ハリー・ポッターと翡翠の魔法使い   作:ごま丸

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第8話 九月一日・朝

 リジーと再開を約束して別れてから一ヶ月と少し、セリアは忙しい日々を送っていた。

 なにしろ今年からホグワーツに入学するので、学校にいる間はレイブンクロー家の仕事ができない。

 そのため学校が始まるまでに、様々な仕事をこなさなければならなかったのだ。

 予定は八月末までぎっしりと詰まっており、間違いなくセリアの今までの人生の中で一番忙しいときだっただろう。

 そんな日々が過ぎ去り九月一日の早朝、セリアはルンに起こされ、眠い目をこすりながらふらふらと一階にある応接室へと向かっていた。

 なにやら来客があったらしい。

 

「お嬢様、おはようございます」

 

 早朝だというのにしっかりと執事服を着こなしているレイモンドが、セリアへ声をかける。

 

「おはようございます、レイモンド……。けれど、どうしてこんなに朝早くに? もう予定などなかったはずですよね」

 

「それなんですが……ちょっと、断れる相手ではございませんでしたので」

 

 セリアが少し不満気に答えると、レイモンドは少し困ったように笑い、応接室の扉を開けた。

 セリアはレイモンドの言葉に首をひねりつつ応接室へと入った。

 

「やあ、おはようセリア。こんな早くにすまないね」

 

 そこにいたのは、縦縞のローブを身にまとう少し太り気味の魔法使いだった。

 

「ファッジさん! おはようございます」

 

 応接室にいた縦縞ローブの魔法使いの正体は、イギリス魔法省大臣、コーネリウス・ファッジだった。

 セリアがファッジの対面のソファに座ると、レイモンドが素早く紅茶をセリアの前に置き、ファッジのカップにお代わりを注いだ。

 

「お久しぶりですね、ファッジさん。今朝はどういったご用件で?」

 

 紅茶を一口飲んだセリアがそう尋ねる。

 

「ああ、君のホグワーツ入学のお祝いにね。本当はもう少し早く来たかったのだが、忙しくてこんな時間になってしまった。急にすまないね」

 

 ファッジは額に手をやりながら答えた。

 それを聞いたセリアは嬉しそうに微笑みを浮かべる。

 

「お忙しい中わざわざお祝いに来てくださって、ありがとうございます。嬉しいです」

 

 セリアが言うと、ファッジは少し照れくさそうに笑った。

 

「いやいや、それにしてももう君も入学なんだな。月日が経つのは早いものだ……」

 

 紅茶を飲みながらファッジは遠い目をしていた。

 

「君のお父さんも、きっと喜んだだろうね」

 

「……はい」

 

 セリアは杖を取り出し、ファッジに見せる。

 

「この杖は、お父さんの杖と同じ木から作られたそうです。この杖を持っていると、お父さんを近くに感じられる気がします」

 

 ファッジはセリアの杖を受け取ると、しげしげと眺めてふう、と息をついた。

 

「お父さんと同じ木から作られた杖とは……なんとも、素敵な縁だね」

 

 それからセリアはファッジと朝食を共にした。

 朝食を食べ終わると、ファッジはすぐに立ち上がった。

 

「ごちそうになってすまないね。私はそろそろ行かなければ」

 

 立ち上がったファッジは、ライムグリーン色の山高帽に頭を押し込んだ。

 セリアも立ち上がりファッジを見送りに行こうとしたが、ファッジは片手を上げてそれを制する。

 

「いや、いや、構わんよ。君は学校へ行く準備をしたらいい」

 

「いえ、そんな……」

 

「せっかくの入学の日だ。しっかりおめかしして行きなさい。楽しむんだよ」

 

 そう言うとファッジは部屋を出て行った。

 残されたセリアはレイモンドに言う。

 

「レイモンド、私の代わりにお見送りをお願いします」

 

「わかりました」

 

 レイモンドはそう答えると、部屋を出て行きファッジの後を追った。

 廊下の中頃で追いつき、二人は並んで歩く。

 

「大臣、私がお見送りさせていただきます」

 

「ああ、ありがとうレイモンド」

 

