ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

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投稿が遅くなってすみません。



第34話 お買い物・一

 

 目を覚ましたら知らない天井で少し戸惑ったけど、すぐに昨日のことを思い出した。

 

(そっか、セリアのお家に泊まったんだったね)

 

 私はベッドから身を起こしてぐっと体を伸ばす。

 体からぽきぽきと軽い音が鳴るのがなんだかおもしろい。

 ベッドから出て動きやすい服に着替える。

 やっぱり日課はこなさないとね。

 着替えを終えた私は扉を開いて、ひっそりと静まりかえっている廊下に出る。

 メグとアイビーの部屋からも音はしないし、やっぱり寝てるよね。

 

「おはようございます、リジー様!」

 

「わあ!」

 

 突然足元から元気な声が響き、私は思わず飛び上がって驚く。

 見下ろすと屋敷しもべ妖精さんのルンが、にこにこと笑いながら私を見上げていた。

 

「びっくりしたよー。おはよう、ルン!」

 

「驚かせてしまい、申し訳ありません! リジー様は、朝の日課でございますか?」

 

「そうだよ。よくわかったね?」

 

「リジー様はいつも朝にお走りになると、お嬢様のお手紙にお書きになられていたのです!」

 

 セリア、そんなことまでお手紙に書いてたんだね。

 他にもなにか知られてるのかな? なんだかちょっと恥ずかしいよ。

 

「そうなんだねー。それじゃあ私は走ってくるね」

 

「はい! あ、そうでした! リジー様、お願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」

 

 お願い? 

 

「うん、いいよ」

 

「実は、お嬢様もとても早く起きてこられて、お散歩に行くとお屋敷をお出になったのです!」

 

「え? セリアが?」

 

 セリアが朝早く起きるなんて、聞いたことがないよ。

 

「はい! ですので、お走り終わられましたら、お嬢様も連れてきていただけないでしょうか?」

 

「わかったよ、任せて!」

 

「ありがとうございます! それでは、行ってらっしゃいませ!」

 

 私が頷くと、ルンは膝に頭がつきそうなくらい深くお辞儀をして、姿くらましで音もなく消えて行った。

 うーん、それにしてもセリアが早起きなんて、信じられないな。

 私は一階に降り、玄関ホールを抜けて扉に向かう。

 軽く押しただけで開いた大きな扉を抜け、軽く運動をしてから走りだす。

 まだ日の出前だから薄暗く、周囲はあまりよく見えない。

 

(お庭を一周したんだけど……)

 

 お屋敷の周りにはセリアはいなかった。

 

(どこかな? もしかして、林の中?)

 

 私は林に入る。

 昨日も入ったけど、本当に綺麗な林だなー。

 ホグワーツの森とおんなじくらい緑がみずみずしいよ。

 まあ、まだホグワーツの森には入ったことないけどね。

 林の道を走ったけど、まだセリアは見つからない。

 気がついたら、昨日ボウトラックル達と会った大きな木の近くまで来ていた。

 

(せっかくだし、またボウトラックル達を見ようかな)

 

 ちょっと進むと大きな木が見えてきた。

 

「あ!」

 

 大きな木に到着した私は、思わず声をあげてしまう。

 大きな木の下で、杖を握りしめたセリアが木に寄りかかって座って目を閉じていて、その近くにたくさんのボウトラックルが集まっていたからだ。

 

「セリア! 大丈夫!?」

 

 セリアに慌てて駆け寄ると、周りにいたボウトラックル達が驚いて細長い指で私を威嚇する。

 

「驚かせてごめん、でもちょっとどいて! セリア! ……ね、寝てるだけ?」

 

 セリアには特に怪我があるようには見えなくて、ただ規則正しく呼吸してて寝てるだけのようだった。

 よ、良かったー。

 安心して私が大きなため息をつくと、セリアがぴくりと動いてうっすらと目を開いた。

 

「リジー……?」

 

