ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

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グリフィンドールは五十点差以上で勝てば優勝。
ハッフルパフは百点差でスニッチを掴む(二百五十点差以上)と優勝。
それ以外はスリザリンが優勝。
こういう感じになっています。
わかりにくくてすみません。


第31話 クィディッチ最終戦・終了

「さあ、始まりました! クィディッチ最終戦、グリフィンドールとハッフルパフの対決です! チャーリーが初めてシーカーになった年から優勝を逃しているグリフィンドールは、今年こそついに優勝できるのか! 見逃せない戦いです! 実況は私、リー・ジョーダン、解説はクィディッチ大好きマクゴナガル先生が担当いたしております!」

 

「ジョーダン!」

 

「すみません! さて、クァッフルはまずグリフィンドールの手に! 見事な連携でゴールを目指します! いけ! っ、あー残念! キーパーに阻まれてしまいました。はあ……ハッフルパフにボールが渡りまーす」

 

「ジョーダン! しっかり実況なさい!」

 

「こほん、失礼。ハッフルパフにクァッフルが渡りました! いけみんな、止めろ! って、なんだって!?」

 

 実況のリーだけでなく、観客席中から驚きの声があがる。

 なんとハッフルパフチームのチャイサー達が、凄まじい連携を見せたのだ。

 ジェニファー達の連携ほどではないが、それを彷彿とさせるものだった。

 グリフィンドールのチェイサー達は止めることができず、ハッフルパフのチェイサーはそのままゴールを狙う。

 

「ハ、ハッフルパフチームがゴールに迫ります! いけウッド!」

 

 ウッドがクァッフルを放とうとするチェイサーの動きを油断なく見つめ、投げようとした動きに素早く反応して飛びつく。

 しかしそれはフェイントだったようで、ゴールに投げずに後ろにいた別のチェイサーにクァッフルを渡し、そのチェイサーがそのまま無防備になったゴールにクァッフルをたたき込んだ。

 その見事な得点に、観客席は大盛り上がりだ。

 

「ハッフルパフチームの得点です! まさか、ハッフルパフのチェイサーがこれほどとは、誰が予想したでしょうか! 今までの試合ではこんなにじゃなかったのに!」

 

 リーの実況が響き渡る。

 そう、この試合以前ではハッフルパフチームは、これほどの連携を見せてはいなかった。

 むしろ他のチームのチェイサーに必死に食らいついてなんとかゴールを守り、その間にシーカーがスニッチを掴む。

 こういった展開が多かったのだが、実はハッフルパフチームはわざとそうしていたのだ。

 今年はチャーリーとジェニファーの最後の対決ということもあり、グリフィンドールとスリザリンの戦いばかりが注目されていた。

 レイブンクローチームはここ数年優秀なシーカーがおらず、元々どこか勝利を諦めているようだった。

 そしてハッフルパフチームは、全く注目されていなかった。

 ハッフルパフ以外の三寮は、普段からどこか下にハッフルパフを見ている。

 そこにチャーリーとジェニファーの対決だ。

 グリフィンドールもスリザリンもレイブンクローも、ハッフルパフをほとんど危険視していなかったのだ。

 そのことにハッフルパフチームは新学期が始まってすぐに気づき、さらにシーカーとして優秀なセドリックがチームに加わった。

 そこでハッフルパフチームのキャプテンは考えた。

 三試合の内二試合は、勝つとしても負けるにしても僅差で終わらせる。

 そうしてぎりぎりの勝負を演出して、最後の一試合で一気にひっくり返す。

 とても大きな賭けだったが、ハッフルパフチームはここまでやり遂げた。

 

「ハッフルパフチームのチェイサーを、グリフィンドールは止められません! 次々と得点が決まる! みんな、何やってるんだ!」

 

 リーが必死に叫ぶが、グリフィンドールのチェイサー達はスリザリンを相手にしていたときのように、ハッフルパフのチェイサーに翻弄されていた。

 双子のウィーズリーが打ったブラッジャーが隙を作り、数回はゴールできたものの、それより多くハッフルパフに得点が入っていく。

 

「このような展開を誰が予想したでしょうか! まさかあのハッフルパフが、こんなに……! そうだ、チャーリーはどこに!? チャーリー、早くスニッチを掴んでくれ!」

 

