「メドヴェーチ一番機聞こえるか?」
「こちらメドヴェーチ1、どうした管制室」
「率直に確認する。そちらに海はあるか?」
「まだ海は見えない。どうしたんだ?」
「北方をバレンツ海西部を哨戒しているプチラー隊、北部のツァープリャ隊から『海がない』との報告が上がった。さすがに不審だ。」
「酔ってるんじゃないのか?」
尾翼に3つの爪痕と1が描かれたPe-2の機内、パイロットの疑わしい声が響いていた。
メドヴェーチ隊は数時間前に起きた謎の光が連合かそこらの軍事行動の前兆かと哨戒をしているところだったのだ。
「全機、海は見えるか?」
「こちらメドヴェーチ2、まだ見えませんね。」
「メドヴェーチ3、見えない。」
「メドヴェーチ4、こちらも見えない。」
「了解。…アドリアン、今我々はどの辺だ?」
「そうですね………多分、B-4辺りかと」
「……なるほど。どうやら我々の知らない間に陸になっていたようだな。」
「……ええ、そのようで。」
その後、海を哨戒していた哨戒機からの「海がない」という報告が続き、ロシア軍部内が大混乱に陥った。
翌日
「それじゃあ、これより帝国緊急会議を始めるわ。まず、国防省。あなたの情報が一番欲しいわ。」
「はい…昨日北方を哨戒していたツァープリャ隊がバレンツ海があったであろう場所を飛行、偵察を行いました。結果、その大陸には農村があることと…えー、竜がいることがわかりました、」
「…なんだって?」
「竜です。」
「…Drache?」
「はい、sárkányです。」
空軍参謀アレクサンドル・ノヴィコフの声の後、暫く沈黙が続いた。
竜、Dragon、Drache、Dragone…
女帝が静かに紅茶を飲み、ジャムを舐める。
その表情は正しく余裕。きっと何か考えているのだろうと参謀達が考えていたその時…
「ぶふっ…」
「女帝が倒れた!」
その後、帝国会議は一応順調に進み、ツァープリャ隊が接触した不明ながら国家所属と思われるドラゴンの所属国家とコンタクトを取る、という流れで終わった。
1939年3月26日?
空母オリョールの艦橋にて
「本当によろしかったのですかね、艦長」
「いいも何も、女帝がそうすると言ったのだ。我々にどうこういうことはできまい。」
バルト艦隊の旗艦オリョールの艦長を務めるフィリポ・オクチャブリスカヤは聞いてきた船員の顔もみず答えた。
その目は近くの外務官に肩車して貰いながら水平線をキャッキャキャッキャと喜びながら見ている女児…もとい女帝に向いている。
この女帝、外務官だけ向かわせるのは無礼になるかもしれないと言い、ここまで着いてきたのだ。
しかも近寄ってきた木造船(彼ら曰く海軍)に真っ先に会いに行く始末。
しかも帆船に余計興奮してしまい相手の船員にしつこく「乗り込んでいい!?乗り込んでいい!?乗り込みたい!」と迫って困らせたり…まぁ、好奇心が旺盛なのだ。
それか、摩訶不思議な事がおきすぎて少しオーバーヒートしてるだけか。
「それに、一応上手くいっている。あとは祈るだけだ。」
「それにしても、なんで帆船だったんでしょうね。」
「恐らく帆船に思い入れのあるやつが居るんだろう。実際、大戦では帆船で戦う者も居たと言うしな。」
「居ましたねぇ」などと談笑をしながらフィリポは静かに女帝を見つめるのであった。