 程なくして二人は暖炉の前に到着した。

 

「さて、では失礼するよ。……ああ、そうだ。レイモンド、セリアは入学して、しばらく屋敷にいないだろう?その間だけでも、魔法省に戻ってくる気はないかね?」

 

 暖炉の前で立ち止まったファッジが振り返りながらそう聞くが、レイモンドは首を横に振った。

 

「すみません。私は彼に、あの子を守ると誓っていますので」

 

 穏やかな口調だがはっきりと断るレイモンドに、ファッジは残念そうに肩をすくめる。

 

「そうか……いやまあ、分かっていたがね。それではまた」

 

「はい、行ってらっしゃいませ」

 

 ファッジは暖炉へ入り、エメラルド色の火の揺らめきを残して去って行った。

 見送りを終えたレイモンドは応接室へ戻ったが、セリアの姿はない。

 次にレイモンドがセリアの自室へ向かうと、着替えようとしたのかタンスから服を引っ張りだしたセリアが、その服に身にまといベッドで眠っているのを発見した。

 幸せそうに眠るその顔を見て、レイモンドは優しく笑いながらもセリアを起こすのだった。

 

――――――――――

 

「それでは、行って来ます」

 

 セリアは大きなトランクを携え玄関ホールに立っていた。

 大きな目にいっぱい涙をためたルンがセリアに言う。

 

「お嬢様、どうかお気をつけて! 何かございましたら、すぐにルンをお呼び下さい!」

 

「ええ、気をつけます。だから泣き止んで、笑って見送って下さい」

 

 セリアが優しく言うと、ルンはぐしぐしと涙を拭ってにこりと微笑んだ。

 それを見たセリアは頷くと、周りをきょろきょろと見渡した。

 

「レイモンド、おばちゃんはもう行ったのですか?」

 

「はい。お見送りできなくて、申し訳ないと詫びていましたよ。……それではお嬢様、手を」

 

 レイモンドが伸ばした腕をセリアが掴むと、またもやルンは目に涙をためはじめる。

 

「お屋敷のことを頼みます、ルン。クリスマスに会いましょう」

 

「はい!」

 

 パチン、という音と共に二人の姿が消えた。

 二人が姿あらわししたのは、キングズ・クロス駅に近い路地裏だった。

 さっと周りを見渡したレイモンドは、誰も見ていなかったことを確認する。

 そしてセリアからトランクを受け取ると、二人は駅に向かって歩き始めた。

 

「お嬢様、足元にお気をつけください」

 

「大丈夫ですよ」

 

 五分もしないで二人はキングズ・クロス駅へ到着した。

 レイモンドはカートにトランクを乗せると、人混みをすいすいと進んで行く。

 セリアはレイモンドの後ろについて行くだけでよかった。

 

「お嬢様、あそこです」

 

 レイモンドが指し示す九番線と十番線の間のレンガの壁、そこが九と四分の三番線への入り口だ。

 

「それでは行きますよ。大丈夫ですか?」

 

「は、はい」

 

 緊張した声で答えたセリアはレイモンドとカートを押しながら進み、なにげなく壁の方へと寄って行く。

 壁が目前へ迫り思わずセリアは目を閉じる。

 そしておそるおそる目を開けると、そこは広々とした駅のホームで、線路には紅色の立派な列車が鎮座していた。

 その車体には金文字で「ホグワーツ特急」と書かれている。

 

「お嬢様、早めにコンパートメントを確保しておいたほうがいいですよ」

 

 セリアがホグワーツ特急に見とれていると、レイモンドがそう言った。

 まだ出発までは一時間弱あるが、辺りにはすでにそれなりの数のホグワーツの生徒の姿があり、これから混雑することは確実だ。

 

「あ、はい」

 

「トランクは私が見ておきますので、お嬢様はコンパートメントを探して来て下さい」

 

「ありがとうございます。行って来ます」

 

 セリアが車内へ入ると、車内ではすでに多くのコンパートメントが埋まっていた。

 セリアは真ん中の車両の辺りで空いたコンパートメントを見つけた。

 コンパートメントに入ったセリアは窓を開けて身を乗り出す。

 