「ジョーダン! 公平に実況をしなさい!」

 

 マクゴナガルがそう注意するが、マクゴナガル自身も動揺を隠しきれない顔で試合を見ていた。

 そしてチャーリーだが、まだスニッチを見つけていなかった。

 いや、探すことがほとんどできないでいた。

 神業のように飛行するチャーリーに必死になってセドリックが張り付き、チャーリーを妨害していたのだ。

 それに加えてハッフルパフチームのビーターがブラッジャーを打ち、的確にチャーリーを牽制していた。

 今まではチャイサー達が必死に妨害し、シーカーであるセドリックが試合を決めた。

 しかしこの試合では、セドリックがチャーリーを妨害し、チェイサー達で得点を稼ぐ。

 これがハッフルパフチームの作戦だ。

 このためにハッフルパフチームは並ならぬ努力をしてきた。

 チェイサー達はこっそりとスリザリンの練習を偵察し、ジェニファー達の連携技術を観察し、それを元に練習した。

 キーパーはそのチェイサーの練習相手として、ひたすら放たれるクァッフルを防ぎ続けた。

 ビーターの二人は連携を守るため、正確な位置にブラッジャーを叩き込めるよう腕が上がらなくなるほどブラッジャーを打ち続けた。

 そしてセドリックはグリフィンドールの練習を偵察し、チャーリーの飛び方をひたすら観察し続けた。

 そしてそんな彼らの練習を、他の寮は見に来ることはなかった。

 元より格下と見ているハッフルパフチームを、わざわざ偵察はしない。

 だからこそ、そこに付け入ることができるのだ。

 圧倒的に実力が上のチームの動きを観察し、分析し、対抗できるように練習をする。

 そしてそれを気づかれないようにする。

 もちろん簡単にできることではないし、何度も諦めそうになった。

 しかし彼らはやり遂げた。

 勤勉で努力家で、苦労を苦労と思わないハッフルパフだからこそできたことなのだ。

 

(かっこいいとは思わない。卑怯かもしれない。けれど、僕達が勝つための道はこれしかなかった)

 

 セドリックはチャーリーの前方を横切ったり、急加速してスニッチを見つけたかのようなフェイントをしかけたり、考えうる全てでチャーリーを妨害する。

 

(これが僕達ハッフルパフの力だ! 絶対に勝つ!)

 

 圧倒的な実力差があるチャーリーとセドリック。

 普通ならチャーリーを妨害することなど、セドリックにはできない。

 徹底的な偵察のおかげでようやくチャーリーの動きを読むことができるのだ。

 

(自由に動けない……。こんなに動きが読まれたのは初めてだ)

 

 再びセドリックにフェイントにかけられ、それに騙されたチャーリーは驚きながら苦笑する。

 

(慢心しすぎてたな。マレット以外を全然見てなかった……。反省しないと)

 

 こうしている間にもハッフルパフは得点を重ねていく。

 

「ハッフルパフの得点! 現在ハッフルパフ百三十点対グリフィンドール三十点! 今スニッチを掴めれば、優勝だ! 行けチャーリー!」

 

「ジョーダン! 公平に実況できないなら、魔法のマイクをよこしなさい!」

 

「へん、やなこった! チャーリー頼む! グリフィンドールに優勝を!」

 

 反抗的なリーからマイクを奪おうと、マクゴナガルがリーに飛びかかった。

 そしてリーとマクゴナガルがもみ合い、リーはマイクを取り上げられた。

 リーは猿ぐつわをかまされロープで縛られて観客席に放置され、マクゴナガルが実況を引き継いだ。

 

「みなさん、失礼しました。ここからは私が実況をいたします」

 