「セリア! 良かった、大丈夫だよね? 気分が悪かったりしないよね?」

 

「だ、大丈夫ですよ」

 

 私がセリアの体中を触って無事を確かめてると、セリアは顔を赤くしてかわいく慌てていた。

 体調も良さようだね。

 安心したけど、今度はなんだか怒りたくなってきたよ。

 

「セリア! こんな所で寝てちゃだめだよ! 体に悪いでしょ!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 しゅんと落ち込むセリアを見ると、怒りはすぐに消えた。

 

「ううん、元気そうだしいいよ。でも、なんでここにいたの?」

 

「それは……」

 

 私が尋ねると、セリアは大きな木を見上げた。

 

「昨夜、あの後お父さんの手紙を読んでいたんです。それでなんだかあまりよく眠れなくて」

 

「そうだったんだ……。でも、なんでこの木の下にきたの?」

 

 セリアは杖を撫でながら答える。

 

「実は私の杖は、この大きな楓の木を使っているそうなんです。リジーも知っていますよね? お父さんと同じ木で作られた杖です」

 

 セリアはまた大きな木を見上げ、ゆっくりと目を閉じた。

 その姿がとても儚く見えて、私はなんだか不安な気持ちになった。

 

「小さな頃からずっとお父さんの杖を使ってきて、去年には自分の杖も買って。それなのに、ぜんぜん知りませんでした」

 

「セリア……」

 

「三人が泊まりに来てくれなかったら、きっともっと長い間知らなかったと思います」

 

 セリアは目を開くと、私を見てにこりと微笑んだ。

 

「リジー、ありがとう」

 

 そこでやっと登りきった朝日の光が降り注いできて、セリアの髪がそれを反射してきらきらと輝きだした。

 私はこの世のものと思えないその光景を、なにも言えずにただ呆然と見つめる。

 

「それではお屋敷に戻りましょうか。私もリジーにならって、走ってみます」

 

 セリアは立ち上がって走りだす。

 そして私がついてきていないことに気づくと、振り返って悪戯っぽく笑った。

 

「リジー、置いて行ってしまいますよ?」

 

「あ、待ってセリア!」

 

 私は逃げるセリアを慌てて追いかける。

 すぐに追いついたけど。

 

「リジー、お屋敷まで競争です!」

 

「そんなに飛ばすと、体力がもたなくて倒れちゃうよ?」

 

「大丈夫ですよ!」

 

 元気に答えてセリアは走る。

 まあ、案の定お屋敷に着いた頃には、ふらふらだったよ。

 

「大丈夫?」

 

「は、はい……。リジー、いつも走った後は何をしているんですか?」

 

「家だと家事とか朝ご飯の準備なんだけど……」

 

 きっと家事も朝ご飯も、全部ルンやレイモンドさんがやるよね。

 どうしようかな? 私が悩んでいると、横でセリアが大きなあくびをした。

 

「リジー、私は二度寝をしますね……」

 

「うーん、私もそうしようかなー。でも、結構汗かいちゃったよ?」

 

 いくら早朝とはいえ、夏に走れば汗だくだ。

 

「大丈夫ですよ。ルン」

 

「はい!」

 

「私とリジーの体を綺麗にしてください」

 

「お任せを!」

 

 セリアがルンを呼んで、どこからか現れたルンが指をぱちんと鳴らした。

 すると一瞬で体にあった汗の感触が消え、汗で濡れて気持ち悪かった服が乾いた。

 あまりに早い展開に、私はまったくついていけない。

 

「ルン、ありがとうございます」

 

「それではルンはお仕事にお戻ります!」

 

 深々とお辞儀したルンが消えた。

 まだついていけてない私の手をセリアが握り、優しく引っ張った。

 

「リジーも二度寝しましょう」

 

「はあ、しょうがないなー。それじゃ、一緒に寝よっか!」

 

「はい!」

 

 その後、朝食の時間となってルンに起こされるまで、私はセリアの部屋で一緒に二度寝をした。

 お昼からはダイアゴン横丁でみんなでお買い物。

 すっごい楽しみだなー。

 

