ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

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新型コロナウイルス、怖いですね。
みなさんも体調にはお気をつけ下さい。


第28話 城に戻るまでが休暇/セリアの誕生日

 クリスマス休暇が終わりホグワーツへと向かう特急の中で、セリア達は楽しく話しながら過ごしていた。

 話題は休暇中にあった出来事が中心だ。

 

「そういう訳で、この子を飼うことになったんだー。責任重大だよ」

 

 リジーが雛を撫でながら言う。

 現在雛は籠から出てリジーの手のひらに乗り、少し警戒するように他の三人をじっと見つめていた。

 

「そんなことがあったんですね……。応援してます、リジー」

 

「ありがとーセリア」

 

「報告ってどれくらいの頻度でしないといけないの?」

 

「それが毎日なんだよねー」

 

「毎日!? 大変ねぇ……」

 

 話しながらリジーの隣に座るセリアがそっと雛に指を差し出すが、雛は後ずさって逃げセリアは悲しげにしゅんとなった。

 

「ねえリジー、この子にもう名前はつけたの?」

 

「うん。ミコって言うんだ」

 

 リジーが言うと雛改めミコが名前に反応し、リジーを見上げて鳴き声を上げた。

 

「ミコ! かわいい名前ね!」

 

「うん、ミコって名前、すごく合ってると思うよ」

 

「よろしくお願いします、ミコ」

 

 三人が口々に名前を呼ぶと、先程まで警戒していたミコが少し興味が出てきたように三人を見渡した。

 

「多分少ししたら慣れると思うよ。それで、みんなはどんな休暇だったの?」

 

 リジーが三人へ尋ねる。

 それに最初に答えたのはアイビーだった。

 

「私はちょっと大変だったのよ。帰ったらお家に食べ物がぜんぜん無くて……。家中なんだか汚れてたしね」

 

「えっ? どうして?」

 

 アイビーの言葉にセリアとリジーは驚くが、アイビーの家族を知っているメグはうんうんと頷いていた。

 

「私の家族ね、すごく家事が苦手なのよ。父さんと弟は頑張ってくれてるんだけど……。母さんは引きこもりだし……」

 

「大変だねー。私も家に帰ってすぐ、掃除に洗濯だったよ」

 

「二人とも、本当にすごいですね。私はまた、レイモンド達に任せきりでした……」

 

「アイビーの家の家事は、アイビーに依存してたからね。予想通りだったよ。頑張ったねアイビー」

 

 休暇だというのに忙しかった日々を思い出しアイビーは落ち込み、メグはそんな彼女を撫でながら労う。

 

「ありがとメグ。料理の作り方も書いておいたし、母さんちゃんと作ってくれたらいいんだけど……」

 

 アイビーは物憂げに呟き、頭を振って気を取り直すようにセリアに尋ねた。

 

「そう言えば聞いたんだけど、セリア、魔法省でメグに会ったのよね?」

 

「えっ!? そうなの?」

 

「はい、びっくりしました」

 

「闇祓い本部の見学のときにね。私も驚いたよ」

 

 その時のことを思い出しセリアとメグが笑い合っていると、その様子をリジーが羨ましげな顔で見ていた。

 

「いいなー……私だけ誰とも会ってないや」

 

 そう言っていじけるリジーにセリアはおろおろと慌てる。

 

「あ、あの、えっと……」

 

「えへへ、冗談だよセリア。驚かせてごめんね?」

 

 リジーが笑顔になってそう言うと、セリアはほっと安堵の表情を浮かべた。

 ふとメグが思い出したように言う。

 

「そうだ。セリア、レイブンクローの屋敷のパーティーはどうだったの?」

 

「あっ! それ私も気になるわ!」

 

「どんな人が来てたの?」

 

「えっと、そうですね……」

 

 興味津々な三人に聞かれたセリアが何人かの名前を挙げていくが、それは大抵の魔法使いが聞いたことのある人物ばかりだった。

 

「うわあ、やっぱりすごいわね……」

 

 その招待客達の名前に三人は少し圧倒されるが、当のセリアは楽しげにパーティーでの出来事を話していた。

 

「それでですね、スクリムジョールさんがまた、美味しいケーキを焼いてきてくださったんです。今までで一番美味しかったなあ……」

 

「あの人、ケーキ焼くんだ……」

 

