ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

13 / 42
第13話 ホグワーツ初日・初授業

 玄関ホールを抜け城の裏側へと行くと、いくつか温室が立ち並んでいる。

 その温室群の前にセリア達と同じハッフルパフの一年生が集まっていた。

 まだ授業まで少し時間があるので、みんな思い思いに会話をしたり教科書を読んだりしている。

 

「時間までどうしようか?」

 

「そうね……って、二人は教科書読んでるのね」

 

 セリアとメグは温室の前に着いたとたんに、予習だと言って教科書を読み始めていた。

 手持ち無沙汰なリジーとアイビーは、そんな二人にちょっかいを出したりして遊ぶ。

 そうしてしばらくすると、城の方からスプラウトがやってきた。

 

「さて、みんないるわね? 今日は一号温室で授業をするわ。ついて来なさい」

 

 スプラウトに続き一年生達は温室の中にぞろぞろと入っていく。

 温室の中は湿気が多く様々な植物があり、中には何やら音を出したり動いている物もあった。

 

「初めての授業なので、今日は簡単な作業を行います。みんな温室の奥まで進みなさい」

 

 スプラウトの言葉に従い進んで行くと作業台があり、その上には鉢植えが大量に置いてあった。

 鉢植えの植物は踊るように葉っぱや茎をくねらせている。

 

「この植物が何か、わかる人はいるかしら?」

 

 スプラウトの問いに何人かが手を挙げ、セリア達は四人とも手を挙げていた。

 

「それじゃあ、あなた」

 

「はい。その植物は「踊り草」といって、特に魔法薬などに使われることは無く、主に観賞用に栽培されています。確か談話室にも飾られていたと思います」

 

 スプラウトに指名されたアイビーは、よどみなく答えた。

 アイビーの答えを聞きスプラウトは満足気に頷く。

 

「そのとおり、いい説明ね。それに談話室に飾っていることにも気づいてくれて嬉しいわ。ハッフルパフに五点」

 

 初の得点に一年達は歓声を上げアイビーに拍手をおくる。

 アイビーは照れくさそうに笑っていた。

 

「さて、それではこれからみんなには、「踊り草」の植え替え作業と肥料やりをしてもらいます。これからやってみせますので、よく見ておきなさい」

 

 そう言うとスプラウトは「踊り草」を優しく鉢植えからすくい上げ大きい鉢へと移し、ふかふかした土を入れ肥料をふりかけた。

 いともたやすく作業をしているように見えるが、実際に作業をすると簡単にはいかないだろう。

 

「こんな感じね。「踊り草」は葉っぱや茎だけじゃなく根も動いているので、すぐに土で埋めるようにすること。それじゃあ、みんなやってみなさい」

 

 スプラウトが言い、一年生達はそれぞれ鉢植えを取り作業を開始した。

 スプラウトの言うとおり「踊り草」は根もせわしなく動いており、とくに元気な物は軽快なタップダンスのような動きで作業台を駆け抜けて逃げていった。

 四苦八苦してすべての鉢植えを植え替えると、もう授業の終わる時間となった。

 アイビーは最も多く「踊り草」の植え替えを行い、授業終了間際またしても五点獲得した。

 

「それじゃあみんな、次回は座学をするわ。教室の場所は追って知らせるので、教科書の第一章を読み直しておくように」

 

 城へ向かう一年生達は少し疲れつつも、楽しかった初授業を振り返り盛んにおしゃべりをしていた。

 

「いやあ、面白かったね。うねうねしてて」

 

「はい。知識はあっても、実際に作業をするのはまた別物でしたね」

 

「そうだねー。あ、そうだ。アイビー、さっきは大活躍だったね?」

 

 リジーがそう言うと、アイビーは嬉しそうに答えた。

 

「ええ。昔から薬草と魔法薬について本をいっぱい読んでいたの。将来は癒者になるのが夢で」

 

「癒者ですか。すごく難しい職業だと聞いたことがあります」

 

「アイビーは薬草と魔法薬の本だけはよく読んでたよ。他の本には一切手を出さなかったけどね」

 

「本を読んでると眠くなるのよねえ……。ねえ、メグも将来の夢言いなさいよ」

 

「え」

 

 メグはあまり言いたくないようだったが、セリアとリジーが教えて教えて、という目で見つめると、少し顔を赤くして口を開いた。

 

