ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

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ジョニー・デップさんがグリンデルバルドを降板するとは……。
あの方の演じるグリンデルバルドはカリスマ性や妖しい魅力があり、この先どのような物語になっていくのか楽しみにしていたのですが、残念です。
もちろんシリーズは全て観に行くつもりですが、後任はどんな俳優さんになるのか、これからの情報は注視しなければいけませんね。


第37話 歌/新しい教師

 

「私はきれいじゃないけれど

 人は見かけによらぬもの

 私をしのぐ賢い帽子

 あるなら私は身を引こう

 山高帽子は真っ黒だ

 シルクハットはすらりと高い

 私はホグワーツ組み分け帽子

 私は彼らの上をいく

 君の頭に隠れたものを

 組み分け帽子はお見通し

 かぶれば君に教えよう

 君が行くべき寮の名を

 

 グリフィンドールに行くならば

 勇気ある者が住う寮

 勇猛果敢な騎士道で

 他とは違うグリフィンドール

 

 ハッフルパフに行くならば

 君は正しく忠実で

 忍耐強く真実で

 苦労を苦労と思わない

 

 古き賢きレイブンクロー

 君に意欲があるならば

 機知と学びの友人を

 ここで必ず得るだろう

 

 スリザリンではもしかして

 君はまことの友を得る

 どんな手段を使っても

 目的遂げる狡猾さ

 

 かぶってごらん! 恐れずに! 

 興奮せずに、お任せを! 

 君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)

 だって私は考える帽子!」

 

 組み分け帽子は椅子の上で高らかに歌い終わると、大広間中の拍手喝采の浴びながら各テーブルに深々とお辞儀をして動かなくなった。

 ハッフルパフのテーブルで拍手をしながら、リジーは首を傾げる。

 

「ねえ、今の組み分け帽子さんの歌、私達の組み分けのときと違ってたよね?」

 

「実は組み分け帽子の歌は、毎年新しいものなんですよ。一年かけて組み分け帽子は新しい歌を考えるそうです」

 

「へえ。つまり、これから毎年違う歌が聞けるのね?」

 

「それはちょっと楽しみかも」

 

 セリア達がそう話していると、マクゴナガルが巻き紙を手に持って一歩前に進み出てきた。

 

「これからABC順に名前を呼びますので、呼ばれた新入生は椅子に座って帽子を被るように」

 

 組み分けを待つ新入生達はみんな、不安と期待が混じり合ったような表情を浮かべている。

 それを見ながらセリアは自身の組み分けを思い出し、まだ一年しか経っていないのにひどく懐かしく感じた。

 マクゴナガルに名前を呼ばれた新入生達は、次々と組み分け帽子を被り寮が決定していく。

 

「グレンジャー・ハーマイオニー」

 

 そう呼ぶ声に応えて元気に前に出てきたのは、特急の旅でネビルと共にヒキガエルを探していた少女だ。

 その少女の顔をほとんど覆うように組み分け帽子が被せられる。

 組み分け帽子は少し悩んだ後に「グリフィンドール!」と叫んだ。

 少女は笑顔を浮かべてグリフィンドールのテーブルに駆け寄り、暖かい拍手と共に迎え入れられた。

 

「あの子はグリフィンドールかー」

 

「初対面の相手のペットを一緒に探すほど、正義感がある人ですからね」

 

 ちなみに、ヒキガエルに逃げられていた少年、ネビル・ロングボトムはグリフィンドールに組み分けされた(後で聞いたところによると、ヒキガエルは無事保護されたらしい)。

 ハーマイオニーの組み分けから少ししてドラコの名前が呼ばれたが、組み分け帽子は彼の頭に触れるやいなや「スリザリン!」と叫んだ。

 満足そうな表情で椅子から立ち上がりスリザリンのテーブルへ向かうドラコに、セリアは目立たないように小さく手を振る。

 それに気がついたドラコは、微かに顔を赤く染めながらも誇らしげにスリザリンの席に着いた。

 それからも順調に組み分けが進んでいき、やがて一つの名前が呼ばれた。

 

「ポッター・ハリー」

 

 その瞬間大広間には沈黙が広がり、組み分け帽子が待つ椅子へ向かう少年の姿を一目見ようと、生徒達はみんな首を伸ばした。

 ハリーは緊張で固まった表情を浮かべながら組み分け帽子を被った。

 ハリーと組み分け帽子は何やら話し合っているようで、その組み分けは長い。

 