「レイモンド、見つけました」

 

 セリアが呼ぶと、すぐに目の前にレイモンドが現れた。

 

「お嬢様、少し窓から離れてください」

 

「わかりました」

 

 セリアが窓から離れたのを確認したレイモンドは、杖を取り出して振った。

 すると彼の横にあったトランクが、一瞬でコンパートメントの中へ移動した。

 

「ありがとうございます、レイモンド。荷物棚には自分で置きます」

 

 セリアはそう言うと、杖を取り出して振った。

 

「ウィンガーディアム・レビオーサ、浮遊せよ」

 

 するとトランクが浮かび上がり、ゆっくりと荷物棚へとおさまった。

 窓の外でレイモンドが拍手をする。

 

「お嬢様、お見事です」

 

「これくらい当然ですよ」

 

 そう言っているが、セリアの口元は嬉しそうにほころんでいた。

 レイモンドは懐から時計を取り出し時間を確認した。

 

「出発まであと四十分ほどですね。リジー様もそろそろ来られるでしょう」

 

「そ、そうですね」

 

 セリアは急にそわそわと髪をなでつけたり、服を整えたりし始めた。

 ちなみに服装はリジーと初めて会った日と同じで、唯一違うのは胸元に光るロケットだけだ。

 銀色のそれは、同じ色の細い鎖と共にセリアの髪ととても良く合っている。

 そんなセリアの様子を見てレイモンドは少しおかしそうに笑う。

 

「早く会えるといいですね」

 

「はい!」

 

――――――――――

 

 時間は早朝へ戻り、ここはリジーの家があるとある森の奥。

 空が白み始めた中、リジーは木々の間の小道を駆けていた。

 

「ふう……」

 

 足を止めたリジーは、腰に巻いたポーチから小さな水筒を取り出し水をゆっくりと飲む。

 冷たい水が火照った体に入っていくのがとても心地良い。

 リジーは口元をぬぐい水筒をしまうと、走って来た道を歩いて戻る。

 

(いよいよだ……。学校、楽しみだな)

 

 リジーは歩きながら考え事をするこの時間が好きだった。

 走った後に帰り道をゆっくりと歩いていると、いつも良い考えが浮かぶ、そんな気がしていた。

 

(それに、セリアに久しぶりに会えるしね。うーん、楽しみ!)

 

 こらえきれなくなったのか、リジーは家へと駆け出していった。

 家に着いたリジーは、衝動の赴くままに口元に布を巻き箒と雑巾を手に握る。

 

「いざ!」

 

 それからしばらくして眠い目をこすりながら起きて来たロルフは、一瞬別の場所に姿あらわししてしまったのかと思った。

 家のどこもかしこも輝いている。

 埃などは室内から一切消え失せ、磨き上げられた窓はまるで鏡のようだ。

 こころなしか空気までもが澄み渡っているような気がする。

 

「あ、兄ちゃんおはよー」

 

 呆然とロルフが立ち尽くしていると、部屋の中央に立ち満足気に辺りを見渡していたリジーが声をかけた。

 

「おう……何してんだ?」

 

「明日から家に誰もいなくなるでしょ? だから気合い入れてお掃除したんだよ」

 

 リジーは胸を張りながら自慢気に言う。

 

「それなら昨日までに終わらせとけよ」

 

「それを言っちゃいけないよ」

 

「お前思いつきでやっただろ」

 

「ばれたか。なんか盛り上がっちゃって。すぐ朝ごはん作るから待っててね」

 

 リジーはキッチンへと走っていった。

 ロルフはどこもかしこも輝く室内を見渡し、居心地が悪そうにこれまた新品同様になった椅子に座った。

 それからすぐに朝食が出来上がった。

 

「リズ、ちゃんと準備できてるんだろうな? 忘れ物してもふくろう便で送れないぞ」

 

「大丈夫だよ、昨日何回も確認したもん。兄ちゃんのほうこそ準備できてるの?」

 

「俺を誰だと思ってる」

 

「兄ちゃん」

 