 闇祓い本部で出会ったあの威圧的な風貌でケーキを作る姿が想像できず、メグは微妙な表情で呟く。

 

「あと、その……実は私、漫画を読むのが好きで。ファッジさんは、私の好きな外国の漫画を持ってきてくださったんです。恥ずかしながら、嬉し過ぎてちょっと変な行動をとってしまいました……」

 

「あー、そう言えば、時々こっそり読んでたねー」

 

「し、知っていたんですか?」

 

「ええ、だってセリア隠し事苦手だし」

 

「仕事の書類に紛れて何冊か届いて、読み終わったらこそこそとふくろうで返してたよね」

 

「は、恥ずかしい……!」

 

 自分の秘密の楽しみが周知の事実だったと判明し、セリアは真っ赤な顔を両手で覆いながら俯いてしまった。

 リジーは笑いながらセリアの頭を撫でて励まし、アイビーとメグは生温かい目でセリアを見ていた。

 

「別に恥ずかしいことないよ。今度おすすめの漫画貸してね」

 

「はい……」

 

 それからは何事もなく穏やかな時間が流れた。

 昼を過ぎた頃にお菓子が満載のカートを押した魔女が現れ、四人は思い思いのお菓子を購入した。

 四人がお菓子パーティーをしていると、コンパートメントの扉がこんこんと叩かれ、チャーリー・ウィーズリーが現れた。

 

「あ、チャーリーだ」

 

「こんにちは、チャーリーさん」

 

「こんにちは」

 

「こ! こんにちは!」

 

「やあ四人とも。他のコンパートメントに向かう途中に君達を見かけてね。ちょっと挨拶に来たよ」

 

「そうなんだ。じゃあすぐ行くの?」

 

「うん。ちょっと寄っただけだから」

 

「もっとお話したかったんですが……残念ですね」

 

「あ、あの! 残り二試合も、頑張って下さい!」

 

「アイビー、その内一試合はハッフルパフとの試合だよ?」

 

「あ、そうだった! えっと……」

 

 メグに指摘され、アイビーは口ごもる。

 それを見てチャーリーは朗らかに笑いながら言う。

 

「うん、頑張るよ。ハッフルパフの新しいシーカーはかなり手強そうだし、対戦が楽しみだ」

 

 シーカーであるセドリックが褒められて、メグはにこりと微笑んで頷いた。

 

「それじゃあ僕は行くよ」

 

「あ、そうだ。チャーリー、ちょっと待って」

 

 コンパートメントを出ようとするチャーリーを呼び止め、リジーは腰のポーチの中を探り小さな包みを取り出した。

 

「なんだい?」

 

「これ、兄ちゃんからだよ。忘れる所だったよ、危ない危ない」

 

 包みを受け取ったチャーリーは、怪訝そうな顔で包みを開け中を見た。

 そして大きく目を見開いた。

 

「ねえねえ、何が入ってたの? 兄ちゃん教えてくれなかったんだよね」

 

「あー、うん。これだよ」

 

 包みの中には、白い尖った何かと大きな鱗が数枚入っていた。

 白い物も鱗もとても頑丈そうで、どこか神秘的な雰囲気をまとっていた。

 

「これ何?」

 

「えっと、ドラゴンの牙のかけらと鱗、でしょうか?」

 

「ああ、そうだよ」

 

「初めてみた……」

 

「強力な魔法薬の材料になるのよね。欲しいわ……」

 

「でもなんで兄ちゃんはこれを送ったのかなー?」

 

 ドラゴンの牙と鱗を見下ろしていたチャーリーは少し考え、口元に笑みを浮かべた。

 

「さすがロルフだなあ。適当そうで、その実周りをよく見ている……」

 

 チャーリーはぽつりと呟くと、牙と鱗を懐に入れた。

 

「ありがとうリジー。また僕からロルフにもお礼を言うよ。それじゃあ」

 

「あ、うん。ばいばい」

 

 チャーリーはセリア達に手を振ると、コンパートメントから去っていった。

 セリア達は少し不思議そうに首を傾げていたが、気を取り直してお菓子パーティーを再開した。

 そして日が暮れて、ついにホグワーツ特急が停車した。

 四人ははやる気持ちを抑えつつも待ちきれない様子で特急を降り、早足でセストラルが引く馬車へと向かって行くのだった。

 

──────────

 

