即座に画像をダウンロードし、いつも保存してあるフォルダではなく、カートリッジすら新しい物に変える始末。

 

パスワード設定を済ませ、画像が無事に保存されてあるのを確認しほっと一息吐いた所でやっちまったと頭を抱える。

 

 

「私、昼間の警備隊の方々とそんなに変わりません……!」

 

 

悶々とした気持ちのまま過ごし、若葉とモミジから要らぬ心配をされることになるのだが、また別の話。




身内に手を出そうとすると無意識で殺る気スイッチ入るモミジ君まじ番犬。

むっつりスケベ風味のひなたちゃんでした。

写真を保存したのは誰も一人だけとは言っていない……←
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