──────────

 

 レイブンクローの屋敷にリジー達が泊まりに来た翌日、午前中は四人で宿題をした。

 セリアとメグは早々に終わらせていたが、リジーは少ししか、アイビーにいたってはほとんど手もつけていなかったのだ。

 学年主席と三位であるセリアとメグの助けもあり、すべては終わらなかったもののほとんどの宿題が片付いた。

 そして昼食も食べ終わり、セリア達四人とレイモンド、ルンが玄関ホールに集まった。

 

「レイモンド、行ってきますね」

 

「ええ、お気をつけてください」

 

 レイモンドがそう言うと、リジーが少し驚いたように尋ねる。

 

「あれ? レイモンドさんはついてこないんですか?」

 

「はい。お嬢様がお友達だけで行きたいと言ったので、私の代わりにルンが行きますよ」

 

 レイモンドの言葉を聞いて、セリア以外の三人はルンを見る。

 一斉に見つめられルンは照れ臭そうに笑った。

 

「姿を消したルンが、みなさんを陰から守ります。そういった技は、人間よりも屋敷しもべ妖精の方が得意なのですよ」

 

「そうなんだ。ぜんぜん知らなかったわ」

 

「ルン、よろしくね」

 

「よろしくー!」

 

「お任せください!」

 

 ルンは自信満々に答える。

 四人は玄関ホールにある暖炉の前に移動し、セリアが小さな鉢から煙突飛行粉(フルーパウダー)を取り出す。

 それを暖炉の火に振りかけると、火は高く燃え上がりエメラルド色に変わった。

 セリアは一歩踏み出して暖炉の中に入る。

 

「それでは、先に行っていますね」

 

「うん」

 

「すぐ行くから待っていてね」

 

「勝手に動いちゃだめよ?」

 

 セリアは頷くと、小さく息を吸ってはっきりとした声で叫んだ。

 

「ダイアゴン横丁!」

 

──────────

 

 くるくると回転するような浮遊感がおさまり、セリアは暖炉から出て服についた煤を軽く払う。

 そして周りを見渡して首を傾げた。

 パブ《漏れ鍋》はいつも多くの客が入り、とても騒がしい。

 しかしセリアには、いつもの店内の喧騒とは少し違うように思えたのだ。

 

「どうしたの、セリア?」

 

 その声にセリアが振り返ると、ちょうどリジーが暖炉から出てきたところだった。

 

「いえ、なんだか店内の様子がおかしいような……」

 

「そうかな?」

 

「ちょっと気になりますので、店主さんに尋ねてきます。少し待っていてください」

 

「わかったー」

 

 セリアはカウンターでグラスを磨いているトムに近づく。

 

「トムさん、こんにちは」

 

「おや、ミス・レイブンクロー! お買い物ですか?」

 

「はい。ところで、なんだか店内が騒がしいのですが、何かあったのですか?」

 

「ああ、そうなんですよ! 聞いてください、ミス・レイブンクロー!」

 

 セリアが聞くと、トムは興奮したように急に大きな声をあげた。

 ちなみにその大声に驚き、セリアは少し飛び上がった。

 

「え、えっと、何が……?」

 

「実はですね、お昼前にハグリッドが店に来たのですよ。まあ、これは珍しくもないですがね。いつも樽で飲んでくれるので、店としてもありがたいですしねえ。ところが、今回は驚くような人を連れてきたのですよ。誰だと思いますか!?」

 

 グラスを置いたトムが、カウンターから飛び出しそうな勢いで語りだし、セリアは少し引き気味でそれを聞く。

 その様子を見たリジーや、暖炉から出てきたメグとアイビーが近づいてくる。

 

「セリア、大丈夫?」

 

「あ、みなさん」

 

「おや、ミス・レイブンクローのお友達ですか? ではみなさんにも聞いてもらいましょうか。今日ハグリッドが凄い方をこの店に連れてきたのです。なんと……!」

 