 そんなことを話しながら朝食をとる。

 これからしばらく共に食事をとることができないので、無意識のうちに二人は惜しむようにゆっくりと食べていた。

 やがて食べ終わった二人は並んで食器を手で洗う。

 

「そろそろだな……リズ、着替えてこい」

 

「うん」

 

 リジーとロルフは二階へ上がって行った。

 すでに着替えていたロルフは、荷物を持ち一階へ戻りリジーを待つ。

 少ししてリジーが、トランクを階段のあちこちにぶつけながら降りてきた。

 

「もうちょっと慎重に降りてこいよ」

 

「だって重いんだもん。それより兄ちゃん、荷物それだけ?」

 

 リジーが聞く。

 ロルフが持っているのは鞄が一つだけだった。

 

「金と杖、あとは適当に魔法薬が何個かあれば意外と問題ねーんだよ。お前こそ、本当に忘れ物ないだろうな?」

 

「大丈夫だって」

 

「セリアにもらった鞄も持ってるか?」

 

「もちろん! 見て!」

 

 リジーが腰を指差すと、そこには先ほどまで巻いていたものとは別のポーチがあった。

 

「鞄の持ち手を取り替えてポーチにしてみました」

 

「お前器用だな……。壊れたりしてないだろうな?」

 

 少し心配そうに聞くロルフにリジーは自信満々に答える。

 

「ちゃんと確かめたから大丈夫だよ!」

 

「それならいいけどよ。んじゃ、腕掴め」

 

 ロルフが差し出した腕を掴もうとしたリジーはふと手を止め、リビングの中をぐるりと見渡した。

 

「……行ってきます!」

 

 リジーがロルフの腕を掴み、パチン、という音と共に二人の姿がリビングから消えた。

 二人は駅に近い路地裏に姿あらわしした。

 周りを確認したロルフは時計を取り出し時間を確かめた。

 

「時間は……大丈夫そうだな。リズ、トランク貸せ」

 

「うん」

 

 少しして二人はキングズ・クロス駅へ到着した。

 ロルフはカートにトランクを乗せて歩く。

 

「うわ、人多いなー。はぐれるなよ」

 

「私もカート押すー」

 

 二人はカートを押しながら進む。

 やがて二人は九と四分の三番線の入り口の前にたどり着いた。

 

「あそこだ」

 

「よーし、行くよ!」

 

「おい! 重いんだから走るな!」

 

 リジーが猛スピードで押すので、ロルフは必死にカートを操作する。

 そのまま壁に突っ込んだ二人は駅のホームに出た。

 周りは生徒とその家族でいっぱいだ。

 

「まったく。おいリズ、セリアとは待ち合わせしてるのか?」

 

「うん。昨日届いた手紙には、先に来てコンパートメントを取ってるって書いてたんだけど……」

 

 二人は辺りをきょろきょろと見渡す。

 しかしあまりの人の数に、全く見つかる気配はなかった。

 

「やばい、ぜんぜん見つからない……」

 

「時間も無いし、中に入って探したほうがいいかもな」

 

「その必要はないよ」

 

「うお⁉︎」

 

 いつの間にか二人の後ろにはレイモンドが立っていた。

 思わず飛び上がって驚く二人をよそにレイモンドが言う。

 

「お久しぶりです、リジー様。お嬢様は会えるのをとても楽しみにしていましたよ」

 

「あ、はい。お久しぶりです。セリアは元気ですか?」

 

「ええ、とても。すぐにお嬢様の所へご案内します」

 

 次にレイモンドはロルフのほうを向く。

 

「君も久しぶりだな。元気だったか?」

 

「お、おう、久しぶりおっさん。て言うか、あんたどこから現れたんだよ……」

 

「君達の気配がしたからな。それより時間もない、お嬢様がお待ちだ。付いてきてくれ」

 

 言い終えたレイモンドはロルフからトランクを受け取って歩き出し、ロルフとリジーはその後に続く。

 

「気配って……どういうこと?」

 

「わっかんねーよ」

 

「着いたぞ」

 

 かなりの人混みだがなぜか苦もなく進めた三人は、真ん中の辺りの車両前に到着した。

 レイモンドはその中にある窓の一つに近づき声をかける。

 