 チェイサー達の争いは激しくなってきた。

 現在の点差だと、グリフィンドールがスニッチを掴めば百八十対百三十で五十点差で勝利となり、ぎりぎりグリフィンドールの優勝が決まる。

 しかしあと一度でもハッフルパフが得点すると、たとえすぐにスニッチを掴んで勝利してもスリザリンの優勝だ。

 そしてハッフルパフは今スニッチを掴めば、現在百点差なので優勝となる。

 しかしチャーリー相手にスニッチを掴めるとは思っておらず、長期戦に持ち込みこのままじりじりとクァッフルで勝利に持ち込むつもりだ。

 一回でも多く得点を重ねようとするグリフィンドールに対し、どこまでも試合を長引かせようとするハッフルパフ。

 グリフィンドールとスリザリンの優勝争いばかり見ていた観客席は、予想外の展開に開幕戦と同じくらいの盛り上がりを見せていた。

 しかし思わぬ状況に焦るグリフィンドールと、作戦通りで冷静なハッフルパフでは明らかにハッフルパフが有利だ。

 このままだとすぐにまたハッフルパフが得点を決めるだろう。

 そう、このままだと。

 

(本当にすごいな。けど……)

 

 セドリックに妨害されながらも、チャーリーは目だけを動かしスニッチを探し続ける。

 目だけでスニッチを見つけるのはとてつもなく難しく、普通は競技場全体を飛び回り血眼になって探すものだ。

 しかし普通ではないチャーリーの目は、ついにはるか遠くの地上近くで羽ばたくスニッチを捕らえた。

 

(だてに伝説のシーカーなんて、呼ばれていないさ!)

 

 チャーリーは急にスニッチとは逆の方向に進路を変え、慌ててセドリックがこちらを向くと再び急旋回し、セドリックの横を抜いてスニッチへ向かった。

 

(フェイント……!? しまった!)

 

(一度くらいはお返ししないとな)

 

 必死にチャーリーを追うセドリックも、スニッチの姿をその目にとらえた。

 

(ここでスニッチを取られるわけにはいかない! 何とか妨害しないと……!)

 

(スニッチを掴むまでに、彼に追いつかれるか。けどスニッチを見つけたからには、もう逃がさない)

 

 なんとかチャーリーに追いついたセドリックは、チャーリーに体を押し当てて妨害する。

 チャーリーはそれを押し返しつつ、なおもスニッチに向かって進む。

 

 

(まずい! このままじゃ……!)

 

(悪いけど、ここで決める!)

 

 チャーリーは押し合っていた力を急に抜いた。

 するとずっと力一杯に競り合っていた力が抜け、セドリックの体勢が少し崩れる。

 

(しまった……!)

 

 すかさずチャーリーがセドリックに体をぶつけ、セドリックは大きく弾かれてしまった。

 そしてチャーリーはハッフルパフのビーターが打ったブラッジャーを回転して避け、スニッチに迫り手を伸ばす。

 

(これで、勝ちだ!)

 

「負けるもんか!」

 

「なっ!?」

 

 チャーリーは驚きの声を上げる。

 弾かれたセドリックが戻ってきて、同じようにスニッチに手を伸ばし始めたのだ。

 確かにグリフィンドールと百点以上差がある今、スニッチを掴めば優勝だ。

 だがスニッチの奪い合いでは、絶対にチャーリーには勝てない。

 そう結論が出たから長期戦を選んだのだ。

 

(たしかに勝てないかもしれない。けど、負けるとしても、全力で戦いたいんだ!)

 

(はは、おもしろい! 受けて立つ!)

 

 スニッチは地上付近にいたため二人も地面すれすれを飛んでおり、ときおりローブが芝生に触れる。

 二人は手を伸ばしながら抜きつ抜かれつ逃げるスニッチに迫る。

 そして同時に大きく身を乗り出し、二人は箒から転がり落ちた。

 しかしもう空中にスニッチの姿はなく、二人のどちらかが掴んだのは確かだ。

 

「スニッチが捕まりました。スニッチを掴んだシーカーは、立ち上がって下さい」

 

 マクゴナガルの実況が響き、観客席達はどちらが立ち上がるのかと固唾を飲んで見る。

 そして立ち上がったのは、チャーリーだった。

 チャーリーが高々とスニッチを掲げると、競技場から大歓声が上がった。

 そしてセドリックは転がったまま、空っぽな自分の手のひらを呆然と見つめていた。

 そんなセドリックにチャーリーが歩みよる。

 

「ほら、立てよ。大丈夫か?」

 

「ああ、うん。立てます。大丈夫……」

 

 セドリックはふらふらと立ち上がり、悔しげに俯いた。

 しかしぐっと堪え、顔を上げて笑顔を浮かべた。

 

