ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

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初投稿から早いもので、二年が経ちました。
それなのに毎回の投稿が遅く、申し訳ありません。



第41話 呪われた箒

 

 トロール騒動の翌日、セリア達が朝食のため大広間に入ると、ハッフルパフのテーブルから拍手が上がった。

 まるで英雄を迎えるかのような歓迎に、セリア達は苦笑いを浮かべながら椅子に座る。

 他の寮生達にもトロールの話は伝わっているらしく、ちらちらと珍しそうにこちらのテーブルに視線が送られている。

 セリア達が朝食を食べようとすると、周囲がわずかにどよめいた。

 セリアは首を傾げたが理由はすぐにわかった。

 グリフィンドールのテーブルから、ハリーとロン、ハーマイオニーがやってきたのだ。

 ハリーとロンが昨日、セリアにひどい態度を取ったことはすでにハッフルパフ生に知られているため、セリアの周囲の生徒達は警戒するようにハリー達を睨みつける。

 ハリーとロンはその視線にたじろぎながらも、セリアの元までやってくると勢いよく頭を下げた。

 

「昨日はごめんなさい!」

 

「僕、本当にひどいことを言っちゃった……ごめんなさい!」

 

 突然謝られたセリアは、目を白黒させながら困惑して黙り込む。

 それを見かねたのか、ハリー達の横にいるハーマイオニーが口を開いた。

 

「私にも謝ってくれたし、二人はすごく反省してるのよ。セリア、許してあげてくれる?」

 

 ハーマイオニーにそう言われて、セリアは困ったようにリジー達の顔を見る。

 リジー達はセリアの視線を受け小さく頷いた。

 それを見たセリアは少し顔を引き締めると、ハリーとロンを見た。

 

「私も、お二人の気持ちも知らずに好き勝手に言ってしまいました……ごめんなさい」

 

 セリアはそう言って頭を下げると、ハリーとロンは慌て出す。

 セリアはすぐに顔を上げ、二人を安心させるように表情を和らげた。

 

「お二人を許しますので、私も許してください。そして、ハーマイオニーとずっと仲良くしてください」

 

 そう言い終えたセリアは、小さく首を傾げてにこりと微笑み言葉を続けた。

 

「それと、私とも仲良くしてくれたら嬉しいです」

 

 セリアの可愛らしい微笑みを受け、ハリー達三人は顔を紅潮させながらぶんぶんと首を縦に振った。

 

「も、もちろんだよ!」

 

「僕もだ!」

 

「よろしくね、セリア!」

 

 リジーはセリアの肩に手を置いて、不満げに口を尖らせる。

 

「セリアだけじゃなくて、私とも仲良くして欲しいなー」

 

「そうよねえ。私達も昨日、傷ついたのになー」

 

 リジーとアイビーがそう言うと、ハリーとロンは慌てて言う。

 

「も、もちろん、リジー達もよろしく」

 

「昨日は本当にごめんなさい!」

 

「あはは! 冗談だよ。よろしくね、二人とも!」

 

「よろしく! ハリーとロンって呼んでもいいかしら?」

 

「うん、嬉しいよ」

 

 リジーとアイビーに笑いかけられて二人は嬉しそうに頷いた。

 するとここまで黙っていたメグが口を開いた。

 

「私も、昨日のことはもう気にしてないよ。でももしまた同じようなことがあったら、絶対に許さないからね」

 

 メグが棘のある口調でそう言うと、ハリーとロンは緊張して顔を強張らせる。

 特にハリーは昨日杖を突きつけられたこともあり、ごくりと唾を飲んでいた。

 続けてメグが言う。

 

「でもまあ、もし勉強でわからないことがあったら、私達に言いなよ。教えてあげるから」

 

 メグが小さく笑うと二人は安心したように笑い頷いた。

 あまり良い出会いではなかったハリー達とセリア達だが、トロールとの対決は両者を結びつけた。

 セリアは新しい友人ができたことを喜び、心からの笑顔を浮かべるのだった。

 

──────────

 

