ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

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グリンデルバルドの後任が正式決定しましたね。
私は海外の俳優についてあまり詳しくないのでどんな方なのか調べてみたら、007での敵役やドクター・ストレンジのカエシリウス、ドラマ版のハンニバル・レクターを演じられた方のようです。
とてもすてきな雰囲気の俳優ですので、この方の演じられるグリンデルバルドがどのようになるのか、これから楽しみにしたいです。


第38話 ハーマイオニー・グレンジャー

 セリア達が特急の旅で出会った少女、ハーマイオニー・グレンジャー。

 グリフィンドールに組み分けされた彼女は、実に優秀な生徒だった。

 教科書は一通り暗記しているし、突然の教師からの質問にも適切な答えを返す。

 習った魔法は大抵すぐに成功するし、もしできなくとも何度か練習をしたら使えるようになる。

 授業時間外でも予習復習を欠かさない。

 さらに魔法族の生まれではなくマグル生まれだということも、彼女の非凡さを表していた。

 一方でその優秀さと頭の固い性格のせいか、彼女はなかなか友達ができないでいた。

 同学年の女子生徒達は彼女の頭の固さから少し距離を測りかねており、男子生徒達はまるで母親のような小言の多さに鬱陶しさを感じ、彼女に近づこうとはしない。

 そのためか、彼女はよく図書館へ訪れて本を読んで時間を過ごしていた。

 そういった事情があって、同じく図書館を頻繁に利用するセリアやメグとよく話をするようになったのは、不思議なことではなかっただろう。

 

「あ、また来てたんだ、ハーマイオニー」

 

「こんにちは」

 

「あ、こんにちは……」

 

 図書館に入ったセリアとメグは、ハーマイオニーの姿を見つけ近づいて声をかけた。

 対するハーマイオニーは目の前に本を広げているものの、あまり集中できておらず心ここにあらずといった様子だった。

 

「ハーマイオニー? 何か嫌なことでもありましたか?」

 

 ハーマイオニーからよく人間関係について相談を受けていたため、彼女の様子をおかしく思ったセリアは何かあったのかと不安げに尋ねる。

 

「いえ、嫌なことがあったんじゃないんだけれど……」

 

 ハーマイオニーは何かを言おうとして、ためらうように再び口を閉じた。

 

「何かあるんだったら話してよ。図書館仲間として力になるよ」

 

 メグがそう言って、さらにその横でセリアもこくこくとうなずくと、ハーマイオニーは少し迷っていたがやがて小さな声で話し始めた。

 

「実は昨夜、こんなことがあったの……」

 

 ハーマイオニーの話はこうだ。

 昨日飛行訓練中に起きたいざこざから、売り言葉に買い言葉でハリーとドラコが決闘をしようということになってしまったらしい。

 

「……ドラコとポッターさん達は、仲が悪いのですか?」

 

「え? ええ、顔を合わせればだいたい喧嘩をしているわ」

 

「そうだったんですか……」

 

 ドラコが真夜中に時間を指定してハリー達もそれを了承、それを偶然聞いていたハーマイオニーはやめるように言ったが、二人はまったく聞く耳を持たなかった。

 そして夜、談話室で待ち構えているとやはりハリーとロンがやってきて、ハーマイオニーは寮の入り口前まで付いていき説得をするも二人は止まらず。

 呆れて寝室に戻ろうとしたが、寮の入り口を守る絵画の「太った婦人(レディ)」が外出してしまったため、彼女は寮から締め出されてしまった。

 仕方なくハリーとロン、さらに合言葉を忘れて締め出されていたネビルを加え、一緒に決闘の場所まで行くことに。

 しかしそこにはドラコは現れず、代わりに管理人であるフィルチがやってきて、ようやくドラコの罠にはまったことに気がついた。

 無我夢中で逃げ回り鍵がかかった扉を魔法で開けて入り、なんとかフィルチの目を逃れることができた。

 だが安心したのも束の間で、なんとその扉の中には大きな三頭犬がいたらしい。

 再び無我夢中で逃げなんとか寮へ戻ることができたが、考えてみるとその場所は立ち入りが禁止されていた四階の廊下で、ハーマイオニーが言うには三頭犬の下の床には扉があったそうだ。

