ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

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投稿が遅くなりすみません。
実習や試験がありなかなか時間が作れず、今回は少し短めになっています。


第35話 お買い物・二

「そう言えば、本当にルンはついて来ているのかしら?」

 

 服屋に向かう道すがら、アイビーがふとそう言う。

 

「はい。見えませんけれど、きっと近くで見守ってくれています。それにいざとなれば、魔法で身を守れば大丈夫ですよ」

 

 セリアの言葉にリジーが不思議そうに首を傾げる。

 

「あれ? 学校の外で魔法を使ったらだめなんじゃないの?」

 

「お父さんに聞いたんだけど、未成年の魔法使いの近くで魔法が使われたことが分かっても、誰が使ったかまでは特定できないそうだよ」

 

「え、そうなの?」

 

「はい。匂いと呼ばれている監視のための魔法があるのですが、基本的には家族が子供を監督するようになっているんですよ。匂いの魔法をレイブンクローが開発していたら、こんな欠点はなかったと思います」

 

 セリアが自信満々にそう言う。

 知らなかったリジーとアイビーは感心したように頷いていた。

 

「あれ? それじゃあ家にいる間も、魔法の練習はできるってこと?」

 

「うん。私は宿題をするときだけ、魔法を使うのを許してもらってるよ」

 

「私は宿題をするときや魔法の練習をするときに、レイモンドに許可をもらっています」

 

「そうなんだねー。私も兄ちゃんに言って許してもらおうっと」

 

 そのように話していると、《マダム・マルキンの洋装店》に到着した。

 丸っこい店主に迎えられ、四人はローブの丈合わせをする。

 まずはリジーとアイビー。

 

「お嬢ちゃん達はもう合わないし、新しく作り直した方がいいわねえ」

 

「お願いしまーす」

 

「お願いします」

 

 次にセリア。

 

「お嬢ちゃんは、そうねえ。背丈は問題ないけれど、所々合っていないわ。今作り直しても来年にしてもいいけれど、どうしますか?」

 

「うーん。昨日試しに着てみてもあまり違和感はありませんでしたし、今年一年はこのままにしておきます」

 

「わかったわ」

 

 次にメグ。

 

「お嬢ちゃんは……このままで問題ないわね」

 

「え……」

 

 一人だけ成長していないと言われたような気がして、メグは膝から崩れ落ちた。

 その様子をセリア達は何とも言えない表情で見る。

 メグは弱々しく立ち上がると、引きつった笑みを浮かべた。

 

「あはは……私はどこか近くのお店を見ておくから、みんなはゆっくりしていってよ……」

 

 そう言ってメグはふらふらと店を出て行った。

 そんなメグをセリアは慌てて追いかける。

 

「メ、メグ、待ってください! リジー、アイビー、私はメグと一緒にいますので、お買い物が終わったら少し待っていてください!」

 

「う、うん、わかったよ」

 

「メグをよろしくね、セリア」

 

「はい!」

 

 セリアも店を出て行き、後には心配そうなリジーとアイビー、そして困ったように苦笑いをしているマダム・マルキンが残された。

 それからしばらくして採寸が終わり、リジーとアイビーは新しいローブが仕上がるのを待っていた。

 すると店の扉が開き、セリアとメグが入ってきた。

 メグは店を出て行ったときと違い、もう落ち着いた様子だ。

 

「ごめんね二人とも、飛び出したりして」

 

 申し訳なさそうにメグが言う。

 

「ううん、気にしなくていいよ!」

 

「そうそう。それにメグはとってもかわいいんだから大丈夫よ!」

 

 リジーとアイビーがそう言うと、メグはほっとしたように微笑んだ。

 セリアも安心したように微笑むと、鞄からいくつか包みを取り出した。

 

「メグと二人で羊皮紙や羽根ペンのインクを買ってきました。二人の分もあるので、受け取ってください」

 

「お、ありがとーセリア!」

 

「メグもありがとね」

 

「うん」

 

 服屋を出た四人は次に薬問屋に向かい、少なくなっていた材料や新しく指定された材料を購入した。

 アイビーは学校指定の材料以外にも色々なものを買っていた。

 

「アイビー、そんなに色々買ってどうするの?」

 

「授業以外でももっと魔法薬を作ろうと思ってね」

 

