大神紅葉は防人である   作:社畜戦士 くっ殺

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リハビリがてら、久しぶりの短編です(*´ー`*)

物語の登場人物にまつわる事など、進行上省いた事が書かれてありますが、気にしないでください←

新しい登場人物の事は、後書きで補填しておきます。

それでは、暇潰しにどうぞm(_ _)m


短編 6

家族(きょうだい)

 

 

「紅葉様、此方をどうぞ」

 

「あ、わざわざすみません」

 

 

ある晴れた日。大社で修行をしている綾乃と梓をいつも通り迎えに来ていた。

 

もはや顔馴染み同然で、雑務等をしている巫女さんが待つ間摘まむ物を出してくれる程には仲が良い。

 

 

「……ん、相変わらず美味しい」

 

「手間を掛けてやれば、どんなお茶でも美味しく淹れる事が出来るんですよ」

 

 

一口飲んで、口に広がる味と風味に頬が緩む。

 

そんなモミジに機嫌を良くしたのか、盆を下げながら自慢気に巫女は話していた。

 

此方もどうぞ、と去り際に置いて行ったのはこれまた美味しそうなお茶菓子。以前にも食べた事があり、その際に気に入った味だったのを覚えている。

 

 

「……ほぅ」

 

 

熱い茶をずず、と啜り、甘いお茶菓子を頬張り、また茶を啜る……。

 

何処か老成したように思えるが、大社の隣にある修練用の滝の音を聞きつつ茶を飲んでいると、なんだかぼぅとしてしまうのだ。

 

 

「平和だなぁ……」

 

 

平和なのは良いことだ。とお茶菓子へと手を伸ばすと同時に、

 

 

「こらぁ! 綾乃ぉ、何処に行ったぁ?!」

 

 

襖を蹴り抜き飛び出した、静寂を切り裂く怒号に身体が思わずびくりと跳ねた。

 

ぽとりと楊枝から取り落としたお茶菓子を空中でキャッチし、あぶねぇと思いながら口に放り込むとその声の主、国土和人から声が掛かる。

 

 

「モミジ君、綾乃が此処に来んかったか?!」

 

「綾乃が? いや、見てないですけど……」

 

 

此方までは、今和人おじさんが飛び出した襖を挟んで一方通行だ。幾らすばしっこい綾乃とはいえ、それを見逃す程俺も間抜けではない。

 

なら何処に……、と視線を宙に上げた時通路に置いてある金属製の大きな仏像に目が行った。

 

 

正確には、その仏像にしがみついている綾乃にだ。

 

 

「…………」

「…………」

 

「あんの馬鹿たれ、大事な術符に落書きしおって……!」

 

 

怒り頂点まで来てる和人おじさんは気付かないのか、この付近に居るであろう綾乃をキョロキョロと探し回っている。

 

俺と目があった綾乃は、必死に口元に指を当て何かを伝えている。

 

まぁ、状況を見れば分かるのだが。

 

 

「本当に余計な所まで母親そっくりだよ、あの子は」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ、そうさ。術符に悪戯するなんて可愛い方だ。酷い時なんて……」

 

 

和人おじさん曰く。

 

・本堂の仏像に落書き(油性マジック)

 

・読経の中身を漫画にすり替え読破する

 

・屋根裏に脱走用の通路を作る

 

・当然の様に修行から脱走する

 

 

とんでもない巫女だった。

 

 

「豪快な人ですね……」

 

「我が姉ながら恥ずかしい……。妹も、悪い様に感化されていたが」

 

「妹って……」

 

 

モミジの言葉に、和人が僅かに口ごもるが直ぐに口を開いた。

 

 

「あぁ……、モミジ君のお母さんだよ」

 

 

懐かしい物を見るように、和人が目を細める。

 

おそらくだが、昔を思い出しているのだろうか。

 

 

「昔から病弱な子でな。姉と一緒に看病していたからか、何時でも後ろを追い掛けて来る奴だった」

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん子って事ですか?」

 

「あぁ、そうさ。こんなに甘えん坊で大きくなったらどうする気かと思ったが、君を抱いて帰って来た時には酷く驚いたよ」

 

 

ははは、と笑いながらモミジの横へと和人が腰を下ろす。

 

ゆっくりとモミジへと顔を向けると、あぁ、と声を洩らしながらモミジの顔へと手を伸ばした。

 

 

「目元がそっくりだな。物腰が柔らかそうでありながら、強い意志を感じるその目は特に」

 

 

妹が居るみたいだ。と和人おじさんがそう言う。

 

 

……俺にある母親の記憶は、もう一人のヒトガタ――俺の妹と戦った時の断片的な記憶しかない。

 

病気で痩せ細った姿しか見えなかったが、確かに真っ直ぐな目をした人だった。

 

 

「……今だから言うが、当時の国土家の長老達は君の事を良く思っていなかった」

 

「!」

 

「双子は一人の運命を別つ物として、古来より忌み子として扱われる。そして、大神――あの男の所業にかんかんに腹立っていたからね」

 

 

そうだったのか。

 

でも、俺は今生きている。ということはつまり――。

 

 

「そうさ。妹は、国土葵(こくど あおい)は長老達にこう啖呵を切ったんだ」

 

 

――私の子供達に手を出すな。

 

――お前達に、私の子供をとやかく言われる筋合いはない!