「その、私は闇祓いになりたいんだ。お父さんみたいに立派な闇祓いに」

 

「闇祓い! すごい!」

 

「すごいですメグ!」

 

「もちろん難しいのはわかってるけど。でも、頑張りたい」

 

「メグ頭いいし、きっとなれるよ。それで私は癒者になって怪我を治してあげるわね」

 

 リジーとセリアにきらきらとした尊敬の眼差しで見つめられて、アイビーにはそう言われ、メグはますます顔を赤くして誤魔化すように言った。

 

「セリアとリジーは? 何か夢あるの?」

 

「そうだなー。私はやっぱり魔法生物の関係かな? ママの実家がおっきい動物園を経営しててね、そこで働きたいんだ」

 

「私は、何になりたいかは特には……。ただ、何か新しい魔法を作りたいという思いは、昔からあります」

 

 メグの問いにリジーははきはきと、セリアは言葉を選ぶようにして答えた。

 

「私達みんな、将来のこと考えてるのね」

 

「なんか私達かっこいいね」

 

 リジーがそう言って四人は笑い合う。

 話しているうちに四人は玄関ホールまで戻ってきた。

 

「ねえ、昼食の前にさっとシャワー浴びに行かない? 土も触ったし」

 

 アイビーの提案で四人はシャワー室へと向かった。

 各寮にはそれぞれシャワー室があり、広い部屋の中に仕切られたシャワーがいくつも並んでいる。

 偶然居合わせた上級生の話では、監督生やクィディッチチームのキャプテンになると、広々としたプールのような特別な浴室が利用できるようになるらしい。

 体についた土をシャワーで洗い流した四人は、大広間へ向かい昼食をとる。

 しかし気がつくと思っていたよりも時間が過ぎており、慌てて大広間を飛び出した。

 しかし城の中の百以上ある自在に動く階段に阻まれ、このままでは遅刻してしまうだろう。

 

「やっばい、のんびりしすぎた!」

 

「ねえメグ、あと時間どれくらい!?」

 

「あと、五分くらい、かな!」

 

「変身術の教室、どこ!?」

 

「ごめんね、私がシャワー浴びようなんて言わなかったら……!」

 

「みなさん、こっちです!」

 

 周りを見渡していたセリアはそう言うと、突然走り出した。

 三人が慌ててついて行くと、セリアは迷いなく階段を駆け廊下を曲がり、ひとつの教室の前で止まった。

 中には同じハッフルパフの一年生達が座っている。

 

「はあ、はあ、つ、着きました……」

 

「ほんとだ……セリア、なんで道わかったの?」

 

「家に、ホグワーツの見取り図があって、それを覚えていたんです。ちゃんと着いてよかった……」

 

「あ、ありがとう、セリア」

 

「とりあえず、教室入ろう……」

 

 息を荒げながら入ってきた四人に他の生徒は驚き、口々に大丈夫かと尋ねてきた。

 四人はそれに答えながら空いた場所に座り、授業の準備をする。

 すぐにベルが鳴り、それと同時に変身術の教授であるマクゴナガルが教室に入ってきた。

 マクゴナガルは教卓に立つと教室をぐるりと見渡した。

 

「みなさん、そろっていますね。結構。それでは変身術の授業を行いますが、その前に忠告しておきます。変身術はホグワーツで最も複雑な科目です。なので、いい加減な態度で授業を受けるのであればこの教室から追い出しますし、二度と教室に戻ることは許しません。心しておきなさい」

 

 言い終えたマクゴナガルは杖を振り、目の前の教卓を大きな鳥に変え、またすぐに元の教卓へと戻した。

 それを見た生徒達は驚きの声を上げる。

 それからマクゴナガルがまた杖を振ると、チョークが浮かび黒板に文字を書き始めた。

 

「ではまず、黒板に書いてある変身術の理論を羊皮紙に書き写しなさい」

 

 それから教室の中はしばらく板書を書き写す羽根ペンの音のみが響いた。

 しばらくしてようやく全ての生徒が板書を写し終えると、マクゴナガルは一人一人にマッチを配り針へと変身させるように言った。

 

「先ほど書いた理論をよく読み、やってみなさい」

 

 教室の中は先ほどとは違い、生徒達が口々に呪文を唱える声で騒がしくなった。

 マクゴナガルは教室の中を見て回り、それぞれ助言などをしていた。

 なかなか成功する生徒は出なかったが、何度目かの挑戦でリジーが成功し、それに続くようにセリアも成功させた。

 そして授業が終わる直前にメグも変身させることができた。

 