(さて、生き残った男の子はどの寮になるのでしょうか。ハッフルパフだったらいいなあ)

 

 セリアはそんなことを考えながら組み分けを見守る。

 今まで呼ばれたどの新入生よりも長時間組み分け帽子は悩み、やがて大きな声で叫んだ。

 

「グリフィンドール!」

 

 その声が響き渡ると、大広間は大歓声に包まれた。

 ハリーは安堵の表情を浮かべてグリフィンドールのテーブルに向かい、熱烈な歓迎を受ける。

 双子のウィーズリーが「ポッターを取った! ポッターを取った!」と何度も繰り返し叫び、グリフィンドールの生徒がこぞってハリーへ握手を求めたりして、少しの間組み分けが止まったほどだ。

 教員テーブルでは、ダンブルドアでさえも両手を叩いて祝福をしていた。

 

「あーあ、グリフィンドールかー……。ちょっと残念だね」

 

「はい……色々と聞いてみたかったです」

 

「あれだけの有名人が同じ寮になったら楽しそうだったのに……グリフィンドールが羨ましいわ」

 

「私はセリアと同じで、色々と聞いてみたかったかな」

 

 ハリーの組み分け以降は特に変わったことはなく、無事全ての新入生の寮が決まった。

 マクゴナガルが名前が書かれた巻き紙を片付け、椅子と組み分け帽子を下げた。

 それと入れ替わるように、教員テーブルの真ん中に座っていた校長、アルバス・ダンブルドアが立ち上がった。

 ダンブルドアは両腕を大きく広げて大広間をぐるりと見渡すと、にっこりと笑った。

 

「新入生達、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言三言言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上!」

 

 ダンブルドアはそう言い切ると席に着き、両手を打ち鳴らす。

 すると大広間にいる全員が拍手をして歓声を上げる中、空っぽだった皿が食べ物でいっぱいになった。

 生徒達は我先にとご馳走に群がる。

 

「うーん、やっぱりホグワーツの料理はおいしいわね!」

 

「そうだねー。これからしばらくご飯を作らなくていいなんて、すっごく楽ちんだよ」

 

「どれもおいしいですけれど、シチューが一番おいしいです!」

 

「私はもっと甘い料理があってもいいと思うな」

 

「こらメグ! ちゃんとお野菜も食べなさい!」

 

「ちょっとアイビー、野菜ばっかり入れないでよ」

 

「セリアー、シチューがおいしいのはわかるけど、ちゃんとお肉も食べなよ?」

 

「はい!」

 

 セリア達も楽しく話しながらご馳走を堪能する。

 どの寮のテーブルも大盛り上がりで、教員達も和やかな雰囲気で食事を楽しんでいた。

 

「あっ! ねえメグ、あの人が新しい先生じゃない?」

 

「え、どこ? どの人?」

 

「ほら、あの紫色の布? を頭に巻いてる、スネイプ先生と話してる人」

 

 アイビーが言う方向を見てみると、青白い神経質そうな顔をした男が、少し怯えたようにスネイプと話している姿があった。

 

「なんて言うか、見た感じだとあんまり強そうに見えないねー」

 

「でもホグワーツの教師だし、優秀なはずよね?」

 

「うん。今年は教科書を読むだけじゃなくて、ちゃんと防衛術を習えたらいいなあ」

 

「あはは。メグ、すっごく楽しみにしてるねー。ねえ、セリアはどう思う? ……セリア?」

 

 セリアからの返事が無く、リジーは怪訝そうにセリアの顔を見る。

 そのセリアはというと、新しい教師ではなくスネイプの顔をじっと見つめていた。

 

「セリア、どうしたの?」

 

「えっ? す、すみませんリジー、少し考えごとをしていて……。なんでしょうか?」

 

「えっと、あの新しい先生はどうかなーって話してたんだよ」

 

「メグは期待しているみたいなんだけど、セリアはどうかしら?」

 

 セリアは口元に手を当てて少し考える。

 

「そうですね……一昨年までホグワーツで教えていたということは、優秀であることは確かだと思います。実際に授業を受けるまでわかりませんが、悪いということはないと思いますよ」

 

 セリアの答えを聞きメグは満足そうに頷く。

 

