色々なことが重なり、執筆の時間が取れませんでした。
リジーとアイビーが魔法薬学の教室に駆け込むと、セリアはすでに到着していた。
まだ少し早いため他の生徒はおらず、授業の準備を終えたセリアが一人座っているだけだった。
「セリア!」
二人が声をかけるとセリアは二人を見上げて微笑んだが、その顔は明らかに元気がない。
「リジー、アイビー、突然走り出してしまってすみません」
「ううん、いいんだよ」
「セリア、大丈夫?」
椅子に座りながら二人がそう聞くと、セリアは一つ頷いてため息を吐いた。
「私も、少し言い過ぎてしまいました……。事情も知らずに好き勝手言われて、あのお二人が怒るのも当然です……」
「よしよし、元気出して……」
落ち込むセリアの頭をリジーが優しく撫でる。
一方アイビーは未だ怒りが収まらないのか、不機嫌そうに頬を膨らませたままだ。
「でも、あれは言い過ぎよね。親のことをあんな風に……私なら絶対、手が出てたわよ」
「アイビー、おじさん達のことが大好きだもんね」
アイビーが何かを叩くような仕草をしていると、メグがそう言いながら教室に入って来た。
メグは三人の元まで来ると心配そうな顔でセリアに尋ねる。
「セリア、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません……」
「そっか……。一応伝えとくけど、あの二人は反省してたよ。うるさかったから、杖を出して黙らせたけど」
メグの物騒な発言に、三人は驚いて彼女を見る。
「いやー……メグは怒らせると怖いね」
「メ、メグ、まさかあなた……」
「魔法は使ってないよ?」
アイビーが恐る恐る尋ねると、メグは小さく首を傾げてそう言った。
「メグ、私のために怒ってくれてありがとうございます。でも、杖まで出してはいけないですよ」
「……まあ、セリアがそう言うなら、気をつけるよ」
「それにしてもセリア、あなた足が速いのね。リジーも追いつけなかったし」
「あ、そういえばそうだね。前にセリアのお家に泊まったときは、そんなに速くなかったのに」
「実はあのとき、すぐに疲れてしまったのがなんだか少し悔しくて……。あれから毎日体を動かすようにしていたんです」
「へえ、偉いわね。メグも見習いなさいよ?」
「魔法使いに足の速さは必要無いし……」
「セリア! 朝一緒に走ろうよ!」
「あ、朝はちょっと……、あっ! ほら、もうそろそろ授業が始まりますよ」
他のハッフルパフの生徒達が教室に入ってきたので、そこでひとまず話は途切れた。
すぐに同じ授業を受けるレイブンクロー生と教授であるスネイプもやってきて、授業が通常通りに始まった。
ちなみに先程の出来事は教室の移動中に起きたことなので、ハッフルパフ生はもちろん、ここにいるレイブンクロー生も何人かが目撃していた。
ちらちらと視線を向けられながら、セリアは居心地が悪そうに授業を受け、普段はしない小さな失敗をいくつかしてしまった。
「これで授業を終わる。次回はふくれ薬の調合を行うので、教科書を確認しておくこと」
二限続きの授業は、終業のベルが鳴りスネイプがそう言って終わった。
生徒達が教室を出る中、セリア達も同じように廊下に出る。
すると、教室の中では魔法薬などの匂いで分からなかったが、廊下はかぼちゃ料理のとてもいい匂いで満ちていた。
その匂いを嗅いだリジーは、きらきらと目を輝かせながらごくりと喉を鳴らした。
「うわあ、すっごいいい匂いだね!」
「はい。なんだか、とてもお腹が空いてきました……」
その匂いでセリアは少し元気を取り戻したようで、アイビーとメグは顔を見合わせて微笑んだ。
その時教室の中から声がかけられた。
「ミス・レイブンクロー、少し残りなさい。それほど時間はかからん」
声をかけたのはスネイプだった。
セリアは少し驚いたが、三人に振り向いて言った。
「すみません、先に昼食へ向かってください」
しかし三人は首を横に振った。
「セリアを待っとくよ」
「すっごくお腹空いたけど、頑張って待つよ」
「いいですか? スネイプ先生?」
アイビーがそう聞くと、スネイプはぶっきらぼうに答える。