 

――分かったら大人しくしていろ、この老いぼれ共!

 

 

それからはとにかく大変だったらしい。

 

"天災"の日にその長老達は亡くなったらしいが、その日までに数多もの手で嫌がらせを受けていたのだとか。

 

 

「……どうして、その話を?」

 

「モミジ君を見て、懐かしい物を見た気がしたからかな。口が滑った、って事にしておいてくれ」

 

「そうですか」

 

 

別に、母親について知りたいと思った事はない。

 

母親が嫌いだとかいう理由ではなく、知った所でもう会う事が出来ないのだから。

 

寂しさが増えるだけなら、知らない方がマシだと思ったからだ。

 

 

だが。

 

 

「梓君、だったかな。あの子と君たち二人が一緒に居るところを見ると、子供の頃を思い出してしまう時があるんだ」

 

「……そう、ですか」

 

 

今心に湧いたこの感情は、例えようのない暖かさに溢れていた。

 

 

 

 

 

「――因みに、綾乃はそこの仏像の上です」

 

「何ぃ?!」

 

「あ、ちょ。モミジ、アンタ裏切ったわねー?!」

 

 

~~

 

 

「い、いたたたた……」

 

「その歳で尻叩きは色んな意味で痛いよな」

 

「誰のせいだと思ってんのよ?!」

 

「綾乃お姉ちゃん、落ち着いて~」

 

 

帰り道、梓を含めた三人で歩けば折檻で叩かれた尻を抑えて綾乃が悲痛な声を上げていた。

 

現場は見てなかったが、凄まじい音だけは聞こえた。これでも懲りてないのだから、筋金入りのサボり魔なのだろう。梓には見習ってほしくない。

 

 

「綾乃は聞かされてたか、俺の母さんの事」

 

「噂程度には。国土家の恥だって、じい様ばあ様方がグチグチ言ってたわね」

 

「そうか」

 

「耳障りだったから線香の灰をぶっかけてやったわ」

 

「何で?!」

 

 

ええー?!と驚く梓に、陰湿な奴は嫌いなのよ。とふんと腕を組ながら綾乃が言う。

 

 

「気に入らないならぶっ飛ばせば良いのよ」

 

「どんな解決方法だ」

 

 

お前は何処の蛮族だ。

 

 

梓に真似しちゃダメだぞ。と注意しながら梓の手を引けば、梓が空いた反対側の手で綾乃の手を掴む。

 

気恥ずかしいが、ニコニコと楽しげな梓を見れば何処か仕方ないと思えた。綾乃を見れば、同じ考えらしい。

 

 

「腹減ったな」

 

「今日は何にするの?」

 

「時間も遅いし、"戌崎"に行きましょ」

 

「「賛成!」」

 

 

三人で手を繋いで、本当の兄妹の様に歩いて行く。

 

血の繋がりのない、一人身の集まりであるが、そんなものはどうでも良いのだ。

 

 

「俺は肉ぶっかけかな。温玉乗っけて貰おうっと。後天ぷら」

 

「私は前に見た名古屋の味噌カツが気になってるわ」

 

「それ、すっごく美味しそ~!」

 

 

他愛のない会話をしながら、沈む夕日を追い掛ける様に目的地へと進む。

 

伸びる影が、三人を家族の様に繋げていた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『耳かき』

 

 

「さ、此方にどうぞ」

 

「いや、ちょっと待ってくれ……」

 

 

ぽんぽんと膝を叩くひなた、その逆の手には竹製の耳かきが握られている。

 

どうしてこうなった。と事態の把握に努めると同時に、モミジは脳みそをフル回転させていた。

 

 

~~

 

 

遡る事5分前。

 

 

四国外の調査結果をまとめていると、ふと違和感がモミジを襲った。

 

 

「……ん?」

 

がさり、と耳の中で何かが転がる音がして、モミジはとんとんと耳を叩くが出てくる気配がない。

 

仕方ない、と部屋にある備え付けの救急箱の存在を思いだし中から耳かきを、と思った所で声が掛かった。

 

 

「どうしたんですか、モミジさん?」

 

「おー、ひなたか。いや、耳掃除でもしようかと思ってな」

 

 

丁度扉を開けて部屋に入って来たひなたが疑問符を上げれば、モミジが自身の耳を差しながら言う。

 

でしたら、とひなたがいつも持ち歩いている小物入れから取り出したのは、正に今探していた耳かきだった。

 

 

「耳かきなんか持ち歩いてるのか?」

 

「若葉ちゃんを、何時、何処でも耳掃除してあげられますから!!」

 