「おめでとう、グリフィンドールの優勝だね」

 

 しかしチャーリーは頬をかきながら苦笑を浮かべた。

 

「いやあ、それがそうじゃないんだよあ……。耳すましてみろよ」

 

「え?」

 

 言われたようにセドリックが耳をすませると、割れるような歓声の中からマクゴナガルの声が聞こえた。

 

「グリフィンドールチーム一百八十点対ハッフルパフチーム百四十点で、グリフィンドールの勝利です。そしてその結果、今年のクィディッチ優勝杯は、スリザリンの物となりました。優勝杯の授与を行いますので、スリザリンクィディッチチームはピッチまで降りてきてください。繰り返します……」

 

 マクゴナガルの言葉を聞き、信じられないという顔を浮かべているセドリックに、チャーリーが軽く声をかけた。

 

「どうやら僕と君がスニッチを追いかけてる間に、ハッフルパフが得点したみたいだな。ハッフルパフがあんなに強かったのを見抜けなかったなんて、自信なくすよ」

 

「……普段からみんな、ハッフルパフを舐めすぎなんですよ。だから足元をすくわれるんです。それに、結局負けたのは僕らだし……」

 

「試合には勝っても、優勝は取られしまったよ。ていうか、開幕戦と同じような終わり方しちゃったなあ……」

 

 チャーリーはそう言ってため息を吐くが、その顔はどこか晴れやかだった。

 それを疑問に思ったセドリックはチャーリーに尋ねる。

 

「あの、悔しくないんですか?」

 

「ん? もちろん悔しいさ。けどすごく楽しい試合だったから、なんだか満足してるんだよ」

 

「楽しかった、ですか?」

 

「ああ」

 

 そう言ってチャーリーは、セドリックに手を差し出した。

 

「ここ数年で、一番手強い相手だったよ。楽しい試合をありがとう、セドリック」

 

 セドリックはしばし差し出された手を見て、震える手でその手を握った。

 すると、セドリックの目にじわじわと涙が浮かんできた。

 

「負けたけど、悔しかったけど、僕も、楽しかったです……。ありがとう、ございました……!」

 

 セドリックは嗚咽混じりにそう言った。

 チャーリーはセドリックの涙を周りから隠すように抱き寄せ、彼の背中をぽんぽんと叩いた。

 

「来年からも頑張れよ」

 

「はい……!」

 

 大歓声は気がつけば大きな拍手に変わっており、試合を戦い抜いてきた選手達をたたえているかのようだった。

 

──────────

 

 試合後観客席でアイビーとスコットは、魂が抜けたかのような顔で席に座り込んでいた。

 二人だけではなく、観客席に座る生徒達の多くは同じような顔をしている。

 現在ピッチでは、ダンブルドアによってクィッディッチ優勝杯の授与が行われていた。

 優勝杯を受け取るのは、スリザリンチームのキャプテンであるジェニファーだ。

 普段あまり表情を変えない彼女であるが、珍しく喜びで満面の笑みを浮かべながら優勝杯を受け取った。

 ダンブルドアも朗らかな笑みを浮かべながら、嬉しそうに頷いてジェニファーと握手をしていた。

 ジェニファーが高々と優勝杯を掲げると、再び割れるような声援が観客席から上がった。

 このときばかりは四寮の隔たりはなく、ただただ選手をたたえていた。

 新たな課題を見つけたグリフィンドールチームは、慢心を捨て来年からさらなる実力の向上を目指す。

 スリザリンチームは来年には絶対的なキャプテンとチェイサーがいなくなることを思い、戦力の補充についてすでに考え始めていた。

 レイブンクローチームは今年のクィディッチの成績を振り返り、優れたシーカーの確保と練習量を増やすことを決めた。

 そしてハッフルパフチームは、自分達が十分に他の寮に通用することがわかり、自信を取り戻すと共にもっともっと強くなろうと思っていた。

 それぞれのチームがそれぞれの思いを胸に優勝杯の授与は終了し、ついにここ数十年で最高の盛り上がりを見せたクィディッチシーズンが終了した。

 




あと一話と少し閑話をいれて、一章は終了です。
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