ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

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先日、USJで買ったホグワーツの校章入りの定期券を無くしてしまいました。
とてもショックです。



第15話 ホグワーツの生活・二

 次に魔法史。

 この授業では魔法界の歴史について学ぶ。

 マグルの世界も魔法使いの世界も同じく長い歴史によって、今の世界が成り立っている。

 その長い歴史を紐解いて知るのは大事なことなのだ。

 この教科を教えるのは、カスバート・ビンズ教授だ。

 ビンズはホグワーツで唯一のゴーストの教員で、もうとてつもなく長い間教えている。

 なんでも、生前すでにかなり高齢だったビンズは職員室の暖炉の前で居眠りをしており、翌朝起きて教室へ向かう際に生身を忘れて行ってしまったらしい。

 そんなビンズは毎回授業の際、黒板を通り抜けて教室に入ってくる。

 この教科において面白いのはそれだけであり、授業中はビンズがただひたすら講義を単調に語り続ける。

 そのビンズの講義はどうやら催眠作用があるようで、生徒達は講義が始まると五分ともたずに意識が朦朧としてくるのだ。

 セリア達ハッフルパフの一年生の中でそれに対抗できたのはセリアとメグだけだった。

 アイビーは教科書と羊皮紙を広げ最初は頑張っていたが結局睡魔に負け、リジーは最初から両腕を枕にしてすやすやと穏やかな寝顔を見せていた。

 魔法界の長い歴史を知ることは大事なのだが、これではろくに学ぶことができない。

 

「いやー、よく寝た」

 

「私も寝ちゃったわ……」

 

「二人ともよく寝てたね」

 

「あはは……。あれは仕方がないですよ」

 

 授業が終わり、四人は廊下を歩いていた。

 リジーはしきりに大あくびを浮かべており、アイビーは少し落ち込んでいた。

 セリアは苦笑いを浮かべながら二人を慰める。

 

「セリアもメグも、よく寝ないで聞いていられたねー。私一分ももたなかったよ」

 

「私もすごく眠たくはなりましたけれど、なんとか頑張りました。歴史は好きですしね」

 

「私はあんまり眠くならなかったな」

 

「なによ、そんなに眠そうな目をしてるくせに」

 

「目は関係無いでしょ」

 

 次は天文学。

 この授業では様々な惑星や衛星の名前やその動き方、特徴などを学ぶ。

 星の動きが昔から占いで用いられていたり、なにかと魔法使いと夜空は関係が深いのだ。

 この教科を教えるのはオーロラ・シニストラ教授だ。

 セリア達一年生は週に一回、深夜にホグワーツの中で最も高い天文塔の一番上まで上がり、望遠鏡を覗き込んで夜空を見上げる。

 満天に広がる夜空は美しくそれだけで楽しいのだが、それに加え授業の合間にシニストラが様々な星や星座にまつわる逸話を語ってくれるので、生徒達、特に女子生徒には密かに人気の教科なのだ。

 ただセリアは夜更かしが苦手らしく、最初の天文学の授業では授業が終わる少し前に眠ってしまい、リジーに背負われて寮に戻った。

 それ以降セリアは天文学の授業の前に昼寝を欠かさないようになった。

 

「セリア、セリア起きて」

 

「ううん……」

 

「これはだめね」

 

「うん、完全に寝入っちゃってる」

 

 三人はセリアを起こそうとするが、セリアの眠りは深いようで起きる気配がない。

 三人が困ったように顔を見合わせていると、そこにシニストラがやってきた。

 

「そこの三人どうしたの?」

 

「あ、先生。その、セリアが寝ちゃって……」

 

「あら……」

 

 シニストラは眠るセリアに気づき、三人は怒られるのではと恐々とシニストラを見上げる。

 シニストラはセリアから目を離した。

 

「気にしなくていいわ。一年生にはたまに寝ちゃう子もいるし、初めての授業ということもあるので、今回は見逃します。次からは気をつけなさいね」

 

「す、すみません」

 

「ありがとうございます……」

 

 三人がお礼を言うと、シニストラは片手をひらひらと振りながら他の生徒の方へ歩いて行った。

 

「助かったー……」

 

「ええ。減点されちゃうかと思ったわ」

 

「先生が優しくて良かったね」

 

 三人が胸をなでおろしてる横で、セリアはすやすやと寝息を立てている。

 

「もう、人を困らせておいてずいぶんのんきに寝てるわね、このお嬢様は」

 

「全くだよ。こんなに気持ちよさそうに寝て……」

 

 リジーはセリアの寝顔をじっと見つめると、強く拳を握りしめた。

 

「もう! かわいいなあセリアは!」

 

「リジー……ちょっと引くよ」

 

「そうよ! メグの寝顔だってすごくかわいいんだから!」

 

「いや、アイビーも何言ってるの?」

 

 夜中のせいか少し調子のおかしくなってる二人にメグはめんどくさそうに突っ込む。

 翌朝目を覚ましたセリアは、朝食が終わるまで三人にひたすら謝り続けていた。

 

