ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

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ある映画を字幕と吹き替え両方見てきました。
どちらも最高でした。


第5話 初めての

(うわぁ……綺麗な子だな。お人形みたい)

 

 少女の翡翠色の瞳に見とれながら、リジーは思う。

 

「あの……?」

 

 ぼうっと見つめ続けられ、少女が怪訝そうな声をあげた。

 リジーはその瞳から目を離し慌てて言う。

 

「あ、ご、ごめんね。じっと見ちゃったりして。それより、そんなとこでうずくまってどうしたの? 大丈夫?」

 

「あ、はい……ちょっと、気分が悪くて」

 

 少女の答えにリジーはなるほど、と頷く。

 

「そっか……よし! 背中さすってあげる!」

 

「へっ?」

 

 突然背中に手を当てたリジーに今度は少女が慌てだした。

 そんな少女にリジーは元気に言う。

 

「気分が悪いときはね、背中をさするのが一番なんだよ! 任せて任せて」

 

「えっと……じゃあ、お願いします……?」

 

 困惑しながらも勢いに負けた少女がそう言うと、リジーは背中に当てた手を動かす。

 活発そうな見た目に反して、その手つきはとても優しかった。

 

(気持ちいい……)

 

 最初は戸惑っていた少女だが、その心地よさに徐々に身を委ねていった。

 

 ──────────

 

 一方、グリンゴッツ前では。

 

「おせーなー。そっちのご主人様も。生きてるよな?」

 

「グリンゴッツの中ですし、そうそう危険なことなど起こらないでしょう」

 

「だよなあ。……て言うかさ、敬語やめてくれよ。おっさんに敬語使われるのちょっと気持ち悪い」

 

「そうか? なら、やめさせてもらおうかな」

 

「おう、いきなりかおっさん。意外とノリいいんだなー」

 

 ──────────

 

「あの、ありがとうごさいました」

 

 しばらくして、だいぶ顔色が良くなった少女がリジーにおずおずと礼を言った。

 

「いいよいいよ。もう大丈夫?」

 

 リジーは気にするなとばかりに手を振り答えた。

 

「私もさ、気持ち悪かったんだけどね。あなたの方が具合悪そうで、気持ち悪いの吹っ飛んじゃったよ」

 

 からからと笑いながら言うリジーにつられ、申し訳なさそうな顔をしていた少女も微かに笑った。

 

「私、リジー・スキャマンダーって言うんだー。よろしくね!」

 

 片手を差し出しながらリジーが自己紹介をする。

 

「はい、よろしくお願いします。……スキャマンダーさん、ですか?」

 

 握手に応じながら少女が聞くと、リジーは胸を張り得意げに言った。

 

「そう! 何を隠そう、私のおじいちゃんはあのニュート・スキャマンダーなのだ! すごいでしょ!」

 

「うわあ……すごいです! 私、《幻の動物とその生息地》は何度も読みました。それに、実験的飼育禁止令といった魔法生物に関する法令の制定や狼人間登録簿の作成などの数々の偉業、挙げればきりがありません!」

 

 少し興奮したように言う少女を見てリジーは満足そうに頷く。

 

「ふふーん、そうでしょ。おじいちゃんすごいでしょ。それで、あなたのお名前は?」

 

 リジーが尋ねると、感心したようにリジーの顔を見つめていた少女ははっとした表情になった。

 

「すみません、まだ名乗っていませんでしたね」

 

 そう言うと、少女は背筋を伸ばして姿勢を正した。

 すると急に空気が引き締められ、リジーは少女から目が離すことができなくなった。

 少女はふんわりとしたスカートの裾を少しつまみ、片足を後ろに少し引いた。

 そしてもう片方の足を軽く折り、誰もが魅了される柔らかな微笑を浮かべた。

 

「はじめまして、スキャマンダーさん。私は、セリア・レイブンクローと申します。先ほどは助けて頂きありがとうございました。心よりお礼を申しげます」

 

