ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

17 / 42
今回はすべてリジー視点のお話です。
ハグリッドの口調難しい……。


第17話 ハロウィン・一

 朝、私は気分が高揚しながら朝の日課をこなしていた。

 しばらく走った後にハグリッドの小屋に向かう。

 初めて走ったときに会って以来、毎朝ハグリッドとお喋りするのがお約束になっていた。

 ちょっとお仕事のお手伝いとかもしてるんだけどね。

 ハグリッドの小屋に着くと、そこにはとても素敵な光景があった。

 小屋の横にあるかぼちゃ畑、そこから少し離れた場所におっきなかぼちゃがごろごろと転がってる。

 そう、今日は私にとって一年で一番の大イベント、ハロウィンの日。

 ついでに言うと私の誕生日。

 ハグリッドは毎年ハロウィン料理に使うかぼちゃを育ててるそうだ。

 畑の横に転がっているかぼちゃは、前に私もお手伝いして収穫をしたもの。

 かぼちゃは収穫した後、二週間から三週間くらい日が当たらなくて風通しのいい場所に保管するんだ。

 そうするといつも食べてる、甘くておいしいかぼちゃになるんだよ。

 それにしても、こんなにおっきいかぼちゃだし、きっと何か魔法を使って育ててるんだろうね。

 ハグリッドが杖を持ってるの見たことないけど、誰が魔法かけてるのかな? 

 なんかピンク色の傘を持ってるのは見たことあるけど。

 私がそんなことを考えながらうっとりとかぼちゃを眺めていると、小屋の扉が開き中からハグリッドがのしのしと出てきた。

 

「おお、おはよう、リジー。お前さん、いつにも増して早起きだな」

 

「おはよー、ハグリッド! そりゃあこんな素敵な光景が広がってるんだもん。思わず夜明け前に起きちゃうよ」

 

 朗らかなハグリッドの挨拶に、私はおっきなかぼちゃに抱きつきながら答える。

 ああ、両手で抱えるほどのかぼちゃ……素敵だなあ……。

 私がすりすりとかぼちゃに頬ずりしてると、ハグリッドは少し引いたような表情を浮かべていた。

 

「そ、そうか……今からかぼちゃを城に運ぶんだが、お前さんも来るかい?」

 

「いいの!? やったー! あ、もちろんお手伝いはするよ」

 

「よし、なら少し待っといてくれ」

 

「了解ー」

 

 ハグリッドは水の入った樽に顔を突っ込むいつもの洗顔をすると、タオルで顔をごしごしと拭きながらちょっと離れた牧場へと歩いていった。

 私は小屋から駆け出してきたファング(ハグリッドの愛犬。めっちゃかわいい)と戯れながら待つ。

 少しすると、とてつもなくおっきな荷車を引いたハグリッドが戻ってきた。

 

「すごいね、こんなおっきな荷車見たことないよ」

 

「大きなかぼちゃだからな。これくらいのじゃないと運べねえんだ。リジー、荷車にかぼちゃを乗せるの手伝ってくれや」

 

「任せて!」

 

 私とハグリッドは二人で大量のかぼちゃを荷車に積んでいく。

 私は持ち上げるのは無理だから、浮遊呪文を使って乗せる。

 呪文のいい訓練になるね。

 ファングもしっぽを振って周りを駆け回りながら応援してくれた。

 

「とりあえず、これくらいでええぞ」

 

 転がっているかぼちゃを半分ほど荷車に積むと、ハグリッドが言った。

 

「二回に分けて運ぶんだね」

 

「量が量だからな。俺が荷車を引くから、お前さんは後ろから押してくれ」

 

「頑張るよ!」

 

 ハグリッドは荷車の持ち手を掴むと、唸り声をあげながら全身に力を込めた。

 ふっとい腕に血管が浮き出るほどで、まるで元からおっきいハグリッドがさらにおっきくなったみたいだ。

 すごい迫力だなー。

 ハグリッドが荷車を引き始めたから、私も後ろに回って押す。

 けど、なんだか全然力になってる気がしないなー……荷車、呪文で浮かせられるかな? 