 クィディッチチームの仲間達への挨拶を終えたチャーリーは、何か考え込みながら兄弟達が待つコンパートメントを目指して特急内を歩いていた。

 すると前方から、背が高く漆黒の長髪を揺らした美しい女生徒がやってきた。

 その女生徒はチャーリーに気がつくと立ち止まった。

 

「こんにちはウィーズリー」

 

「ん? ああ、やあマレット」

 

 声をかけられようやく気がついた様子のチャーリーを、ジェニファーは小首を傾げながら見つめる。

 

「考え事かしら? 余所見をしていると怪我をするわよ」

 

「分かっているよ」

 

「残りの試合、怪我をしたから負けたなんて言い訳、されたくないのよ。気をつけることね」

 

「心配ありがとう。でも大丈夫さ。最後には僕らが勝つから」

 

 二人は睨み合う。

 そのただならぬ雰囲気に、周りのコンパートメントから注目が集まる。

 周囲の視線に嫌そうな表情を浮かべたジェニファーは、チャーリーから目を逸らした。

 

「それじゃあね」

 

「ちょっと待ってくれ」

 

 去って行こうとするジェニファーをチャーリーが呼び止めた。

 ジェニファーが振り返ると、チャーリーは決意をした顔で言った。

 

「やりたい事、決まったよ」

 

「……そう。良かったわね」

 

 チャーリーの言葉を聞いたジェニファーは、驚いて少し目を見開いた後にそう言った。

 

「それじゃあまた」

 

「ええ」

 

 ジェニファーは歩き去って行くチャーリーの背中をしばし見つめ、目を閉じてどこか寂しげに呟く。

 

「さようなら、ウィーズリー」

 

 それから少し歩いて、チャーリーは兄弟が待つコンパートメントに到着した。

 コンパートメントの中では、双子の弟がもう一人の弟の眼鏡を奪って遊んでいた。

 眼鏡を奪われた兄弟の中でも特に生真面目な弟は、双子を怒鳴りながら追いかけている。

 その様子を見てチャーリーは思わず笑ってしまう。

 そしてコンパートメントの扉を勢いよく開いて中に飛び込み、チャーリーは大きな声で宣言した。

 

「みんな! 僕はドラゴンの研究をするぞ!」

 

──────────

 

 クリスマス休暇が明け学校が再開し、早くも一ヶ月程が過ぎた。

 そして二月二日、セリアの誕生日がやってきた。

 セリアのベッドの横には、方々から送られてきたセリアへのプレゼントで、小山が複数できている。

 運良く休日だったので、前日夜遅くまで読書をしていたセリアはすやすやと幸せそうに眠っていた。

 そんな彼女に不審な三つの影が忍び寄る。

 影達はセリアのベッドを取り囲むと、それぞれ何やら怪しい筒を取り出した。

 その筒には紐がついており、三人はその紐を掴むと目配せし合う。

 そして頷くと、三人は同時にその紐を引っ張った。

 すると、まるで大砲を撃ったかのような轟音が鳴り響き、寝室内を真っ白な煙が包んだ。

 その煙が少しずつ薄くなっていき、だんだんとセリアの姿が見えてくる。

 そしてやがて煙が完全に晴れると、影達、リジーとアイビーとメグが、声を合わせて高らかに言った。

 

「誕生日おめでとう! セリア!」

 

 三人はセリアの反応を待つが、セリアは横になったまま身を起こさない。

 それを不思議に思った三人がセリアのベッドを覗き込む。

 そこには恐怖の表情を浮かべながら気絶するセリアの姿があった。

 

「わー!? セリアー!?」

 

 三人は驚いて叫び声を上げた。

 三人はそれぞれセリアを揺さぶったり、蘇生魔法をかけたり、何か良い魔法薬が無いかと教科書をめくりだしたりと、大慌てでセリアを目覚めさせようとする。

 それからしばらくして、ようやくセリアは意識を取り戻した。

 しかし当然ながら、目を覚ましたセリアは怒り心頭な様子だった。

 

「もう! もう! 三人ともひどいです! 死んでしまうかと思ったんですからね!」

 

「ごめんねー、セリアー」

 

「ごめん、ちょっとふざけ過ぎたね……」

 

「ごめんなさい、セリア……」

 

 ぷりぷりと怒るセリアに三人は必死に謝るが、セリアの怒りは鎮まらない。

 ついにはそっぽを向いてしまったセリアに、たまらなくなって三人が言う。

 