 その他にも細々とした小物類、寝るときや休日に着る服などを購入していき、時間は過ぎていった。

 

「他に必要なものはあったかしら?」

 

「私はもう特にありません」

 

「私も大丈夫かな。そうだリジー、ミコのご飯とかは買わなくていいの?」

 

「うん。スニジェット保護区から必要な物は支給されるから、私は特に何も買わなくても大丈夫だよー」

 

 言い終わってから、リジーは小さく「なんだかすごくミコに会いたくなってきた……」と呟いた。

 

「それでは書店に向かいましょうか」

 

「ええ」

 

「早く行こう!」

 

「どんな子なのか楽しみだねー」

 

 四人は《フローリシュ・アンド・ブロッツ書店》を目指す。

 書店は近くにあったので四人はすぐに到着した。

 

「セリア」

 

 四人が書店に入ろうとすると、後ろから呼ぶ声がした。

 振り返ると先ほどオリバンダーの店の前で会ったナルシッサが立っていた。

 四人は上品に片手を振っているナルシッサの元へ駆け寄る。

 

「ナルシッサさん! すみません、お待たせしてしまいましたか?」

 

「いいえ、今来たところ。そろそろ来る頃だと思って迎えに来たのよ。二人とも待っているわ」

 

「分かりました。すぐに買い物を済ませますので、あと少々お待ちください」

 

「大丈夫よ、必要な本は夫が買っておいたわ。もちろん四人分よ」

 

 ナルシッサの言葉に四人は驚く。

 

「い、いえ、そんな……」

 

「さすがに受け取れないわ……」

 

「うん、申し訳ないよ」

 

「そうだよね……」

 

 四人が戸惑っていると、ナルシッサは少し呆れたように小さく笑った。

 

「私もそう言ったのだけど、あの人が買うって聞かなかったのよ。セリア、きっと久しぶりに会うあなたにいい顔を見せたかったのね。悪いけど、夫の見栄に付き合ってくれないかしら?」

 

 そう言われて、セリアは小さく頷いた。

 

「わ、わかりました……」

 

 セリアの答えを聞いてナルシッサも満足げに頷く。

 

「よかったわ。それじゃあ四人とも、付いてきてちょうだい」

 

 四人はナルシッサに続いて歩きだす。

 しばらくすると大勢いた買い物客の姿が減り、代わりにお金持ちそうな人々が歩く通りに出た。

 

「な、なんだか場違いな気がするわ」

 

「そうだね……私もあんまり得意じゃないよ……」

 

「なんだか綺麗な所だねー」

 

「この辺りに来るのは久しぶりです」

 

 四人はきょろきょろと辺りを見渡しながら歩く。

 

「ほら、着いたわ」

 

 到着したのはいかにも高級そうな料理店。

 恭しくお辞儀をする店員が開けた扉をナルシッサとセリアはごく自然に通り、その後を残りの三人が恐る恐る続く。

 シャンデリアが輝くきらびやかな店内を店員に案内され奥まで進むと、明らかに貴族御用達といった様子の個室へ着いた。

 個室内には、グレーの瞳とプラチナブロンドの手入れの行き届いた髪を持ち他とは違う風格をまとった男性と、その男性と同じ髪と少し薄いグレーの瞳を持つ少年が豪華な座席に着いていた。

 

「待たせてごめんなさい、ルシウス」

 

「ああナルシッサ、案内ありがとう。セリア、久しぶりだな」

 

 個室へと入って来た五人に気がついた男性が、優雅に片手を上げて声をかける。

 

「お久しぶりです、ルシウスさん」

 

 男性、ルシウス・マルフォイに、セリアは嬉しそうに微笑んで返す。

 ルシウスも満足そうに微笑むと、セリアの後ろに所在なさげに立つリジー達に目を向けた。

 

「ああ、その子達がナルシッサが言っていた友達だな? セリア、良ければ私に紹介してくれないか?」

 

「はい! みなさん、こちらへ」

 

 セリアはリジー達に一歩前へ出るように促し、三人は恐々と前に出た。

 

「私の大切なお友達の、リジーとメグとアイビーです」

 

「は、はじめまして、リジー・スキャマンダーです」

 

「メーガン・バークです」

 

「アイビー・ベケットです。よろしくお願いします」

 