「今日はここまで。初めての授業で三人も成功させたのは、とても久しぶりです。大変すばらしい。一人五点、ハッフルパフに差し上げます」

 

 終始厳しい顔をしていたマクゴナガルが最後に優しく微笑んで言い、初日の授業は終了した。

 今日一日で二十五点も獲得した喜びでみんなが意気揚々と夕食に向かう中、リジーは席から動かず座ったままだった。

 

「リジー? どうしたんですか?」

 

「うん。ちょっとマクゴナガル先生にお願いしたいことがあってね。先にご飯行っといて」

 

 セリアが尋ねると、リジーはいつもよりも真剣な目をして答えた。

 セリア達三人は顔を見合わせる。

 

「わかった。それじゃあ待ってるわね」

 

「リジー、早く来てくださいね」

 

「うん。それじゃまた後で」

 

 リジーを残し三人は大広間へと向かう。

 三人がデザートを食べ始める頃になって、ようやくリジーは大広間にやってきた。

 リジーはセリアの隣に座る。

 

「やー、お待たせ。お腹すいたー」

 

「お帰りなさい、リジー。遅かったですね」

 

「夕食取っておいたわよ」

 

「おおー。ありがとー」

 

 リジーはお礼を言うと、ものすごい勢いで食事をかきこんでいった。

 セリア達三人がデザートを食べ終える頃には皿の上は綺麗になって、リジーは満足気にお腹をぽんぽんと叩いていた。

 

「リジー、マクゴナガル先生と何をお話ししていたのですか?」

 

「うん? えーっと……」

 

 セリアが尋ねる。

 アイビーとメグにも聞きたそうな目を向けられ、リジーはデザートのアイスを取りながら少し考えると口を開いた。

 

「三人とも、内緒にしててね?」

 

「はい、もちろん」

 

「誰にも言わないわ」

 

「約束するよ」

 

 リジーは三人の答えに頷くと、小さい声で話し出した。

 

「ねえセリア、私が特急で目標があるって言ってたの覚えてる?」

 

「はい、覚えています」

 

「それでね、マグゴナガル先生にお願いしたいことっていうのがそれなんだ」

 

「それで、目標ってなんなの?」

 

「えっとね……私、昔から動物もどき(アニメーガス)になりたかったんだ」

 

 リジーがそう言うと、三人は驚きの声を上げた。

 

「動物もどき、ですか……変身術の中でも群を抜いて習得困難だと言われていますよね」

 

「リジー、本気なの?」

 

「うん、小さい頃からの夢だったからね」

 

「確か、マクゴナガル先生も動物もどきだって聞いたことがあるわ」

 

「そうなんだよ。だから、さっきマクゴナガル先生に頼んだんだ。動物もどきのなり方を教えてほしいって」

 

「それで、マクゴナガル先生はなんとおっしゃったのですか?」

 

「最初は先生も驚いてたんだけどね。それから動物もどきの難しさとか色々教えてくれて、その覚悟はあるのかって言われた。あるって答えたら、校長先生とスプラウト先生に相談してみるって。あと、マクゴナガル先生も在学中に校長先生に指導してもらって、動物もどきになったんだって。だから許可が出たら、全力で力を貸すって約束してくれたよ」

 

 リジーは語り終ると紅茶を飲みふう、と一息をついた。

 

「許可、もらえるといいですね」

 

「うん。頑張るよー」

 

 食事を終えた四人は大広間を後にし寮へと向かった。

 談話室には多くの生徒がおり、新学期最初の授業についてやクィディッチの話などで盛り上がっている。

 また、上級生と思われる生徒達は初日にも関わらず、大量の宿題と格闘していた。

 宿題の無い四人は寝室へと向かった。

 

「明日の授業はなんだったっけ?」

 

「確か、呪文学と魔法薬学ですよ。呪文学は基本ですが重要だとレイモンドが言っていました」

 

「魔法薬学はかなり難しいらしいよ」

 

「それに先生がスリザリンの寮監らしくて、隙があればすぐに他の寮を減点するって聞いたわ」

 

「うわー、私減点されないか不安だなー」

 

「怖い先生なのでしょうか……」

 