「かまわん。レイブンクロー、入りなさい」
「はい」
セリアが教室に入り扉を閉めると、背を向けたスネイプが生徒達が今日提出した魔法薬が入った瓶の中から、一つを取り上げた。
その瓶はセリアが提出したものだ。
「これは十分に調合されていて、問題のないものだ。だがいつもであれば、君はもっと上質な薬を調合していた……」
スネイプはぽつりと呟くようにそう言って、瓶を置いて振り向きセリアの顔をじっと見た。
「さらに授業中、多くの生徒が君を気にしているようだった…….何があった?」
スネイプの暗い目をセリアは恐れることなく見つめ返す。
「授業の前に、他の寮の生徒と言い争いになったんです。そこで少し……」
「解決はしたのか?」
「いえ。しかし、私はもう平気です。ご心配をおかけしてすみません」
セリアが頭を下げながらそう答えると、スネイプは探るようにセリアを見る。
しばらく無言の時間が続き、やがてスネイプが口を開いた。
「……そうか。話は以上だ」
「はい、ありがとうございました。失礼します」
セリアはぺこりと一礼して教室を出る。
そして廊下で待っていたリジー達の元へ駆け寄った。
「すみません、お待たせしました」
「大丈夫だよー。それより、早く大広間に行こう!」
セリアが申し訳なさそうに言うと、そわそわしながらリジーそう答えた。
四人は大広間へ向かう。
「セリアー、何の話だったの?」
「スネイプ先生は私の様子がおかしいと思われたようで、心配してくださったんですよ」
「へえ、気づいてたんだ。スネイプ先生すごいね」
「スネイプ先生はすごいわよ! 授業は難しいけど楽しいし、先生の調合の腕はすばらしいんだから!」
アイビーは興奮したようにそう話す。
アイビーはよく授業中にスネイプに質問をするし、たびたび魔法薬を調合してはスネイプに一方的に見せに行き、助言ももらっているらしい。
そのアイビーの言葉にセリアは深く頷く。
「はい、スネイプ先生はいい方だと思います」
その後四人は昼食を食べた(かぼちゃ料理がいくつかあり、リジーは大はしゃぎだった)。
昼食の席にはハーマイオニーの姿はなく、伝え聞いたところによると、彼女は女子トイレにこもって泣いているらしい。
セリア達はハーマイオニーが心配だったものの、今は一人にしておいた方が良いと思い、彼女に会いに行くことはなかった。
そして一日が過ぎて全ての授業が終わり、生徒達は浮き立ってぞくぞくと大広間へ向かって行く。
もちろんセリア達も、最後の授業が終わるなり足早に大広間を目指した。
しかし大広間に到着する直前に、リジーがお腹に手を当てて呟いた。
「うーん、なんだかちょっとお腹痛いかも……」
「リジー、大丈夫ですか?」
辛そうに呻くリジーを見て、セリアは不安げにそう尋ねる。
「お昼、あれだけいっぱい食べていたものね」
「まだパーティーまで時間あるし、先にトイレに行ってきなよ」
アイビーとメグに呆れたように言われ、リジーは頭をかいて照れくさそうに笑った。
「えへへ、そうするよ」
「リジー、席を確保しておきますので、早く来てくださいね」
「わかったよ。みんな、私の分のお料理ちゃんと残しておいてね」
「食べきれるわけないでしょう」
「それじゃ行ってくるねー」
リジーはセリア達に手を振ると、一番近い地下のトイレを目指して足早に駆けて行った。
「それじゃ、先に行っておこうか」
「そうね」
「はい」
大広間は昨年と同じくとても豪華な飾り付けで、セリア達三人は目を輝かせながら辺りを見渡す。
セリア達はハッフルパフのテーブルに向かい、大広間の入り口に近い席に座った。
「とりあえず、リジーの席は確保できたわね」
「早く来るといいんだけどね」
「リジー、大丈夫でしょうか……」
今はまだ各寮のテーブルは半分ほどしか埋まっていないが、もう程なく大広間は生徒でいっぱいになるだろう。
セリア達は大広間に来たセドリック達やチョウ達と挨拶をかわしつつ、パーティーが始まるのを今か今かと待ちわびる。
そしてついにテーブルの上の皿にご馳走が現れ、生徒達の歓声が鳴り響く中パーティーが始まった。
「うわ、やっぱりすごいご馳走だね。これはデザートが楽しみだよ」