 十一月を迎えたホグワーツは、本格的に冬が近づいてきてとても寒くなってきた。

 銀色に光る雪が降り積り、校庭で柔らかく揺れていた草たちは、しばらくの間その姿を隠す。

 湖の表面には氷が張り、たまに油断した大イカが凍りついて動けなくなる様子が見られる。

 しかしその寒さとは反対に、城の中には熱気が渦巻いていた。

 いよいよ今年のクィディッチ・シーズンが始まるのだ。

 グリフィンドールチームは、伝説のシーカーことチャーリー・ウィーズリーのポジションを誰が継ぐのか、城中から注目されていた。

 そして今年入学したハリー・ポッターが、一年生でありながらシーカーに抜擢されたのだ。

 グリフィンドールチームは、ハリーを秘密兵器としてその存在を隠していた。

 しかし十一月ともなるとさすがに城中に知れ渡ることとなり、あのハリー・ポッターはどれほどの実力なのかと、ハリーのことを好奇の目で見る者が続出した。

 ハリーはクィディッチ自体は楽しかったものの、注目されている状況にうんざりしていた。

 さらに、最初の対決相手であるスリザリンの生徒からの嫌がらせなどもあり、いっそうハリーは追い込まれた。

 

「ハリー、スリザリンの連中の言うことなんて、気にすることないよ。試合が始まってからのやつらの顔が楽しみなくらいさ」

 

「去年のスリザリンチームは正々堂々戦ってたって聞いたけれど、今年はぜんぜん違うわね……。でもあんなずるい人達に、グリフィンドールが負けるはずないわ」

 

 ロンとハーマイオニーがそう慰めるが、ハリーの気分はいまいち晴れない。

 そして彼の初試合前日、そんなハリーを見てロンとハーマイオニーは少しでもリラックスできるようにと、城外への散歩に彼を誘った。

 外はとても散歩できるような気温ではなかったが、ハーマイオニーが魔法の火を作り出してそれを解決した。

 彼女が作った火はぽかぽかと心地良く、さらに瓶に入れて持ち運べるのだ。

 三人はその火で暖を取りながら図書室で借りてきた「クィディッチ今昔」を読み、ハリーは久しぶりに楽しい気分だった。

 しかしそこにハリーを憎んでいる(彼はそう思っている)スネイプが現れた。

 スネイプは三人が読んでいた本を取り上げ、「図書室の本は城外へ持ち出してはならない」と言ってグリフィンドールから減点した。

 そしてスネイプは脚を少し引きずるようにして歩き去って行ったのだ。

 

「あの足、どうしたんだろう?」

 

「知るもんか。でも、すっごく痛いといいよな」

 

 ハリーが不思議そうに言うと、ロンは苦々しげにそう吐き捨てた。

 そしてその夜、どうにも落ち着かないハリーは本を返してもらおうと、職員室へ単身向かった。

 他の先生達がいる中なら、きっと返してくれるに違いない。

 そんな勝算を持って職員室の扉を叩いたが、何の返答もない。

 

(もしかしたら、スネイプが本を置きっぱなしかもしれない)

 

 そう思ったハリーがわずかに職員室の扉を開けると、その隙間から衝撃的な光景が飛び込んできた。

 職員室の中に居るのは、スネイプと管理人のフィルチだけだった。

 スネイプが服の裾を持ち上げ、そこから引き裂かれたように傷を負った足が見えていたのだ。

 

「全く忌々しい……三つの頭を同時に注意なんてできるか?」

 

 そう言いながらスネイプは小瓶を取り出すと、中に入っていた軟膏薬を傷に塗りつけた。

 フィルチはスネイプに包帯を渡しながら聞く、

 

「全く、お疲れ様です。ところでその薬はなんでしょう?」

 

「ああ、生徒の一人が持ってきたのだ。我が輩が怪我をしていると気づき、調合したらしいが……」

 

 スネイプは薬を塗った傷を観察すると、小さく頷いた。

 

「調合は成功しているようだ……いい出来だ」

 

 ハリーは気付かれないように扉を閉めようとしたが、ふと顔を上げたスネイプが隙間から覗くハリーに気がついた。

 慌てて服の裾を下ろしたスネイプに出ていけと怒鳴られ、ハリーは一目散に寮へと逃げ出した。

 

(あの傷、三頭犬にやられたんだ! きっとトロールが入ってきたとき、スネイプが隠されているものを奪おうとして、それで噛まれたに違いない!)