「まあ、実際授業を受けてみないとわからないわ。私は特に魔法薬学が楽しみだったんだけどね」

 

「癒者には必須だもんね」

 

「ええ。リジーを見習って頑張らないとね。そうだ、みんなで教科書を読んで予習しておかない?」

 

「いいですね、賛成です!」

 

「うん、私もいいよ」

 

「私も減点されたくないし、賛成ー」

 

 四人はそれぞれ教科書を取り出し、ああでもないこうでも無いと言い合いながら読み進めていった。

 そうして夜が更けていき、セリアがリジーの肩に寄りかかって寝入ってしまったので、全員就寝した。

 こうしてセリア達のホグワーツの初日が終了した。

 

──────────

 

 全員が教室から出て行ったことを確認すると、私は机で作業しているマクゴナガル先生の元に向かい声をかけた。

 

「あの、先生」

 

「おや、どうかしましたか? ミス・スキャマンダー? もうみんな夕食に向かいましたよ」

 

「そのー、先生にお願いしたいことがあるんですけど……」

 

「なんですか? 言ってみなさい」

 

 マクゴナガル先生は作業の手を止め私に顔を向けた。

 うわあ、緊張するなー……でもここまできて引けないよね。

 

「あのですね、本で見たんですけど、先生は動物もどきなんですよね?」

 

「ええ、そうですよ。それで?」

 

 マクゴナガル先生は怪訝そうに私を見つめる。

 いや先生、目怖いなあ。

 なんとなく先生の目が見れずに、私は先生から目を逸らしながら両手の人差し指をつんつんする。

 

「それでですね。実はそのー、私も、動物もどきになりたくて、ぜひ先生に教えていただけないかなー、なんて……」

 

 言っちゃったー! 先生、どんな顔してるんだろう……? 

 恐々と先生の顔を見てみると、先生はかなり呆気にとられた顔をしていて、手に持っていた羽根ペンを机に落としていた。

 先生、そんな顔できたんだ……。

 それから先生はすぐに気をとりなおした。

 

「本気なのですか?」

 

「は、はい」

 

「動物もどきは、複雑な変身術の中でも極めて難易度の高い術です。もし術に失敗すると、変身を解くことができず人間の姿に戻れなくなったり、特にひどいと精神までもが動物に変わってしまうこともあります。それほどに危険であるからこそ、魔法省が厳しく取り締まっているのです。それは分かっていますか?」

 

「はい」

 

「習得には長い時間がかかりますし、それだけ時間をかけても習得できないことも当然、あり得ます。長い時間をかけ厳しい訓練に挑む覚悟が、ありますか?」

 

「はい!」

 

 私はずっと夢見てきたんだ。

 そんな覚悟、もうとっくの昔からしているに決まってる! 

 先生は真剣な目で私を見つめる。

 さっきよりもずっと怖い目だけど、私は目を逸らさずに見つめ返す。

 それからしばらくの間見つめ合い、ふと先生は目を閉じふう、と息をついた。

 

「覚悟はあるようですね。わかりました。それでは、校長先生とあなたの寮の寮監であるスプラウト先生に相談してみましょう」

 

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

 その言葉を聞いた私はつい小躍りして喜んでしまった。

 突然踊りだした私にマクゴナガル先生はちょっと引いてたけど、再び口を開いた。

 

「実は私もホグワーツに在学していたときに、当時変身術の教授だった校長の手ほどきを受け、動物もどきを習得したのですよ」

 

「そうだったんですか?」

 

「ええ、ですので……」

 

 マクゴナガル先生は一度言葉を切ると、さっき授業が終わるときに浮かべた表情よりも優しい表情で言葉を続けた。

 

「許可が出たら、あなたが動物もどきになれるよう全力で力を貸しましょう」

 

「は、はい! よろしくお願いします!」

 

 先生の言葉に嬉しくてちょっと泣きそうになった私は、赤くなった目を隠すようにお辞儀をした。

 マクゴナガル先生は頷くと、夕食に向かうように言った。

 その言葉に従い、私は変身術の教室を出て大広間へと向かう。

 マクゴナガル先生、いい人だな。

 動物もどき、絶対になってやるぞー! 

 私は決意も新たに気合を入れなおしたけど、入れすぎちゃったのかお腹がなる。

 うん、何はともあれとりあえずご飯だよね。

 セリア達も待ってるし急ごう。

 私は大広間へと走って行った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。