「なんでもするから! 許して!」

 

「わ、私もなんでもするから!」

 

「私もよ! 許してセリア!」

 

 それを聞いたセリアは三人の方へ振り返ると、小さく、しかし悪そうに笑った。

 

「みなさん、今なんでもって言いましたね?」

 

 そのセリアらしからぬ笑みに三人は気圧され、しかし恐々と頷いた。

 怯える三人を見渡したセリアは立ち上がり、いつもの優しい微笑みを浮かべた。

 

「それではみなさん、私の言うことを聞いてくださいね?」

 

 それから数分後。

 

「うー……恥ずかしいよセリア……」

 

「駄目ですよ、リジー。じっとしていてください」

 

「んっ、あのセリア、もうそろそろいい……?」

 

「メグもじっとして、ちゃんと頭を上げていてくださいね」

 

「ねえセリア。これ他の二人には悪いけど、私にとってはむしろご褒美よ? いいの?」

 

「いいんです」

 

 今セリアはベッドに腰掛けている。

 そして顔を真っ赤にして恥ずかしがるリジーに膝枕をして、足下にクッションを敷いてそこにメグを座らせて、彼女のふわふわとした髪の毛を思うさまに撫でて楽しんでいた。

 アイビーはセリアの後ろに回り、彼女の髪の毛を梳かした後色々な髪型を試していた。

 

「いつも優しくしてくれているので、たまにはリジーに甘えてほしくて。どうですか?」

 

「うん、すっごく気持ちいい……。けど、それ以上にすっごく恥ずかしいよー」

 

 リジーは両手で顔を覆う。

 セリアの膝枕は少し固さもあるがふんわりとしており、何よりもセリアのどこか気品のある爽やかな匂いに包まれ、リジーはどうにかなってしまいそうだった。

 

(恥ずかしいけど……これは人を駄目にするやつだよー……!)

 

 セリアは膝の上のリジーを見下ろし満足気に笑うと、メグの髪をもふもふと触る。

 メグは触られる度に、頭から首筋にかけてくすぐったいようななんとも言えない刺激が走り、思わず口から吐息が漏れていた。

 

「アイビーが時々メグの髪を触っているのを見て、いつも羨ましいと思ってたんです」

 

「気持ちいいでしょ?」

 

「はい。ふわふわしていて、いつまでも触っていたいです」

 

「んぅ、私はぜんぜん、ひっ、気持ち良くないよ……」

 

「ごめんなさいメグ、でも手が止まらないんです……えいっ」

 

「うひゃあ!」

 

「うわ、メグのあんな声、初めて聞いたわ……」

 

 絶え間なく走る刺激に必死に耐えながら、メグはこのもぞもぞする地獄が早く終わることをひたすらに祈り続けた。

 セリアはメグの髪を撫でながらアイビーに話しかける。

 

「アイビー、どうですか?」

 

「うーん、よくセリアの髪型をいじっていたけど、一番ってなると難しいわね……」

 

 アイビーへのセリアからの指令は、自分に一番合う髪型を見つけてほしい、ということだった。

 普段は梳かした後はそのままに髪を流しているが、セリアもお年頃なのでおしゃれな髪型に興味があるのだ。

 

「セリアはかわいいから、なんでも似合うのよねー。でも安心してね。ばっちりな髪型を見つけるわ!」

 

「お願いします!」

 

 アイビーは気合を入れなおし、櫛とブラシを手にセリアの銀髪に挑む。

 セリアとアイビーにとっては至福の、リジーとメグにとっては色々と辛い時間は午前中いっぱい続いた。

 最終的にセリアの髪型は、ゆるく縛った髪を片方の肩から前に流すというものになった。

 鏡を見たセリアは目を輝かせて満面の笑みを浮かべ、それを見たアイビーは渾身の作品に何度も頷いていた。

 それはセリアにこの上なく似合っており、解放されてふらふらと立ち上がったリジーとメグも、そろって褒めそやすほどだった。

 

「えへへ。アイビー、ありがとうございます! 今度この髪型の作り方を教えてくださいね」

 

「ええもちろん! すごく簡単だし、すぐ覚えられるわよ。私の方こそとっても楽しかったわ!」

 

 セリアとアイビーが両手を取り合ってはしゃぐのをよそに、リジーとメグは互いに力なく自分のベッドに倒れこんでいた。

 