「私は楽しみだよ。早く授業始まらないかな……」

 

「私は早く変身術をしたいなー。マクゴナガル先生に私の進歩を見てもらうんだー」

 

「私は魔法薬学ね。せっかくセリアに貴重な材料をもらったのに、休暇中はあんまり魔法薬を作れなかったのよ」

 

「私は全て楽しみです。今年も成績を落とさないよう、頑張ります!」

 

 しばらくするとあらかた食べられた料理が皿から消え、代わりに色々なデザートがテーブルに現れた。

 生徒達は再び歓声を上げながら皿に群がり、ほんの少し前までご馳走を食べていたとは思えないほどの勢いでデザートをかきこんでいく。

 メグは「甘い物は別腹」と一言言うと、ぱくぱくとデザートをたいらげていった。

 アイビーはそれに少しうらめしそうに見ながら、ちびちびとデザートを口にする。

 セリアとリジーは二人とも少量ずつ色々なデザートを取り、おいしそうに頬を緩ませながらデザートを楽しんでいた。

 そしてデザートもほとんど食べられてテーブルの上から消え去り、再びダンブルドアが立ち上がった。

 去年と同じく禁じられた森へ入らないようにすること、廊下での魔法使用の禁止と持ち込み禁止の一覧をフィルチの事務所で確認できること、クィディッチチームに入りたい生徒は、各寮監とフーチに連絡をすること、などといった連絡事項が伝えられた。

 そしてダンブルドアは、最後に去年とは違うことを言う。

 

「それと最後に、とても痛い死に方をしたくない生徒は、今年いっぱい四階の右側の廊下に立ち入らないこと」

 

 今までされたことのなかった注意に極少数の生徒は笑う。

 しかし大多数の生徒は怪訝そうな表情を浮かべ、ひそひそと話し声があちらこちらから聞こえてきた。

 その雰囲気を吹き飛ばすように、急にダンブルドアは声を張り上げた。

 

「では、寝る前に校歌を歌いましょう!」

 

 それを聞いた瞬間、和やかだった教員達全員の顔が急に強張った。

 ダンブルドアが杖を取り出して楽しそうに振ると、杖先から金色のりぼんが出てきて、空中に歌詞を書いた。

 

「それでは自分の好きなメロディーで、さん、し、はい!」

 

──────────

 

「ホグワーツ、ホグワーツ、ホグホグワツワツホグワーツー」

 

「とっても楽しい歌でしたね!」

 

「そうかしら……? メロディーもばらばらだし歌詞も変だったじゃない」

 

「私、ホグワーツに校歌があるなんて知らなかったよ……」

 

 寮の寝室に戻った四人は、パジャマに着替えながら先程の個性的すぎる校歌を思い出す。

 

「私あんまり歌は得意じゃないんだけど、さっきのは楽しかったなー」

 

「リジーの歌、素敵でしたよ」

 

「お、ありがとーセリア。セリアは歌、すっごい上手だったね?」

 

「お母さんがいつも歌を口ずさんでいて。私もよく一緒に歌ってたんですよ」

 

 リジーに褒められたセリアは、照れたように微笑みながら言う。

 

「メグ。あなた口は動かしてたけど、歌ってなかったでしょ?」

 

「だって恥ずかしいし。アイビーは歌うまいからいいよね」

 

 アイビーにからかうように指摘されると、メグは不貞腐れながらそっぽを向いた。

 その様子を見てアイビーは笑いながらメグを抱き寄せた。

 

「ごめんなさい、許して。ね?」

 

「はあ……もういいよ」

 

「お詫びに今夜は一緒に寝ましょう」

 

「それお詫びになってないと思うんだけど……」

 

 呆れた口調でメグは言うが、顔は笑っており本気で嫌がっているわけではないようだ。

 

「アイビー、メグと一緒に寝るんだ。ねえねえセリア、私達も一緒に寝る?」

 

「いいんですか!? すごく嬉しいです!」

 

「そんなに嬉しいの? 照れるなー」

 

 パジャマに着替え終えると、セリアとリジー、メグとアイビーはそれぞれ同じベッドに入った。

 ゆっくりと部屋の電灯が消え、室内を窓から入る月と星の明かりがうっすらと照らす。

 

「それじゃあみんな、おやすみなさい」

 

「おやすみ」

 

「おやすみー」

 