「お嬢様」

 

「あ、レイモンド。突然いなくなってびっくりしましたよ。どうしたのですか?」

 

「一人で心細くて泣いていましたか?」

 

「泣いてません!」

 

 その窓から顔を出したのは、セリアだった。

 セリアに気づいたリジーは叫ぶ。

 

「セリア!」

 

「リジー! わあ、お久しぶりです!」

 

「うん! ちょっと待っててね!」

 

 リジーはそう言うと車両の入り口まで走って行った。

 そして車内を駆け抜け、セリアのいるコンパートメントを発見すると飛び込んだ。

 

「セリアー! 相変わらずかわいいね!」

 

「きゃあ!」

 

 コンパートメントに入るやいなや、リジーはセリアに飛びついて抱きしめる。

 その勢いで二人は座席に倒れこんだ。

 

「こらリズ! 危ないだろ!」

 

「お嬢様、大丈夫ですか?」

 

 窓の外からロルフが叱りつけ、レイモンドが心配そうに声をかける。

 

「いてて。セリア、ごめんね。大丈夫?」

 

「は、はい、大丈夫ですよ」

 

 セリアから離れたリジーはしょんぼりとしながら謝った。

 しかし、すぐ気をとりなおして顔をほころばせる。

 

「改めて、久しぶりセリア! 会いたかったよ!」

 

「ええ、私もその、あ、会いたかったです」

 

「かわいいなあ……。あ! それ、付けてくれてるんだね!」

 

「ようセリア、久しぶり。いきなりリズが悪いな。ロケット似合ってるよ」

 

「はい、お久しぶりですロルフさん。二人とも、こんな素敵な物をありがとうございます」

 

「みなさん、そろそろ時間です」

 

 三人が挨拶を交わしていると、レイモンドが時計を取り出して言った。

 言い終わると同時に、特急が汽笛を鳴らす。

 ホームに残っていた生徒達は急いで特急に乗り込み、各々窓を開け家族に別れを告げている。

 それにならってセリアとリジーも窓から身を乗り出した。

 

「レイモンド、屋敷のことを頼みます。ふくろう便を絶やさず、常に情報を送って下さいね」

 

「ええ、お任せを。お嬢様も、調べ物に熱中して体調を崩されないようお気をつけ下さい。寝込んで寂しくて泣いていても、私もルンもいませんからね」

 

「だから泣きません! ……それと、例の物もちゃんと送って下さいね」

 

「はい」

 

 レイモンドとセリアが話している横で、リジーとロルフも別れの言葉を交わしていた。

 

「それじゃ、行ってくるね兄ちゃん! ちゃんとご飯食べなよ?」

 

「わかってるっての。お前のほうこそ、授業について行けなくて落第とかするんじゃねーぞ」

 

「私そんなに馬鹿じゃないよ! あと、調査はいいけどあんまり危険なことはしないでよー?」

 

「ああ、大丈夫だよ。だから心配せず、お前は学校を楽しんでこい」

 

 四人が話していると再び汽笛が鳴り、ゆっくりと特急が動き始めた。

 最初は歩いているほどの速さだったが、すぐに走っても追いつけない速度になる。

 

「行ってきます!」

 

 セリアとリジーは、ホームにいるレイモンドとロルフの姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。

 ホグワーツ特急が見えなくなり、ホームから見送りの人々が去っていく。

 

「さて、君はこれからどうするんだ?」

 

 並んで歩きながらレイモンドがロルフに問いかけた。

 ロルフはぽんぽんと鞄を叩いて答える。

 

「俺はこれからいろんなとこ回って研究に調査だな。新種の魔法生物を探すんだ」

 

「そうか。あまり危険な場所には行くなよ」

 

「わかってるよ。あんたはどうするんだよ?」

 

「主の留守を守るだけさ」

 

 二人はキングズ・クロス駅から出た。

 

「そんじゃもう行くよ。またな、おっさん」

 

「ああ、気をつけろよ」

 

「おう」

 

 ロルフとレイモンドはそれぞれ別の方向へ歩き出した。

 そして人通りの無い場所まで行くと、二人の姿は煙のように消えた。

 

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