ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

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ハロウィン後半です。


第18話 ハロウィン・二

「もう、苦しかったじゃないリジー」

 

「あはは、ごめんごめん」

 

 リジーの拘束から解放されたアイビーは、リジーを睨んだ。

 それに対しリジーはからからと笑い、悪びれる様子はない。

 そんなリジーの袖をセリアはちょんと引っ張った。

 

「うん? どうしたのセリア?」

 

「あの、リジー、髪を梳かしてもらってもいいですか……?」

 

「あ、そうだったね。おいでー」

 

「はい!」

 

 リジーがセリアの髪を梳かし始める。

 リジーの指が優しくセリアの髪に触れると、セリアは気持ち良さそうに微笑んだ。

 

「セリアの髪、綺麗だよねー。触ってていつもすっごく楽しいよ」

 

「ありがとうございます。リジーも、髪を梳かすのがすごくお上手です」

 

「本当? 嬉しいなー」

 

 二人の様子を見たアイビーは、メグの方をちらりと見る。

 

「ねえねえメグ、久しぶりに髪梳かしてあげようか?」

 

「アイビーがやりたいだけでしょ?」

 

「そうだけど、お願い!」

 

「はあ、わかったよ。いいよ」

 

「やった!」

 

 アイビーは嬉々としてメグの髪を梳かしていく。

 アイビーが髪に触れると、メグはくすぐったそうに少し首をすくめた。

 

「相変わらずふわふわねえ。気持ちいいなあ」

 

「私は触られるの、あんまり好きじゃないんだけど?」

 

「知ってる。それでも触らせてくれるメグが好きよ」

 

「もう、調子いいなあ……」

 

 メグは呆れたように言うが、口元が緩んでいた。

 しばらくして四人は朝食のため大広間へ向かう。

 かぼちゃのいい匂いは、リジーが寮に戻るときは厨房の近くだけに充満していた。

 だが四人が大広間に向かう頃には、城中に匂いが広がっていたのか、他の寮の生徒達も期待するように鼻を動かして大広間へと入っていった。

 しかし朝食には特にかぼちゃ料理はなく、リジーは酷く落胆した。

 

「なんでかぼちゃ、ないの……?」

 

「おそらく、かぼちゃ料理が出るのはハロウィンパーティーだと思います。昼食にも出るかもしれませんけれど……」

 

「確実に出るのは夕食だけってこと?」

 

「こんなにいい匂いがするのに、お預けなのね。お昼には出たらいいのに」

 

 残念そうにメグとアイビーが言う。

 リジーは残念そうをはるかに超え、絶望したような表情を浮かべていた。

 そのせいで午前中の授業はほとんど耳に入らなかったようで、リジーは何度も注意を受けてしまった。

 そして午前中最後の授業である変身術が終わった。

 

「これで授業を終わります。本日羽ペンを果物ナイフに変えることができなかった生徒は、次の授業の始めにもう一度呪文を行ってもらいますので、練習をしておくこと」

 

 マクゴナガルがそう言うと、変身させられなかった生徒は呻きながら教室を後にした。

 生徒達が教室を出て行く中、セリア達はマクゴナガルの元へ向かう。

 

「すみません、先生」

 

「どうかしましたか、みなさん? あなた達は変身させることができたでしょう?」

 

 リジー、セリア、メグは早々に変身術を成功させ、アイビーは手こずったが授業終了間際になんとか成功していた。

 リジーは腰のポーチからセリア作の教科書を取り出すと、不思議そうに四人を見るマクゴナガルへと差し出した。

 

「あの、これを見てもらえますか?」

 

「これは?」

 

「セリアがお屋敷の動物もどき(アニメーガス)の資料をまとめてくれたんです。それで教科書として使えるか、先生に確認してもらいたくて……」

 

 そうリジーが不安げに言うと、マクゴナガルは少し驚いた顔をした後に教科書を受け取り、内容を確認し始めた。

 セリア達四人は緊張しながらマクゴナガルが確認し終えるのを待つ。

 マクゴナガルは読み進めていく内に、段々と驚きの表情を浮かべていった。

 そしてマクゴナガルは確認を終えると、少しの間目を閉じた後にセリアを見つめた。

 セリアはマクゴナガルの眼光に怯え、半身ほどリジーの陰に隠れた。

 