 その洗練された優雅な仕草と少女の可憐さに圧倒され、少し呆けていたリジーだがふと気づく。

 

「あれ、レイブンクローってあの? えっ、本当に⁉︎」

 

「はい。ロウェナ・レイブンクローの直系の子孫ではありませんが、私は現在一番血の近い子孫だと思います」

 

 リジーの驚きの声に少女、セリア・レイブンクローは微笑んで答えた。

 そんなセリアを見てリジーは、ほー、はー、と変な声を出している。

 

「すごい、まさかレイブンクローの子孫の人に会えるなんてなー。……あれ、私レイブンクローの子孫の人相手にあんな自慢してたの? うわ、恥ずかしい!」

 

「いえ、そんな! スキャマンダーさんのお祖父様も、とても素晴らしい偉大な方です」

 

 先ほどまでの自分の行動を思い返し両手で顔を覆い恥じ入っていたリジーだが、セリアの言葉を聞いてすぐさま気をとりなおした。

 

「えへへ。私のことはリジーでいいよ! ねえねえ、セリアって呼んでもいい?」

 

「へっ? あ、あの、それは、その、はい……」

 

 セリアは突然慌てふためく。

 なにしろセリアは今まで同年代の人と会うことは少なく、ましてや同性の少女とは話などほとんどしたことがない。

 ファーストネームで呼ばれるなんてことも当然全くないのだ。

 これでは慌てるのもしょうがない。

 そんなセリアを気にも止めずリジーは続ける。

 

「ねえねえ、セリアは今日なんでダイアゴン横丁に来たの? 歳はいくつ?」

 

 矢継ぎ早に飛んで来る質問にセリアはあたふたとしつつ、なんとか答える。

 

「えっと、今年ホグワーツに入学でそのお買い物に……歳は十一です」

 

 セリアの答えを聞いたリジーは、両手をパチン! と合わせた。

 

「やっぱり、同い年だね! 私も今日お買い物なんだー! 良かったら一緒に行かない?」

 

 そしてリジーは輝くような笑顔でセリアに言った。

 

「私とお友達になって下さい!」

 

 その言葉とともに差し出された手を、セリアは呆然と見つめる。

 そして、リジーの顔と手を何度も交互に見て、こわごわと両手の指先だけでちょこっとその手を握った。

 手を握りながら顔を真っ赤に染めて、消え入りそうな声でセリアが言った。

 

「は、はい。よろしければ、その、お友達に、ならせて下さい……」

 

 そんなセリアを見てぷるぷると全身を震わせたリジーは、我慢ならないとばかりにセリアを両腕で強く抱きしめた。

 

「えっ? えっ? な、なんですか? どうしてですか? 何事ですか!?」

 

「セリア、かわいい! すっごいかわいいよ、セリア!」

 

 突然の出来事にセリアは声を上げて驚く。

 しかし驚くセリアをよそにリジーはさらに強く抱きしめ、その頭を撫でまわす。

 

「かわいいよー。あ、クッキー食べる?」

 

「あ、あの! と、とりあえずここから出ましょう。ここ、お手洗いですし……」

 

 セリアが苦しそうに言った。

 忘れかけていたが、二人がいるのはまだグリンゴッツのトイレの中である。

 

「あ、そうだね。兄ちゃん心配しちゃってるかも」

 

 リジーはセリアを離す。

 ようやく解放されたセリアは、真っ赤になった顔を両手でぱたぱたと冷まし、大きく息を吸った。

 

「ふう……私も一緒に来ている人が待っていますので、ひとまず合流しませんと」

 

 そうして、二人は長い間入っていたトイレを後にした。

 並んで出てきたセリアとリジーを、一人の小鬼が不思議そうに見ていた。

 

──────────

 

「あ、戻ってきた」

 

「こちらも戻ってきたようだ」

 

 ずっとグリンゴッツの入り口を眺めていた二人は、セリアとリジーが出てきたことにすぐに気がついた。

 すぐに気がついたのは出てきた二人も同じで、リジーが元気よく手を振ってこちらへ向かってくる。

 