 トムの剣幕に呑まれ、四人はごくりと喉を鳴らす。

 そして目一杯ためて、トムが口を開く。

 

「なんと、ハリー・ポッターを連れてきたのですよ! あの生き残った男の子です!」

 

 それを聞いた四人は驚愕に目を見開く。

 

「ハリー・ポッター、ですか……」

 

「それって、「例のあの人」を倒したって人よね?」

 

「今年ホグワーツに入学ってことなのかな?」

 

「年下だったんだねー」

 

 驚く四人の少女達を見て、トムは満足げに頷く。

 

「いやあ、ハグリッドがポッターさんを連れて店内に入ったときは、大騒ぎでしたよ。なにせ、英雄のお帰りですからな。客が寄ってたかって握手を求めるわ、拝みだすわ……。もう出て行かれましたが、たまたまいらっしゃったクィレル教授も、驚きのあまり震えておられた」

 

 しみじみと語るトムの言葉に、メグがぴくりと反応する。

 

「クィレル先生ですか?」

 

「ええ。ああ、そういえば、去年一年間は学校を出て旅をなさっていたそうですねえ。でしたら、みなさんは今年が初めてなんですね」

 

「はい。闇の魔術に対する防衛術の授業、とても楽しみです」

 

 メグの興味はまだ見ぬ教師、クィレルに移ったようだが、他の三人はまだまだハリー・ポッターが気になっているようだ。

 

「店長さん、ハグリッド達がどこに行ったか知ってますか?」

 

「わかりませんなあ。先ほどまでハグリッドが、グリンゴッツのトロッコにやられたと言ってそこで酒を飲んでいましたが……」

 

「ハグリッド、グリンゴッツのトロッコで酔ったんだ。セリアと一緒だね」

 

「も、もう、からかわないでくださいリジー」

 

 リジーに言われてセリアは顔を赤く染める。

 二人の出会いの様子を知らないメグとアイビーは、その様子を興味津々で聞き出そうとする。

 リジーが嬉々として語り出そうとしたので、セリアは慌てて声を上げた。

 

「みなさん、早くお買い物に行きましょう!」

 

「あ、それもそうだねー」

 

「私も羊皮紙とかインクとか色々買いたい」

 

「そうね、行きましょうか。店長さん、お騒がせしてごめんなさい」

 

「いえいえ、お買い物楽しんできてください」

 

 四人はお辞儀をするトムに見送られ、《漏れ鍋》の中庭に出て石の門をくぐってダイアゴン横丁に足を踏み入れる。

 ダイアゴン横丁は相変わらず人でいっぱいだ。

 四人はさんさんと降り注ぐ日差しを浴びながら、ダイアコン横丁を歩き始める。

 

「まずはどこに向かいましょうか?」

 

「あ、私杖を見てもらいたいから、まずオリバンダーさんの店に行ってもいい?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「私もいいよ」

 

 四人は途中の《フローリアン・フォーテスキュー・アイスクリームパーラー》でアイスを買い、それをぺろぺろと食べながらオリバンダーの店を目指す(百味ビーンズアイスもあったが、リジーは一切目もくれなかった)。

 その途中にある箒用具店に数人の子供達が集まり、熱心に一本の箒を見つめていた。

 その箒を見たアイビーが、興奮したように口を開いた。

 

「あれ、ニンバス2000よ! 少し前にでた最新型!」

 

「へー、綺麗な箒だねー」

 

「とてもお小遣いじゃ買えないですね……」

 

「もし買っても、アイビーじゃ乗りこなせないよ」

 

「うるさいわね。わかってるけど、素敵な箒を見るとわくわくするじゃない」

 

 そんなことを話していると、前方にオリバンダーの店が見えてきた。

 四人が店に近づくと、店内から一人の女性が出てきた。

 すらりとした体型で肌は色白、長いブロンドの髪のその女性は、店から出て眩しげに青い目を細めると、セリア達四人に気がついた。

 そして笑顔を浮かべ口を開いた。

 