 三人が緊張しながら自己紹介をすると、ルシウスは頷いて自分の胸に手を当てた。

 

「私はルシウス・マルフォイだ。セリアの父上には良くしてもらった。セリアのことも自分の娘だと思っている。これからも仲良くしてあげてくれ。それと……」

 

 ルシウスは隣に座る少年へと目を向けた。

 少年はセリア達が入ってきたときからそわそわと落ち着きが無い様子だったが、隣に座る父の目が光っていたため動けないでいた。

 

「こっちが息子のドラコだ。今年ホグワーツへ入学するので、良くしてやってくれると嬉しい。ドラコ、挨拶をしなさい」

 

「はい、父上!」

 

 ルシウスにそう言われて、少年は待っていたとばかりに答えた。

 

「僕の名前はドラコ・マルフォイです。セリアとは昔から仲良くしています。みなさん、よろしくお願いします」

 

 ドラコはセリア以外の三人へ行儀良くお辞儀をしてそう言った後、セリアの方を向いて満面の笑顔を浮かべた。

 

「やあセリア、久しぶりだね! 今年から僕もホグワーツさ! 僕はスリザリンに決まっているだろうけど、学校でもよろしく」

 

「ええ、お久しぶりですドラコ。私もスリザリンでしたら、寮でも一緒だったのに……」

 

「ハッフルパフだって、スリザリン程じゃないけどすばらしいよ。今日ローブの採寸のときに僕と同じ新入生に会ったんだけど、あまりホグワーツについて知らなかったようだから、スリザリンとハッフルパフについて色々教えてあげたよ」

 

「そうなんですか? ドラコは親切ですね」

 

 にこにこと微笑むセリアに褒められ、ドラコは少し頬を赤らめながら得意げに話し続ける。

 その様子を見てリジー達は、ドラコがセリアに対してどのような感情を抱いているのかを何となく理解した。

 ドラコの両親も微笑ましそうに見ていたが、しばらくしてからルシウスが両手を軽く叩いて会話を遮った。

 

「ドラコ、積もる話もあるだろうが、まずは夕食を食べようか。用意しているシェフを待たせては失礼だろう」

 

「はい、父上」

 

 ドラコが黙ると、ルシウスは杖を取り出して軽くテーブルを叩いた。

 すると個室の扉が開き、複数人の店員が料理を手に入室してきた。

 どの料理も作り立てのようで、とても豪華で美味しそうだ。

 

「それではセリア、それにお友達の子達。料理を楽しんでくれ」

 

「ありがとうございます、ルシウスさん」

 

 セリアが笑顔でお礼を言い、リジー達も慌ててそれに続く。

 それから豪華な料理に舌鼓を打ち、ドラコやその両親との会話も弾み、とても楽しい時間が流れた。

 こうしてはじめてのお泊まり会の二日目が過ぎていった。

 

──────────

 

 お泊まり会三日目。

 朝の日課を終えたリジーは、ルンに案内され屋敷の厨房に立っていた。

 

「ごめんねルン。お仕事を取っちゃって」

 

「いえ、ルンは平気です! それでは頑張ってくださいませ!」

 

「うん、ありがとう!」

 

 ルンは深々とお辞儀をすると、音もなく姿を消した。

 

「よーし、やるぞー」

 

 リジーは腕まくりをしてそう呟く。

 リジーが厨房にいる理由は朝食を作るためだ。

 楽しいお泊まり会のお礼に朝食を準備しようと思い、リジーはこっそりとルンに頼んでいた。

 鼻歌まじりにリジーが朝食を作り始めてからしばらくして、他の三人が眠たそうに食堂へやってきた。

 

「みんなおはよう! 朝食できてるよー」

 

「え、リジーが用意してくれたの?」

 

「えへへ、うん! お泊り会のお礼だよ!」

 

「うわあ、嬉しいです!」

 

「リジーだけずるいわ! じゃあ私は昼食を作る!」

 

 朝食はトーストや目玉焼き、ソーセージや豆料理など特別な物ではなかったが、とてもおいしかった。

 朝食を食べ終えて午前中、四人はレイモンドの監督の下、魔法の練習をした。

 

「うーん、やっぱりしばらく魔法を使ってなかったから、少し違和感があるわね」

 