「こんなに楽しいお誕生日は、お母さんがいたとき以来です……。みなさん、本当にありがとうございます!」

 

 セリアは満面の笑みでそう言う。

 しかし他の三人は首を横に振ると、それぞれの荷物を探って何かを取り出し、それをセリアに向かって差し出した。

 

「何を言ってるのよ、セリア」

 

「そうそう、お誕生日はまだまだこれからだよー!」

 

「プレゼント、まだ渡してないでしょ?」

 

「あっ……」

 

 どうやら本気でプレゼントの存在を忘れていたセリアは、三人から差し出されたプレゼントを呆然と見つめた。

 そして震える手でそれらを受け取ると、幸せそうに抱きしめ微笑む。

 

「……ああ、こんなに幸せで、いいのでしょうか?」

 

 そんなセリアを三人は嬉しそうに笑いながら見る。

 

「ほらほら、早く開けなよ!」

 

「はい!」

 

 セリアはプレゼントを開けていく。

 リジーからのプレゼントは、手編みのマフラーだった。

 ただしそれは既製品よりも丹念に編まれており、手触りはまるで水の表面のように滑らかだった。

 レイブンクローの象徴である静かな青色に、たくさんの鷲が緻密に描かれて、まるで大空を大量の鷲が舞っているような力強さもあった。

 その鷲に混ざって一羽、金色の小さなスニジェットがいるのはご愛嬌だ。

 

「わあ……素敵です、リジー!」

 

「え、すごい! あなたこんなことまでできるのね!」

 

「綺麗……」

 

「えへへ。編み物は最初に覚えた家事で、一番得意なんだよ。間に合って良かったー」

 

 三人に褒められリジーは照れくさそうに笑う。

 セリアは早速マフラーを首に巻き、その温かさに顔をほころばせた。

 アイビーからのプレゼントは、小さなスノードームのようなガラスの置物だった。

 その中には小さくも鮮やかな花々が咲き誇っている。

 

「すごく綺麗です……」

 

「すっごいねー。これ本物のお花?」

 

「その中の花は造花なんだけど、魔法で毎日色と形が変わるのよ。組み合わせは何万通りもあるから、毎日違う景色を楽しめるわ」

 

「アイビーにしてはいいプレゼントだね」

 

「どういう意味よ?」

 

 茶化したメグをアイビーは睨みつける。

 セリアはその置物をそっとベッド横の棚の上に置き、嬉しそうに微笑みながらそれを見つめた。

 メグからのプレゼントは、特注品の高級羽根ペンとインク壺のセットだった。

 試し書きをしてみたセリアは、その余りにも心地よい滑りに驚いた。

 

「すごく手に馴染みますし、書いていてとても気持ちいいです……。これなら何時間でも使えそう」

 

「セリアはいつもお仕事でいっぱい書いてるからね。お仕事の助けになればって思ったんだ」

 

「これ、高かったんじゃない?」

 

「それほどでもないよ」

 

 アイビーの問いにメグは事もなさげに答えるが、その羽根ペンは普段あまり使わないメグの全財産の半分近い値段はした。

 

「もし壊れても、一生交換無料の補償付きだよ。インクはさすがに有料だけどね」

 

「こんなに良い物を、ありがとうございます! 一生使いますね!」

 

「セリアー、私にも少し書かせて?」

 

「ええ、どうぞ」

 

「ありがとー。うわあ、すっごい書きやすいね!」

 

 セリアは三人から送られたプレゼントを見渡し、再び幸せそうに微笑んだ。

 

「みなさん、今日は本当にありがとうございます。とても幸せです。一生大事にしますね」

 

 それに対してリジー達も、幸せそうに笑いながら頷いて返す。

 その後セリア達は全員で協力して、学校外から送られてきたプレゼントの小山の数々を開封していった。

 その作業は夕食の直前まで続き、さらにセリアは一つ一つにお礼の手紙を書いたため、結局丸一日がプレゼントの対応で終わった。

 休日とは思えない忙しさだったが、セリアは終始幸福感に包まれており、この日は今までの人生でもっとも幸せな日となった。

 

(今なら守護霊を出せるかも……)

 

 セリアはこれからの守護霊の呪文の訓練では、この記憶を使うことにした。

 そして、これからまた訪れる親友達の誕生日には精一杯の気持ちを込めた贈り物をしようと心に決め、セリアの十二歳の誕生日は終わりを告げるのだった。

 

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