「セリア、久しぶりね。元気だった?」

 

「はい、こんにちは、ナルシッサさん。私は元気ですよ」

 

 ナルシッサと呼ばれた女性の挨拶に、セリアは微笑みを浮かべて返した。

 

「たしか、寮はハッフルパフだったかしら? 私としては、ぜひスリザリンへ入って欲しかったのだけど」

 

「実は組み分け帽子も、スリザリンかレイブンクロー悩んでいたんです。けれど少しお話をして、自分で決めました」

 

「それならいいわ。学校は楽しい?」

 

「ええ、とっても楽しいです!」

 

「そう、安心したわ」

 

 ナルシッサは少しセリアと会話をすると、置いてけぼりになっていたリジー達に目を向けた。

 

「それでセリア? その子達はお友達かしら?」

 

「はい! 大切なお友達です!」

 

 セリアが笑顔でそう言うと、ナルシッサも嬉しそうに頷いた。

 

「それは良かったわ。私にも紹介してくれる?」

 

「はい! みなさん、お願いします」

 

 セリアに言われ、三人は少し戸惑いながら自己紹介をする。

 

「えっと、リジー・スキャマンダーです。セリアとは入学前にダイアゴン横丁で会って、仲良くなりました。寮のお部屋も一緒です」

 

「スキャマンダー? もしかして、あのニュート・スキャマンダーの?」

 

「はい、おじいちゃんです」

 

「驚いたわ……。私が学生の頃も、おじい様がお書きになった教科書を使っていたのよ」

 

「そうなんですか? えへへ」

 

 祖父が褒められ、リジーは照れくさそうに笑った。

 次にメグが自己紹介をする。

 

「私はメーガン・バークです。こんにちは」

 

「ああ、あなたはアーロン・バークさんの子ね。パーティで何度か見かけたけれど、お話するのは初めてかしら?」

 

「はい。よろしくお願いします。セリアとは同じ部屋で、お友達です」

 

「ええ、よろしくね」

 

 最後にアイビーが口を開く。

 

「私はアイビー・ベケットです。メグとは家がお隣の幼馴染みで、父はマグルですが母が魔女です。二人と同じで、セリアと寮の部屋が一緒です」

 

「そう、お母様が魔女なのね。私の知っている方かしら? お母様のお名前は?」

 

「えっと、母はマーサと言います」

 

「……マーサ? マーサ・キャンベル?」

 

「キャンベルは母の旧名です」

 

「やっぱり。あの天才、どこにいるかわからないと思ったら、メーガンの両親にくっついて行っていたのね。まさか子供がいるとは思ってもいなかったけれど。よろしくね、アイビー」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 三人の自己紹介を受けたナルシッサも、自己紹介を返す。

 

「私はナルシッサ・マルフォイよ。夫も私も、セリアのお父様にお世話になっていたのよ。セリアは少し大変な子だけれど、仲良くしてちょうだいね」

 

「はい!」

 

 三人は元気に答え、セリアは顔を赤らめて恥ずかしそうにする。

 

「ナルシッサさんは、杖を買いにきたのですか?」

 

「ドラコが入学だから、今日は家族で必要な物を買いにきたのよ。ついでに今まで杖の整備をしてもらっていたわ」

 

「ドラコとは誰ですか?」

 

「私の息子よ。学校で会ったら優しくしてあげて頂戴」

 

「わかりました、仲良くなれるかしら?」

 

「ドラコは優しい子ですよ」

 

「セリア、その子のこと知ってるんだ?」

 

「はい、数少ない同年代のお友達なんですよ」

 

 五人が話していると、集まっているのが気になったのか、店内から怪訝そうにオリバンダーがこちらを見ていた。

 

「すみません、ナルシッサさん。まだお買い物が残っていますので、失礼します」

 

「わかったわ。呼び止めてごめんなさいね。良かったら、後でまた会えないかしら?」

 