「メグ、ちゃんとデザート以外も食べなさいよ。セリア、リジーの分の料理、取っておく?」
「あ、はい。いっぱい取ってあげないと……あれはクィレル先生? 何事でしょうか?」
ご馳走を生徒達が我先にと皿に取っていると、突如大広間の扉が開き、闇の魔術に対する防衛術の教師であるクィレルが駆け込んできた。
その顔はいつも以上に恐怖で引きつっている。
クィレルは教員テーブルの中央に座るダンブルドアの元まで行くと、テーブルにもたれかかるようにして息も絶え絶えに言った。
「ト、トロールが地下室に……お知らせしなくてはと思って」
言い終わるとクィレルは糸が切れたかのように倒れ、気を失ったようだった。
すぐに大広間は混乱に包まれ、ダンブルドアが杖を何度か振るい爆発音を響かせ、ようやく少し落ち着いた。
静かになった大広間にダンブルドアの声が重く響く。
「監督生達よ、すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮に帰るように。先生方は、生徒の安全を第一に行動してくだされ」
教師達が杖を手に大広間を飛び出して行き、監督生が生徒達を集めはじめる中、セリア達は厳しい表情を浮かべていた。
「ま、まさかトロールなんて……大丈夫かしら」
「自力で城に入れるとは思えないんだけど、今はそれよりも……」
「リジーとハーマイオニーは、このことを知りません」
「そうね……どうしようかしら?」
セリアは俯いてロケットの鎖を少し握り締める。
そして顔を上げると、決意のこもった目でメグとアイビーの顔を交互に見た。
「私は、リジーを探しに行きます」
それを聞いて二人も頷く。
「私も行くよ」
「私も行くって言いたいけど……二人の足手まといになっちゃうわね。私は残って、リジーのことをなんとか先生達に伝えるわ」
「メグ、アイビー……ありがとうございます」
二人の力強い言葉にセリアは小さく微笑んでお礼を言う。
「二人とも、気をつけてね」
「はい!」
「アイビーもね」
セリアとメグは他の生徒に紛れ大広間を出て、地下を目指して走り出した。
(二人とも、無事でいてください……!)
──────────
痛たた……さすがにお昼、食べ過ぎちゃったなー。
でもしょうがないんだよ、去年よりもさらに進化したかぼちゃ料理だったから、食べる手が止まらなかったんだよ。
あんな料理を作れるなんて、屋敷しもべ妖精さん達すっごいよね。
あ、トイレ見えてきた。
早く済ませて、大広間に向かわないと。
私はトイレに駆け込んで個室を目指す、その途中で気がついた。
一つ扉が閉まっている個室があって、そこから泣き声が聞こえてくる。
そっか、ここにいたんだね。
私はその個室にゆっくりと近づいて、なるべく優しい声で声をかける。
「ハーマイオニー、ここにいたんだ?」
「リ、リジー……?」
「うん、私だよ。大丈夫、じゃないよね」
「ご、ごめんなさい、今は一人にして……」
「うーん、それでもいいんだけどねー。でも見つけちゃったし、放っとけないかな」
泣いてる女の子がいるんなら、見なかったことにはできないよ。
私はできるだけ優しい声でハーマイオニーに話しかける。
「ハーマイオニー、大丈夫だから。おいで」
ハーマイオニーは黙ってすすり泣いていたけど、やがてゆっくりと扉が開いてハーマイオニーが出てきた。
こんなに泣いちゃって、かわいそう……。
泣いてるハーマイオニーの姿を見てると、気がついたら抱きしめちゃってた。
ハーマイオニーは驚いたのか、一瞬体を強張らせたけど、すぐに私にしがみついて泣き声を上げた。
「大丈夫、大丈夫だよー」
私はハーマイオニーが落ち着けるように、何度も大丈夫って言いながら彼女の髪と背中をゆっくりと撫でた。
それにしても髪、柔らかくてふわっふわ……パフスケインを撫でてるみたいだよ。
しばらくするとハーマイオニーは私から離れて、恥ずかしそうに私を見上げた。
その見上げる角度、かわいいねー。
「あ、あの、リジー……ごめんなさい」
「なんでハーマイオニーが謝るの? 気にしないでいいよ!」
無神経なあの二人が悪いんだもんね!