「やっと戻ってきたか。てか隣の女の子誰だ?」

 

「あの方が、私の主だよ」

 

「まじか」

 

 そんなことを話しているうちに、二人の元に少女達が戻ってきた。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 

「ただいま戻りました。待たせてしまい、ごめんなさい。レイモンド」

 

 一礼し主を迎えた執事、レイモンドにセリアは申し訳なさそうな顔で言った。

 

「お気になさらないで下さい。もう体調の方はよろしいのですか?」

 

「はい。こちらの方が助けて下さって」

 

 気遣うレイモンドが聞くと、セリアがリジーを紹介しながら答えた。

 レイモンドはセリアの隣に立つリジーへ向かいお辞儀をする。

 

「主を助けて下さり、心よりお礼申し上げます。貴女も、ご気分はもうよろしいのですか?」

 

「は、はい。私ももう大丈夫です。おじさんが、セリアと一緒に来た人だったんですね。こちらこそありがとうございました」

 

 仰々しく礼を言うレイモンドに、リジーもつられて丁寧な口調で答えた。

 その様子を見て青年が言う。

 

「おーい、リズ。俺にも紹介しろよ。なんか俺だけ蚊帳の外じゃねーか」

 

「あ、忘れてた。セリア、これ私の兄ちゃんだよ! 兄ちゃん、心配かけてごめんね!」

 

 兄へ突撃するように飛びついたリジーがセリアへ紹介する。

 突撃された兄の方は、ごふっと声を漏らしつつもリジーをしっかりと抱きとめた。

 

「これとはなんだ、失礼な。あー、セリア、でいいんだよな? 俺はロルフだ。よろしくな」

 

「はじめまして、ミスター・スキャマンダー。私はセリア・レイブンクローと申します。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」

 

 妹をぶら下げながらのロルフの自己紹介に、セリアはリジーへしたようにスカートの裾をつまみ軽く膝を曲げ、ふわりと微笑みを浮かべて答える。

 その優雅さから気圧されそうなセリアの挨拶だが、ロルフは全く気にしていない様子だった。

 

「俺のことはロルフでいいよ。それより、レイブンクロー? まじで?」

 

「そうだよ、兄ちゃん。あのレイブンクローの子孫なんだって。すごいよねー」

 

「へー、そりゃすごい」

 

 自分の首にぶら下がったままのリジーと普通に会話するロルフ。

 そんな兄妹の様子をセリアは微笑ましそうに見つめていた。

 

「あ、そうだ。兄ちゃん、セリアもお買い物なんだって! 一緒に行きたいんだけど、いいよね?」

 

「いや、俺はいいけど。そちらさんはいいのか?」

 

 ぶら下がるのを止めてリジーが聞くと、ロルフはちらりとセリアに目を向けて尋ねた。

 ロルフと目が合って少し慌てつつ、セリアが答える。

 

「は、はい。こちらからもお願いします。……構いませんよね、レイモンド?」

 

「ええ、お嬢様」

 

 セリアがレイモンドに聞くが、特に問題ないようだ。

 

「んじゃ、お願いするか」

 

「やった! それじゃ行こ! セリア!」

 

「わっ、ま、待ってください」

 

 了承を得たリジーはセリアの手を取り走り出した。

 

「なんか変な展開になったけど、まあよろしくな、おっさん」

 

「ああ、よろしく」

 

 少女達に取り残された二人が握手を交わすが、そうしている間にも少女達はどんどん遠くへと離れていく。

 それに気づいたロルフも走り出し、すぐ後にレイモンドも続いた。

 

「って、どんだけ走ってんだあいつら! 待ちやがれ!」

 

「とりあえず二人を捕まえないとな」

 

「そうだな……って、おっさん、めっちゃ足早いな!」

 

 こうしてようやく買い物が始まるのだった。

 ちなみに、少女達はすぐにレイモンドによって確保された。

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