 

 寮へと駆けながら、ハリーは自分の考えが正しいと確信していた。

 早く親友である二人にこの危機を伝えないといけない。

 

──────────

 

 ハリー達が校庭に出て本を読んでいた頃、セリアは図書室で宿題をしていた。

 一緒にいるのはリジーにメグ、そして頭にスニジェットのミコを乗せたドラコだ。

 リジーはうんうん唸りながら、スニジェット保護区へ提出するミコの報告書を書いており、メグはセリアと同じく宿題をしている。

 そしてドラコは宿題をしつつも、目前に迫ったクィディッチの開幕戦についてセリアと話していた。

 セリアは宿題をしながらにこにこと微笑み、その話を聞いていた。

 

「つまり、グリフィンドールに勝ち目なんかないのさ。スリザリンは今年も優勝だね」

 

「そうですか? グリフィンドールの新しいシーカーは、とても優秀らしいですよ」

 

「ふん。ポッターなんて、偶然うまく飛べたからシーカーになっただけだよ。特別扱いで箒までもらって、いい気になってるんだ」

 

 ハリーの話になるとドラコは不機嫌さを隠さず、いらついたように吐き捨てた。

 そんなドラコの様子にセリアは思わず苦笑いを浮かべる。

 

(うーん、ハリーとドラコが仲良くするのは、難しいかも……)

 

「まあグリフィンドールも、チェイサーはなかなかやるけどね。でもそれだけさ」

 

「本当ですか? 実は今年から、友達がグリフィンドールのチェイサーになったんですよ」

 

「そうなのかい? でも悪いけど、スリザリンの勝利は変わらないよ。……そうだ! セリア、明日の試合一緒に観戦しないかい?」

 

 ドラコが顔を赤くしながらセリアを誘うが、セリアは申し訳なさそうに断る。

 

「えっと、ごめんなさい。先程言った友人の初試合なので、彼女を応援したいので……」

 

「そうか……それなら仕方ないね」

 

 なにしろ、初めてのホグワーツ特急の旅を共にしたケイティの初試合なので、彼女を応援しないという選択はありえない。

 それが理解できたのだろう、ドラコは残念そうに呟いた。

 

「できたわ!」

 

 そこに突然アイビーが歓声を上げながら、勢いよく図書館へ駆け込んできた。

 マダム・ピンスにじろりと睨みつけられ勢いは止まったが、セリア達を見つけたアイビーは早足でやって来て椅子に座った。

 

「みんな、できたのよ!」

 

「何ができたの?」

 

 興奮するアイビーを宥めるため、一度宿題の手を止めてメグが尋ねる。

 リジーも報告書を書く手を中断して頭を上げた。

 アイビーは自慢げにローブのポケットから小瓶を取り出した。

 小瓶には軟膏が入っているようだ。

 

「これよ!」

 

「いったい何なんだい?」

 

 ドラコはその小瓶を訝しげに見つめる。

 ちなみにドラコは、頭の上で眠るミコが落ちないよう、頭を極力動かさないようにしていた。

 

「セリアにもらった本にあった傷薬よ。ハナハッカのエキスでもいいんだけど、あれはかなり強力だから、ちょっと体の負担が大きいの。でも……」

 

 アイビーは少し小瓶を振りながら続ける。

 

「この薬はゆっくりと、でも確実に傷を癒せるの。それに負担も小さいし、傷跡も残らず綺麗に治るわ」

 

 本来この薬の調合は難しいのだが、アイビーは見事に成功したようだ。

 セリア達はそろって称賛の声をあげる。

 

「すごいです!」

 

「さすがだねアイビー」

 

「すっごい!」

 

「へえ……なかなかやるね」

 

 全員に褒められてアイビーは照れくさそうに笑う。

 

「夏休みにセリアが貴重な材料をくれたおかげよ。ありがとう!」

 

「そんな……アイビーの実力ですよ」

 

 アイビーは小瓶をポケットに再び入れるとたちあがった。

 

「それじゃあ行ってくるわ」

 

「それ、誰にあげるんだい?」

 

「もちろん、スネイプ先生よ!」

 

 アイビーの答えにドラコは目を丸くしたが、セリア達には特に驚くことはなかった。

 もっとも元々はセリア達三人も、スネイプが負傷していることは気がついていなかった。

 スネイプ自身も生徒に知られたくはなかったのだろう、少し足を引きずってはいたが、痛がる素振りは見せていなかった。

 しかしアイビーは、トロール騒動後に授業があったその日にすぐ気がついた。

 そして何度もスネイプに突撃し、勢いに負けたスネイプは渋々「動物に噛まれた」と答えたのだ。

 アイビーはそれを聞いてからすぐに薬の調合を始め、ついに先程完成したのだ。

 

「スネイプ先生が怪我をしていたなんて、気がつかなかったよ……」

 

 ドラコが驚きからそう呟いていると、アイビーに続いてセリアも立ち上がった。

 