「ミス・レイブンクロー、これはあなたがまとめたのですね?」

 

「は、はい……内容は、ご先祖様が調べられたものですけれど……」

 

 マクゴナガルが問うとセリアは震え声で答える。

 セリアの答えを聞いて、マクゴナガルは再び教科書に目を落とした。

 

「そうですか……結論を言いますと、これは教科書としての基準を十分に満たしていると、私は思います」

 

 そうマクゴナガルがそう言うと、セリア達四人は喜びの声を上げた。

 マクゴナガルは少し微笑むと続ける。

 

「それどころか、この中には私の知らない新たな発見がかなり多く見られました。これは動物もどきに関する、とても重要な資料となるかもしれません」

 

 そう言ったマクゴナガルは再びセリアを、今度は少し熱っぽい目で見た。

 怯えたセリアはついに全身が隠れた。

 

「すばらしいです。ミス・スキャマンダー、少しの間この資料を預かってもよろしいですか?」

 

「え? は、はい」

 

「ありがとうございます。動物もどきの授業については、なるべく早く連絡をしますので、少し待っていてください」

 

「分かりました!」

 

「よろしい。それではみなさん、昼食に向かいなさい」

 

「失礼します!」

 

 四人はお辞儀をすると退室し、大広間へと向かった。

 ちなみに四人が退室した後、マクゴナガルは上機嫌でセリア作の教科書を読みだし、そのせいで昼食を食べそびれた。

 

「よかったわね、リジー」

 

「おめでとう」

 

「えへへ、ありがとう! セリアのおかげだよ」

 

「お役に立てて、私も嬉しいです」

 

「早く授業したいなー……って、ああ!?」

 

 大広間に入るとリジーは突然大声をあげた。

 セリア達が驚く中、リジーは足早にハッフルパフのテーブルに向かう。

 するとすぐに理由がわかった。

 昼食にいくつかかぼちゃ料理が出ていたのだ。

 リジーはどんどんとかぼちゃ料理を食べていき、それを笑いながら見たセリア達も昼食をとり、午後の授業に臨んだ。

 午後一番の授業は魔法史だったのだが、昼食後に魔法史ということで、この日は大抵五分もたたずにほぼすべての生徒が眠ってしまう。

 存分に昼寝をしたハッフルパフ生達は、魔法薬学の教室である地下牢へ向かう。

 今日は魔法薬学で授業は終了だ。

 

「うわあ……」

 

 地下へ降りると、午前中とは比べものにならないほどの料理のいい匂いが満ちていた。

 リジーは呆けて涎が垂れてしまいそうだ。

 セリア達三人もその匂いを嗅ぎ、思わずお腹が鳴ってしまう。

 

「これは、すごいわね」

 

「うん。ホグワーツのハロウィンパーティーはすごいって聞いていたけど、想像以上だよ」

 

「早く食べたいですね……」

 

 ハッフルパフ生達はその匂いのせいか気もそぞろに授業を受ける。

 魔法薬学はそんな気分で受けられるほど甘い教科ではないため、何人かの生徒が減点されてしまった。

 そしてリジーも当然のように集中できておらず、何度もスネイプに注意を受ける。

 

「ミス・スキャマンダー。見つめていても大鍋は沸かん。火をつけるのだ」

 

「ミス・スキャマンダー。コガネムシの目玉は一つまみで良い。なぜ一瓶入れようとしているのかね?」

 

「ミス・スキャマンダー、なぜ薬の色が青ではなく、真っ赤になるのだ? 我輩には理解ができん」

 

「スキャマンダー、一度良く落ち着いて、調合の手順を確認するように」

 

「ええい、スキャマンダー! いい加減にせんか! ハッフルパフ十点減点!」

 

 リジーが間違った材料を入れると、魔法薬が小さく爆ぜ、近くにいたセリアとアイビーにかかりかけてしまった。

 そこでついにスネイプの怒りが爆発し、ハッフルパフは大きく減点された。

 