「でも私……」
「いいからいいから! それで、ハーマイオニー。もう大丈夫?」
「ええ。その……ありがとう、リジー」
ハーマイオニーはまだ少し目は赤いけど、にこりと微笑んでそう言った。
あとは美味しい物を食べたら、きっと元気になるよね。
「それじゃあハーマイオニー、パーティーに行こうか! あのかぼちゃ料理を逃すなんて、とんでもないよ!」
「ふふ、楽しみだわ。……これ、何の匂いかしら?」
ハーマイオニーが不意に訝しげな声を上げると、私の元にもなんだか嫌な匂いがしてきた。
なんだろう、この匂い……。
二人で匂いの元を探して辺りを見渡していると、何かを引きずるような音と、低い唸り声みたいなのが聞こえてきた。
そしてそれは、私達のいる女子トイレの前で止まった。
私とハーマイオニーが恐るおそる女子トイレの入り口を見ると、そこにはハグリッドよりもずっと大きい生物が立っていた。
灰色っぽい肌でごつごつした体、小さな頭に短い足を持ち、長い腕には大きな棍棒を持っている。
嘘でしょ、これ……!
「な、なに……あれ……!」
「なんで、トロールがこんな所にいるの……!」
トロールはきょろきょろと周りを見ていて、まだ私達に気がついていないようだった。
私は今にも悲鳴をあげそうなハーマイオニーの口を塞ぐと、音を立てないように個室に入った。
「ハーマイオニー、ちょっと我慢してね」
私がそう言うと、ハーマイオニーは真っ青な顔でこくこくと頷いた。
「このまま出て行ってくれたらいいんだけど……」
だけどトロールは、女子トイレに入ってきた。
なんで来ちゃうのかなー、もう! どうしようどうしよう!
この子だけは逃してあげたいんだけど……。
ちらりと隣を見ると、ハーマイオニーはかわいそうなぐらいに震えていた。
私がなんとかしなくちゃ。
「ハーマイオニー、頑張ってトロールの気をひくから、合図したら入り口まで走って」
「で、でも、リジーはどうするの?」
「大丈夫、私も行くから。トロールはすばやくないから、トイレから出たら逃げれるはず……。ハーマイオニー、できる?」
ハーマイオニーの目は不安げに揺れていたけど、頷いてくれた。
私は個室からちょっと顔を出してトロールの様子を見る。
トロールはトイレの中を興味深そうに見渡してた。
そんなに見る物もないだろうし、早く出て行ってくれないかなー……まあ、そんなにうまくいかないだろうけどね。
なぜか入り口の扉が閉まってたけど、トロールの体でも当たったのかな? とりあえず、まだ気づかれてないみたいで良かった。
私は杖を抜き、服についているボタンを数個ちぎった。
うわあ、心臓の音がすごい……怖いなあ。
でも、やるしかないよ。
「よし……!」
私は意識を集中させて、ボタンをネズミに変身させていく。
そして変身させたネズミ達を送り出し、トイレのできるだけ奥の方へ向かわせて鳴き声を上げさせる。
トロールはネズミの鳴き声を聞いて興味が出たのか、のろのろと奥の方へと進んで行った。
そしてネズミを発見すると、なんだか不思議そうな表情で首を傾げてネズミを観察し始めた。
よし、今だ!
「ハーマイオニー、走って!」
「え、ええ!」
個室から先にハーマイオニーを出して、私も後に続く。
そしてなんとか入り口にたどり着き、ハーマイオニーが扉を開けようとした。
だけど……。
「な、なんで? 鍵がかかってるわ!」
「嘘、どうして……!」
ハーマイオニーは混乱して何度も扉を叩き、私は驚きのあまり頭が真っ白になってしまった。
だけど、そんなことをしてる場合じゃなかったんだ。
低い唸り声が響き、私とハーマイオニーは驚いて飛び上がって振り向いた。
するとトロールが、小さな目を見開いてこっちを見ていた。
足音とか扉を叩く音で気づかれちゃったんだ……! どうしよう……!