「アイビー、私も行きます」

 

「あら? セリア、宿題はもういいの?」

 

「もう終わりましたよ」

 

 そう言ってセリアは宿題を片付けた。

 

「それではみなさん、先に行きますね」

 

「また後でねー」

 

「いってらっしゃい」

 

「セリア、また明日」

 

 リジー達に見送られてセリアとアイビーは図書館を出る。

 

「セリア、早く早く!」

 

「ま、待ってください、そんなに階段で急いだら……」

 

「きゃあ!」

 

「アイビー!?」

 

 急ぎすぎてアイビーは階段を転げ落ちてしまったが、運良く無傷だった。

 そこからは早足で職員室を目指したが、ちょうどスネイプが廊下を歩いているのが見えた。

 相変わらずわずかに足を引きずっている。

 

「スネイプ先生!」

 

 その姿が目に入った瞬間にアイビーは駆け出し、慌ててセリアもその後を追う。

 スネイプは振り返ってアイビーを見ると、少し嫌そうな表情を浮かべた。

 

「……ベケット、廊下は走らないように」

 

「あ、すみません……」

 

「お忙しいところ申し訳ありません」

 

 セリアがそう言うと、スネイプはいつものような仏頂面に戻った。

 

「我が輩に何か用か?」

 

「スネイプ先生、これを使ってください!」

 

 アイビーが勢いよく差し出した小瓶を、スネイプは少し引きながらも受け取った。

 スネイプは小瓶の中身をしげしげと眺める。

 

「これは……」

 

「足の怪我に使ってください。調合には成功しているはずです!」

 

 スネイプはアイビーの顔をじっと見た後、小瓶をローブのポケットに入れた。

 

「二年生でうまく調合ができるかは疑問だが、受け取っておこう。……しかし、今後このような高度な薬を調合する場合は、報告をするように」

 

「は、はい!」

 

 アイビーは嬉しそうに答えた。

 スネイプは「ふん」と鼻を鳴らすと、くるりと身を翻して歩き出そうとする。

 そこにセリアが不意に声をかけた。

 

「スネイプ先生、学校にはそのような怪我を負わせる動物がいるのですか?」

 

 スネイプは首だけで振り返ると、セリアに睨むような視線を向けた。

 その視線に負けずセリアはスネイプをじっと見つめる。

 

「……トロールが入り込むくらいだ。そういった猛獣も、いても不思議ではなかろう」

 

 スネイプは言い終えると今度こそ歩き去って行った。

 アイビーは不思議そうにセリアに尋ねる。

 

「セリア、何であんなことを聞いたの?」

 

「いえ、少し気になったので」

 

「そう? でもそんなに怖い動物もいるのねえ。先生、森にでも行ったのかしら?」

 

「それなら、森へ入るのが禁止されていることに納得ですね」

 

 二人はハッフルパフ寮へ戻る道を歩く。

 アイビーと話しながらも、セリアは先程のスネイプの言葉を思い出す。

 

(トロールが入るような状況だから、猛獣が必要ってこと、かな?)

 

──────────

 

 今年度のクィディッチシーズンが始まった。

 伝統の一戦であるグリフィンドールとスリザリンの対決を見ようと、ほぼ全ての生徒がクィディッチ競技場へ集まっている。

 セリア達もまた、セドリックとスコットと共に客席へやってきた。

 新しくチェイサーになったケイティの応援ということもあり、グリフィンドールの応援席だ。

 

「グリフィンドールは、チャーリー・ウィーズリーが抜けてシーカーに不安があったんだけどな……そこにあのハリー・ポッターが入ったときたもんだ」

 

「それに、チェイサーの実力もかなり上がってるわ。やっぱり去年までのスリザリンやハッフルパフの試合を見て、チェイサーの重要性に気がついたのよ」

 

「新しいメンバーもそうだけど、去年からいるオリバー・ウッドやビーターのウィーズリー兄弟もかなりの脅威だよ。正直、グリフィンドールチームが一番の優勝候補だと僕は思うな」

 

 アイビー、セドリック、スコットの三人はかなり真剣な表情で話し合っている。

 

「ケイティとハリーは、大丈夫でしょうか……怪我などしないといいのですが」

 

「大丈夫だって! 練習を見に行ったとき、すごかったしねー」

 

「そうだね。それにハリーも練習のとき、スニッチを一度も逃してなかったし」

 