「うう……ごめんなさい、スネイプ先生」

 

 リジーが少し涙目で見上げると、スネイプはその目から嫌そうに顔を逸らし他の生徒の元へ向かった。

 そして授業が終わると、スネイプは苛立った様子で教室から去って行った。

 大きく減点されたハッフルパフだが、それよりもハロウィンパーティーが気になるのか、みんな足早に大広間へと向かった。

 

「ごめんね、みんな……」

 

「いえ、その……また、点を取り返しましょう」

 

「そうだよ。減点されたのはリジーだけじゃないし」

 

「でも、魔法薬学は本当に危険なんだからね。今度からは絶対に集中して授業を受けるのよ」

 

「はい……」

 

 暗い気分で大広間に到着した四人だが、入った瞬間にそんな気分など吹き飛んだ。

 一言で言うならば、すばらしい。

 大広間の天井を千匹を超える蝙蝠が覆い、羽ばたいている。

 大広間の中を照らしているのは、いつも大量に浮いている蝋燭に代わって、様々な表情のジャック・オー・ランタンだ。

 そして入学式の宴の際に並んでいた金色の食器が、テーブルの上できらきらと輝いていた。

 セリア達はハロウィンパーティーの飾りをうっとりと見渡しながら、ハッフルパフのテーブルに着いた。

 しばらくすると、教職員テーブルの中央に座るダンブルドアが立ち上がった。

 

「みなの者、今宵はもう言葉はいらんじゃろ。思い切り、かっこむのじゃ!」

 

 そう言ってダンブルドアが両手を打ち鳴らすと、金色の食器に次々と料理が現れた。

 かぼちゃのパイ、かぼちゃのサラダ、かぼちゃのシチュー、かぼちゃのソテー、かぼちゃのグラタン、かぼちゃのコロッケ、そしてなぜかかぼちゃのテンプラなどなど。

 溢れんばかりのかぼちゃ料理が並ぶ。

 生徒達は歓声をあげ、どんどんと料理をかきこんでいった。

 どの料理もとても美味しく、その勢いは衰えるところを知らなかった。

 リジーは手当たり次第の料理を口に運び、彼女の周囲から一時的に料理がなくなるほどだった。

 これはホグワーツの歴史上初めてのことだったらしい。

 

「おいしいね、アイビー」

 

「そうね。だけど、食べすぎちゃいそう……」

 

「かぼちゃのシチュー、とてもおいしいです」

 

「ここは夢の国だね! 手が止まらないよ!」

 

 リジーは上機嫌に叫ぶ。

 メグは全ての料理を少しずつ皿に取って食べていて、セリアはかぼちゃのシチューを何杯もおかわりしていた。

 アイビーは最初はお腹に手を当てて悩んでいたが、やがて諦めたのかどんどん食べていった。

 こうして宴が進み、デザートの時間になる。

 かぼちゃのプリン、かぼちゃのムース、かぼちゃの各種ケーキ、かぼちゃの焼き菓子などが並んだ。

 これには甘いものが大好きなメグが大喜びで、リジーに迫る勢いでデザートを皿に取った。

 アイビーはさすがに甘いものを大量に食べるのは気が引けたのか、少しずつ皿に取っていた。

 セリアは色々な種類のデザートを取り、にこにこしながら食べていた。

 楽しいハロウィンパーティーはいつもの夕飯よりも何時間も長く続き、お腹いっぱいになった生徒が名残惜しそうに一人また一人と大広間を去って行った。

 一方でセリア達はかなり遅くまで残っていた。

 

「ふー、食べた食べた。お腹いっぱいだよ!」

 

「リジー、とてもすごい勢いでしたね」

 

「えへへ、朝からずっと楽しみにしてたからねー。セリアもいっぱい食べてたね?」

 

「はい、リジーにつられて食べすぎてしまいました。ちょっと動けないです……」

 

「あはは、セリアお腹が少しぽっこりしてるよー」

 

「つ、つつかないでください、リジー」

 

 リジーにつんつんとつつかれ、セリアは身をよじって逃げだした。

 そのリジーはあれほど食べたにもかかわらず、まったくお腹が出ていない。

 それをアイビーが自分のお腹に手を当てながら恨めしそうに見ていた。

 