 私は杖を抜くと荷車に向けて振った。

 

「ウィンガーディアム・レビオーサ、浮遊せよ」

 

 ……だめだ、やっぱり浮かばないや。

 私がちょっとがっかりしてると、前からハグリッドの驚いた声が聞こえてきた。

 

「おお!? 急に軽くなったぞ!? リジー、何個かかぼちゃが落ちてねえか? 潰されてねえだろうな!?」

 

「だ、大丈夫だよ、ハグリッド! ちょっと浮遊呪文をかけてみたんだけど、軽くなったの?」

 

「おう、軽くなったぞ。そのまま呪文かけといてくれ」

 

「了解!」

 

 杖を荷車に向けたまましばらく進み、城の玄関までたどり着いた。

 

「ねえねえ、ハグリッド。これからかぼちゃをどこに運ぶの? 大広間?」

 

「うんにゃ、俺の仕事はここまでだ。ここからはあの連中が厨房まで運んで、ハロウィンの料理を作るんだ」

 

「あの連中?」

 

 私がそう聞き返すと、大きな扉が開いて数人の小さな影が転がり出てきた。

 

「お疲れ様でございます、ハグリッド! あとは私め達にお任せを!」

 

 小さな影はキーキーと甲高い声を上げた。

 それにハグリッドは頷いて答える。

 

「ああ、頼む。ほらリジー、こいつらがホグワーツ城を支える屋敷しもべ妖精達だ」

 

「うわあ……初めて見たよ!」

 

 私がびっくりしてると、私に気づいた屋敷しもべ妖精さん達は恭しくお辞儀をしてくれた。

 

「おはようございます、お嬢様!」

 

「ハグリッドのお仕事をお手伝いしてくださり、ありがとうございます!」

 

「ううん、私も楽しいからいいんだよ。そうだ! 屋敷しもべ妖精さん達、いつもお布団を整えたりお城を綺麗に掃除してくれて、本当にありがとう! いつかお礼言いたかったんだー」

 

 私がお礼を言うと、屋敷しもべ妖精さん達は嬉しそうににやけたり、感極まったように目を潤ませた。

 

「滅相もございません!」

 

「そのようなお言葉をかけていただけるなんて……感激でございます!」

 

「あ、頭を上げてよ!」

 

 屋敷しもべ妖精さん達はますます深くお辞儀しようとして、ほとんど跪く勢いだった。

 

「あー、お前さん達。早くかぼちゃを運んだ方がいいんじゃねえか? 厨房の連中が待っとるだろうが」

 

 ハグリッドの言葉でようやく屋敷しもべ妖精さん達は頭を上げた。

 助かったー……。

 あれ? そういえばハグリッド、厨房って言ったよね? 

 

「厨房ってどこにあるの?」

 

「厨房は、大広間のすぐ下にございます、お嬢様!」

 

「入り口は果物が盛られた絵画に隠されています!」

 

「お嬢様の所属されています、ハッフルパフ寮へ続く廊下に飾られている絵でございます!」

 

「絵の中の梨をくすぐると、厨房に入ることができるのです!」

 

 私がふと尋ねると、屋敷しもべ妖精さん達は間髪入れずにキーキーと答えてくれた。

 あー、あのおいしそうな絵か。

 あんな所に厨房があったんだ。

 ていうか、ハッフルパフ寮のほとんど隣にあるんだね。

 

「そうなんだ。生徒が入っても大丈夫なのかな?」

 

「是非お越しください!」

 

「しもべ総出でおもてなしいたします!」

 

 そう言ってもう一度お辞儀をすると、屋敷しもべ妖精さん達は荷車を取り囲んだ。

 そして同時に指を鳴らすと、荷車の上のかぼちゃがふわふわと浮かび上がった。

 かぼちゃを浮かべながら最後にお辞儀をすると、屋敷しもべ妖精さん達は城へと戻っていった。

 

「すごいね、屋敷しもべ妖精さん達。全部浮かべるなんて」

 

「魔法族はあの連中を見下してる奴が多いんだがな。本当は連中の使う魔法はすげえんだ。正直俺は、人間よりも連中の方が魔法を使うのが上手いと思っちょる」

 

 その後もう一度ハグリッドの小屋に戻ってかぼちゃを積み、お城に運んだ。

 

「おいしいかぼちゃ料理、よろしくお願いします!」

 

「私め達にお任せください、お嬢様!」

 

 城から出てきた屋敷しもべ妖精さん達に向かって言うと、屋敷しもべ妖精さん達は細い腕に力こぶを作りながら答えてくれた。

 これでかぼちゃ運びは完了した。

 いやー、大変だったけど、その分ハロウィン料理がすっごく楽しみだよ。

 

「お疲れさん、リジー」

 

「お疲れ、ハグリッド! 私、ちゃんと力になれてた?」

 

「ああ、すごく助かったぞ。早くかぼちゃを積めたし、軽くて運びやすくもなったしな。ありがとうよ」

 

「えへへ、どういたしまして」

 

 私が尋ねると、ハグリッドは朗らかに笑いながらお礼を言ってくれた。

 良かったー、邪魔にならなくって。

 