 セリアは心配そうにしているが、リジーとメグはそれほど心配はしていなかった。

 見学という名の偵察に行った際、ケイティもハリーも見事な動きを見せていた。

 さらにスリザリンチームも昨年までの絶対的エース、ジェニファー達が卒業したことで、大幅に戦力が削がれている。

 元々能力が高いチームではあるものの抜けた穴は大きく、反対に他寮のチームは力を上げてきているので、優勝杯の行方は予想し辛くなっているのだ。

 間もなく試合の開始時刻となる頃、不意にセリア達の頭上に大きな影が差した。

 見上げてみるとそこにはハグリッドが立っており、楽しそうに笑っていた。

 

「ハグリッド! 何してるの?」

 

「ようリジー! 今日はハリーの初めての試合だから、来てみたんだ。小屋から見ようかと思っとったが、直接見るのはやっぱり違うからな」

 

 リジーの問いにハグリッドが双眼鏡を振りながら答えた。

 

「私達はケイティの応援に来たんだー」

 

「もちろんハリーも応援するよ」

 

「ハリーが負けるはずはねえ。なんせ、 あの子の父親も、すげえ選手だったんだからな!」

 

 ハグリッドが誇らしげにそう言うと、それを聞いたセリアが首を傾げた。

 

「ハリーのお父さんもクィディッチの選手だったのですか?」

 

「おう! ハリーと違ってチェイサーだったけどな。でもスニッチを捕まえるのも得意だったぞ」

 

 ハグリッドは言い終わると、「ロンとハーマイオニーを探す」と言って離れて行った。

 

「ハリーのパパも選手だったんだねー。親子そろってなんてすっごいね」

 

「父親の才能を受け継いだんだね」

 

「知りませんでした」

 

 ちなみにアイビーやスコットは知っていて、「クィディッチ好きなら知っていて当然」の情報らしい。

 しかしそれを聞いていたセドリックは知らなかったようだった。

 それから少しして競技場全体から歓声が上がった。

 いよいよ両チームの選手が登場したのだ。

 選手達は審判であるフーチが待つ競技場中心に集まる。

 そして甲高いホイッスルの音が響き渡り、選手達が一斉に動き始めた。

 いよいよ今年のクィディッチ・シーズンが始まったのだ。

 

──────────

 

(な、なんなんだ、一体!)

 

 上空でハリーはひどく焦っていた。

 理由はハリーの跨っていた箒、ニンバス2000が突然暴走を始めたからだ。

 ハリーは振り落とされないように必死に箒にしがみついている。

 観戦席では心配のあまり、泣きそうになったり叫んでいる声が響いていた。

 

「これは……!」 

 

「うわわ、危ない! ねえ、試合は止まらないの!?」

 

 セリアは考え込むように小さく呟いており、その隣でリジーが叫ぶ。

 しかしそれにアイビーが首を横に振りながら、少し震える声で答えた。

 

「どんなことがあっても、クィディッチは止まらないわ……」

 

「でもこのままじゃ、ハリーが落ちるかもしれないよ」

 

 メグが固い声でそう言うと、三人はそろって上空のハリーは見上げる。

 しかしセリアは後ろを向くと、同じように見上げていたスコットに声をかけた。

 

「スコットさん、予備の双眼鏡を貸してもらえますか?」

 

「え? あ、ああ、いいぜ」

 

 スコットは毎試合予備を含めて二つ双眼鏡を持ってきていた。

 よく試合に熱中して落としたり、ひどいときは椅子の上に置いていて気づかずに座ってしまい、壊したりすることがあったからだ。

 セリアはお礼を言いながら双眼鏡を受け取ると、すぐに双眼鏡で遠くを見始めた。

 しかし見ているのは他の観客とは違い、教員用の席だ。

 

(箒の故障は、新しい箒だからあり得ない。だったら誰かが箒に細工をしたのかもしれないけれど、最初は普通に飛んでいたし、試合の前に道具の点検がある。ならば今この瞬間に、箒に何かをしかけているはず。生徒じゃそう簡単に箒には手出しできない。だとしたら、可能性は一つ)

 

 教師しかいない。

 セリアは素早く教員席を見渡すと、スネイプともう一人がハリーから目を離さず、何かを小声で唱えているのを発見した。

 

(スネイプ先生は違う。……まさか、あの人だったの? ……ん、あれは?)

 

 犯人の正体に驚いていると、視界の端に小さな影が入り込んできて教員席を進み始めた。

 身をかがめており顔は見えないが、ふさふさした栗色の髪の毛が見えていた。

 

(ハーマイオニー、どうしてあそこに……? あっ!)