「なんであなたは、あんなに食べたのにお腹が出ないのよ……」

 

「うーん、筋肉があるからかなー? たまに走った後に腹筋とかしてるんだ」

 

「本当です、すごく細いですね」

 

「あはは、くすぐったいよセリアー」

 

 セリアがリジーのお腹を撫でる。

 それにつられたか、アイビーもリジーのお腹に触れる。

 そして深くうなだれた。

 

「ものすごく細いわ……」

 

 その様子をデザートを頬張りながら見ていたメグは、ごくりと飲みこんでアイビーに言う。

 

「別に、太ってないでしょ? アイビーは気にしすぎだよ」

 

「メグだって、いっぱい食べてるのに全然お腹出ないじゃない」

 

「私は料理、そんなに食べてないから」

 

「デザートいっぱい食べてるでしょ!」

 

「何言ってるの? 甘いものは別腹でしょ」

 

 アイビーの言葉にメグは本当に不思議そうな顔をして答えた。

 アイビーは話にならないとばかりに首を振ると、セリアをぎゅっと抱きしめた。

 それを見てリジーが抗議の声を上げたが、アイビーは無視した。

 

「どうしたんですか? アイビー?」

 

「あれだけ食べて太らないなんて、この子達は敵よ。セリア、あなただけが味方だわ」

 

 すると、セリアは少し気まずそうな表情を浮かべた。

 

「すみませんアイビー、実は私、食べてもあまり太らない体質で……。それに、消化するのも早いんです」

 

 それを聞いたアイビーは無表情になると、セリアのお腹に手を伸ばす。

 

「……セリアの裏切り者!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「そんなに気になるなら、朝私と一緒に走ろうよ!」

 

「そんな朝早くに起きれるわけないでしょ!」

 

「えー」

 

「セリアと私はいっぱい頭を使うし、リジーはいっぱい体を動かす。ちゃんと勉強しなよアイビー。それと適度な運動だよ」

 

「メグうるさい!」

 

「ア、アイビー、落ち着いてください……」

 

 セリア達三人は、アイビーを宥めながら寮へと戻った。

 寝室に入ると四人はパジャマに着替える。

 着替え終えると、アイビーは両腕でメグを捕まえた。

 

「アイビー、何してるの? 離してよ」

 

「さっき私はすごく傷つきました。だからメグ、今夜は私の抱き枕になりなさい」

 

「はあ? なんで私がそんなこと……」

 

 当然のようにメグは、アイビーの拘束から逃れようとする。

 するとアイビーは悪い表情を浮かべ、メグの耳元に口を寄せ囁いた。

 

「セドリックを好きになったってこと、みんなに言っちゃうわよ……?」

 

「なっ、なんで!?」

 

 メグが驚いて大きな声を上げると、残りのプレゼントを開けていたリジーとそれを見ていたセリアが、何事かと振り返った。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「ネズミでも出たの?」

 

「な、何でもない、気にしないで!」

 

 メグが必死に誤魔化すと、セリアとリジーは首を傾げながらもプレゼントを開ける作業を再開した。

 ほっと一息ついたメグは、アイビーを睨みつける。

 

「……なんで分かったの?」

 

「幼馴染のことなら、なんでも分かるに決まってるじゃない。それで、どうするの?」

 

 アイビーが決断を迫る。

 メグは悔しそうな表情を浮かべると、苦々しげに口を開いた。

 

「わ……分かったよ……だけど、今夜だけだからね」

 

「やった!」

 

 アイビーは嬉しそうにそう言うと、メグのベッドから枕を取り自分の枕の横に置いた。

 悪魔の脅しに屈したメグは、ただ見ていることしかできなかった。

 プレゼントの確認が終わったリジーとセリアは、その様子を見て不思議そうに再び首を傾げた。

 

「どうしたのアイビー? なんだか上機嫌だね」

 

「ふふ、メグが今夜一緒に寝てくれるそうなの」

 

「それは良かったですね、アイビー」

 

「ええ! ほらメグ、おいで」

 