「おやすみなさい」

 

 挨拶を交わすと、それほど時間がかからずに四人分の寝息が聞こえてきた。

 

──────────

 

「んー、今日もいい天気だなー」

 

 大扉から城の外に出た私は、大きく体を伸ばしながら準備運動をする。

 ある程度体が温まってきたらゆっくりと走りだす。

 今日でホグワーツに来て二週間が過ぎた。

 久しぶりの授業はセリアのお家でいっぱい勉強したおかげか、四人とも今のところ苦労することなくついていけてる。

 特に変身術なんてすっごくうまく呪文を使えたから、マクゴナガル先生に点をもらったしね。

 この間の週末には四つの寮がそれぞれ予選をしていて、ケイティがチェイサーに、チョウがシーカーに選ばれた。

 二人ともすっごい喜んでいて、やる気満々だったなー。

 けど、グリフィンドールチームは優秀なシーカーが見つからなかったみたいで、新しくキャプテンになったキーパーのオリバー・ウッドって人が頭を抱えていた。

 チャーリーの後任だもん、なかなか見つからないよね。

 ハッフルパフチームは去年と変わらずセドリックがシーカー。

 セドリックも気合十分って感じだったし、きっと今年こそ優勝だよ。

 おっと、考えながら走ってたらもうハグリッドの小屋が見えてきた。

 ハグリッドは私に気がつくと、手をぶんぶんと振って挨拶をしてくれる。

 

「よお、リジー! 相変わらず早いな」

 

「おはよー、ハグリッド! 何かお手伝いできることはある?」

 

「うんにゃ、今はもうほとんどやることはないなあ。いつもありがとうよ」

 

「えへへ、どういたしまして」

 

 私はしばらくファングと遊んでから城に戻り、廊下を進んで寮を目指す。

 寝室ではまだ三人が寝てた。

 まだ少し時間あるし、みんなを起こす前にミコにご飯をあげて、その後ちょっと変身術の練習でもしておこうかな。

 新学期最初のマクゴナガル先生との特別授業では、実技がすっごい上達してるって褒められたんだよね。

 座学の方も基本はもう一通りできたから、今年からは本格的に動物もどき(アニメーガス)について進めていくそうだ。

 夢にどんどん近づいていくって感じがして、なんだかすっごく楽しいよ。

 

「リジー、おはよう……」

 

「あ、アイビーおはよー」

 

 しばらくベッドの上でボタンをコガネムシに変身させたり戻したりしていると、アイビーがベッドから身を起こして眠そうに言った。

 それからほとんど間をおかずにセリアとメグも目を覚ました。

 もっとも目を覚ましただけで、二人ともなかなかベッドから出てこないんだけどね。

 ベッドから出ようとしないセリアはすっごいかわいいんだけど、毎朝これだからちょっとだけ大変。

 アイビーと一緒になんとか二人をベッドから引っ張り出して支度をさせる。

 

「ねえ、今日の最初の授業は何だったかしら?」

 

「確か闇の魔術に対する防衛術ですよ」

 

「はあ……」

 

 アイビーの質問にセリアが答えると、メグが悲しげに大きなため息をついた。

 まあ、メグが落ち込むのもしょうがないよ。

 今年の闇の魔術に対する防衛術の授業だけど、その……正直微妙だった。

 クィレル先生は優秀な人で、去年は世界中を回って吸血鬼と遭遇したりゾンビを退治したりと、色々な体験をしてきたらしい。

 だけど先生はその話を全然してくれないし、質問してもいっつも話を逸らすんだよ。

 授業も教科書を読むだけって訳じゃないけど、呪文は使わずに座学ばっかりだし。

 メグだけじゃなく、去年クーパー先生の授業が人気だった上級生の人達も、クィレル先生の授業には物足りなく思ってるそうだ。

 

「メグ、元気出して。きっと来年にはすっごい魔法を学べるよ」

 

「うん……」

 

 だけど、二年続けて期待が外れちゃってるメグの落ち込みようは、見ていて本当にかわいそう……。

 闇の魔術に対する防衛術の先生は毎年変わってるし、来年新しい先生が来るんならすっごく優秀な人だったらいいなー。

 そうして話していると大広間に到着した。

 とりあえずメグに甘い物をいっぱいあげて、なんとか元気にさせてあげないとね。

 

 

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