 次は闇の魔術に対する防衛術。

 この授業では、魔法界において起こり得る様々な危険に対して、身を守るすべを学ぶ。

 ホグワーツの授業の中でも最も重要だと言ってもいいのだが、ある時期からこの教科を担当する教師が毎年変わっており、安定して学ぶことができなくなっている。

 そんな闇の魔術に対する防衛術を今年教えるのは、現職の闇祓いであるデレク・クーパー教授だ。

 クーパーは長身で体格が良く、見た目は魔法使いと言うよりはマグルのスポーツの選手のようだ。

 まずクーパーはぼさぼさな髪の毛をかきながら、面倒くさそうに出欠をとった。

 

「あー、全員いるな。よし、それじゃ教科書開いて第一章読んどけ」

 

 出欠をとり終えたクーパーはそう言って椅子に腰掛けると、驚いたことに居眠りをしだした。

 闇祓いのまさかの暴挙にセリア達ハッフルパフ生に動揺が広がる。

 そのままクーパーが寝息を立てはじめたので、仕方なく生徒達は教科書を開いた。

 

「ねえメグ、あの人本当に闇祓いなの?」

 

「うん、そのはずなんだけど……」

 

「なんかちょっと兄ちゃんに似てるかも」

 

「ロルフさんにですか?」

 

「うん、兄ちゃん家ではあんな感じだよ」

 

 セリア達もひそひそと話しながら教科書を読み進めていくが、二十分も過ぎるとみんな読み終えてしまった。

 生徒達がちらちらと視線を向ける中、クーパーは眠り続ける。

 このままでは埒が明かないと思ったリジーは口を開く。

 

「あの、先生ー。みんな教科書読み終わりました」

 

「あ? まだ時間残ってるだろ」

 

 リジーが言うとクーパーは眠たそうに腕時計を見てそう言った。

 その言葉にハッフルパフ生達は思わず聞き返す。

 

「まさか、ずっと教科書を読んでおくんですか!?」

 

「魔法は使わないんですか!?」

 

 するとクーパーはまた面倒くさそうに頭をかいて言い放った。

 

「あのな、お前ら一年だろ? そんなガキ共にいきなり防衛術を教えるわけないだろうが。まずは教科書を読め、教科書を」

 

 そんなクーパーの言い分にますますハッフルパフ生達は色めき立ち、口々に文句を言い始める。

 その声がうるさかったのか、クーパーは苛ついたように舌打ちをすると杖を振り爆音を響かせた。

 その音に驚いてハッフルパフ生達は口を閉じ静かになった。

 

「まったく、どの寮の一年も同じような文句言いやがって。なんで俺が教師なんかやらないといけないんだよ、くそ」

 

 クーパーはまた頭をかきながら毒づいた。

 静かになった中、メグが手を挙げた。

 

「あの、先生。少し聞いてもいいですか?」

 

「あ? お前……えっと、バークか。ん? バーク?」

 

 クーパーは出席簿で名前を確認すると、何かに気がついたようにメグを見た。

 

「お前、バークさんの娘か?」

 

「はい、メーガン・バークです」

 

「うわ、まじかよ……。で、何だよ?」

 

「はい。先生の教育方針を教えていただけないでしょうか?」

 

 メグがそう言うと、クーパーはまた頭をかこうと伸ばした手を止め、ため息をついて立ち上がりチョークを手にした。

 

「俺の教育方針なんかあるか、面倒くさい。俺は上司からの命令で、無理矢理赴任させられただけなんだからな。だから魔法省の方針に従うだけだ」

 

 そう言うとクーパーは黒板に文字を書き込み始めた。

 

「まず一年から二年は、基本的な知識を学んでいく。お前ら全員「闇の力ー護身術入門」を持ってるだろうが、二年が終わる頃には内容を全部頭の中に叩き込んでもらう。つまり二年まではほぼ座学だ。少しは魔法を使うかもしれないけどな」

 

 クーパーはまず一年、二年と書き、その横に「基礎知識」と殴り書きをする。

 その次に三年と書いた。

 

「そしてそれが終わって三年になると、まずは危険生物への対処を学ぶ。グリンデローとかレッドキャップとか、名前くらいは聞いたことはあるだろ。それで」

 

 クーパーは黒板に対危険生物と殴り書き、次に四年と書いた。

 

「四年になったら、ようやく本格的に防衛術を教えていく」

 

 最後に防衛術と殴り書くと、クーパーはチョークを置いて生徒達を振り返る。

 

「これがだいたいの魔法省の方針だ。とにかく基礎知識を身につけないと、防衛術なんざ使えない。この教科にどんな期待をしていたのか知らんが、戦い方まで学べるのは少なくとも「ふくろう試験」を突破できたやつだけだ。そして突破するにはまず知識だ。文句を言う暇があるんなら、教科書を黙って読んどけ」

 

 そう言うとクーパーは椅子に座り、目を閉じてまた眠り始めた。

 その後は教科書をめくる音のみが響き、授業終了の時間となった。

 

「これで授業は終わる。何か質問があるやつはいるか?」

 

 クーパーが問いかけるが、誰も手をあげる生徒はいなかった。

 

「んじゃ、お疲れさん」

 