私が何も出来ずにいると、恐怖が限界を越えちゃったのか、ハーマイオニーが甲高い悲鳴を上げて再び個室に隠れようと走り出してしまった。
「だめ、待って!」
悲鳴に驚いたのかトロールは顔をしかめ、唸りながら棍棒を振り上げた。
あんまり広くないトイレだから、あのままだとハーマイオニーが……!
私はハーマイオニーを止めようと走る。
「ハーマイオニー!」
「きゃあ!」
トロールの棍棒が振り下ろされる直前、ハーマイオニーをなんとか引き寄せることができた。
しかしその勢いで倒れ込んでしまい、杖もどこかに飛んでいっちゃった。
トロールの一撃で個室や洗面台がいくつか砕け、木片とかがいっぱい散らばった。
だけどそれで終わりじゃなく、トロールがまた棍棒を振り上げ始めた。
どうしようどうしようどうしよう!!
「こっちに引きつけないと!」
その時、入り口の方から突然大きな音と声が鳴り響き、トロールが目をぱちぱちしながら振り返った。
そこには、昼間セリアとハーマイオニーを傷つけた二人が立ってた。
「おーい、このウスノロ!」
二人は落ちていた木片やパイプなどをトロールに投げつけている。
「なんで……」
トロールは唸り声をあげると、赤毛の、確かロンって子の方へ向かって行った。
その隙にもう一人の生徒、ハリーが素早い動きでトロールの後ろに回り込んで、トロールに飛びかかって首にしがみついた。
そしてなぜか、杖をトロールの鼻に思いっきり突っ込んだ。
すっごい痛そう! って、実際に痛かったのか、トロールは大きな声でわめきながら激しく棍棒を振り回した。
私はハーマイオニーに覆い被さって、出来るだけ低く伏せて棍棒が当たらないようにする。
無茶苦茶に暴れるトロールに、今にもハリーは振り落とされそうで、慌ててロンが杖を取り出して無我夢中に呪文を叫んだ。
「ウィンガーディアム・レビオーサ! 浮遊せよ!」
すると棍棒がトロールの手を抜けて浮かび上がり、空中で少し回った後トロールの頭に落ちた。
すっごく嫌な音が鳴り響き、トロールはふらふらとしながらやがて倒れた。
……助かった、のかな。
「はあ……君達、ありがとう!」
私が何とかそう言うと、呆然と立ち尽くしていたハリーとロンがこちらを向いた。
そして二人は互いに目を合わせると、腰が抜けたようにその場に座り込んだ。
「うわあ、死ぬかと思ったよ……」
「えっと、二人とも大丈夫かい?」
ロンが体中から力が抜けたような声で呟いて、ハリーが遠慮がちに私とハーマイオニーに聞いてきた。
私は立ち上がって、ハーマイオニーに手を貸して起き上がらせた。
そして私はトロールに近づく。
「すっごいなあ、トロールをこんなに近くで見たの初めて……」
まじまじと見てると、トロールの鼻にまだハリーの杖が刺さっていることに気づいた。
私は意外に深く刺さってたその杖を抜くと、まだ座っているハリーの元へ近づく。
「はい、これ。鼻くそが付いちゃってるけど……」
「うわあ、なにこれ……」
「あははは!」
ハリーは嫌そうな顔で杖を受け取って、その顔がおかしくて私は思わず笑っちゃった。
ロンとハーマイオニーもうっすらと笑っている。
ハリーが恨めしそうに私を見上げて、すぐに顔を強張らせて私の後ろを指さした。
「後ろ!」
「え……」
私が振り返ると、すでにトロールが上体を起こしてた。
そしてすぐに立ち上がりすぐそばに転がっていた棍棒を拾い、痛そうに片手で小さな頭を撫でていた。
そして小さな目に怒りを浮かべ、目の前にいる私とハリーを睨みつけて雄叫びを上げた。
「う、あ……」
私は足がすくんで動けず、目の前で持ち上げられている棍棒を見つめることしか出来なかった。
後ろではハリーも立ち上がれずにいた。
なんとかハリーだけでも守らないと……! でも、もうだめ……!
「……セリア」
棍棒が振り下ろされる瞬間、思わず口から漏れたのは、かわいい親友の名前だった。
次回は早く投稿できるよう頑張ります。