「いつもより遅くなっちまったな。もう戻れ、リジー。みんな起きてくるぞ」

 

「うん、分かった。お仕事頑張ってね、ハグリッド」

 

「おう」

 

 玄関前でハグリッドと別れ寮へ向かう。

 その途中、果物の絵の前の廊下はとても素敵な匂いが漂っていた。

 やばい、涎が止まらないや……ここは危険だ! 早く寮に戻ろう。

 私は足早に廊下を抜け、樽の山も抜け寮へと到着した。

 談話室にはいつもより多くの人が起きてきていた。

 その人達に挨拶しながら寝室へと戻ると、アイビーがすでに起きて着替えを済ませていた。

 

「あ、おはようリジー。今日はいつもより遅かったのね」

 

「おはよーアイビー。今日はハロウィンだからね! かぼちゃを運ぶの手伝ってたんだー」

 

 私はアイビーの丁寧に髪を梳かしながらの挨拶に答える。

 

「ああ、今日はハロウィンだったわね。けれど、朝からそんなに動いて大丈夫なの?」

 

「うん、大丈夫。厨房からのかぼちゃの匂いで元気いっぱいだよ」

 

「そう言えば、すごくいい匂いがするわね。お腹が空いてきちゃうわ」

 

「かぼちゃ料理楽しみだなー……あれ?」

 

 そこで私は自分のベッドの足元にいくつか包みがあるのに気づいた。

 そうだそうだ、誕生日だったね今日。

 私はちょっと幸せな気分でプレゼントを眺める。

 

「お誕生日おめでとう、リジー」

 

 アイビーがそう言ってプレゼントを渡してくれた。

 

「ありがとう、アイビー! 開けていい?」

 

「ええ、どうぞ」

 

 私は包みを開けていく。

 そこには、かぼちゃの形をしたかわいい鉢と何かの種があった。

 

「スプラウト先生に紹介してもらった品種なの。室内みたいな狭い場所でもかぼちゃを育てて収穫できるのよ」

 

「お部屋の中でかぼちゃを育てられるの!? すっごい!」

 

 そんな夢のようなかぼちゃがあるなんて、まるで魔法だよ! 

 

「普通のかぼちゃより少し小さいけど、短い期間で収穫できるし、一度種を植えれば何度か実がなるそうよ」

 

「うわあ……アイビー! ありがとう!」

 

「ふふ、どういたしまして」

 

 私幸せ者だなー。

 みんなの誕生日にも素敵なプレゼントを送らないとね。

 

「リジー、そろそろみんなを起こしましょう。私はメグを起こすわ」

 

「あ、うん。分かった」

 

 とりあえず鉢は置いて、私はセリアを起こしに行く。

 セリアのベッドを覗き込むと、すっごくかわいい寝顔があった。

 かわいいなあ……ずっと見つめていられるけど、起こしますか。

 私はセリアを優しくゆする。

 ちなみにアイビーはメグの布団に手を入れ、メグを思い切りくすぐって起こしていた。

 なんて凶悪な起こし方なんだ。

 

「セリアー、そろそろ起きて。朝だよー」

 

「ん……」

 

 すると、セリアは小さく声を上げて薄っすらと目を開けた。

 セリアの寝ぼけ眼と私の目が合う。

 

「おはよーセリア」

 

「おはようございます、リジー……」

 

 私が挨拶すると、セリアはふにゃりと微笑んで挨拶を返してきた。

 うわー、かわいすぎて意識が飛んじゃいそうだったよ。

 抱きつきたいのをぐっとこらえていると、セリアはゆっくりと身を起こしてふらふらとベッドから出た。

 そして小さい鼻をくんくんと動かすと、周りを見渡した。

 

「なんだかいい匂いがします……」

 

「かぼちゃの匂いだよ。今日はハロウィンだからね」

 

「かぼちゃ……いいですね……シチューもあるでしょうか……」

 

「きっとあるよ。それより早く着替えなよ。着替えたら髪の毛やってあげるね」

 

「はい……」

 

 セリアはもそもそ着替え始めた。

 私もその間に着替えてセリアと自分のベッドを軽く整える。

 うーん、プレゼントは気になるけど、今はちょっと時間ないかなあ。

 

「着替え終わりました、リジー……」

 

「お、早かったね。はい、顔も拭いてね」

 

「はい……」

 

 セリアに濡れタオルを渡すと、着替えを終えたメグが私の所にやって来た。

 なんだか息切らしてるし、後ろで倒れたアイビーが頭にこぶ作ってるし、ちょっと見てない間に何があったのかな? 