 

 ハーマイオニーは急いで移動しており、途中で犯人を押し倒しながらスネイプの近くまで行った。

 そのおかげで犯人の魔法は解けたが、ハーマイオニーがスネイプのローブの裾に放火したため、少しの間教員席は慌ただしくなった。

 箒の暴走が終わったハリーは、箒に跨り直すと凄まじい勢いで急降下を始めた。

 そしてスリザリンチームのシーカーとの競り合いの末、スニッチを飲み込んでしまうという事態があったものの、無事スニッチを獲得。

 開幕戦はグリフィンドールの勝利で終わったのだった。

 

──────────

 

 試合終了後の夜、セリア達四人はベッドに座って話していた。

 その内容はクィディッチの試合についてだ。

 

「本当、びっくりしたよねー。ハリーが無事で良かったよ」

 

「そうだね。スニッチを飲み込んだときは驚いたけど、勝ちが認められて安心したよ」

 

「スニッチに触れて捕まえたら勝ちだもの、飲み込んでも勝ちに決まっているわ。それにしても、箒が暴走するなんて……」

 

「箒、壊れちゃったのかな?」

 

「そんなことあるはずないわ。ハリーの箒は買ったばかりだし、何よりニンバス2000よ。不良品や故障は絶対に違うわ」

 

「ハリーは試合中にぶつかられてたけど、あれくらいじゃ壊れないよね?」

 

「ええ。それに、箒に悪さなんかもできないわ。箒ってすごく頑丈なんだから」

 

「だったら、何であんなことになったのかなー。セリア、どう思う?」

 

 リジーがセリアに聞いたが、セリアは口元に手を当てて考え込んでいて答えなかった。

 試合が終わってからセリアは考えことをしており、口数がかなり少なかった。

 

「セリア? どうしたの?」

 

「……え? ごめんなさい、少し考えごとをしていました」

 

 リジーに心配そうに声をかけられ、セリアはようやくそう答えた。

 

「セリア、具合でも悪いの? 大丈夫?」

 

「はい、大丈夫ですよ。それで、何の話でした?」

 

「箒がなんで暴走したのか話していたのよ」

 

「セリアは何か考えはある?」

 

 メグに聞かれてセリアはどう答えようか迷う。

 犯人はわかっている。

 しかしそれを三人に伝えるべきかどうか、判断が難しい。

 

「そうですね……。私は、誰かが呪文を使ったのだと思います」

 

 明言するのは避けることにしてセリアがそう答えると、三人は驚いたように目を見開いた。

 

「呪文を使ったって、ハリーが誰かに狙われてるってこと!?」

 

「あんな高さから落ちたら、死んでしまうのに……?」 

 

「で、でも、箒に呪文なんて、そう簡単にはできないはずよ!」

 

「ええ。けれど、生徒以外ならどうでしょう?」

 

「まさか……先生?」

 

「……誰かはわかりませんが、私はそう思っています」

 

 セリアがそう言うと三人は絶句して黙り込んだ。

 

「誰、なのかな?」

 

 しばらく沈黙が続いた後、小声でメグが言う。

 しかしセリアはそれに首を横に振りながら答える。

 

「わかりません。それに、そもそも先生がハリーを狙っているのかどうかも、確実ではないのです」

 

 再び沈黙が広がり、それからは誰も話すことはなく四人はベッドに潜り込んだ。

 それぞれが色々なことを考えながらやがて眠りにつく中、セリアは最後まで起きていた。

 

(今回の事件と、ハロウィンのトロール、城に運ばれた「何か」、三つが繋がった。まさかハリーが関わってくるなんて、思っていなかったけど。……本当に、城に隠されている物は何なんだろう。それに)

 

 セリアは閉じていた目を開いて、ほとんど何も見えない暗闇をじっと見つめた。

 頭に浮かぶのは、双眼鏡で見た犯人の顔。

 普段はびくびくと怯え、話すときはどもり、自信なんてないような表情をしている。

 しかし今日は堂々と顔を上げて、鋭い目つきでハリーを睨み、滑らかに口を動かしていた。

 その二つの顔の違いが恐ろしい。

 その正体は……。

 

(クィレル先生。あなたは一体、何?)

 




実はこの四月から社会人になりました。
そのため色々と忙しく、流れは考えていても中々書く時間が取れず、このペースだと賢者の石編も何年かかのか……。
もっと早く書けるようになりたいです。
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