 

「最初は規則を破ってしまって落ち込んでいたんだけど……。今はどうして学校にあんな生き物がいたのか、あの扉には何が隠されていて何を守ってるのか気になって。今日は全然授業に集中できなかったわ……」

 

 ハーマイオニーの話を聞いて、メグとセリアは顔を見合わせた。

 

「ハーマイオニー、意外とやんちゃなんだね」

 

「ち、違うのよ? 全部あの二人が悪いんだから」 

 

 メグが呆れたように言うと、ハーマイオニーは慌てて弁明する。

 一方セリアは口元に手を当てて少し考えると、ふと口を開いた。

 

「以前新聞に載っていましたので知っているかもしれませんが、夏の休暇中にグリンゴッツが侵入されるという前代未聞の事件がありました。狙われた「何か」は、侵入される前にすでに移動されていたため無事だったそうですが……」

 

 そこでセリアは一度言葉を切り、ロケットの鎖を片手で軽く握りながら少し目を細めて続ける。

 

「それに加えて実はもう一つ、今年ホグワーツに何か貴重な物が持ち込まれたという話もあるんです。……もしかしたらグリンゴッツに保管されていた「何か」が狙われていたため、その「何か」をホグワーツに移動させ、そしてそれを三頭犬が守っている、ということがあるのかもしれません。なんにせよ、そのように危険な場所にはもう近づかないことが一番ですね。ハーマイオニーもこのことは忘れた方がいいですよ」

 

 セリアが言い終わると、メグとハーマイオニーが驚いたように彼女を見ていた。

 

「えっと、二人とも、どうしたのですか?」

 

 首を傾げながらセリアが聞く。

 

「セリア、どうしてそんなに色々知ってるの?」

 

「屋敷には様々な情報が入ってきますので……。あ、先ほどのホグワーツに「何か」が持ち込まれたという件は秘密なので、できれば内緒にしておいてくださいね」

 

 メグに尋ねられ、セリアは思い出したように口元に指を当てて「しー」と言った。

 ハーマイオニーはセリアを見ながら呆然と呟く。

 

「やっぱり、レイブンクローってすごいのね……」

 

「うん、すごいよ。夏休みにセリアのお屋敷に行ったんだけど、貴重な本とか物がいっぱいで。また行きたいくらいだよ」

 

「ふふ。メグ、また来てくださいね。ハーマイオニーも良ければぜひ」

 

「いいの?」

 

「はい、お友達ですから」

 

「ハーマイオニー、私も友達だよ?」

 

「……ええ、喜んで!」

 

 セリアとメグに微笑みかけられ、ハーマイオニーは頬を赤く染めながら嬉しそうに頷いた。

 

──────────

 

 とある休日、いつものように図書館でセリア達と会ったハーマイオニーは、少し荒れていた。

 

「それで、箒はマルフォイのおかげで買ってもらいました、なんて笑いながら言っていて! 本当、あの二人ってなんなのかしら!」

 

 ぷりぷりと怒りながらの愚痴を四人は苦笑いを浮かべながら聞く。

 

「まあまあ、落ち着いて。ハーマイオニーは二人に退学になって欲しかったわけじゃないわよね?」

 

「それはそうだけど……」

 

 アイビーになだめられたハーマイオニーは、少し落ち着きを取り戻した。

 

「マクゴナガル先生、クィディッチ大好きだからなー。けどわざわざ箒を贈るなんて、やりすぎだと思うけどね」

 

「しかもニンバス2000だしね」

 

「いくら彼が箒に乗る才能があるからといって、あんな高級な物を生徒に与えるのはどうかと思うのですが……」

 

 セリア達は呆れたようにそう言う。

 マクゴナガルは普段は厳格・公平な教師の鑑とも言える人物だ。

 しかしクィディッチのこととなると人が変わるというのは、実は割と知られているマクゴナガルの欠点なのだ。

 一方のハーマイオニーは落ち着きは取り戻したものの、腹は立っているらしく頬を膨らませたままだった。

 そこでセリアは一つ咳払いをしてハーマイオニーに話しかける。

 

「こほん。ところでハーマイオニー? 勉強をするのではなかったのですか?」

 

「あっ、そうだったわ!」

 