 クーパーはそう言うと、自室へと戻っていった。

 一年生達はひそひそと話しながら教室を出て行き、セリア達四人も夕食のために大広間へと向かう。

 

「なんだか思ってたのと違ったねー」

 

「まさか教科書を読むだけなんて思わなかったわね」

 

「けれど、正しい知識を持っておくのは大切ですよ」

 

「まあ、魔法薬を作るのにも正しい知識は必要だし分かってはいるんだけど、なんだか少し拍子抜けだわ」

 

「私もちょっと不満かな。二年が終わるまでに教科書全部覚えろって」

 

「メグなら覚えられるでしょ? 私は無理な自信あるけどねー」

 

「だってもう全部覚えてるから」

 

「さすがね、メグ……」

 

 最後は箒の飛行訓練。

 魔法界で最も多く使われている移動手段である箒の正しい扱い方を学ぶ。

 移動キー(ポートキー)や姿くらまし、煙突飛行など移動手段はいくつかあるが、中でも箒による飛行は一番安全で確実なので、正しい操作を学ぶのは必須と言える。

 ちなみに、飛行訓練があるのは一年生のみだ。

 ハッフルパフはレイブンクローと合同で、教えるのはロランダ・フーチ教授。

 フーチは短く切りそろえられた白髪と、鷹のような黄色く鋭い目を持っている。

 

「さあみんな、早く集まって! まずは箒を上げるわ。箒の横に立って上がれ、と呼びなさい」

 

 フーチが号令し生徒達の上がれ、という声が校庭に響き渡る。

 一度で箒がすぐに上がる生徒もいれば、ただその場で箒が転がるだけ、もしくは全く動かなかった生徒もいた。

 すべての生徒が箒を手にすると、まずフーチは箒の正しい跨り方を指導していった。

 入学前から箒を使用していた生徒も多かったようだが、間違った跨り方や箒の柄の握り方をしていた生徒も同じく多かった。

 正しい姿勢をとれるようになると、少し浮かんだりそのまま移動する訓練に移った。

 何人かの生徒がぶつかったりはしたが大きな問題が起こることはなく、最後に授業が終わるまでは自由に飛んでいいとフーチが告げ、飛行訓練の授業は終了した。

 

「アイビー、相変わらず箒に乗るの下手だね」

 

「うるさいわよ、メグ!」

 

「あれ? アイビーこの間クィディッチ好きだって言ってなかったっけ?」

 

「ええ、そうなんだけど。飛ぶのは昔から苦手で、クィディッチも観戦専門なの」

 

「へー、なんか残念だね?」

 

「昔はクィディッチができなくて悩んだりしたけど、今は見るのが楽しいから何とも思ってないわ。それより……」

 

 アイビーがちらりと目を向けた先では、真剣な表情を浮かべたセリアが箒に跨っていた。

 姿勢もお手本のように良く、ぐらついたりせず安定して飛んでいたが、驚くほどに速度が出ていなかった。

 その姿を見て三人は楽しそうに笑う。

 

「セリア、めちゃくちゃ遅いね」

 

「普通あんな速度は出せないと思う」

 

「本人が大真面目なのがまたなんとも言えないわね」

 

「まあ、すっごいかわいいけどねー。セリアー! こっちおいでー!」

 

 リジーが呼ぶと、気がついたセリアが進路を変え三人の元へ向かってきた。

 しかしあまりに速度が遅いため、三人も歩いてセリアの元に向かう。

 ようやく三人の元へ到着したセリアは軽やかに箒から降りた。

 

「お待たせしました。リジー達はもう飛ばないのですか?」

 

「うん、久しぶりにいっぱい飛んだから疲れちゃったよ。メグとアイビーは?」

 

「私はもういいわ」

 

「うん、もう満足」

 

 四人は箒置き場まで歩いて向かう。

 

「ねえねえセリア、どうしてあんな速度で飛んでたの?」

 

「正しい飛び方をしていると思うのですが、なぜか私が箒に乗るとああなるんです」

 

「そんなの聞いたことないけど……不思議だね」

 

「無意識のうちに箒に乗るのを怖がってるんじゃない? だから勝手に箒の安全装置が発動しているとか……ないかしら?」

 

「そんなことあるのでしょうか?」

 

「箒はセリアの意外な弱点二つ目だねー」

 

「リジーはすいすいと飛んでいましたね。かっこよかったです」

 

「え、本当? 照れるなー」

 

「リジーもメグも、あんなに自由に飛べてすごいわね」

 

「闇祓いなら箒くらい乗りこなせないとだからね」

 

「私は箒を使わず自力で飛んでみたいなー」

 

「道具を使わず空を飛ぶ魔法は、魔法使いが長年追い求めてきた魔法ですよね。リジーが飛びたいのなら、きっと私がその魔法を発明してみせますよ」

 

「おー! お願いします!」

 

「そんなことできたらすごいわね」

 

「セリア、頑張ってね」

 

「はい! 頑張ります!」

 

 セリアはふんす、と鼻息を荒くして気合を入れた。

 その様子をリジー達三人は、微笑ましそうに眺めるのだった。

 

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