「はい、大丈夫です。教科書類は最後に買おうと思っていましたので、夕方頃書店で待ち合わせでどうでしょうか?」

 

「それでいいわ。ルシウスもドラコも、きっと喜ぶでしょうね。それじゃあまた後で」

 

「はい」

 

 ナルシッサは四人に手を振ると、上品に歩き去って行った。

 

「みなさん、勝手に予定を決めてしまってすみません」

 

「大丈夫だよー」

 

「ええ、そのドラコって子にも会ってみたいし」

 

「私も問題ないよ」

 

「ありがとうございます。それじゃあ、お店に入りましょうか」

 

 四人はオリバンダーの店に入る。

 カウンターにはオリバンダーが立っており、お辞儀をして四人を出迎えた。

 

「いらっしゃいませ、オリバンダーの店へようこそ」

 

 まずはリジーがカウンターに近づく。

 

「こんにちは! 杖の点検をお願いします!」

 

「ええ、お任せくだされ。きちんと点検に来てくださり、ありがとう」

 

「えへへ」

 

 オリバンダーに微笑みかけられ、リジーは嬉しそうに笑う。

 オリバンダーは他の三人に視線を移した。

 

「みささんの杖も見てみましょうかの?」

 

「いいのですか?」

 

「ええ。むしろ、こちらからお願いしたいくらいじゃ」

 

「それでは、よろしくお願いします」

 

「お願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

 三人も杖を取り出してオリバンダーに渡し、オリバンダーは恭しく杖を受け取った。

 

「それでは、少しの間待っていてくだされ」

 

 そう言ってオリバンダーは店の奥へと入って行った。

 待っている間、この後どこに向かうかなどを話していると、さほど時間がかからずにオリバンダーが戻ってきた。

 

「みなさん、良い杖の使い方をしておったようでなによりじゃ。杖はみな良い状態じゃった。お代はいらんよ」

 

「でも」

 

「大事に使ってくれているだけで満足じゃ」

 

 無料でいいと言われ四人は遠慮しようとしたが、オリバンダーが本当に満足げに頷いていたので、ご厚意を受け取ることにした。

 杖を受け取り店を出ようとしたとき、セリアは自分の杖を見て少し迷ったような顔をした。

 そして意を決したように振り返り、オリバンダーに話しかけた。

 

「オリバンダーさん、私の杖とお父さんの杖は、お屋敷にある大きな木を使っています」

 

 セリアがそう言うとオリバンダーは驚いたような顔になる。

 しかしそれは一瞬で、穏やかな微笑みを浮かべ頷いた。

 

「そうじゃ。先先代のオリバンダーが、当時のレイブンクローの当主に許可を得て、木を採取させてもらったものだ。それから長年買い手がつかなかったが、二本ともふさわしい方の手に渡った」

 

 オリバンダーはセリアの持つ杖をじっと見つめる。

 

「どうか大事にしてくだされ」

 

「セリアは杖を抱きしめると、強く答えた。

 

「はい。私の魂が尽きるまで、例え何百年でも共に在り続けます」

 

 セリアの答えにオリバンダーは嬉しそうに笑う。

 

「ありがとう」

 

──────────

 

 オリバンダーの店を出た四人は、狭い店内で縮こまっていた体をぐっと伸ばした。

 

「それじゃあ、まずはローブを買いに服屋さんだね」

 

「ええ、それから薬問屋にも行きたいわ」

 

「それから羊皮紙とかインクとか必要な物も買わないとね」

 

「最後に教科書を買って、ナルシッサさんとの待ち合わせですね」

 

 この後の予定を確認して四人は頷き合う。

 

「それじゃあみんな、行こっか!」

 

「はい!」

 

「ええ!」

 

「うん」

 

 四人は元気良く歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 




なぜか思ったよりも進まず長くなったので、2つに分けます。
あと1話でお買い物が終わらせ、ホグワーツ特急に乗ります。
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