 ベッドに入ったアイビーは手招きしてメグを呼ぶ。

 メグがとぼとぼとベッドに近づくと、アイビーはメグをベッドに引きずり込んだ。

 

「お二人とも、仲良しですね」

 

 それを見てセリアがにこにこと笑うが、リジーはなぜか魔法生物が捕食する瞬間を見たような気がしていた。

 リジーは首を振ってそれを気のせいだと思うことにした。

 

「それじゃ私達も寝ようか、セリア」

 

「そ、そうですね。……リジー」

 

 リジーがセリアに声をかけると、なぜかセリアはもじもじとしながらリジーを見上げた。

 セリアの上目遣いを受け、リジーはセリアを抱きしめたくなったがぐっとこらえた。

 

「どうしたの? セリア?」

 

「そ、その……わ、私達も一緒に、寝ませんか?」

 

 セリアの言葉にリジーは一瞬目を丸くすると、すぐに笑顔を浮かべる。

 

「もちろんいいよ! 一緒に寝よう!」

 

「ほ、本当ですか? 嬉しいです!」

 

「私もすっごく嬉しいよ! セリア、おいで」

 

「はい!」

 

 セリアは自分の枕を持つと、リジーのベッドへ向かった。

 

「あら、あなた達も一緒に寝るの?」

 

「えへへ、うん!」

 

「今夜はみんな、幸せな夢を見れるわね。それじゃあ、二人ともおやすみ」

 

「うん。おやすみ、アイビー、メグ」

 

「おやすみなさい」

 

「……おやすみ……」

 

 四人がベッドに入り、ランプの灯りが消えた。

 

「えへへ、プレゼントとかぼちゃ料理だけでも幸せなのに、セリアと一緒に寝れるなんて。今日だけで幸運使いすぎたなー」

 

「私も、まるでフェリックス・フェリシスを飲んだように幸せです」

 

「何それ?」

 

「魔法薬ですよ。これを飲んだら幸運になるんです」

 

「へー、すごいね」

 

 ベッドの中で二人は向かいあって寝ながら話していた。

 近くで見るセリアはいつにも増してかわいらしく、リジーは手を伸ばしてセリアの頭を撫でる。

 セリアは気持ち良さそうに微笑んだ。

 

「最高の誕生日をありがとう。セリアに、みんなに、大感謝だよ」

 

「喜んでもらえて、嬉しいです……」

 

「みんなの誕生日も、最高にしようね」

 

「はい……」

 

「それじゃ、おやすみ、セリア……」

 

「おやすみなさい……リジー……」

 

 リジーのベッドから二人の寝息が聞こえ始めた。

 するとアイビーは、背を向けているメグに話しかけた。

 

「二人とも寝つきいいわねえ」

 

「……」

 

「……ごめんね、メグ」

 

「……はあ、もういいよ」

 

 アイビーが謝ると、メグはため息混じりに答えた。

 アイビーはメグの頭を撫でる。

 

「ねえメグ、いつセドリックのことを好きになったの?」

 

「……クィディッチの予選のときだよ」

 

「あー、あのときからだったんだ」

 

「気づいていたんじゃなかったの?」

 

「クィディッチに集中してたからね。気づいたのは、その少し後よ」

 

「そんなに分かりやすいかな?」

 

「さっきも言ったけど、幼馴染だもん。分かるわよ」

 

「……そっか」

 

 そこで会話が途切れ、少しの間沈黙が続いた。

 ふとアイビーがメグを抱きしめ、メグは特に抵抗せずそれを受け入れた。

 

「メグの初恋ね?」

 

「う、うん」

 

「セドリックかっこいいもんねー。他の女の子達からも大人気なのよ」

 

「知ってるよ」

 

「そうよね……。メグ、私、応援するからね」

 

「……そっか」

 

「ええ、だから、頑張ってね? それじゃあ、おやすみなさい」

 

「おやすみ」

 

 そこで会話が終わる。

 しばらくすると、アイビーの寝息が聞こえてきた。

 メグは眠りながらも自分を抱きしめている幼馴染の手に少し触れると、小さく微笑んで呟いた。

 

「……ありがとう、アイビー」

 

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