「夏休み中毎日じゃなくても、少しは実際に使っておいた方がいいよ」

 

「これからそうするわ。ねえメグ、この呪文ってどうしたらうまくできるの?」

 

「えっと、これはね……」

 

 リジーがメグに教えてもらいながら呪文を練習している横で、リジーは大量のフォークをどんどんネズミに変えていき、続けて元のフォークに戻していた。

 連続で変身術を使うの高度な技術であり、実際かなり集中しているのか、リジーの額にはうっすらと汗が滲んでいた。

 そしてセリアは杖を構えて目を閉じ、集中力を高めていた。

 

「ふう……、エクスペクト・パトローナム、守護霊よ来たれ」

 

 セリアの杖先から白く輝く光が飛び出し、何かの形を作った。

 何かしらの動物であることはわかるが、はっきりとした形は成していない。

 その光はしばらく漂った後消え、杖を下ろしたセリアは小さく息をついた。

 

「なかなかうまくいきません……」

 

「いえ、その歳でここまでできていれば十分ですよ。大人の魔法使いでも、守護霊の呪文は大多数が使えないのですから。この様子なら、練習していけば必ず成功するでしょう」

 

 レイモンドにそう言われ、悔しそうにしていたセリアは少し気を取り直したようだ。

 

「まあ、ジェイドは入学したときから使えましたが。彼は規格外なので参考にはなりませんよ」

 

「そうなんですか……さすがお父さんですね。レイモンド、また守護霊の呪文を見せてもらってもいいですか?」

 

「もちろんいいですよ」

 

 魔法の練習の後は朝に宣言した通り、アイビーが昼食を作った。

 お菓子作り以外ではリジーに及ばないものの、セリアの好物であるシチュー(今日はビーフシチューだった)とデザートのケーキでセリアとメグの心をしっかりとつかんだ。

 そして食後の紅茶を楽しみながらゆっくりと話していると、いよいよ三人が帰る時間が近づいてきた。

 荷物をまとめた三人とセリア、レイモンドは玄関ホールに集まった。

 

「みなさん、こちらをどうぞ」

 

 セリアがリジー達に三つの石を渡す。

 三人は石を見下ろすが、きらきらと綺麗に輝いているものの特に変わった物ではない。

 首を傾げたリジーがセリアに尋ねる。

 

「セリア、これ何?」

 

「これは移動キー(ポートキー)ですよ。時間になるとみなさんを家まで送ってくれます。その石は特別な力はありませんが、はじめてのお泊まりの記念にもらってください」

 

 セリアは恥ずかしそうに微笑みながらそう答えた。

 それを聞いて石を受け取った三人も笑顔を浮かべる。

 

「ありがとうセリア!」

 

「大事にするわね!」

 

「ありがとう」

 

 三人はセリアを抱きしめる。

 セリアは少し苦しそうな顔で、しかしとても嬉しそうに抱きしめられていた。

 しばらく四人が抱き合っていると、石が青白い光を放ち始めた。

 

「そろそろ時間ですね……」

 

 三人がセリアから離れてそれぞれ荷物を持つと、徐々に光が強くなっていった。

 

「それじゃあセリア、九月一日に!」

 

「またお手紙出すわね」

 

「すごく楽しかったよ。またね」

 

「はい。みなさん、また会いましょう」

 

 光はやがて三人の姿を覆い隠し、一際大きく輝いた後に消えた。

 そしてそこにはもう三人の姿はなかった。

 セリアは三人が立っていた場所をしばらくじっと見つめていた。

 

「お嬢様、お疲れ様でした。頑張りましたね」

 

「ええ、お疲れ様ですレイモンド。私、ちゃんとおもてなしできていましたか?」

 

「はい、立派でしたよ」

 

「それなら良かったです! 明日からはお仕事も頑張ります」

 

 セリアは両手の拳をぐっと握りしめてやる気満々な様子だ。

 レイモンドはそれを見て楽しそうに笑う。

 

「頑張りすぎると、風邪を引いて泣いてしまいますよ」

 

「泣きません! ……お仕事を頑張っていれば、早く時が流れるように感じるでしょう?」

 

 セリアは杖を取り出して見つめ呟く。

 

「ああ、早く新学期にならないかなあ……」

 




次回、ホグワーツ特急に乗ります。
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