 セリアの言葉を聞いたハーマイオニーは膨らんでいた頬を元に戻すと、鞄から数冊教科書を取り出した。

 習ったことはもうほとんどこなせるハーマイオニーだが、それだけでは満足できないのか、寮を問わず図書館で会った成績の良い上級生や教師によく授業内容の質問などをしていた。

 そして二年生の生徒達がこぞって優秀だと言っていたのが、セリア達四人だった。

 それを聞いたハーマイオニーはハリー達に怒りながらも、図書館でセリア達を見つけると真っ直ぐに向かってきて勉強を教えてほしいと頼み込んだのだ。

 いきなり頭を下げられた四人はしばらくの間戸惑っていたものの、快く了承した。

 

「私、もっともっとたくさんのことができるようになりたくて。みんなセリア達がすごいって言うから、色々教えて欲しいのよ」

 

 改めてハーマイオニーがそう言うと、リジーが腕を組んで不適に笑った。

 

「ふっふっふ。ハーマイオニー、私達に頼むなんて見る目があるねー」

 

 続いてアイビーも腕組みをして同じように不適に笑う。

 

「リジーは変身術で学年一位、そしてこの私は、魔法薬学、薬草学で学年一位よ……」

 

 そしてメグもにやりと笑った。

 

「私は総合成績で学年三位、そしてセリアは全ての教科の試験で二位以内に入っていて、学年主席だよ」

 

 最後にセリアがふわりと微笑んだ。

 

「ハーマイオニーが本気で頼むのであれば、私達が全力でお教えしましょう。どうですか?」

 

 ハーマイオニーは四人の気迫に圧されてごくりと喉を鳴らしたが、意を決して再び頭を下げた。

 

「よ、よろしくお願いします。全力で頑張るわ!」

 

 ハーマイオニーがそう言うと四人は嬉しそうに頷いた。

 

「わかりました。それでは私も、試験前と同じくらい本気で教えますね。ついでにリジーとアイビーにも」

 

「……え?」

 

 不意にセリアにそう言われ、不適に笑っていたリジーとアイビーは顔を強張らせた。

 にこにことしているセリアに続いてメグも微笑みながら口を開く。

 

「そう言えば、二人とも自分の好きな教科は大丈夫だけど、その他の教科はちょっと遅れ気味だったよね?」

 

「ええ。ですので授業に置いていかれないように、私達二人で背中を押してあげましょう」

 

「そうだね。それが良いよ」

 

 セリアとメグに微笑みかけられている二人は、絶望の表情を浮かべてがくがくと震える。

 

「ふ、二人とも、どうしてそんなに怯えているの? 一体なにが……」

 

 ハーマイオニーは恐々とセリアとメグを見て、はっと息を飲んだ。

 微笑んでいる二人だが、その目の奥は一切笑っていない。

 セリアは教科書を取り出して机にゆっくりと置いた。

 

「それでは始めましょう。最初はどの教科ですか?」

 

「今日と明日はお休みだし、ずっと勉強できるね。……とりあえずは夕食まで大体七、八時間くらいやろう」

 

「夕食後も少し勉強できますね。ふふ……なんだか充実した休日になりそうです」

 

 セリアとメグは楽しそうに笑い、リジーとアイビーはこの世の終わりのような顔で震える。

 

(も、もしかして私、選択を間違えたのかしら……?)

 

 ハーマイオニーはそう思ったが、時はすでに遅かった。

 その夜ハーマイオニーは、就寝時間ぎりぎりにグリフィンドールの寮へ戻ってきた。

 その顔は虚ろな表情を浮かべており、それを見て同室のパーバディ・パチルとラベンダー・ブラウンは思わず抱き合って悲鳴を上げた。

 しかしその声にハーマイオニーはなんの反応も示さず、ベッドにふらふらと近づくとローブを着たまま倒れこんでぴくりともしなくなった。

 パーバディとラベンダーは顔を見合わせると、びくびくしながらハーマイオニーの顔を覗き込む。

 ベッドの上でハーマイオニーは、ほとんど気絶するように眠りについていた。

 二人は再び顔を見合わせると、首を傾げながらとりあえずハーマイオニーに布団を被せ、自分達のベッドに逃げ込むのであった。

 一方ハッフルパフのセリア達の寝室でも、リジーとアイビーがベッドにぐったりと倒れ込んで、セリアとメグはどこかすっきりとした表情を浮かべてベッドに座っていた。

 