 

「おはよう、リジー……」

 

「おはよーメグ。大丈夫?」

 

「うん。アイビーの起こし方、いい加減にやめてほしいよ。それよりリジー、お誕生日おめでとう」

 

 そう言うとメグはプレゼントを渡してくれた。

 ずっしりとしてるけど、この感触から見て本かな? 

 

「ありがとーメグ! 何の本かなあ?」

 

 包みを開けると、立派な本が出てきた。

 題名は「偉大な変身の心髄」、なんかかっこいい……。

 

「私の家で一番難しい変身術の本だよ。私は全然理解できなかったんだけど、リジーにはぴったりだと思って」

 

「すごい……ありがとう、メグ。大切にするね」

 

「どういたしまして」

 

 私がお礼を言うと、メグはにこりと笑った。

 

「メグがにこってした……かわいい」

 

「うるさい、アイビー。離してよ」

 

 復活したアイビーがメグを後ろから抱きしめた。

 それを仲いいなー、って眺めていたら、セリアがちょんと私の袖を引っ張った。

 

「どうしたの? セリア?」

 

「リジー、その素敵な本はなんですか……?」

 

「えへへ、いいでしょ。メグが誕生日プレゼントでくれたんだー」

 

「そうですか、お誕生日の……お誕生日!?」

 

 セリアは突然おっきな声を出した。

 私達三人が驚く中、すっかり目が覚めたセリアはトランクに頭を突っ込んでごそごそと探りだした。

 

「早起きしてお誕生日プレゼントを一番に渡そうと思っていたのに……! ごめんなさい! リジー!」

 

「わ、私は大丈夫だから、落ち着いて? セリア?」

 

 私がそう声をかけると、セリアはトランクから顔を出した。

 手には包みがある。

 

「リジー、お誕生日おめでとうございます。お友達のお誕生日をお祝いするのは初めなので、喜んでもらえたら嬉しいのですが……」

 

 セリアは緊張して震えながらおずおずと私に包みを差し出した。

 私はそれを受け取ると、セリアを安心させるために笑顔でお礼を言う。

 

「ありがとう、セリア!」

 

 セリアはほっとしたようにかわいく微笑んだ。

 セリアのプレゼント、何かな? 

 触った感じだと、メグと同じで本っぽいけど。

 包みを開いていくと、羊皮紙を束ねて装丁した物が見えた。

 表紙には「動物もどき(アニメーガス)について」とセリアの手書きで題がつけられている。

 

「先日、動物もどきを学ぶ許可が出たと言っていましたよね。なので、レイモンドに頼んで屋敷にある動物もどきに関する物を送ってもらい、それをまとめました」

 

「こんなにたくさん……大変だったでしょ?」

 

 だってこれ、教科書と同じくらい分厚いんだもん。

 それにちょっと中身を見たけど、すっごい丁寧にまとめられてて、お店で売っててもおかしくないくらいだよ。

 

「教材の準備ができたら、授業を受けられるということでしたよね。レイモンドにも十分教材として使えるとお墨付きをもらいましたので、一度マクゴナガル先生に見せてみてください」

 

 確かにスプラウト先生とマクゴナガル先生から許可が出たけど、まさか教科書を作ってくれるなんて……。

 私が驚いていると、メグとアイビーが覗き込んできた。

 

「すごい……売られている本みたいだね」

 

「本当ね。それに、すごく分かりやすいわ。セリア、あなた本も書けるのね?」

 

「いえ、それを研究してきたのはご先祖様達です。私はただまとめただけですよ。リジー、喜んで頂けましたか……?」

 

 セリアが再びおずおずと聞いてきた。

 それに私は精一杯に笑ってセリアを思い切り抱きしめて答える。

 

「ありがとう! すっごい嬉しいよ、セリア! 私頑張って動物もどきになるからね!」

 

「わあ……! リジーに喜んでもらえて、私も嬉しいです!」

 

 セリアも私に抱きつき返してきた。

 セリアから抱きついてきたの、初めてだなあ。

 

「本当、二人は仲良いよね」

 

「本当よねえ」

 

「二人もありがとう!」

 

「うわ!」

 

「きゃあ!」

 

 私はメグとアイビーも引き寄せ、無理矢理抱きしめる。

 四人でぎゅっと抱き合ってたらちょっと苦しかったけど、そんなのは気にならないほど私は幸せだった。

 ハロウィン料理もあるし、間違いなく今日は今までで最高の誕生日だよ。

 抱きしめる力をさらに強くすると誰かが苦しそうな声をあげたけど、私は気にせずただただ笑っていた。

 




ちなみにセリアの誕生日は2月2日、アイビーは4月26日、メグは5月12日です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。