「尽くされてるなぁ、若葉」

 

 

目を輝かせ声高に言うひなたに礼を言って、差し出された耳かきを受け取ろうとすれば、

 

 

「はい、此方にどうぞ♪」

 

「……え?」

 

 

ひょいと遠ざけられ、ひなたは正座して膝を叩いていた。

 

 

~~

 

 

膝枕。

 

何時か見たテレビ番組で、"男が彼女にしてほしい事"ランキングにあったなぁと他人事の様に思い出す。っていやいやちょっと待て。

 

 

「……どうしたんですか?」

 

 

小首を傾げて此方を見上げるひなた。そんな彼女の顔を見て、スカートから出た白い足に目が行く。

 

ごくり、と唾を飲んだ。

 

 

「チェストぉ!!」

 

「モミジさん?!」

 

 

自分を戒める為に頬へと拳を叩き込めば、ぐらりと揺れる視界とじんじんと響く鈍い痛みに現実に戻って来た。危ない所だった。

 

 

「大丈夫ですか?! 突然どうしたんです?!」

 

「いや、最近こういう鍛錬しててさ。ハマってるんだ」

 

「どんな鍛錬ですか?!」

 

 

モミジの奇行に戸惑うひなたを見ながら、大きく深呼吸して意識を整える。

 

ひなたは恐らく善意での申し出だ。ならそれに対して変に戸惑うのは、ひなたに対してやましい気持ちを持っていると言っている様な物だろう。

 

すなわち。

 

 

「悪いな。よろしく頼む」

 

「はい、任せて下さい♪」

 

 

覚悟を決めて、大人しく耳かきを受ける。それがひなたに恥を掻かせない唯一の正答だ。

 

ひなたに導かれる様に、その太ももの上へと頭を乗せる。

 

女の子特有の柔らかさと、何処か甘く感じる匂いが一度にモミジを襲った。

 

 

「なら、手前からしていきますね。力を抜いてください」

 

「あ、あぁ……」

 

 

頭部に感じる柔らかさ、甘い匂いに加え、耳かきが耳へと侵入する感覚が加わる。

 

普段正直まともに取り組んでいない読経の詩を思い出す限り頭の中で唱えながら、ひなたの耳掃除が終わるのを待つ。

 

 

「んっ、結構ありますね。普段からしてないとダメですよ?」

 

「忙しくて中々出来なくてなー」

 

「なら、私が定期的にしてあげますね」

 

 

……コロリと堕ちそうな自分を張り倒しつつ、自分を取り巻く今の環境から意識を飛ばす。

 

頭部に感じる柔らかさを、甘い匂いを意識しないように目を瞑り、余計な意識を逸らす事に集中していく――。

 

 

~~

 

 

「モミジさん、終わりましたよー……あら?」

 

 

耳掃除を終え、声を掛けるが反応が無い彼に不審に思えば聞こえてくるのは規則正しい寝息。

 

あらあらまあまあと、若葉ちゃんも良く寝ますものね。とひなたが思うと同時に、ふと思い返す。

 

 

そういえば、"異性"に膝枕をするのは初めてだな。と。

 

 

「…………――?!」

 

 

段々と紅潮し、僅かに早くなった鼓動を抑えながら自分を落ち着かせる。

 

彼の頭を置いてある箇所から感じる重さと暖かさ、若葉とは違う男性らしさにどぎまぎしつつ、誤魔化す為にさらりとモミジの髪を手で鋤いた。

 

 

「……身体は大きくなりましたけど、寝顔は可愛いですね」

 

 

幼少期と比べて、いつの間にか抜かされた身長を思いつつ、平和そうに寝息を立てる彼にくすりと笑う。

 

何時もあちらこちらへと忙しいのだ。今は、こうして休める内に休ませておこう。

 

一つ言っておくが、決して開き直った訳ではない。

 

 

「……こうして寝顔を拝めるのも、役得ですからね♪」

 

 

すぅすぅと寝るモミジを見ながら、ひなたは優しくその髪を撫でるのだった。





国土三兄妹

長女 国土瞳(こくど ひとみ)。 綾乃の母親。その我が道を往く佇まいは、何処か綾乃にも似ている所がある。"天災"の日に夫と共に行方不明。死亡と判断された。

長男 国土和人(こくど かずひと)。モミジ、綾乃の叔父にあたる。国土家の現当主。モミジを連れ帰った葵を、前当主の長老達から守っていた。抵抗するで、拳で。

次女 国土葵(こくど あおい)モミジの母親。病弱でまともに巫女としての修練も積めない程。初代大神と出会い恋に落ち、周囲の反対や意見も聞かず結婚。双子の妹は無理だったが、モミジを守るため命掛けで守った。

需要あるか分かりませんが、お暇な際にお読みください。長女の国土瞳は、名前だけならチラッと出てます(*´ー`*)


え?耳掃除?膝枕?
母親にして貰ったのが最初で最後ですけど何か?(半ギレ)
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