「いっぱい勉強ができて、今日はとてもいい日でしたね、メグ」

 

「うん、こんなにいい休日は久しぶりだったよ。明日も楽しみだね」

 

「あなた達は楽しかったんでしょうけど……私はもう限界よ……」

 

「私もー……」

 

 楽しそうに話すセリアとメグをリジーとアイビーは恨みがましそうに見る。

 

「なんで試験前でもないのに、あんなに勉強しないといけないのよ?」

 

「そうだそうだー」

 

「だって二人とも、授業に遅れてたでしょ? このままいくと、試験前に困ってたのは二人だよ?」

 

「うっ……」

 

 メグの正論に二人はぐうの音も出ずに黙る。

 それを見ながらセリアは苦笑いを浮かべて口を開いた。

 

「そう悪ことばかりではありませんよ? 今日は良い情報を手に入れられましたし」

 

 セリアの言葉に他の三人は首を傾げた。

 

「セリアー、どういうことなの?」

 

「ポッターさんのことですよ」

 

「ハリー・ポッターがどうしたの?」

 

「実は今日のハーマイオニーの話を聞いて、わかったことがあります」

 

 三人に見つめられたセリアは指を一本立てた。

 

「まず最初に、ポッターさんはかなりの高さから投げられた「思い出し玉」を、見事な急降下で怪我一つなく受け止めるという、並外れた箒の才能を見せましたね。初めての飛行訓練だというのに。それを見ていたマクゴナガル先生が、授業中にも関わらずポッターさんを連れて行きました」

 

 セリアはもう一本指を立てる。

 

「次に、そのマクゴナガル先生の行動です。ポッターさんを叱るために授業から連れ出したのであれば、おかしくはありません。しかし実際には特に何もなく、ポッターさんは普通に夕食を食べていたそうです。それどころか教師であるマクゴナガル先生が、一生徒であるポッターさんに高級な箒を与えました。禁じられている一年生の箒の所持を、わざわざ特例で許可を得てまで、です。これは明らかに異常ですよね」

 

 セリアが三本目の指を立てる。

 

「最後に、各クィディッチチームの予選からしばらく経つ今日まで、グリフィンドールチームが再び予選を行ったという話は聞きません。ここまででなにかわかりませんか?」

 

 セリアの考えを聞いてアイビーは何かに気がついたのか、はっと息を飲んだ。

 

「ま、まさか……ハリー・ポッターが? まだ一年生じゃない!」

 

「さっき少し調べてみたのですが、少ないものの過去に例はあるようですよ」

 

 リジーとメグはセリアとアイビーの話についてまったくついて行けていない。

 

「二人とも、わかんないから教えてよー」

 

「気になる……」

 

 二人がそう言うと、アイビーが重たそうに口を開いた。

 

「……グリフィンドールチームが、新しく優秀なシーカーを見つけたってことよ」

 

 アイビーの言葉にリジーとメグは驚いて顔を見合わせる。

 

「ハリー・ポッターがシーカーに?」

 

「そんなことあり得るの……?」

 

「私はほぼ確実にあり得ると思いますよ」

 

 リジーとメグが思わず呟くと、セリアは自信ありげに頷いた。

 

「アイビー、ちなみにハリー・ポッターがしたことって、どれくらいすっごいの?」

 

 リジーがおそるおそるそう聞くと、アイビーは少し考えてから答えた。

 

「そうね……あれだけの高さから投げられた物を急降下して取って、さらにかすり傷もなく地面に着地するのは、普通のプロ選手でも難しいんじゃないかしら……。去年のチャーリーさんならできそうだけど」

 

「そんなになんだ……。ハッフルパフ、勝てるかな?」

 

「だ、大丈夫だよ。ハッフルパフにはセ、セドリックがいるんだから……」

 

 リジーの不安そうな言葉に、メグはセドリックの名前の部分で赤面しながらもそう言った。

 アイビーは真剣な顔で頷く。

 

「そうよ、こっちにはセドリックがいるわ。それに、チェイサーもビーターもキーパーも、去年のメンバーが残ってるんだから」

 

「それにあちらは、私達がポッターさんがシーカーになったことをまだ知らないと思っています。これは大きいですよ」

 

「明日セドリック達に教えないとね!」

 

「そうね、できるだけ早く教えてあげましょう」

 

「私、頑張って早起きするよ」

 

「それでは少し早いですが、もう寝ましょうか。みなさん、おやすみなさい」

 

「おやすみー」

 

「おやすみ」

 

「おやすみなさい」

 

 翌日、四人はハッフルパフチームのメンバーにハリーについて話した。

 チームのキャプテンは最初は驚いていたものの、すぐに真剣な表情で話を聞き、セリア達にお礼を言った。

 セドリックにも笑顔でお礼を言われ、メグは顔を真っ赤にしながらも嬉しそうだった。

 

──────────

 

 十月三十一日、今日はハロウィンでリジーの誕生日でもある。

 朝からセリア達にプレゼントを貰ったリジーは、城中にかぼちゃの匂いが満ちていたこともありご機嫌だった。

 

「やっと授業終わったー! 早くかぼちゃ料理食べたいよー!」

 

「リジー、終わったと言っても、まだ最初の授業ですよ?」

 

「でも本当に、この匂いはすごいわよねえ。私だってパーティーが待ち遠しいわ」

 

「私もかぼちゃのお菓子がすごく楽しみだよ……あれ?」 

 

 セリア達が次の教室に向かっていると、前方にあった扉から生徒達が出てきていて、その中にハーマイオニーの姿があった。

 四人に気がついたハーマイオニーは小さく手を振った。

 セリア達はハーマイオニーと一緒になって廊下を歩く。

 

「やっほー、ハーマイオニー! かぼちゃの匂いって最高だよね!」

 

「え、かぼちゃ? 確かにいい匂いだけど」

 

「リジーはかぼちゃが大好きなのよ」

 

「ハーマイオニー、さっきはどの授業だったの?」

 

「フリットウィック先生の授業よ。今日初めて浮遊呪文をしたんだけど、一度で成功したの」

 

「すごいですね、ハーマイオニー」

 

「私は何回もやってやっと成功したんだよねー」

 

 セリア達に褒められてハーマイオニーは少し頬を赤くして嬉しそうだ。

 そのとき前方にいた二人の内、赤毛の少年の大きな声が聞こえてきた。

 

「だから、誰だってあいつには我慢できないって言うんだ。まったく悪夢みたいなやつさ!」

 

 その声が聞こえてきた瞬間、ハーマイオニーはみるみるうちに瞳に涙を溜め、走り出した。

 

「ハーマイオニー!」

 

 セリア達が呼ぶがハーマイオニーは止まらず、黒髪の少年にぶつかってそのまま追い越して行った。

 

「ハーマイオニー、大丈夫かしら……」

 

「心配だね……」

 

 セリア達が去っていくハーマイオニーの背中を不安そうに見ていると、前方にいた二人、特急でセリアが出会ったハリー・ポッターとロン・ウィーズリーの会話が四人の耳に入ってきた。

 

「今の、聞こえたみたい……」

 

「そ、それがどうしたのさ。誰も友達がいないってことは、とっくに気がついてるさ」

 

 それを聞いたセリアは眉をひそめると、その二人にずんずんと近づいていった。

 他の三人も怒った表情でセリアに続く。

 

「そこのお二人、すみません」

 

 セリアに声をかけられ、ハリーとロンは振り返って自分達よりも低い位置にあるセリアの顔を見る。

 

「君は?」

 

「確か、レイブンクローの?」

 

 怪訝そうに自分を見る二人に、セリアは眉をひそめたまま言った。

 

「先ほどの会話が聞こえてきました。一体なぜあのような暴言を?」

 

「えっと……」

 

 トゲのあるセリアの言葉に、ハリーは困ったように口をつぐんだ。

 しかしロンは一瞬ばつが悪そうな顔をしたが、すぐに言い返した。

 

「き、君になんの関係があるって言うんだ!」

 

「私達はハーマイオニーの友達よ」

 

「友達が悪く言われたら、怒るのは当然だよねー」

 

 すぐさまリジーとアイビーが言い返すと、ロンは言葉に詰まって黙った。

 メグは何も言わなかったものの、鋭い目つきでハリーとロンを睨みつけていた。

 

「お友達にあのような暴言を吐かれて、黙ってはいられません。お二人とも、彼女に謝ってください」

 

 セリアがそう言うと、二人はむっとした表情になった。

 

「確かに僕達も悪かったけど、ハーマイオニーだって悪いんだ」

 

「いつもいつも上から指図して、さっきの授業でも僕が失敗したのを、偉そうに馬鹿にしたんだ!」

 

 二人がそう言い返すと、リジーがきっと眉を吊り上げた。

 

「確かに、ハーマイオニーはときどき厳しい言い方をするよ。けど君達は、ハーマイオニーの言葉をちゃんと聞いたことはあるの? うるさいからっていっつも聞き流してたんじゃないの?」

 

「そ、それは……」

 

 リジーの言葉に思い当たる節があったのか、ハリーは歯切れが悪そうに口ごもった。

 しかしロンは顔を真っ赤にしながらセリア達に怒鳴りつける。

 

「だいたい、ハーマイオニーの友達だからって君達にはなんの関係もないんだ! それに君は、マルフォイなんかとも友達なんだろう!」

 

 そんなロンの叫びに呆れた口調でアイビーが返す。

 

「はあ? セリアがドラコと友達なんて、それこそなんの関係もないじゃない。あなた、何が言いたいの?」

 

 しかしロンは止まらずわめき続ける。

 

「マルフォイの友達ってことは、あいつと同じで純血主義なんだろう! マグルを馬鹿にして、自分達が一番偉いって思い込んでいるんだ!」

 

 その言葉にセリアは首を振って反論する。

 

「ドラコはまだ理解しきれていませんが、本当の純血主義というのは、そのように他を見下すものではありません! 自らの血を高め誇るために、常に向上を目指し高潔であろうとする精神で……」

 

「知るもんか! マルフォイみたいなスリザリンの連中は、みんな一緒さ! 本当最低な連中だ!」

 

「そんなことはありません! 私の父はスリザリンでした。しかし、お父さんはとても立派な、誰からも尊敬される魔法使いです!」

 

 セリアが必死にそう言うが、ロンはふん、と鼻を鳴らして言い放った。

 

「スリザリンだったって? なら君のお父さんは、すごく嫌味な性格をしているんだろうさ!」

 

 ロンがそう言い終わった瞬間、しんと廊下中が静まり返った。

 リジー達三人が絶句している中、セリアは顔を強張らせながら震える声で言う。

 

「……お父さんがどんな性格だったのか、私は直接は知りません……。お父さんはすでに、亡くなっていますので」

 

「ロ、ロン! それは言い過ぎだよ!!」

 

「あ、そ、そんな……、ぼ、僕はそんなつもりじゃ……」

 

 ハリーに大きな声で言われてロンはしどろもどろとそう呟くが、セリアは唇をぎゅっと結ぶとハリー達を追い越して走って行った。

 

「あ、セリア! 待って! ……君達、自分が何言ったかわかってるの!?」

 

「あなた達、バカじゃないの!? 本っ当に最低ね!」

 

 そう言い残して、リジーとアイビーはセリアを追いかけて行った。

 そしてずっと黙ってハリー達を睨みつけていたメグも、一度心底つまらない物を見る目で二人を見た後に歩き出した。

 

「あ、あの、僕達、本当にそんなつもりじゃなか……っ」

 

 自分の横を通り過ぎようとしているメグに、ハリーは手を伸ばしながらそう言うが、不意に言葉が途切れた。

 メグが目にもとまらぬ速度で杖を抜き放ち、ハリーの鼻先に突きつけたからだ。

 

「うるさいよ」

 

 メグが冷たい声で言うと、ハリーは思わず後ずさる。

 メグは脚に巻いた杖入れに杖を差すと、ハリー達に目もくれずに歩き去って行った。

 廊下の真ん中での出来事だったためこの騒ぎは大勢が目撃しており、その大勢は一斉に非難する目でハリー達を見る。

 残された二人は居心地悪そうに身を縮めながら、そして大きな罪悪感と後悔を抱えながら次の授業の教室に向かうのだった。

 

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